夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」:実話の映画化をワインスタインが目利き、豪華俳優陣と劇的構成で実現された感涙必至の感動作

「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」(原題:Lion)は、2016年公開のオーストラリア・アメリカ・イギリス合作のドラマ映画です。サルー・ブライアリーのノンフィクション「25年目の『ただいま』 5歳で迷子になった僕と家族の物語」を原作に、ガース・デ…

「タンジェリン」:LAの性的マイノリティの騒々しいイヴを、ポップにユーモラスにテンポ良く描いた、切なくも心に響くコメディ&ドラマ

「タンジェリン」(原題:Tangerine)は、2015年公開のアメリカのコメディ&ドラマ映画です。ショーン・ベイカー監督、キタナ・キキ・ロドリゲス、マイヤ・テイラーラ出演で、ロサンゼルスの下町のクリスマス・イブを舞台に、厳しい環境の中で力強く生きる性…

「イット・フォローズ」:少年時代の悪夢の恐怖を広角レンズでじわりと表現、セックスで呪いが移る設定を加え話題を呼んだ新感覚ホラー 

「イット・フォローズ」(原題: It Follows)は、2014年のアメリカのホラー映画です。デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督・脚本、マイカ・モンローら出演で、人に乗り移り、死に至らしめる謎の存在「それ」から逃げのびようとするヒロインの恐怖を描いて…

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」:時の流れが止まったハバナを背景にキューバ音楽の古老たちの復活を魅力的なナンバーに乗せて描く

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(原題:Buena Vista Social Club)は、1999年公開のドイツ、アメリカ、フランス、キューバ合作の音楽ドキュメンタリー映画です。ヴィム・ヴェンダース監督が友人のライ・クーダーとともにキューバ音楽の古老(ブエナ・…

閑話休題:映画は一粒で二度美味しい(または映画記事の裏事情)

ソトさんの記事「映画レビューの書き方。」 sotoblog.hatenablog.com に倣って、当ブログの舞台裏を少し書いてみます。 目次 映画は一粒で二度美味しい 広がる楽しみ(或いは記事の書き方) 限られた時間で映画を見る為の裏技 新作のレビューを早くお読みに…

「ラビング 愛という名前のふたり」:公民権運動の象徴的夫婦の実像を通して異人種カップルの自然さを強く感じさせる瑞々しい伝記ドラマ

「ラビング 愛という名前のふたり」(原題:Loving)は、2016年公開のイギリス・アメリカ合作の伝記ドラマ映画です。異人種間の結婚を違法とした1950年代のアメリカの隔週の法律を違憲とするきっかけとなったラビング夫妻の実話を基に、ジェフ・ニコルズ監督…

「グリーンルーム」:ネオナチ集団に楽屋を包囲されたパンクバンドの恐怖を、揺るぎない構想・構成、一流俳優で描く、見応えあるスリラー

「グリーンルーム」(原題:Green Room)は、2015年公開のアメリカのバイオレンス・スリラー映画です。ジェレミー・ソルニエ監督・脚本、アントン・イェルチン、イモージェン・プーツら出演で、ネオナチ集団の巣窟でライブに出演した売れないパンクバンドが…

閑話休題:エンド・クレジットが素晴らしい映画

ナオミントさんの「ファンタスティック映画主婦」の記事、 minmin70.hatenablog.com に倣って、ここ二、三年に観た映画の中から、エンド・クレジットが素晴らしいと思った作品をピックアップしてみました。 「22 ジャンプストリート」エンド・クレジットより…

「ハッピーエンドの選び方」:親友の願いで自ら安楽死できる装置を開発した老人が巻き込まれる問題を通して、その倫理をユーモラスに描く

「ハッピーエンドの選び方」(原題:מיתה טובה、英題:The Farewell Party)は、2014年公開のイスラエルのヒューマン・コメディ映画です。シャロン・マイモン/タル・グラニット共同監督・共同脚本、ゼーブ・リバシュ、レバーナ・フィンケルシュタインら出演…

「ムーンライト」:貧困とドラッグに塗れる美しいマイアミの黒人社会を舞台にゲイの繊細な心情と成長を瑞々しく描く、稀有で画期的な作品

「ムーンライト」(原題:Moonlight)は、2016年公開のアメリカのヒューマン・ドラマ映画です。タレル・アルヴィン・マクレイニーによる「In Moonlight Black Boys Look Blu」 を原案に、バリー・ジェンキンス監督、マクレイニーとジェンキンスの共同脚本、…

「こころに剣士を」:圧政下に身を隠す教師の葛藤とフェンシングを通して希望を取り戻す子供たちの絆を描き、反露的スタンスが新鮮な作品

「こころに剣士を」(原題:MIEKKAILIJA、英題:The Fencer)は、2015年公開のフィンランド・エストニア・ドイツ合作のヒューマン・ドラマ映画です。元フェンシング選手の実話を基に、クラウス・ハロ監督、マルト・アバンディら出演で、人々が鬱屈した生活を…

「ブルーに生まれついて」:チェット・ベイカーの不遇の時期に光をあて、ジャズ精神と人間性を印象的に描き出す、美しく奥行きのある作品

「ブルーに生まれついて」(原題:Born to Be Blue)は、2015年のカナダ・イギリス合作の伝記ドラマ映画です。ロバート・バドロー監督・脚本、イーサン・ホークら出演で、1950年代に興隆したウエストコースト・ジャズシーンで一世を風靡したトランペッター、…

「レゴバットマン ザ・ムービー」:親しみやすく、夢のあるキャラにダークナイト三部作の世界観を反映、大人も子供も楽しめるCGアニメ

「レゴバットマン ザ・ムービー」(原題:The Lego Batman Movie)は、2017年公開のアメリカ・デンマーク合作のCGアニメによるスーパーヒーロー・SFアクション&アドベンチャー・コメディ映画です。レゴブロックと、DCコミックスによるアメリカン・コミック…

「ナイスガイズ!」:1970年代のロスを舞台にオスカー級俳優が絶妙の呼吸でバディを演じ、脚本と演技の魅力が全開のノワール・コメディ

「ナイスガイズ!」(原題:The Nice Guys)は、2016年公開のアメリカのノワール・アクション・コメディ映画です。シェーン・ブラック監督、ラッセル・クロウ、ライアン・ゴズリングら出演で、1970年代のロス・アンジェルスを舞台に、二人が演じる凸凹コンビ…

「海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島〜」:アフリカや中東からの移民が目指すランペドゥーザ島の住民に密着したドキュメンタリー

「海は燃えている〜イタリア最南端の小さな島〜」(原題:Fuocoammare)は、2016年公開のイタリアのドキュメンタリー映画です。ジャンフランコ・ロッシ監督で、イタリア最南端に位置するランペドゥーサ島を舞台に、島民の日常や過酷な旅を経て島にたどり着い…

「わたしは、ダニエル・ブレイク」:高齢の失業者が直面する苦難を通して、資本主義下の管理社会における人間性の欠如をリアルに訴える

「わたしは、ダニエル・ブレイク」(原題:I, Daniel Blake)は、2016年公開のイギリス・フランス・ベルギー合作の社会派ドラマ映画です。ケン・ローチ監督、ポール・ラヴァーティ脚本、デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズで出演で、心臓病により…

「エターナル・サンシャイン」:知的でユニークな脚本と擬人化された内面世界の魅力的な演出に、切なくも興味深い恋愛の現実が心に響く

「エターナル・サンシャイン」(原題:Eternal Sunshine of the Spotless Mind)は、2004年公開のアメリカのロマンティック・コメディ&ドラマ映画です。チャーリー・カウフマン脚本、ミシェル・ゴンドリー監督、ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレットら出…

「お嬢さん」:抑圧された女性の闘いがドラマ性を醸し出す、ひねりの効いた豪華で美しく重厚感のあるエロティック・クライム・サスペンス

「お嬢さん」(原題:아가씨 、英題:Handmaiden)は、2016年公開の韓国のエロティック・クライム・サスペンス映画です。イギリスの作家サラ・ウォーターズの歴史犯罪小説「荊の城」を原作に、パク・チャヌク監督、キム・ミニ、キム・テリ、ハ・ジョンウ、チ…

「スウィート17モンスター」:少女の一大事を等身大に描くリアルな脚本と、ヘイリー・スタインフェルドの演技が光る、高品質のコメディ

「スウィート17モンスター」(原題:The Edge of Seventeen)は、2016年公開のアメリカのヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。ケリー・フレモン・クレイグ監督・脚本、ヘイリー・スタインフェルド、ウディ・ハレルソン、キーラ・セジウィック、ブレイク・…

「ギリシャに消えた嘘」:アテネ、クレタ島、イスタンブールと異国情緒溢れる舞台に個性派俳優が際立つ、ハイスミス原作のサスペンス映画

「ギリシャに消えた嘘」(原題:The Two Faces of January)は、2014年公開のアメリカ・イギリス・フランス合作のサスペンス映画です。パトリシア・ハイスミスの「殺意の迷宮」を原作に、ホセイン・アミニ監督・脚本、ヴィゴ・モーテンセン、キルスティン・…

「ラ・ラ・ランド」:ハリウッドでの夢と成功と切ない恋を溢れる思い、確かな演出、力強い演技で描く現代的で瑞々しいミュージカル映画

「ラ・ラ・ランド」(原題: La La Land)は、2016年公開のアメリカのミュージカル映画です。デミアン・チャゼル監督・脚本、ライアン・ゴズリング、エマ・ストーンら出演で、ロス・アンジェルスを舞台にジャズ・バーのオーナーを夢見る男と、女優を夢見る女…

「愛、アムール」:パリのアパルトマンを舞台に、孤立しながらも不治の病に対峙する老夫婦の愛を、緻密な脚本とリアルな演技で実直に描く

「愛、アムール」(原題:Amour)は、2012年公開のオーストリア・フランス・ドイツ合作のヒューマン・ドラマ映画です。ミヒャエル・ハネケ監督・脚本、ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ、イザベル・ユペールら出演で、パリで暮らす、妻…

「哭声/コクソン」:シャーマニズムを題材に人間を描くナ・ホンジンの演出、青龍映画賞受賞の國村準の演技が光るサスペンス&スリラー

「哭声/コクソン」(原題:곡성(哭聲)、英題:The Wailing)は2016年公開の韓国のサスペンス・スリラー映画です。ナ・ホンジン監督・脚本、クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼ら出演で、平和な田舎の村を舞台に、シャーマニズム、そしてキリス…

「衛星映画劇場」と断捨離

主にテレビで放送された映画を録画したDVDが500本くらいあります。アナログ放送時代からのもので、デジタル化以降もブルーレイではなくて、DVDに録画しています。書籍で言えば文庫本の感覚です。録画したものはほとんど観ていますが、また観ることこともあろ…

「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」:80年代のインディーズ・ブームの原動力となったフランズ・アフマンの軌跡を追うドキュメンタリー

「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」は、2014年公開のオランダのドキュメンタリー映画です。新興の映画会社向けに新たな資金調達システムを編み出し、900本もの作品の製作をサポートしたオランダの銀行家フランズ・アフマンの娘、ローゼマイン・アフマンの監…

ランキング編:人生の機微を教えてくれる?老人を描いた映画のベスト20+α

本編(ランキング編)では、2001年以降に公開された老人を描いた映画の中から、トップ20をランキング形式で挙げてます。20世紀の名作編は未投稿です。 老人を描いた映画を観る人は限られ、興行収入も限られます。制作者も敬遠しがちかと思いきや、意外に名作…

「その名にちなんで」:移民一世と二世のインドとアメリカを繊細な内面描写で描き、肯定的で成熟度の高い、穏やかで美しい家族ドラマ

その名にちなんで」(原題:The Namesake)は、2006年公開のインド・アメリカ合作のドラマ映画です。新人作家として極めて異例なピューリッツァー賞を受賞したインド系米国人女性作家ジュンパ・ラヒリがインドから米国に移民した家族を描いた2003年発表の同…

「幸せなひとりぼっち」:偏屈で頑固な老人のラブ・ストーリーを核に、近隣の人々との繋がりを絶妙なドラマとコメディのバランスで描く

「幸せなひとりぼっち」(原題:En man som heter Ove、英題:A Man Called Ove)は、2015年公開のスウェーデンのコメディ&ドラマ映画です。フレドリック・バックマンの同名小説を原作に、ハンネス・ホルム監督・脚本、ロルフ・ラスゴード、イーダ・エング…

「パニック・フライト」:心理描写とアクションが融合、閉空間の恐怖を描き、成長著しい二人の主演俳優の演技を満喫できるサイコスリラー

「パニック・フライト」(原題:Red Eye)は、2005年公開のアメリカの心理サスペンス&アクション映画です。ウェス・クレイヴン監督、レイチェル・マクアダムス、キリアン・マーフィーら出演で、ダラス発マイアミ行きの深夜フライトでテロリストによる政府高…

「人魚姫」:環境保護のメッセージを込めたSFファンタジーで中国歴代最多興行収入を記録、世界の観客を笑わせたチャイニーズ・コメディ

「人魚姫」(原題:美人魚、英語題:The Mermaid)は、2016年公開の中国のSFファンタジー&コメディ映画です。チャウ・シンチー監督、ダン・チャオ、リン・ユンら出演で、美しい自然が残る香港郊外の青羅湾に住む人魚族と、この湾のリゾート開発プロジェクト…