夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「トリコロール/白の愛」:国境や言葉を超える愛の平等について、男性を主人公に叙事的悲喜劇のスケール感で大胆かつ象徴的に描いた名作

「トリコロール/白の愛」(原題:Trois couleurs: Blanc、ポーランド語:Trzy kolory: Biały)は、1994年公開のフランス・ポーランド・スイス合作のドラマ映画です。フランス国旗の青、白、赤の三色をモチーフにした「トリコロール」三部作の2作目で、クシシ…

「リザとキツネと恋する死者たち」:不条理舞台劇をダークファンタジーに脚色、ロマンスに憧れる健気な女性を描く和風スパイスのコメディ

「リザとキツネと恋する死者たち」は、2015年公開のハンガリーのダークファンタジー&コメディ映画です。栃木県那須に伝わる「九尾の狐」伝説をモチーフに、ウッイ・メーサロシュ・カーロイ監督、モーニカ・ヴァルシャイら出演で、彼女だけに見える幽霊の昭…

ジョン・ラセター監督/制作作品〜CGの可能性にいち早く注目、スティーヴ・ジョブズと共に今日のディズニー/ピクサーアニメを実現した男

アニメはほとんど見ることがなかったのですが、ピクサー制作の「モンスターズ・インク」(2001年)で、逆光に輝くモンスターの毛並みの質感にCGアニメの極めて高い表現力を実感、以来、CGアニメを見るようになりました。もともとアニメは簡略化したものでし…

「トリコロール/青の愛」:美しく叙情的、象徴的な演出と、主演女優の卓越した演技で、愛の喪失と再生を緻密かつダイナミックに描き出す

「トリコロール/青の愛」(原題:Trois Couleurs: Bleu)は、1993年公開のフランス・ポーランド・スイス合作のドラマ映画です。フランス国旗の青、白、赤の三色をモチーフにした「トリコロール」三部作の1作目で、クシシュトフ・キェシロフスキ監督・共同脚…

「或る終焉」:常に患者の死と向き合う終末医療の看護師を描き、ティム・ロスのイメージを変えるサスペンスフルなヒューマン・ドラマ

「或る終焉」(原題:Chronic)は、2015年公開のメキシコ・フランス合作のドラマ映画です。ミシェル・フランコ監督・脚本、ティム・ロスら出演で、終末期の患者をケアする看護師の葛藤をサスペンスフルに描いています。第68回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞…

「コックと泥棒、その妻と愛人」:ビッグネームによる衣装と料理、壮大な舞台セットと芸術的演出、俳優の熱演が光る大胆でパワフルな作品

「コックと泥棒、その妻と愛人」(原題:The Cook, the Thief, His Wife & Her Lover)は、1989年公開のイギリス・フランス合作のドラマ映画です。ピーター・グリーナウェイ監督・脚本、リシャール・ボーランジェ、マイケル・ガンボン、 ヘレン・ミレンら出…

「ファインディング・ドリー」:水中の風景が美しく、ユーモラスで感動的、そしてちょっと考えさせられる、「ニモ」の素晴らしい続編

「ファインディング・ドリー」(原題:Finding Dory)は、2016年公開のアメリカのアニメーション映画です。カクレクマノミのニモと愉快な仲間たちによる冒険を描いた「ファインディング・ニモ」(2003年)の続編として、アンドリュー・スタントン/アンガス・…

「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」:殺人、流血、恐怖の都市伝説を激しい憎悪と狂気のドラマに昇華したミュージカル

「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(原題:Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street)は、2007年公開のイギリス・アメリカのミュージカル映画です。スティーヴン・ソンドハイム/ヒュー・ウィーラーが手掛けたブロードウェイの傑作…

ティム・バートン監督作品〜暗いゴシック調で幻想的、時にユーモラスに描く独特の世界観

ティム・バートンは、アメリカの監督、プロデューサー、芸術家、作家、アニメーターで、暗いゴシック調で幻想的、時にユーモラスに描く、独特のアーティスティックな世界観で知られています。 目次 作品の傾向 主な作品 関連記事 作品の傾向 ティム・バート…

変革の原動力?移民を描いた映画のランキング・ベスト10+α

欧米の映画には移民を描いたものは少なくありません。アメリカは移民の国であり、先住民を除けば基本的にアメリカ人は移民か移民の末裔ですが、最近では移民が増えつつある欧州やカナダの問題意識が特に高いようです。移民に関する映画の多くは文化的な軋轢…

「ブルックリン」:1950年代、移住先のアメリカと故郷アイルランド、そして二人の男性の間で心揺れる無垢な女性の成長を爽やかに描く

「ブルックリン」(英題: Brooklyn)は、2015年公開のアイルランド・イギリス・カナダ合作のドラマ映画です。コスタ賞を受賞したコルム・トビーンの同名小説を原作に、ジョン・クローリー監督、ニック・ホーンビィ脚本、シアーシャ・ローナンら出演で、1950…

ロバート・デ・ニーロ出演作品〜犯罪映画のシリアスな演技で名を高め、コメディもこなす名俳優

ロバート・デ・ニーロはアメリカとイタリアの国籍を持つ、アメリカの俳優、プロデューサーです。フランシス・フォード・コッポラ監督の「ゴッドファーザー PART II」(1974年)でアカデミー助演男優賞を受賞、マーティン・スコセッシ監督とは長くタッグを組…

「NARC ナーク」:過酷なドラッグの潜伏捜査を背景に、殺伐とした現実と刑事の心理をざらりと描き出すサスペンス&ドラマ

「NARC ナーク」は、2002年公開のアメリカのクライム・サスペンス映画です。ジョー・カーナハン監督、レイ・リオッタ、ジェイソン・パトリックら出演で、危険な潜入捜査に挑む麻薬捜査官のハードな世界を描いた R指定のドラマです。タイトルの「NARC」は、麻…

20世紀の名作編:進化するロマンティック・コメディのベスト20と20世紀の名作30選

本編(20世紀の名作編)では、2000年以前に公開されたロマンティック・コメディの名作を、2000年から時代を遡りながら挙げていきます。2001年以降に公開された作品については「ランキング編」をご参照ください。 ロマンティック・コメディの歴史は古く、シェ…

「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」:犬を愛する少女と反乱を起こす犬たちをリアルかつスリングに描き、弱者の疎外を問う現代の寓話

「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」(原題:Fehér isten、英題:White God)は、2014年公開のハンガリー・ドイツ・スウェーデン合作のサスペンス&ドラマ映画です。雑種犬に重税が課せられる法律により飼い主の少女と離ればなれになった犬が、保護施設に…

ランキング編:進化するロマンティック・コメディのベスト20と20世紀の名作30選

本編(ランキング編)では、2001年以降に公開されたロマンティック・コメディのトップ20をランキング形式で挙げてます。2000年以前の名作については、「20世紀の名作編」をご参照ください。(2019年4月30日最終更新) 目次 進化するロマンティック・コメディ…

「21ジャンプストリート」:かつての若者向けドラマをリメイク、時代を風刺しながら、警官バディが繰り広げる爆笑アクション・コメディ

「21ジャンプストリート」(原題:21 Jump Street)は、2012年公開のアメリカのアクション・コメディ映画です。1987年のジョニー・デップ主演による同名の人気テレビ・ドラマ・シリーズを原作に、フィル・ロード/クリストファー・ミラー共同監督、マイケル・…

「ルーム」:凄惨な監禁事件に触発されるも独創的。トラウマとファンタジー、緊張感と暖かさが入り交じる中、母子の関係を鋭く洞察する

「ルーム」(原題:Room)は、2015年公開のカナダ・アイルランド合作のドラマ映画です。フリッツル事件に触発されたエマ・ドナヒューの小説「部屋」を原作に、レニー・エイブラハムソン監督、ブリー・ラーソンら出演で、拉致され、監禁されたまま一児の母親…

マーティン・スコセッシ監督作品〜シチリア系移民の家に生まれ、マフィアの支配などイタリア系移民の文化の影響を強く受けた名作の数々

マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese、1942年生 )は、アメリカの映画監督、脚本家、映画プロデューサーです。シチリア系イタリア移民1世の父と移民2世の母の次男としてニューヨークに生まれ、マフィアの支配するリトル・イタリーの移民社会で育っちま…

「スーパーバッド 童貞ウォーズ」:実話に基づく高校生のお馬鹿コメディの下品さを友情や誠実さでバランス、粒揃いのキャストも魅力

「スーパーバッド 童貞ウォーズ」(原題:Superbad)は、2007年公開のアメリカのコメディ映画です。卒業を間近に控えた童貞の高校生3人組がパーティーに誘われたことを機に、それぞれ意中の女子生徒と初体験を目指して奮闘する姿を、下ネタ満載で描いていま…