夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム」:ユーモア溢れるコミカルな脚本と表情豊かなキャラクターが魅力のクレイ・アニメ

ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム」は、2015年公開のイギリス、フランス合作のクレイ・アニメーション映画です。イギリスの人気クレイアニメウォレスとグルミット」に登場したキャラクター、ひつじのショーンを主人公に、「ウォレスとグルミット」の脚本を担当したマーク・バートンと、「ひつじのショーン」テレビシリーズの監督リチャード・スターザックの共同監督で、いたずらを仕掛けた為に眠ったまま都会へ運ばれた牧場主と、追いかけていった牧羊犬を捜そうと、都会へ向かうひつじたちを描いています。第88 回アカデミー賞の長編アニメーション映画部門にノミネートされた作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:マーク・バートン/リチャード・スターザック
脚本:マーク・バートン/リチャード・スターザック
出演:ショーン(ひつじたちのリーダー、賢く、冷静沈着、いたずら好き)
   スリップ(都会を彷徨う野良犬、独りで強く生きる、愛する飼い主を望んでる)
   トランパー(都会の動物収容所の捕獲人、捕獲を生きがいにする動物の敵)
   ビッツァー(牧場主に忠実な牧羊犬、動物たちを仕切る、ショーンと仲良し)
   牧場主(動物たちの飼い主、動物たちに振り回されても気づかぬお人よし)
   シャーリー(3倍ほど大きいモコモコの体のひつじ、食いしんぼう)
   ティミー(ひつじの赤ちゃん、いたずら好き、テディベアとおしゃぶりが好き)
   ティミーのママ(ティミーから目を離せない、群れを気にかける母親的存在)
   ツインズ(陽気で騒がしい双子のひつじ、冒険が好き、イタズラの先頭に立つ)
   ナッツ(変わり者のひつじ、自分だけの世界を持つ、思いがけぬ力を発揮する)
   3匹のいたずらブタ(悪さ好き、食いしん坊、牧場主には頭が上がらない)
   ほか

あらすじ

牧場で単調な毎日をのんびりと過ごすショーンと仲間たちは、ある日、自由な生活を手に入れるために、牧場主を眠らせて牧場の隅にあるトレーラーの中に移し、まるで夜になったように見せかけるというイタズラをしかけます。ところが、牧場主が中でぐっすり眠ったままトレーラーが動きだし、牧羊犬ビッツァーもまた暴走するトレーラーの後を追いかけて都会へ行ってしまいます。牧場主と牧羊犬がいなくなった牧場は大混乱、取り残されたショーンと仲間たちは、ビッツァーと牧場主を追いかけて都会へ旅に出ることにしますが・・・。

レビュー・解説

個性豊かなキャラクターが活躍する「ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム」は、クレイ・モデルが独特の温かな雰囲気を醸し出す一方で、シンプルなストーリーとユーモアに溢れたコミカルな脚本、そして表情豊かなキャラクターが見る者を魅了する楽しいストップモーション・アニです。

 

CGアニメ全盛の時代ですが、逆にクレイ・アニメの素朴な温かさが際立ちます。クレイ・アニメというと、ちょと退屈なイメージがありますが、本作に限って言えば、決してそんなことはありません。セリフのない85分の長編ですが、シンプルなストーリーと、コメディ要素をふんだんに取り入れたユーモアに溢れた脚本、そして表情豊かなキャラクターにぐいぐいと引き込まれてしまいます。また、

  • 牧場主が父親、ショーンが弟分で、家族をまとめる兄貴分が牧羊犬のビッツァーという設定は家族的である一方、
  • 会社で例えるなら牧場主がボス、牧羊犬が中間管理職、ひつじたちは下っ端の労働者という設定でもあり、

大人も子供も楽しめる内容になっているだけではなく、よく練られたキャラクターが魅力的で、手元に置いておきたくなります。

 

ストップモーション・アニメーションとは、静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしカメラで撮影し、あたかもそれ自身が連続して動いているかのように見せる映画の撮影技術、技法です。撮影する対象として、紙、切り絵、クレイ(粘土)、人形(パペット)、モデル(模型)などの素材が使われ、非人間型のキャラクターを動かす手法として長年用いられてきました。長編映画では、CGによる映像加工へと移行しつつあり、コマ撮り特有の映像効果を期待する作品以外では減少しつつあります。

 

アードマン・アニメーションズは、クレイ・アニメ「ウォレスとグルミット」や「ひつじのショーン」で有名な、イギリスのアニメーション制作スタジオです。

  • 1976年に、学生時代からアニメの制作をしていたピーター・ロードとデイビッド・スプロクストンが設立、粘土を用いてクレイ・アニメンの制作を始めた。
  • 1985年よりニック・パークがアードマンに参加、後に世界的な人気シリーズとなる「ウォレスとグルミット」の第一作「チーズ・ホリデー」を完成。
  • 1989年にはリップ・シンクシリーズ「快適な生活〜ぼくらはみんないきている〜」を制作、アカデミー賞短編アニメ賞を受賞。
  • ウォレスとグルミット」シリーズ第二作「ペンギンに気をつけろ!」(1993年)、第三作「ウォレスとグルミット、危機一髪」(1995年)がアカデミー賞短編アニメ賞を受賞。
  • ドリームワークスと共同制作を契約、2000年にはその第一弾である長編「チキンラン 」を制作、世界的なヒットとなります。
  • 2005年、第二弾となる長編「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」が制作され、第78回アカデミー賞の長編アニメ賞を受賞。
  • ドリームワークスとの提携は終了するも、2011年、長編第4弾となる「アーサー・クリスマスの大冒険」、さらに翌年、長編第5弾となる「ザ・パイレーツ! バンド・オブ・ミスフィッツ」が公開され、第85回アカデミー賞長編アニメ部門にノミネート。

アードマン・アニメーションズに遅れること10年、1986年にピクサーが設立され、その後、CGアニメが世界を席巻しましたが、手作りの温かさが溢れるアードマン・アニメーションズのクレイ・アニメには捨てがたいものがあります。

 

ショーン(左)

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ひつじたちのリーダー、賢く、冷静沈着、いたずら好き。ショーンは「ウォレスとグルミット」からスピン・オフしたキャラクターだ。本作では主人公として活躍している。

 

牧場主(左)

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ひつじたちやビッツァーの飼い主、動物たちに振り回されても気づかぬお人よし。オープ二ングに若くて活発な頃の8ミリが流れ、暖かい父親のイメージが重なる、味のあるキャラクターだ。

 

ビッツァー 

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牧場主に忠実な働き者の牧羊犬、動物たちを仕切るが実はショーンと仲良し。

 

スリップ

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都会をさまよう野良犬、ひとりで強く生きてきたが愛する飼い主を望んでいる。ストーリーに深みを与えているキャラクターだ。

無声映画の時代のチャーリー・チャップリンの映画に出てくるマッチ売りの少女のような孤独な存在として作ったキャラクターで、同時にスリップはショーンたちに町中を案内する役割もある。みんなが可愛がってくれたら『ウォレスとグルミット』からショーンが飛び出したように、スリップが主役になる可能生もあるかもしれないね(笑)。(リチャード・スターザック監督)

 

トランパー

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 都会の動物収容所の捕獲人、捕獲を生きがいにする動物の敵、女性が弱点。鏡の前で捕獲器の操作の練習をするこのシーンは、「タクシードライバー」のロバート・デニーロへのオマージュだそうだ。

動物捕獲人のトランパーは、以前アードマンで雇われていた警備員がモデルになっているんだよ。彼は威圧的で、いつも怒っているような男で、誰も彼のことが好きじゃなかった(笑)。トランパーのヒゲも彼にそっくりだし、制服を着ていることを気に入っているところも、振り返るときに体ごと向きを変えるボディーランゲージも、ちょっとヒトラー的な面も参考にしたんだよ。(リチャード・スターザック監督)

 

ティミー

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ひつじの赤ちゃん、いたずらが大好き、テディベアとおしゃぶりがお気に入り。ティミーは「ひつじのショーン」からスピンオフ、保育園に通い、成長していく幼児向けのシリーズ「こひつじのティミー」が制作された。

 

見つめる犬

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動物収容所で、身じろぎもせず、じっとビッツァーを見つめる犬。こうしたキャラクターの存在も、映画を楽しくしている。

 

牧場主がまだ若く、ビッツァーやひつじたちが小さい頃の写真

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オープニングに若くて活発な頃の8ミリが流れるが、その時に撮った写真。牧場主のキャラクタにーに深みを与えている。

 

街に貼られた謎のポスター

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ウルヴァリン」を模したポスターと思われる。

 

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  「ジャイアント・ピーチ」(1996年)

  「チキンラン」(2000年)

  「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」(2005年)

  「ティム・バートンのコープスブライド」 (2005年)

  「A Town Called Panic」(2009年):輸入版、リージョン1,日本語なし

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  「コララインとボタンの魔女」(2009年)

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