夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

ドイツ映画

「犬ヶ島」: 近未来の日本を舞台に独特の構図、細部の拘りなどウェス・アンダーソン監督の世界観を濃縮したストップモーション・アニメ

「犬ヶ島」(原題:Isle of Dogs )は、2018年公開のアメリカ・ドイツ合作のストップモーション・アニメーション映画です。ウェス・アンダーソン監督、コーユー・ランキン、リーヴ・シュレイバー、ブライアン・クランストンら出演で、近未来の日本を舞台に犬…

「婚約者の友人」:第一次大戦後の独・仏を舞台にフランソワ・オゾン監督の刺激的な物語りとパウラ・ベーアの演技が味わい深いドラマ映画

「婚約者の友人」(原題:Frantz)は2016年公開のフランス・ドイツ合作のドラマ映画です。エルンスト・ルビッチ監督の「私の殺した男」(1932年)を翻案、フランソワ・オゾン監督・脚本、パウラ・ベーア、ピエール・ニネら出演で、第一次世界大戦後のドイツ…

「エル ELLE」:勝ち組の敏腕女性が遭遇するレイプの顛末を、様々な人間関係が織りなす日常的現実感の中で描いた、異色サスペンス映画

「エル ELLE」(原題:Elle)は、2016年公開のフランス、ベルギー、ドイツ合作のサスペンス映画です。2012年に発表されたフィリップ・ジャンの小説「Oh...」を原作に、ポール・バーホーベン監督、イザベル・ユペールら出演で、瀟洒な自宅で覆面の男に襲われ…

「ありがとう、トニ・エルドマン」:国外で働くキャリア・ウーマンの娘とつき纏う父親の奇妙で繊細な関係をリアルに描いた大人のコメディ

「ありがとう、トニ・エルドマン」(原題:Toni Erdmann)は、2016年公開のドイツ・オーストリア合作のコメディ&ドラマ映画です。マーレン・アデ監督・脚本・製作、ペーター・ジモニシェック、ザンドラ・ヒュラーら出演で、ルーマニアで働くキャリア・ウー…

「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」:ナチス戦犯を自国の法律で裁くことに執念を燃やした検事を描く、含蓄のある伝記ドラマ

「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」(原題:Der Staat gegen Fritz Bauer)は、2015年公開のドイツの伝記ドラマ映画です。ラース・クラウメ監督、ブルクハルト・クラウスナー、ロナルト・ツェアフェルトら出演で、1950年代後半のドイツ・フラン…

「未来よ こんにちは」:後戻りできない時間の中で数々の人生の困難に直面する一人の女性の姿を、日常を通して深く洞察する人間ドラマ

「未来よ こんにちは」(原題:L'Avenir、英題:Things to Come)は、2016年公開のフランス・ドイツ合作のヒューマン・ドラマ映画です。ミア・ハンセン=ラブ監督・脚本、イザベル・ユペールら出演で、パリの高校で哲学を教える50代後半の女性教師が、突然、…

「ヒトラーの忘れもの」:地雷を処理する捕虜のドイツ少年兵と指揮するデンマーク軍の軍曹の憎悪と赦しを描く、感動的ヒューマン・ドラマ

「ヒトラーの忘れもの」(原題:Under sandet)は、2015年公開のデンマーク・ドイツ合作の歴史ドラマ映画です。史実に触発され、マーチン・サントフリートの監督・脚本、ローランド・ムーラーら出演で、ナチス・ドイツの降伏後、デンマークの地雷の撤去に駆…

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」:時の流れが止まったハバナを背景にキューバ音楽の古老たちの復活を魅力的なナンバーに乗せて描く

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(原題:Buena Vista Social Club)は、1999年公開のドイツ、アメリカ、フランス、キューバ合作の音楽ドキュメンタリー映画です。ヴィム・ヴェンダース監督が友人のライ・クーダーとともにキューバ音楽の古老(ブエナ・…

「こころに剣士を」:圧政下に身を隠す教師の葛藤とフェンシングを通して希望を取り戻す子供たちの絆を描き、反露的スタンスが新鮮な作品

「こころに剣士を」(原題:MIEKKAILIJA、英題:The Fencer)は、2015年公開のフィンランド・エストニア・ドイツ合作のヒューマン・ドラマ映画です。元フェンシング選手の実話を基に、クラウス・ハロ監督、マルト・アバンディら出演で、人々が鬱屈した生活を…

「愛、アムール」:パリのアパルトマンを舞台に、孤立しながらも不治の病に対峙する老夫婦の愛を、緻密な脚本とリアルな演技で実直に描く

「愛、アムール」(原題:Amour)は、2012年公開のオーストリア・フランス・ドイツ合作のヒューマン・ドラマ映画です。ミヒャエル・ハネケ監督・脚本、ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ、イザベル・ユペールら出演で、パリで暮らす、妻…

「パリ、恋人たちの2日間」:フランス版ウディ・アレンと評された、ジュリー・デルピー監督、脚本、主演の傑作ロマンティック・コメディ

「パリ、恋人たちの2日間」(原題:2 Days in Paris)は、2007年公開のフランス・ドイツ合作のロマンティック・コメディ映画です。女優ジュリー・デルピーが監督、脚本、主演など、一人六役を務め、アダム・ゴールドバーグ、ダニエル・ブリュール、アレクシ…

「帰ってきたヒトラー」:ドイツのタブーに挑戦、現代に蘇るヒトラーを描き、不満解決に利用しようとする社会を風刺する禁断のコメディ

「帰ってきたヒトラー」(原題:Er ist wieder da )は、2015年公開のドイツのコメディ映画です。ティムール・ヴェルメシュのベストセラー小説「帰ってきたヒットラー」を原作に、デヴィット・ヴェント監督・脚本、オリヴァー・マスッチ、実在の政治家や有名…

「裸足の季節」:黒海沿岸に住む5人姉妹の思春期の喜びと憂い、秘めた力と性差別への抵抗を美しい映像で描いた、女性監督ならではの作品

「裸足の季節」(原題:Mustang)は、2015年公開のトルコ・フランス・ドイツ合作のドラマ映画です。デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督・共同脚本、ギュネシ・シェンソイらの出演で、トルコの小さな村に舞台に、古い慣習と封建的思想のもと一切の外出を禁じ…

「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」:犬を愛する少女と反乱を起こす犬たちをリアルかつスリングに描き、弱者の疎外を問う現代の寓話

「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」(原題:Fehér isten、英題:White God)は、2014年公開のハンガリー・ドイツ・スウェーデン合作のサスペンス&ドラマ映画です。雑種犬に重税が課せられる法律により飼い主の少女と離ればなれになった犬が、保護施設に…

「あの日のように抱きしめて」:ナチスドイツが残した傷を背景にパワフルな演出演技で描かれた、メロウでスリリングなサスペンス・ドラマ

「あの日のように抱きしめて」(原題:Phoenix)は、2014年公開のドイツのサスペンス&ドラマ映画です。1961年に発表されたフランスの小説家ユベール・モンテイエの「Le Retour des Cendres」(英題:The Return from the Ashes、邦題:帰らざる肉体)をモチ…

「ヴィクトリア」:全編1カットの長回しで撮られた、臨場感、緊迫感溢れるスリリングなリアルタイム・サスペンス&ドラマ映画

「ヴィクトリア」(原題:Victoria)は2015年公開のドイツのサスペンス&ドラマ映画です。セバスチャン・スキッパー監督、ライア・コスタ、フレデリク・ラウら出演で、ベルリンの街角で出会ったヒロインと4人の若者の身に起きる出来事を、即興によるセリフや…

「独裁者と小さな孫」:民主化が常に正しいわけではない、悪しき革命は悪しき独裁者による政治となんら変わらない

「独裁者と小さな孫」(原題:The President)は、2014年公開のジョージア・イギリス・フランス・ドイツの合作の映画です。モフセン・マフマルバフ監督、ミシャ・ゴミアシュヴィリら出演で、クーデターにより幼い孫と共に逃亡を余儀なくされた老独裁者が、行…

「アクトレス~女たちの舞台~」:世代交代に直面、過ぎ行く時間と対峙するスター女優の葛藤を、現実と劇中劇の間でスリリングに描く

「アクトレス~女たちの舞台~」(原題:Sils Maria)は2014年公開のフランス・スイス・ドイツ合作のヒューマン・ドラマ映画です。監督・脚本オリヴィエ・アサイヤス、ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツら出演…

「レバノン」:イスラエル軍の戦車に乗り組んだ実戦経験のない若い兵士たちが直面する最前線を、徹底した個人の視点で有無を言わさず描く

「レバノン」(原題: לבנון, 英仏題: Lebanon, 独題: Levanon)は、2010年公開のイスラエル、フランス、ドイツ合作の戦争ドラマ映画です。サミュエル・マオズ監督・脚本で、マオズ自身も兵士として参加した1982年のレバノン戦争を舞台に、戦車兵の若いイスラ…

「少女は自転車にのって」:イスラム諸国でも最も女性に厳しいサウジアラビアを舞台に、前向きな少女と母親の日常を温かい眼差しで描く

「少女は自転車にのって」(原題: وجدة、英題:Wadjda)は、2012年公開のサウジアラビアのドラマ映画です。ハイファ・アル=マンスール監督・脚本、ワアド・ムハンマド、リーム・アブドゥラらの出演で、女性のひとり歩きや車の運転を禁じるサウジアラビアを…

「裏切りのサーカス」:冷戦時代のMI6を舞台に、幹部の内通者を調査するストイックな老スパイと情の絡みを、密度の高いプロットで描く

「裏切りのサーカス」(原題: Tinker Tailor Soldier Spy)は、2011年のイギリス・フランス・ドイツ合作のスパイ映画です。元英国諜報員でスパイ小説の大家として知られるジョン・ル・カレの1974年の小説「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」を原作…

「誰よりも狙われた男」:元英諜報部員の小説を原作に、対テロ諜報戦をリアルに描くフィリップ・シーモア・ホフマン最後の主演作

「誰よりも狙われた男」(原題:A Most Wanted Man)は、2014年公開のイギリス・アメリカ・ドイツ合作のサスペンス映画です。ジョン・ル・カレによる同名小説を原作に、アントン・コルベイン監督、アンドリュー・ボーヴェル脚本、フィリップ・シーモア・ホフ…

「ターナー、光に愛を求めて」:イギリスの著名な画家の後半生を、史実に基づき、ヴィヴィッドに描いた伝記映画

「ターナー、光に愛を求めて」(原題:Mr. Turner)は2014年公開のイギリス・ドイツ・フランス合作のの伝記映画です。マイク・リー監督、ティモシー・スポール主演で、18世紀の末から19世紀にかけて活躍したイギリスのロマン主義の画家、ジョゼフ・マロード…

「誰でもない女」:ナチスの人口増加計画の元に生まれた女性の悲劇を描いたサスペンス・ドラマ

「誰でもない女」は2012年公開のドイツのサスペンス&ドラマ映画です。史実とハンネロール・ヒッペの小説「Eiszeiten」をベースに、ゲオルグ・マース監督・共同脚本、ユリアーネ・ケーラー、リヴ・ウルマンらの出演で、第二次世界大戦時に企てられたナチスの…

「スモーク」:ブルックリンの煙草屋に集う三人の男達のヒューマン・ドラマをユーモラスに描いた群像劇

「スモーク」(原題:Smoke)は、1995年公開のアメリカ、日本、ドイツ合作の映画です。現代アメリカ文学を代表する小説家の一人、ポール・オースターが書き下ろした短編「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」を原作に、ウェイン・ワン監督、ポール・オ…

「ル・アーヴルの靴みがき」:フランスの港町に密航したきた少年と庶民の善意を、ユーモアを交えて、優しくノスタルジックに描く

「ル・アーヴルの靴みがき」(原題:Le Havre )は、2011年公開のヒューマン・ドラマ/コメディ映画です。アキ・カウリスマキ監督・脚本により、フランスの港町のル・アーヴルで靴磨きをする男を中心に、密航したきた移民の少年と、庶民の人情と善意がたぐり…

「グランド・ブダペスト・ホテル」:富裕層向け老舗ホテルのコンシェルジュの哲学と色香を、コミカルにヴィヴィッドに描く

「グランド・ブダペスト・ホテル」(原題: The Grand Budapest Hotel)は、2014年公開のドイツ・イギリス合作のコメディ&ドラマ映画です。ウェス・アンダーソン監督、レイフ・ファインズ主演で、仮想の国ズブロフカを舞台に、ホテルのコンシェルジュとベル…

「東ベルリンから来た女」:医師としての責務か西ドイツでの新生活か、葛藤する女医を演ずるニーナ・ホスが美しい

「東ベルリンから来た女」(原題:Barbara)は、2012年公開のドイツのドラマ映画です。クリスティアン・ペッツォルト監督、ニーナ・ホス主演で、80年代の東ドイツを舞台に国外脱出を計画する女性医師の葛藤を描いています。第62回ベルリン国際映画祭で上映さ…

「さよなら、アドルフ」:ナチス高官の14歳の娘の凄惨な逃避行を生々しく描いた異色作

「さよなら、アドルフ」(原題:Lore)は、2012年公開のオーストラリア、ドイツ、イギリス合作のドラマ映画です。レイチェル・シーファーの小説「暗闇のなかで」の中の「ローレ」を原作に、ケイト・ショートランド監督、サスキア・ローゼンダールら出演で、…

「おとなのけんか」:オスカーの強者4人による緊迫のリアルタイム室内劇

「おとなのけんか」(原題: Carnage)は、2011年公開のフランス・ドイツ・ポーランド・スペイン合作のコメディ映画です。皮肉で知的なブラックユーモアで国際的に高い評価を得ている劇作家ヤスミナ・レザによる戯曲「大人は、かく戦えり」(原題:Le Dieu du…