夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

フランス映画

「ターナー、光に愛を求めて」:イギリスの著名な画家の後半生を、史実に基づき、ヴィヴィッドに描いた伝記映画

「ターナー、光に愛を求めて」(原題:Mr. Turner)は2014年公開のイギリス・ドイツ・フランス合作のの伝記映画です。マイク・リー監督、ティモシー・スポール主演で、18世紀の末から19世紀にかけて活躍したイギリスのロマン主義の画家、ジョゼフ・マロード…

「ディオールと私」:ディオール本社のアトリエに初めて映画カメラが入り、デザイナーとお針子がショーを完成させるまでを描く

「ディオールと私」は2015年公開のフランスのドキュメンタリー映画です。フレデリック・チェン監督が、フランスの老舗ファッション・ブランド、クリスチャン・ディオールのアーティスティック・ディレクターに就任したラフ・シモンズが、自身初となるオート…

「真夜中のピアニスト」:リアルでスタイリッシュなハードボイルド風味のヒューマン・ドラマ

「真夜中のピアニスト」(原題: De battre mon cœur s'est arrêté、英題: The Beat That My Heart Skipped)は2005年公開のフランスのヒューマン・ドラマ映画です。1978年のアメリカ映画「マッド・フィンガーズ」のリメイクで、ジャック・オーディアール脚本…

「少年と自転車」:親に捨てられ、神経がむき出しになったように傷ついた少年の痛ましさと、母のような愛でそれを癒す女性の豊かさ

「少年と自転車」(原題:Le gamin au vélo)は2011年のベルギー・フランス・イタリア合作のヒューマン・ドラマ映画です。ダルデンヌ兄弟監督、トマ・ドレ、セシル・ドゥ・フランスらの出演で、育児放棄され、神経がむき出しになった少年が、平和と慰めを得…

「君と歩く世界」:両足を失ったシャチの調教師の女性と、朴訥な労働者階級の格闘家のハードなラブ・ストーリー

「君と歩く世界」(原題:De rouille et d'os、英題:Rust and bone)は、2012年公開のフランス・ベルギー合作の映画です。クレイグ・デイヴィッドソンによる同名の短編集を原作とし、ジャック・オーディアール監督、マリオン・コティヤール、マティアス・ス…

「サンドラの週末」:鬱病から回復するも解雇、復職の為には同僚の賞与返上が必要という過酷な状況を、マリオン・コティヤールが好演

「サンドラの週末」(原題:deux jours, une nuit)は2014年のベルギー・フランス・イタリア合作の映画です。解雇の窮地に立たされ、自分の存在価値を疑いながらも同僚たちに賞与を諦めるよう説得して回り、自身の拠り所を見つけ出していくひとりの女性を、…

「ある過去の行方」:移民、離婚、不倫・・・、複雑な環境で子供達や家族との関係を緻密かつスリリングに描く

「ある過去の行方」(原題: Le passé、英題: The Past)は、2013年公開のフランスのドラマ映画です。アスガル・ファルハーディー監督・脚本、ベレニス・ベジョ、タハール・ラヒム、アリ・モサファら出演で、協議離婚のため4年ぶりに自宅へ戻った男と元妻、そ…

「リード・マイ・リップス」:粋な脚本と人物描写が光る、職場で蔑まれるOLと保護観察下のヤンチャな男のクライム・サスペンス&ドラマ

「リード・マイ・リップス」(原題:Sur mes lèvres)は、2001年公開のフランスのクライム・サスペンス&ドラマ映画です。難聴というハンディを抱えながら懸命に働くも職場で蔑まれている女性と、刑務所帰りのヤンチャな青年という、社会から疎外された二人…

「メルシィ!人生」:リストラ逃れにゲイと嘘をカミング・アウトした冴えない中年男のコメディを、フランスの実力派スターが競演

「メルシィ!人生」(原題:Le Placard)は2001年公開のフランスのコメディ映画です。フランシス・ベベール監督、ダニエル・オートゥイユ、ジェラール・ドパルデュー他、フランスの実力派スターが競演、リストラ対象となった冴えない中年男が、周囲を巻き込…

「ル・アーヴルの靴みがき」:フランスの港町に密航したきた少年と庶民の善意を、ユーモアを交えて、優しくノスタルジックに描く

「ル・アーヴルの靴みがき」(原題:Le Havre )は、2011年公開のヒューマン・ドラマ/コメディ映画です。アキ・カウリスマキ監督・脚本により、フランスの港町のル・アーヴルで靴磨きをする男を中心に、密航したきた移民の少年と、庶民の人情と善意がたぐり…

「預言者」:人種、言葉、宗教のハンディを超え、刑務所内で成り上がる19歳の若者のクライム・ストーリー

「預言者」(原題:Un prophète, 英題:A Prophet)は2009年公開のフランスの犯罪映画です。モザイクのように様々な民族や宗教が入り交じり対立する刑務所に放り込まれた無学で孤独なアラブ系フランス人青年が、過酷な世界で生き延び、這い上がっていく様を…

「ミッション:8ミニッツ」:犯人を捜す為、爆破8分前の列車の乗客の意識に入り込んだ男の試行錯誤

「ミッション:8ミニッツ」(原題: Source Code)は、2011年のアメリカ、フランス合作のSF/サスペンス&アクション映画です。爆破される8分前の列車の乗客の意識に入り込み、犯人を捜すというミッションを課せられた男が何度も同じ時を彷徨い、試行錯誤する…

「最強のふたり」:車椅子の富豪と型破りな移民の介護人、フランスの実話に基づく大ヒット・ヒューマン・コメディ

「最強のふたり」(原題: Intouchables) は、2011年公開のフランスのコメディ/ドラマ映画です。頸髄損傷の為、体が不自由で車椅子で生活する富豪と、その介護人となった貧困層の移民の黒人青年という、全く境遇の異なる2人が深い友情で結ばれていく様子を、…

「ラウンド・ミッドナイト」:老いたジャズ奏者とフランス青年の友情を描いた名作

「ラウンド・ミッドナイト」(原題:Round Midnight)は、1986年公開のアメリカ・フランス合作の音楽映画です。パリで活動していたジャズ・ピアニストのバド・パウエルと、フランス人デザイナー、フランシス・ポウドラの実話をベースにした映画で、50年代…

「グレート・ビューティー/追憶のローマ」:退廃的で儚い爛熟の美と、悠久の歴史のコントラスト

「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(原題:La grande bellezza、英題:The Great Beauty)は、2013年公開のイタリア・フランスの合作の映画です。セレブ界の狂騒に飽き飽きした初老のジャーナリストが、初恋の女性の死をきっかけにローマの街を歩きな…

「クリスマス・ストーリー」:カトリーヌ・ドヌーヴ、マチュー・アマルリックら、フランスの名優が描く家族ドラマ

「クリスマス・ストーリー」(原題:Un conte de Noël)は、2008年公開のフランスの映画です。カトリーヌ・ドヌーヴ、マチュー・アマルリックなどフランス映画界を代表する名優たちが共演、フランス北部の町ルーベを舞台に、母の病気を機にクリスマスに久し…

「アデル、ブルーは熱い色」:同性愛に目覚めた成長過程の少女を生々しく描くフランス映画の底力

「アデル、ブルーは熱い色」(原題: La vie d'Adèle – Chapitres 1 et 2、英題:Blue Is the Warmest Colour)は、2013年公開のフランスの恋愛・ドラマ映画です。ジュリー・マロによる2010年のフランスのグラフィックノベル「ブルーは熱い色」を原作として…

「みなさん、さようなら」:家族と友人達と過ごす偏屈親父の最期のひと時

「みなさん、さようなら」(原題: Les Invasions barbares、英題: The Barbarian Invasions)は、2003年公開のカナダ・フランス合作のヒューマン・ドラマ/コメディ映画です。偏屈親父が家族や友人の愛に囲まれながら「最期のひと時」を過ごす姿を、シニカル…

「おとなのけんか」:オスカーの強者4人による緊迫のリアルタイム室内劇

「おとなのけんか」(原題: Carnage)は、2011年公開のフランス・ドイツ・ポーランド・スペイン合作のコメディ映画です。皮肉で知的なブラックユーモアで国際的に高い評価を得ている劇作家ヤスミナ・レザによる戯曲「大人は、かく戦えり」(原題:Le Dieu du…

「美女と野獣」:フランス流の映像/比喩表現にレア・セドゥが命を吹き込むVFX映画

「美女と野獣」(原題: La Belle et la Bête)は、2014年公開のフランス、ドイツ合作のファンタジー/ロマンス映画です。これまでに何度も映像化されてきたフランスの古典的物語を、最新の映像技術を駆使して映画化したものです。 「美女と野獣」のDVD(Amazo…

「愛されるために、ここにいる」:タンゴとフランス映画の魅力が融合した秀作

「愛されるために、ここにいる」(原題:Je ne suis pas là pour être aimé)は、2005年公開のフランス映画です。人生に疲れた初老の男が、タンゴ教室で若い女性と出会い、互いに秘めた感情が高まっていく姿を、美しいタンゴの調べとともに繊細に描いていま…

「潜水服は蝶の夢を見る」:肉体が閉じ込められても、魂は愛とともに舞う事ができる。

「潜水服は蝶の夢を見る」(原題:Le scaphandre et le papillon、英題:The Diving Bell and the Butterfly)は、2007年公開のフランス映画です。42歳という若さで突然の病に倒れ、身体の自由を奪われたELLEの元編集長ジャン=ドミニック・ボービーが、全身…

「あなたを抱きしめる日まで」:教会で婚外子と生き別れになった老女の贖罪

「あなたを抱きしめる日まで」(原題: Philomena)は、2013年公開のイギリス・アメリカ・フランス合作のドラマ映画です。マーティン・シックススミスのノンフィクション「The Lost Child of Philomena Lee」を原作に、スティーヴン・フリアーズ監督、スティ…

「うつくしい人生」:フランス南部の農家を舞台に、家業の崩壊と再生のドラマを、絵画のように美しい映像でゆったりと描いた感動的な作品

「うつくしい人生」(原題:C'EST QUOI LA VIE?)は、1999年公開のフランスのドラマ映画です。フランソワ・デュペイロン監督、エリック・カラヴァカら出演で、家業の農業を継ぐことに不満を抱きながら毎日を無気力に生きる青年が、父の自殺をきっかけに家庭…

「Lucy/ルーシー」:リュック・ベッソン監督、SFアクションに初挑戦!

「Lucy/ルーシー」(原題:Lucy)は、2014年公開のフランスのSFアクション映画です。リュック・ベッソン監督・脚本、スカーレット・ヨハンソン、モーガン・フリーマン、チェ・ミンスクら出演で、マフィアの闇取引に巻き込まれ、体内に埋め込まれた新種の麻薬…

「フライト・ゲーム」:困った顔が最高のリーアム・ニーソン

「フライト・ゲーム」は、2014年に公開されたアメリカ・フランス合作のサスペンス&アクション映画です。ジャウマ・コレット=セラ監督、リーアム・ニーソン、ジュリアン・ムーアら出演で、ニューヨーク発ロンドン行きの飛行機に乗り込んだ航空保安官が、1億…

「スパニッシュ・アパートメント」:シェア・ハウスは成長するヨーロッパの象徴

「スパニッシュ・アパートメント」は、2002年公開のフランス・スペイン合作のロマンティック・コメディ&ドラマです。セドリック・クラピッシュ監督、ロマン・デュリス、オドレイ・トトゥ、ケリー・ライリー、ケヴィン・ビショップら出演で、バルセロナの経…

「アーティスト」:圧巻のチャールストンなど俳優の嬉々としたパフォーマンスとスタイリッシュな映像で描く、白黒サイレント映画の賛歌

「アーティスト」(原題:Artist)は、2011年公開のフランスのロマンティック・コメディ&ドラマ映画です。ミシェル・アザナヴィシウス監督・脚本、ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョら出演で、サイレントからトーキーへと転換期を迎えた1920年から3…