夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

【閑話休題】新型コロナウイルス対策に関する奇妙な誤解

目次

新型コロナウイルス対策に関する奇妙な誤解

「希望者は誰でも新型コロナウイルスの検査を受けられるようにすべきだ」という社会的な要請に対するネガティブ・キャンペーンが効きすぎたのか、巷には、

  • 韓国やイタリアはいたずらに検査対象を拡大したから患者が増え、医療崩壊した
  • 検査対象を限定、患者を増やさず、医療崩壊を回避している日本のやり方が正解

という奇妙な認識が散見されます。実はこれは大きな間違いで、韓国やイタリアのように感染者が爆発的に増加する瀬戸際を、日本はぎりぎりで綱渡りしているだけなのです。

 

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コロナウイルスの特徴(国立感染症研究所

新型コロナウイルス検査の限界

詳細は省きますが、現在の新型コロナウイルスの検査性能には限界があり、検査対象を感染が疑われる人に絞らざるを得ません。現在、日本では検査対象が以下の範囲に限定されています。

  • 臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、疑似症と診断された者
  • 高齢者や基礎疾患がある者については、37.5 度以上の発熱、呼吸器症状があり、入院を要する肺炎が疑われる者
  • 病状や接触歴の有無などを医師が総合的に判断した結果、新型コロナウィルス感染症と疑う者
  • 一般的な呼吸器感染症の病原体検査陽性者でも、治療に反応せず症状が増悪した場合に、医師が総合的に判断し、新型コロナウィルス感染症と疑う者

これに合わせて、一般市民に対しては、原則「風邪の症状や 37.5 度以上の発熱が 4 日以上」続くまでは、医療機関を受診しないように要請されています。

 

生来の検査性能の限界に加えて、当初の日本の検査能力が限られた為、このように検査の適合基準が厳しくなったのですが、海外からは、

  • 「民間に委託すれば日本は1日に9万件を超える検査を実施する潜在的な能力があるのに、政府は検査の数を減らそうとしている。感染者の数を少なく見せることができるからだ」(中国、財新)
  • 「日本は韓国ほど検査を実施しておらず、感染経路が追えない事例の割合が多い。日本は大きなホットスポットになる恐れがある」(米FDA、元長官)
  • 「日本は韓国ほど積極的に診断していない(疫学的に透明でない)」(CNN)
  • 「日本が韓国ほど透明性があり、積極的なのか疑わしい」(韓国、首相)

などと批判されています。

積極的な検査が医療崩壊を招くのか?

基本的に検査で医療崩壊することはありません。医療崩壊は、感染が拡大、医療機関に重症者を収容できなくなった時に発生します。検査をして軽症者を治療すれば、医療崩壊すると主張する人がいますが、軽症者は自宅療養するか、軽症者用の施設に収容すれば良いのですから、この主張は当りません。因みに、日本では軽症者を検査していません。風邪症状を呈する人は自分が感染しているかどうかわからないまま、自主的な自宅療養を要請されています。

 

また、検査を拡大すると院内感染により、感染者が拡大するという主張があります。確かにリスクはありますが、「SARS,MERSと異なり、病院は新型コロナウイルスの主たる感染源ではない」との論文報告がなされています(Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China)。また、検査機関がクラスター(感染者集団)になると危惧する人もいますが、韓国のドライブスルー検査のように工夫次第でいくらでも回避可能です。

医療崩壊を回避する為には?

医療崩壊を回避する為には、急激な感染拡大を抑えることです。急激な感染拡大を抑え、重症患者が治癒して退院する時間を稼ぐことができれば、医療機関に重症者を収容できなくなることはありません。そして急激な感染拡大を抑えるには、クラスター(感染者集団)を徹底的に洗い出し、感染の連鎖を潰していくことです。不幸してクラスター(感染者集団)の連鎖が起きてしまうと、韓国やイタリアのように急激に感染者が増え、クラスター(感染者集団)を洗い出しが追いつかないという悪循環になります。韓国のドライブスルー検査は好き好んでやっているわけではありません。大規模なクラスター(感染者集団)を洗い出す為の苦肉の策のひとつなのです。

 

日本では、クラスター(感染者集団)の連鎖を潰し続けるとともに

  • 発熱等の風邪症状が見られる者の外出の自粛
  • 休校
  • 在宅勤務、時差出勤
  • イベントの自粛

などを要請することにより、急激な感染の拡大がぎりぎりのところで抑え込まれています。これはまさに瀬戸際で、いつクラスター(感染者集団)が連鎖し、感染が急拡大するかわかりません。

日本が考えなければならないこと

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の尾身副座長は、今後の展望について次のように語っています。

  • 日本の検査は肺炎患者のサーベイランスをしているだけで、軽症、無症状の感染者数とは差がある。
  • 風邪症状が出たら直ぐに検査をやるのが良いのだろうけれども、急激に感染者が増えることはないと仮定し、現実的な検査のキャパシティを前提にガイドラインは4日となった。頑張ってキャパシティを確保し、3日、2日にと短くできればと、個人的には思っている。迅速診断キットも重要で、また、感染者数をなんとか半年抑え込めれば、アビガンやステロイドなどの治療剤が認可にされる期待もある。
  • 感染者数を抑え込み、社会的インパクト、経済的なインパクトを最小にしなければならない。感染者数の抑え込みの失敗は、感染症との戦いに負けることを意味し、もはやできることは重症者の治療に専念し死亡者数を減らすことしかなくなる。

引き続きクラスター(感染者集団)を洗い出しを強化するとともに、検査の条件を緩和し、感染が疑われる人をより積極的に検査していくことが必要です。

 

また、日本の感染症指定病院の病床は全国で1,800しかなく、感染者の拡大に備えて一般病院やクリニックの協力が必要となります。ようやく動き出した自治体もあるようですが、何をどうしたら良いか、具体的な準備を加速する必要があります。また、日本では軽症患者は自宅療養することを要請されていますが、例えば、家族が心臓、肺、腎臓に持病のある人、糖尿病の人、免疫の低下した人、妊婦などいった場合、感染者のお世話は好ましくありません。韓国では、軽症患者の「収容施設」を作るようですが、日本もこうした入院できない軽症患者の為の「収容施設」を考える必要があるのではないかと思います。

関連作品 

パンデミック(世界的な感染)を描いた映画Amazon

  「12モンキーズ」(1995年)

  「28日後...」(2002年)

  「ドーン・オブ・ザ・デッド」(2004年)

  「セレニティー」(2005年)

  「トゥモロー・ワールド」(2006年)

  「スリザー」(2006年)

  「REC/レック」(2007年)

  「ON AIR オンエア 脳・内・感・染」(2008年)

  「猿の惑星:創世記」(2011年)

  「コンテイジョン」(2011年)

  「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2016年)

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