夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

2019-01-01から1年間の記事一覧

「ローン・サバイバー」:米海軍特殊部隊史上最悪の悲劇と言われたレッド・ウィング作戦を描いたリアルでスリリングな実録戦争アクション

「ローン・サバイバー」(原題:Lone Survivor)は、2013年公開のアメリカの戦争アクション&ドラマ映画です。アメリカの精鋭特殊部隊ネイビー・シールズ創設以来最大の悲劇と言われるレッド・ウィング作戦に参加した、元隊員のマーカス・ラトレルの手記「ア…

【閑話休題】#MeToo運動のインパクトとビジネスマンがとるべき規範

レイプ被害に関して刑事不起訴となった伊藤詩織さんが、民事訴訟を通して自らの体験・経緯を明らかにし、広く社会での議論を喚起、性犯罪を取り巻く法的・社会的状況の改善を促すだろうと高く評価されています。日本では低調とされていた#MeToo運動ですが、…

「ファースト・マン」:娘の喪失に苦しみながらも人類で初めて月面に立った実在の宇宙飛行士をパーソナルな視点から描いた劇的な伝記映画

「ファースト・マン」(原題: First Man)は、2018年公開のアメリカの伝記ドラマ映画です。ジェームズ・R・ハンセンによるニール・アームストロングの伝記「ファーストマン:ニール・アームストロングの人生」を原作に、デイミアン・チャゼル監督、ジョシュ…

「ホイットニー〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜」:圧倒的な歌唱力で頂点を極めるも無念の死を遂げた大歌手に迫る充実のドキュメンタリー

「ホイットニー 〜オールウェイズ・ラヴ・ユー〜」(原題:Whitney)は、2018年公開のイギリス・アメリカ合作のドキュメンタリー映画です。圧倒的な歌唱力で音楽シーンをリードし、スーパーボールでアメリカ国歌斉唱の歴史を変え、映画「ボディガード」の主…

「ブラック・クランズマン」:70年代を舞台に現代に通じる人種差別をテンポ良く描き出した、上質かつ強烈な実話的クライム・サスペンス

「ブラック・クランズマン」(原題:BlacKkKlansman)は、2018年公開のアメリカの伝記&クライム・サスペンス映画です。ロン・ストールワースの回顧録「ブラック・クランズマン」を原作に、スパイク・リー監督、デンゼル・ワシントンの長男ジョン・デヴィッ…

「迫り来る嵐」:劇的な経済成長を遂げた中国の変遷を背景に、高い映像クォリティで描かれた、中国では珍しい社会派クライム・サスペンス

「迫り来る嵐」(原題:暴雪将至、英題:The Looming Storm)は、2017年公開の中国の社会派クライム・サスペンス映画です。本作で長編デビューを果たしたドン・ユエ監督・脚本、ドアン・イーホン(段奕宏)、ジャン・イーイェン(江一燕)ら出演で、1990年代…

「ジュリアン」:DVの本質である怒りの暴走をスリリングに描き、配偶者のみならず子供にも与える心の傷を強く訴えるサスペンス&ドラマ

「ジュリアン」(原題:Jusqu'à la garde)は、2017年公開のフランスのサスペンス&ドラマ映画です。 グザヴィエ・ルグラン監督、トマ・ジオリア、ドゥニ・メノーシェら出演で、11歳の息子の親権を妻と争う夫が、息子と面会する度に妻の電話番号や住所を聞き…

「ある女流作家の罪と罰」:著名人の手紙を捏造した実在の作家をメリッサ・マッカーシーが好演、巧みに共感を誘う伝記ドラマ&コメディ

「ある女流作家の罪と罰」(原題:Can You Ever Forgive Me?)は、2018年公開のアメリカの伝記ドラマ&コメディ映画です。伝記作家のリー・イスラエルが2008年に発表した自伝「Can You Ever Forgive Me? 」を原作に、マリエル・ヘラーが監督、メリッサ・マッ…

「バーニング 劇場版」:村上春樹の短編を日常の不条理で多層化し、さらに差別への怒りで駆り立てた、見ごたえのあるミステリー&ドラマ

「バーニング 劇場版」(原題:버닝)は、2018年公開の韓国のミステリー&ドラマ映画です。村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を原作に、ユ・アイン、スティーヴン・ユァン、チョン・ジョンソら出演で、幼なじみとの再会を機に奇妙な出来事に巻き込まれていく…

「バジュランギおじさんと、小さな迷子」:政治色の濃い宗教・印パ対立を背景に、人間愛を描く巧みな脚本で大ヒットしたインド産コメディ

「バジュランギおじさんと、小さな迷子」(原題:Bajrangi Bhaijaan)は、2015年に公開されたインドのドラマ映画です。カビール・カーン監督、K.V.ヴィジャエーンドラ・プラサード脚本、サルマン・カーン、ハルシャーリー・マルホートラ、ナワーズッディーン…

「アベンジャーズ/エンドゲーム」:強敵に行き詰まるヒーロー集団とオールスターの大団円、マーベルの叙事詩的英雄談シリーズの集大成

「アベンジャーズ/エンドゲーム」(原題:Avengers: Endgame)は、2019年公開のアメリカのスーパーヒーロー映画です。アメリカン・コミックのマーベル・コミック「アベンジャーズ」の実写映画化作品で、「アベンジャーズ」(2012年)、「アベンジャーズ/エイ…

「ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択」:モンタナの片田舎で真摯に生きる平凡な女性たちの姿をリアルに描いた、見ごたえのある群像劇

「ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択」(原題:Certain Women)は2016年公開のアメリカの群像劇ドラマ映画です。メイリー・メロイの短編小説集「Both Ways is the Only Way I Want It」、「Half in Love」を原作に、ケリー・ライヒャルト監督・脚本、ロー…

「しあわせな人生の選択」:良質の脚本と演技、悲しさとおかしさの均衡、忍耐強く演出された末期がんの男と旧友の慎ましやかな友情の物語

「しあわせな人生の選択」(原題:Truman)は、2015年公開のスペイン・アルゼンチン合作のコメディ&ドラマ映画です。セスク・ゲイ監督・脚本、リカルド・ダリン、ハビエル・カマラら出演で、末期がんに侵され余命短いスペイン男性をカナダの旧友が訪ね、男…

【閑話休題】家族を描いた邦画:「万引き家族」と「未来のミライ」

たまたま、家族を描いた邦画を二本、続けて見ました。是枝裕和監督のドラマ映画「万引き家族」(2018年)と細田守監督のアニメ映画「未来のミライ」(2018年)です。 家族を描いた邦画 目次 「万引き家族」(2018年) 「未来のミライ」(2018年) どちらの監…

「アリー/スター誕生」:レディー・ガガとブラッドリー・クーパーがコラボ、旧作名画を大きなインパクトと商業的成功で現代に蘇らせた傑作

「アリー/スター誕生」(原題:A Star Is Born)は、2018年公開のアメリカの音楽&恋愛ドラマ映画です。「 スター誕生」(1937年)の4度目のリメイクで、ブラッドリー・クーパー監督・主演、レディー・ガガ主演で、歌手を夢見るヒロインが国民的人気を誇るミ…

【閑話休題】消えたデータの復旧費用

二、三日前、データを読み出そうとを覗いたところ、外付けHDDのデータが空っぽなことに気づきました。1TBほどのデータが入っていたので、一瞬、私の頭の中も空っぽになりました。以前、SDカードから誤って必要な写真を一枚削除してしまった時にウィンドウズ…

【閑話休題】中露機の韓国防空識別圏侵入が意味すること

先日、投稿した拙稿【閑話休題】韓国の本音、韓国政府の交渉術、恨、日本が考えたいこと - 夢は洋画をかけ廻るを、knori さんにご紹介いただきました。 knori.hatenadiary.jp どうも、ありがとうございますm(_ _)m。 さて、その私の拙稿で、 米中の防衛ライ…

【閑話休題】韓国の本音、韓国政府の交渉術、恨、日本が考えたいこと

いろいろな国や文化について知りたいというのが洋画を観る理由のひとつですが、韓国については韓流ドラマのファンというわけでもなく、韓国映画をたまに見る程度です。済州島とソウルを一度ずつ訪問したことがあるものの、韓国通にはほど遠く、 何故、韓国政…

「女王陛下のお気に入り」:史実に触発され、実在した女性三人のキャラクターを大胆開発、宮廷を舞台に人間の本質を描くダーク・コメディ

「女王陛下のお気に入り」(原題:The Favourite)は、2018年公開のアイルランド・アメリカ・イギリス合作の宮廷コメディ映画です。ヨルゴス・ランティモス監督、オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズら出演で、18世紀初頭のイングラ…

「クレアのカメラ」:キム・ミニ、イザベル・ユペールを迎え、映画の即興詩人ホン・サンス監督がカンヌを舞台に繰り広げる、大人の童話劇

「クレアのカメラ」(原題:클레어의 카메라、英題:Claire's Camera)は、2017年公開の韓国のドラマ映画です。ホン・サンス監督・脚本、イザベル・ユペール、キム・ミニら出演で、女癖の悪い映画監督、監督と男女の関係にある映画会社の女社長、監督と火遊…

「夜の浜辺でひとり」:監督自身の不倫に触発され、ドイツと韓国を舞台に報われぬ不倫の恋に悩みキャリアから遁走する女優を叙情的に描く

「夜の浜辺でひとり」( 原題:밤의 해변에서 혼자、英題:On the Beach at Night Alone)は、2017年公開の韓国のドラマ映画です。ホン・サンス監督のミューズであり、プライベートで不倫関係にある女優キム・ミニとのコラボ作品で、不倫スキャンダルで異国…

「悲しみに、こんにちは」:両親を亡くした都会っ娘が田舎の叔父夫婦、年下の従姉妹と過ごすカタルーニャの夏を描いた自伝的人間ドラマ

「悲しみに、こんにちは」(原題:Estiu 1993、英題:Summer 1993)は、2017年公開のスペインのドラマ映画です。監督自身の幼少期の体験に基づき、カルラ・シモン監督・脚本、ライア・アルティガス、パウラ・ロブレスら出演で、病気で両親を亡くしたバルセロ…

「正しい日 間違えた日」:男女の出会いを二通りの展開で描き、認識と行動、人間関係の無限の可能性を示唆する異色のラブストーリー

「正しい日 間違えた日」(原題:지금은맞고그때는틀리다、英題:Right Now, Wrong Then)は、2015年公開の韓国のドラマ映画です。ホン・サンス監督、チョン・ジェヨン、キム・ミニら出演で、映画監督チュンスと女性美術家ヒジョンの運命的な出会いと二通り…

「ウインド・リバー」:強者生存の雪原を舞台に、傷心のハンターと女性FBI捜査官が先住民のレイプ被害に挑む社会派クライム・サスペンス

「ウインド・リバー」(原題:Wind River)は、2017年公開のアメリカのクライム・サスペンス映画です。テイラー・シェリダン監督・脚本、ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセンら出演で、アメリカ中西部ワイオミング州のアメリカ先住民の居留地で起きた…

次々と登場する女性監督がフランス映画ならではの繊細で美しく、叙情的、芸術的な表現を底上げする?!

目次 次々と女性監督が登場するフランス映画 フェミニズムに急進的なアメリカ、保守的なフランス 女性が支え、女性が活躍できるフランス映画 関連記事 次々と女性監督が登場するフランス映画 先日、「あさがくるまえに」に関する情報を調べているうちに、最…

「あさがくるまえに」:心臓移植を通して一つの喪失が再生に連鎖する様を美しく繊細に力強く描いた、女性監督ならではのフランスの群像劇

「あさがくるまえに」(原題:Réparer les vivants、英題:Heal the Living)は、2016年公開のフランス・ベルギー合作のヒューマン・ドラマ映画です。数々の文学賞を受賞したメイリス・ド・ケランガルのベストセラー小説「Réparer les vivants」を原作に、カ…

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」:テニス男女決戦の実話に基づき、人間模様を描きつつ女性差別を風刺するヒューマン・コメディ&ドラマ

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」(原題:Battle of the Sexes)は、2017年公開のアメリカのスポーツ系ヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。全世界のテニスファンの注目を集めた1973年の男女決戦の実話に基づき、ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファ…

「アントマン&ワスプ」:パートナー新登場、縮小技術を駆使しコミカルにMCUをリフレッシュするシリーズ第二作のアクション・コメディ

「アントマン&ワスプ」(原題:Ant-Man and the Wasp)は、2018年公開のアメリカのスーパー・ヒーロー映画です。マーベル・スタジオが製作、ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズが配給する、マーベル・コミックのアメリカン・コミック…

【閑話休題】「湯を沸かすほどの熱い愛」を洋画の目(世界の目)で見てみる

先般、テレビ放映された際に録画しておいた、中野量太監督、宮沢りえ主演の「湯を沸かすほどの熱い愛」を観ました。とても良い作品ですが、洋画の目(世界の目)から見て気づいたことが何点かありましたので、まとめてみました。 「湯を沸かすほどの熱い愛」…

「クワイエット・プレイス」:ホラー初挑戦で記録的ヒット、見えぬ恐怖と静寂が館内を包む、エミリー・ブラント主演のサスペンス・ホラー

「クワイエット・プレイス」(原題:A Quiet Place)は、2018年公開のアメリカのサスペンス・ホラー映画です。ジョン・クラシンスキー監督、エミリー・ブラントら出演で、姿の見えない地球外生命から身を潜め、物音をたてずに密かに生きる家族に迫る恐怖を描…