夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「スノーピアサー」:氷河期に生き残った人々を乗せた列車を舞台に、巧みな演出、豪華なキャスト、有無を言わせぬ脚本で描く階級闘争劇

「スノーピアサー」(英題: Snowpiercer, 韓国語題: 설국열차)は、2013年の韓国・アメリカ・フランス合作のSFアクション映画です。ジャック・ロブ/バンジャマン・ルグラン/ジャン=マルク・ロシェットによるグラフィックノベル「Le Transperceneige」を原作に、ポン・ジュノ監督、ポン・ジュノ/ケリー・マスターソン共同脚本、クリス・エヴァンスらの出演で、地球温暖化を止めるための実験が失敗し氷河期を迎えた近未来の地球を舞台に、唯一、人類が生存できる列車「スノーピアサー」の中で繰り広げられる出来事を描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ/ケリー・マスターソン
原案:ポン・ジュノ
原作:ジャック・ロブ/バンジャマン・ルグラン/ジャン=マルク・ロシェット
   「Le Transperceneige」
出演:クリス・エヴァンス(カーティス )
   ソン・ガンホ(ナムグン・ミンス
   コ・アソン(ヨナ)
   ジェイミー・ベルエドガー)
   ジョン・ハート(ギリアム)
   ティルダ・スウィントン(メイソン)
   オクタヴィア・スペンサー(ターニャ)
   エド・ハリス(ウィルフォード)
   ユエン・ブレムナー(アンドリュー )
   ルーク・パスカリーノ(グレイ)
   アリソン・ピル(小学校教師)
   スティーヴン・パーク(フユ)
   ヴラド・イヴァノフ(年上の方のフランコ
   アドナン・ハスコヴィッチ(若い方のフランコ
   クラーク・ミドルトン(画家 )
   トーマス・レマルキス(エッグ・ヘッド )
   ほか

あらすじ

地球温暖化がますます深刻になっていき、2014年7月1日、気温を最適なレベルに保つために79カ国により人工冷却物質CW-7が散布されました。しかしこれが仇となり、地球は氷河期へ突入、全ての陸地が雪と氷に覆われてしまいました。 17年後の2031年、わずかに生き残った人類は、永久機関によって動き続け、1年かけて地球を一周する列車「スノーピアサー」の中で暮らしていました。そこでは、豪華な前方車両に住む富裕層は氷河期前と変わらない暮らしが続けながら全てを支配し、無賃の最後尾車両に押し込められた貧困層は食料さえ満足に得ることができず飢えていました。そんな中、貧困階級のカーティスは自分達を苦しめる理不尽な支配に立ち向かうべく、仲間と共に反乱を企てます・・・。

レビュー・解説 

氷河期に生き残った人々を乗せて走る列車内を舞台にした階級闘争劇は、変化ある車両構成、巧みなSFX、オスカー級の俳優たち、荒っぽいが有無を言わせぬ脚本で、見る者をぐいぐいと引き込みます。

 

最初は突飛な設定と地味な演出でB級映画かと思うのですが、じわじわと盛り上がるプロットと演出に思わず引き込まれてしまいます。列車内を舞台にした二時間あまりの作品ですが、車両ごとに変化を作ったり、SFXを巧みに使った構成で、最後まで飽きさせません。フランスのグラフィックノベルを元に、せっかく生き残ったわずかの人類が狭い列車の中で階級闘争を起こすという社会の縮図が展開、果たして革命は成功するのか、人類の将来はどうなるのかと見る者をぐいぐいとを引っ張ります。

 

ポン・ジュノは、韓国生まれの映画監督、脚本家で「殺人の追憶」(2003年)や「グエムル-漢江の怪物-」(2006年)が韓国内で大ヒット、本作が初めての英語作品です。この映画を成功させているもののひとつに、豪華なキャスティングがあります。ティルダ・スウィントンオクタヴィア・スペンサーはオスカー俳優、エド・ハリスジョン・ハートはオスカー候補です。主役のクリス・エヴァンスを含め、初めての英語作品にこれだけのキャストが集まるのは異例と言って良いでしょう。

 

実は、ティルダ・スウィントンジョン・ハートポン・ジュノ監督の作品のファンで、監督も二人を尊敬していたことから、個別の話し合いが実現、一緒に作品をやろうということになったそうです。もちろん、最終的には脚本を送り、ギャラを提示、俳優は監督とその前作、制作スタッフ等を評価して正式に決まるわけですが、俳優仲間からも尊敬を集めている二人の出演が噂となり、他のキャストも集めやすくなったそうです。執筆中の脚本にティルダ・スウィントンの役がなかった為、監督は彼女の為に脚本を書き換えたそうですが、こうした豪華キャストを揃えられるのも、俳優に評価される監督の実力があればこそですね。

 

クリス・エヴァンス(カーティス )

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アメリカの俳優。高校在学中にニューヨーク・ブルックリンで行われたサマーキャンプでエージェントに出会い、高校卒業後、ニューヨークへ移り、いくつかのテレビシリーズにゲスト出演、2005年公開の「ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]」のヒューマン・トーチ役で一躍知名度を上げる。2011年には「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の主人公キャプテン・アメリカを演じている。本作では、最初、少し存在感が薄いが、後半に向けて徐々に存在感を増してくる。彼は、大作の合間にインディーズに出演しており、本作もオーディションを受けて出演が決まった。

 

ソン・ガンホ(ナムグン・ミンス

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韓国を代表する演技派俳優。慶尚専門大学放送芸能科中退、1991年演劇デビュー、1996年映画デビュー。1999年の映画「シュリ」が大ヒット、その後も「JSA」2000年、「殺人の追憶」(2004年)、「優雅な世界」(2006年)、「観相師」(2013年)などの作品に出演、数多くの映画賞を受賞している。ポン・ジュノ監督は、脚本を書く前からソン・ガンホとコ・アソンに会って、一緒にやりたいと相談していたという。二人は、西洋人たちの中にあって混じり合わないキャラクターで、英語も話さず、韓国語で通すなど、独特の存在感を放っている。

 

コ・アソン(ヨナ)

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韓国の女優。ソン・ガンホとともに、独特の存在感を醸し出している。二人は、ポン・ジュノ監督のホラー映画「グエムル-漢江の怪物-」(2006年)にも出演している。

 

ジョン・ハート(ギリアム)

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イギリスの俳優。学生時代から舞台に立ち、1962年、本格的に初舞台を踏む。1966年に「わが命つきるとも」で映画デビュー、高い演技力で注目された。「ミッドナイト・エクスプレス」(1978年)、「エレファント・マン」(1980年)でオスカーにノミネートされている。本作では、謎めいた老人として序盤に放つ存在感をが素晴らしい。

 

ティルダ・スウィントン(メイソン)

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イギリスの女優。ケンブリッジ大学政治学社会学を専攻した才女。大学卒業後、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで演劇を学び、1986年に「カラヴァッジオ」で映画デビュー、その後、数々の作品に出演し、「フィクサー」(2007年) でアカデミー助演女優賞を受賞。長身、クールな風貌と知的な演技が評価され、魔女や天使、女王、女ボスなどキーマン的な存在感ある役を演ずることが多いが、本作では牛乳瓶メガネに入れ歯などのメイクで原型をとどめないほど、変貌。本人曰く「最悪のリーダーがどんなものかという想像がすべて混ざりあった悪夢のような怪物」を演ずる。「グランド・ブダペスト・ホテル」でも老婆に「変身」しているが、「素」の状態から大きくかけ離れた状態で完璧にキャラクターを演じきる彼女のパフォーマンスは素晴らしい。(詳細は、ティルダ・スウィントン〜型破りな役に挑戦、別人のように姿を変え続ける、スタイリッシュで個性的なオスカー女優 - 夢は洋画をかけ廻る

 

オクタヴィア・スペンサー(ターニャ)

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アメリカの女優。「評決のとき」(1196年)で映画デビュー。元々はキャスティングの仕事にために雇われていたが、監督に端役でオーディションを受けないかと誘われたのがきっかけ。その後、「25年目のキス」(1999年)、「スパイダーマン」(2002年)などにクレジットされ、テレビシリーズでは「CSI:科学捜査班」、「ER緊急救命室」などにゲスト出演している。「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」(2011年)で主要人物の一人を演じ、アカデミー助演女優賞を受賞。。本作では、ティルダ・スウィントンと好対照をなす見事なパフォーマンスを見せている。

 

エド・ハリス(ウィルフォード)

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アメリカの俳優、映画監督。地元の劇場で働いた後、カルフォルニア芸術大学で演技を学ぶ。「ボーダーライン」(1980年)でチャールズ・ブロンソンと共演。「アポロ13」(1995年)でアカデミー助演男優賞、監督も務めた「ポロック 2人だけのアトリエ」(2000年)でアカデミー主演男優賞にノミネートされた。本作ではラスボス的役割で登場するが、彼以外にない形で見事に映画を締めている。

関連作品 

「スノーピアサー」の原作本(Amazon

  SNOWPIERCER VOL. 1: THE ESCAPE(英語版)

  SNOWPIERCER VOL. 2: THE EXPLORERS(英語版)

  Snowpiercer 3: Terminus(英語版)

 

ポン・ジュノ監督 x ソン・ガンホ x コ・アソンのコラボ作品Amazon

  「グエムル-漢江の怪物-」(2006年)

 

ポン・ジュノ監督 x ソン・ガンホ のコラボ作品Amazon

  「殺人の追憶」(2003年)

 

ソン・ガンホ x コ・アソンのコラボ作品Amazon

  「スノーピアサー」(2013年)

 

ソン・ガンホ出演作品のDVD(Amazon) 

  「グッド・バッド・ウィアード」(2008年)

  「渇き」(2009年)

  「密偵」(2016年)

 

コ・アソン出演作品のDVD(Amazon

  「正しい日 間違えた日」(2015年)

 

クリス・エヴァンス出演作品のDVD(Amazon

  「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010年)

  「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」(2011年)

 「アベンジャーズ」(2012年)

 「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(2014年)

 「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(2016年)

 「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」(2018年)

  「アベンジャーズ/エンド・ゲーム」(2019年)

 

ティルダ・スウィントン出演作品

dayslikemosaic.hateblo.jp

 

オクタヴィア・スペンサー出演作品のDVD(Amazon

  「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」(2011年)

  

「スマッシュド 〜ケイトのアルコールライフ〜」(2012年):Amazonビデオ

  「フルートベール駅で」(2013年)

  「ジェームス・ブラウン〜最高の魂を持つ男〜」(2014年)

    「ドリーム」(2016年)

    「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年)

  「インスタント・ファミリー  本当の家族見つけました」(2018年)

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