町山智浩著「映画と本の意外な関係」:圧倒的知識を誇る熱い文系オヤジが、話題作の背景を広く浅くユーモラスに語った、気軽に読める一冊
アテもなくぶらりと入った書店で購入しました。町山智浩氏が季刊「kotoba」に連載中のコラム「映画のセリフ」の原稿を加筆訂正したもので、全22章で構成されています。題名は少々お堅い印象ですが、一章あたり10ページ足らずで、主に2010年以降の話題作に広く浅く触れており、気軽に読める一冊です。一章で一作品を評論、解説するものではなく、原稿執筆時に話題になっていた映画(洋画)からテーマを書き起こし、必要に応じて他の作品にも触れるエッセイ集です。
章 | 言及している主な映画 |
1.信じて跳べ | インセプション(2010年) |
2.金は眠らない | ウォール・ストリート(2010年) |
3.本当の根性 | トゥルー・グリット(2010年) |
4.真夜中のパリ | ミッドナイト・イン・パリ(2011年) |
5.3月15日に気をつけろ | スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜(2011年) |
6.メイド・オブ・オナー | ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン(2011年) |
7.さらば我が愛、我が友、我が痛み、我が喜び | ファミリー・ツリー(2011年) |
8.彼女と同じものをいただくわ | 恋人たちの予感(1989年) |
9.天墜つる | 007スカイフォール(2012年) |
10.リンカーンのユーモア | リンカーン(2012年) |
11.そこに連れて行くよ | ソウルガールズ(2012年) |
12.貴様らが我々を騙すなら、我々も貴様らを騙す | ザ・イースト(2013年) |
13.時は征服できない | ビフォア・ミッドナイト(2013年) |
14.すべての探求は最後に出発地点に戻り、初めてそこだったと知るのだ | あなたを抱きしめるまで(2013年) |
15.あんなに短かった愛なのに、永遠に忘れられない | 物語る私たち(2012年) |
16.イケてる女 | ゴーン・ガール(2014年) |
17.愛について語るときに我々の語ること | バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(2014年 ) |
18.「何があったの? シモンさん」 | ニーナ・シモン 魂の歌(2015年) |
19.愛と赦し | ラブ&マーシー 終わらないメロディー(2014年) |
20.人はいつも、手に入らないものに恋い焦がれるんですね | キャロル(2015年) |
21.縄ない | ブルックリン(2015年) |
22.アメリカ映画の詩が聴こえる | 眼下の敵(1957年) |
こうした本は知っている映画が少ないと読むのに苦労することもありますが、本書は最近の話題作がほとんどで、既に観た映画は記憶の片隅から呼び起こして反芻し、観るかどうか迷っていたものはやはり観てみようかなと再び興味を喚起する楽しみがあります。
本書のあとがきに、「たぶん自分は映画そのものより、映画について調べる方がもっと好きなのかもしれません」と町山氏は書いていますが、ちょっと調べたからといって「意外な関係」や面白いエピソードがホイホイでてくるわけではありません。早稲田大学法学部出身で、雑誌編集の経験もある文系オヤジの町山氏には、その読書量と情報処理能力に群を抜くものがあるに違いありません。しっかりとした事実に裏付けられた事柄を、さりげなく、親しみのもてるユーモラスな語り口で、熱く、面白く、時に戦闘的に語ることができるのが、彼の人気の秘密ではないかと思います。
関連作品
「恋人たちの予感」(1989年)
「インセプション」(2010年)
「ウォール・ストリート」(2010年)
「トゥルー・グリット」(2010年)
「ミッドナイト・イン・パリ」(2011年)
「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」(2011年)
「ファミリー・ツリー」(2011年)
「007スカイフォール」(2012年)
「リンカーン」(2012年)
「ソウルガールズ」(2012年)
「ザ・イースト」(2013年)
「ビフォア・ミッドナイト」(2013年)
「ゴーン・ガール」(2014年)
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年 )
「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」(2014年)
「ニーナ・シモン 魂の歌」(2015年)・・・輸入盤、リージョン1,日本語なし
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