「ル・アーヴルの靴みがき」(原題:Le Havre )は、2011年公開のヒューマン・ドラマ/コメディ映画です。アキ・カウリスマキ監督・脚本により、フランスの港町のル・アーヴルで靴磨きをする男を中心に、密航したきた移民の少年と、庶民の人情と善意がたぐり寄せる奇跡を、優しく、ユーモアを交えて描いています。第64回カンヌ国際映画祭のでFIPRESCI賞を獲得、第84回アカデミー賞の外国語映画賞にフィンランド代表作品として出品された作品です。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:アキ・カウリスマキ
脚本:アキ・カウリスマキ
出演:アンドレ・ウィルム(マルセル・マルクス)
カティ・オウティネン(アルレッティ)
ジャン=ピエール・ダルッサン(モネ警視)
ブロンダン・ミゲル(イドリッサ)
エリナ・サロ(クレール)
イヴリーヌ・ディディ(イヴェット)
クォック=デュン・グエン(チャング)
フランソワ・モニエ(ジャン=ピエール)
ロベルト・ピアッツァ(リトル・ボブ)
ピエール・エテックス(ベッカー医師)
ジャン=ピエール・レオ(密告者)
ほか
あらすじ
北フランス、ノルマンディー地方の港町ル・アーヴル。ここに暮らすマルセル(アンドレ・ウィルム)は、ベトナム移民のチャング(クォック=デュン・グエン)とともに靴磨きに精を出し、夕暮にはわずかな売り上げを持ち帰り、妻のアルレッティ(カティ・オウティネン)と愛犬ライカに迎えてもらうのを楽しみにしていました。決して豊かではありませんが、毎晩、食前酒を呑みにも行ける生活にマルセルは幸せを感じていました。ずっと苦労をかけてきた妻は、マルセルにしてみれば勿体ないくらいの女房でしたが、アルレッティは自分が病に侵されつつあることを実感しはじめていました。
ある日、港にアフリカのガボンからの不法難民が乗ったコンテナが辿り着き、警察の検挙をすり抜けた密航者の少年イドリッサ(フロンダン・ミゲル)が、マルクスと出会います。見捨てられないと考えたマルセルは、街の友人達とともに密航者を庇います。ドリッサの母親がいるロンドンに送り出してやるため、密航費を工面しようとマルセルは奮闘しますが、時を同じくして、妻アルレッティは体調の不調をうったえ入院、医師から不治の病を宣告されます・・・。
レビュー・解説
2011年の公開ですが、セットやライティングなど、昔の映画を彷彿とさせます。いたずらに飾り立てる事のないセリフや演技は、ゆったりとした間合いに相まって、ノスタルジックな気分にさせます。小津安二郎監督を敬愛、影響を受けているアキ・カウリスマキ監督ですが、ユーモアを交えた庶民の人情や善意ををこのようなスタイルで描くのは、理由がありそうです。
この映画は失われたヨーロッパについて言及している。移民問題はとても深刻で、僕には解決策など答えられない。残念ながら解決するには遅すぎると言ってもいい。かといってこのままにするわけにもいかず、政治家が何とかしなければならないが、彼らは残念ながら本気で興味を持っているようには思えないね。でも自分がシニカルで懐疑的になればなるほど、作る映画はソフトになっていく。かつてのよき時代に対するノスタルジーを感じるし、自分の映画のキャラクターを愛さずにはいられない。だから彼らに不幸な思いをさせることは忍びないんだ。(中略)人間、もし笑うのをやめたら死人と同様だろう。ユーモアは僕を正常に保ってくれる唯一の要素だ。ユーモアがなかったら悲しみに染まってしまうし、悲しみは健康に良くない。(アキ・カウリスマキ監督)
また、アキ・カウリスマキ監督はフランス語を話しませんが、演出について彼は次のように語っています。
いつものようにカメラを設置してただ回しただけさ。僕はリハーサルなどしたことはない。自分がつねにアンテナを張りめぐらせておけば、どんな言語でもうまくいっているかどうかが自然に感じられるものだ。(中略)僕が必要なのは彼らの視線。視線こそ、人間同士の基本的なコミュニケーションだから。(アキ・カウリスマキ監督)
確かに、少年役のブロンダン・ミゲルまで、みなさん眼の表情がとてもいいですし、主役のアンドレ・ウィルムをはじめどの俳優もアキ・カウリスマキ監督のスタイルをのびのびと演じているように見受けられます。
マルクス夫妻を演じるアンドレ・ウィルム(左)とカティ・オウティネン(右)
密航してきた移民の少年イドリッサを演じるブロンダン・ミゲル
モネ警視を演じるジャン=ピエール・ダルッサン
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