夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

フランス映画

「グッバイ、サマー」:現実と夢の記憶を再構成、少年のファンタジックな冒険と友情をノスタルジックにほろ苦く描き出した自伝的青春映画

「グッバイ、サマー」( 原題:Microbe et Gasoil、英題:Microbe and Gasoline)は、2015年公開のフランスの自伝的青春コメディ映画です。「自らが体験したことを元に冒険したかった」というミシェル・ゴンドリーの監督・脚本、アンジュ・ダルジャン、テオ…

「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」:アイルランドの伝説を基に、妖精の母を失った少年の冒険談を美しい映像と音楽でほろ苦く描く

「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」(原題:Song of the Sea)は、2014年公開のアイルランド・ベルギー・ルクセンブルグ・デンマーク・フランス合作の長編アニメーション映画です。アイルランドに伝わる民話や神話を基に、トム・ムーア監督・原案、ウィル…

「エリックを探して」:マンチェスターを舞台に、人生どん底の中年郵便配達員がサッカーのカリスマに導かれて立ち直る姿をコミカルに描く

「エリックを探して」(原題: Looking for Eric)は、2009年公開のイギリス・フランス合作のコメディ&ドラマ映画です。元サッカー選手のエリック・カントナが企画を持ち込み、ケン・ローチ監督、ポール・ラヴァーティ脚本、エリック・カントナ製作総指揮、…

「ティエリー・トグルドーの憂鬱」:失業や冷酷な企業システムが日常にもたらす非人間的側面をリアルに描き、人間としての怒りを問う

「ティエリー・トグルドーの憂鬱」(原題: La Loi du marché、英題: The Measure of a Man)は、2015年公開のフランスのドラマ映画です。ステファヌ・ブリゼ監督・共同脚本、ヴァンサン・ランドンら出演で、勤務先をリストラされ、やっとの思いで再就職にこ…

「人生は小説よりも奇なり」:ニューヨークを舞台に、成熟したゲイ・カップルと家族、友人の世代を超えた悲喜こもごもを散文詩的に描く

「人生は小説よりも奇なり」(原題:Love is Strange)は、2014年公開のフランス・アメリカ合作のドラマ映画です。アイラ・サックス監督、ジョン・リスゴー、アルフレッド・モリーナ、マリサ・トメイら出演で、念願の同性婚を果たしたカップルの悲喜こもごも…

「クスクス粒の秘密」:チュニジア系フランス人大家族の日常と、世代を超えて受け継がれる移民のエネルギーをスリリングな展開で描く

「クスクス粒の秘密」(原題:La graine et le mulet、別題:Couscous、英題:The Secret of the Grain)は2007年公開の、フランス・チュニジア合作のドラマ映画です。アブデラティフ・ケシシュ監督・脚本、アビブ・ブファーレ、アフシア・エルジら出演で、…

「裸足の季節」:黒海沿岸に住む5人姉妹の思春期の喜びと憂い、秘めた力と性差別への抵抗を美しい映像で描いた、女性監督ならではの作品

「裸足の季節」(原題:Mustang)は、2015年公開のトルコ・フランス・ドイツ合作のドラマ映画です。デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督・共同脚本、ギュネシ・シェンソイらの出演で、トルコの小さな村に舞台に、古い慣習と封建的思想のもと一切の外出を禁じ…

「母よ、」:常に自分自身に満足できない女性監督が母の衰えに直面する姿を、コメディとペーソスを織り交ぜた絶妙なタッチで描くドラマ

「母よ、」は、2015年公開のイタリア・フランス合作のヒューマン・ドラマ映画です。ナンニ・モレッティ監督、マルゲリータ・ブイ、ジョン・タトゥーロら出演で、仕事も家族との関係もうまくいかず悶々とする一人の女性映画監督が、母の喪失に直面する姿をユ…

「トリコロール/赤の愛」:芸術的な二重構造で博愛を描き、群像劇の様に三部作を締めくくる、キェシロフスキ監督の遺作となった完結編

「トリコロール/赤の愛」(原題:Trois Couleurs: Rouge)は1994年公開のフランス・ポーランド・スイス合作のドラマ映画です。フランス国旗の青、白、赤の三色をモチーフにした「トリコロール」三部作の3作目で、クシシュトフ・キェシロフスキ監督・共同脚本…

「トリコロール/白の愛」:国境や言葉を超える愛の平等について、男性を主人公に叙事的悲喜劇のスケール感で大胆かつ象徴的に描いた名作

「トリコロール/白の愛」(原題:Trois couleurs: Blanc、ポーランド語:Trzy kolory: Biały)は、1994年公開のフランス・ポーランド・スイス合作のドラマ映画です。フランス国旗の青、白、赤の三色をモチーフにした「トリコロール」三部作の2作目で、クシシ…

「トリコロール/青の愛」:美しく叙情的、象徴的な演出と、主演女優の卓越した演技で、愛の喪失と再生を緻密かつダイナミックに描き出す

「トリコロール/青の愛」(原題:Trois Couleurs: Bleu)は、1993年公開のフランス・ポーランド・スイス合作のドラマ映画です。フランス国旗の青、白、赤の三色をモチーフにした「トリコロール」三部作の1作目で、クシシュトフ・キェシロフスキ監督・共同脚…

「或る終焉」:常に患者の死と向き合う終末医療の看護師を描き、ティム・ロスのイメージを変えるサスペンスフルなヒューマン・ドラマ

「或る終焉」(原題:Chronic)は、2015年公開のメキシコ・フランス合作のドラマ映画です。ミシェル・フランコ監督・脚本、ティム・ロスら出演で、終末期の患者をケアする看護師の葛藤をサスペンスフルに描いています。第68回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞…

「コックと泥棒、その妻と愛人」:ビッグネームによる衣装と料理、壮大な舞台セットと芸術的演出、俳優の熱演が光る大胆でパワフルな作品

「コックと泥棒、その妻と愛人」(原題:The Cook, the Thief, His Wife & Her Lover)は、1989年公開のイギリス・フランス合作のドラマ映画です。ピーター・グリーナウェイ監督・脚本、リシャール・ボーランジェ、マイケル・ガンボン、 ヘレン・ミレンら出…

「グランドフィナーレ」:豪華なキャスト、美しいロケ地、耽美的映像、大胆な構成で、イタリア映画とベテラン俳優の新たな可能性を示す

「グランドフィナーレ」(原題:Youth – La giovinezza)は、2015年公開のイタリア・フランス・イギリス・スイス合作のドラマ映画です。エリザベス女王からの依頼を断ったという有名な指揮者の実話に着想を得て、パオロ・ソレンティーノ監督・脚本、マイケル…

「ロブスター」:極端な設定と強烈な演出で不可思議かつスリリングに展開、社会と男女関係の心理を問う野心作

「ロブスター」(原題:The Lobster)は、2015年公開のギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリス合作のSF恋愛映画です。ヨルゴス・ランティモス監督、ヨルゴス・ランティモス/エフティミス・フィリップ共同脚本、コリン・ファレル、レイチェル・…

「マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり」:真面目で可笑しくて刺激的、晩婚や離婚が多い現代のロマンティック・コメディ

「マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり」(原題:Man Up)は、2015年公開のイギリス・フランス合作のロマンティック・コメディ映画です。ベン・パーマー監督、テス・モリス脚本、サイモン・ペッグ、レイク・ベルら出演で、ロンドンの街を舞台に…

「ディーパンの闘い」:内戦に敗れ、フランスに逃れたスリランカの元兵士とその偽装家族の苦難を描く、リアルで見応えのあるドラマ

「ディーパンの闘い」は2015年公開のフランスのクライム・サスペンス&ドラマ映画です。ジャック・オーディアール監督・共同脚本、アントニーターサン・ジェスターサン、カレアスワリ・スリニバサンら出演で、内戦下のスリランカを逃れ、偽装家族としてフラ…

「独裁者と小さな孫」:民主化が常に正しいわけではない、悪しき革命は悪しき独裁者による政治となんら変わらない

「独裁者と小さな孫」(原題:The President)は、2014年公開のジョージア・イギリス・フランス・ドイツの合作の映画です。モフセン・マフマルバフ監督、ミシャ・ゴミアシュヴィリら出演で、クーデターにより幼い孫と共に逃亡を余儀なくされた老独裁者が、行…

「トスカーナの贋作」:ふとしたことから夫婦を演じる男女の虚実の交錯を、イタリアの小さな街を舞台にスリリングに描くヒューマンドラマ

「トスカーナの贋作」(原題:Copie conforme)は、2010年公開のフランス、イタリア合作のドラマ映画です。イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督・脚本、ジュリエット・ビノシュら出演で、ふとしたことから夫婦を演じることになった男女の虚実交錯する恋…

「アクトレス~女たちの舞台~」:世代交代に直面、過ぎ行く時間と対峙するスター女優の葛藤を、現実と劇中劇の間でスリリングに描く

「アクトレス~女たちの舞台~」(原題:Sils Maria)は2014年公開のフランス・スイス・ドイツ合作のヒューマン・ドラマ映画です。監督・脚本オリヴィエ・アサイヤス、ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツら出演…

「レバノン」:イスラエル軍の戦車に乗り組んだ実戦経験のない若い兵士たちが直面する最前線を、徹底した個人の視点で有無を言わさず描く

「レバノン」(原題: לבנון, 英仏題: Lebanon, 独題: Levanon)は、2010年公開のイスラエル、フランス、ドイツ合作の戦争ドラマ映画です。サミュエル・マオズ監督・脚本で、マオズ自身も兵士として参加した1982年のレバノン戦争を舞台に、戦車兵の若いイスラ…

「まぼろし」:長年連れ添った夫の喪失を受け入れることができない妻をシャーロット・ランプリングが好演する、哀しくも情感溢れる作品

「まぼろし」(原題:Sous le sable)は、2000年公開のフランスのドラマ映画です。フランソワ・オゾン監督、マリー シャーロット・ランプリングら出演で、長年連れ添った夫が夏の砂浜で行方不明になった中年女性の内面に迫り、複雑で繊細な心の変遷を透明感…

「唇を閉ざせ」:8年前に惨殺された妻が生きている?ハリウッドではありえないラブストーリ仕立てのフランス流クライムサスペンス

「唇を閉ざせ」(原題:Ne le dis à personne)は2006年公開のフランスのサスペンス&ドラマ映画です。アメリカの作家ハーラン・コーベンの同名小説を原作に、殺されたはずの妻から届いたメールの謎を追う男を描いています。第32回セザール賞において、作品…

「スノーピアサー」:氷河期に生き残った人々を乗せた列車を舞台に、巧みな演出、豪華なキャスト、有無を言わせぬ脚本で描く階級闘争劇

「スノーピアサー」(英題: Snowpiercer, 韓国語題: 설국열차)は、2013年の韓国・アメリカ・フランス合作のSFアクション映画です。ジャック・ロブ/バンジャマン・ルグラン/ジャン=マルク・ロシェットによるグラフィックノベル「Le Transperceneige」を原作…

「ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム」:ユーモア溢れるコミカルな脚本と表情豊かなキャラクターが魅力のクレイ・アニメ

「ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム」は、2015年公開のイギリス、フランス合作のクレイ・アニメーション映画です。イギリスの人気クレイアニメ「ウォレスとグルミット」に登場したキャラクター、ひつじのショーンを主人公に、「ウォレスとグルミッ…

「パリ警視庁:未成年保護部隊」:警察官たちの果てしない戦いを、時にシリアスに、時にユーモラスに、感情豊かに描く、フランス流群像劇

「パリ警視庁:未成年保護特別部隊」(原題:Polisse)は2011年のフランスの社会派ドラマ映画です。マイウェン監督、マイウェン/エマニュエル・ベルコ共同脚本、カリン・ヴィアールらの出演で、様々な犯罪から未成年を守るパリ警視庁未成年特別保護班の警官…

「エール!」:健聴の娘に聾啞の両親と弟という酪農一家を舞台にシャンソン、性、恋、家族愛、旅立ちを描くパワルフなフレンチ・コメディ

聾啞の両親、弟に「エール!」(原題:La Famille Bélier、英題:The Bélier Family)は、2004年公開のフランスのコメディ&ドラマ映画です。エリック・ラルティゴー監督、ヴィクトリア・ベドス/スタニスラス・カレ・ド・マルベール /エリック・ラルティゴー…

「彼は秘密の女ともだち」:女装する男性と女性との関係を描く事により、現代の性のあり方を浮かび上がらせる、寓話的ヒューマン・ドラマ

「彼は秘密の女ともだち」(原題: Une nouvelle amie、英題:The New Girlfriend)は、2014年公開のフランスのドラマ映画です。ルース・レンデルの短編小説「The New Girlfriend」(おんなともだち)を原案に、フランソワ・オゾン監督・脚本、ロマン・デュリ…

「ビッグ・ピクチャー 顔のない逃亡者」:家族を描くヒューマンな序盤からサスペンスフルな後半を、ロマン・デュリスが一気に駆け抜ける

「ビッグ・ピクチャー 顔のない逃亡者」(原題:L'homme qui voulait vivre sa vie、英題:The Big Picture)は2010年公開のフランスのサスペンス&ドラマ映画です。アメリカの作家ダグラス・ケネディの1997年の小説「ビッグ・ピクチャー」を原作とし、舞台を…

「パリ20区、僕たちのクラス」:移民の多いパリ20区の中学校を舞台に、フランス語教師と生徒達の1年をヴィヴィッドに描く

「パリ20区、僕たちのクラス」(原題:Entre les murs(壁の内側))は、2008年公開のフランスのヒューマン・ドラマ映画です。フランソワ・ベゴドーが実体験に基づいて2006年に発表した小説「教室へ」を、ローラン・カンテ監督、ベゴドー自身の脚本・主演で…