「トゥルー・グリット」(原題: True Grit)は、2010年公開のアメリカのアクション&アドベンチャー的西部劇映画です。1969年公開のジョン・ウェイン主演の名作西部劇映画「勇気ある追跡」を、原作を基にコーエン兄弟監督、製作、脚本、スピルバーグ製作総指揮、ジェフ・ブリッジス主演でリメイク、父親を殺された14歳の少女と大酒飲みの連邦保安官、テキサス・レンジャーという3人の壮大なる犯人捜しの旅を、実力派俳優の共演で描いています。作品賞を含む10部門で第83回アカデミー賞にノミネートされた作品です。
目次
スタッフ・キャスト
監督:ジョエル&イーサン・コーエン
脚本:ジョエル&イーサン・コーエン
原作:チャールズ・ポーティス「トゥルー・グリット」
出演:ジェフ・ブリッジス(ルースター(ルーベン・J)・コグバーン)
ヘイリー・スタインフェルド(マティ・ロス)
マット・デイモン(ラ・ビーフ)
ジョシュ・ブローリン(トム・チェイニー)
バリー・ペッパー(ラッキー・ネッド・ペッパー)
デイキン・マシューズ(ストーンヒル)
ジャーラス・コンロイ(葬儀師 )
ポール・レイ(エメット・クインシー)
ドーナル・グリーソン(ムーン)
エリザベス・マーヴェル(大人のマティ・ロス)
ほか
あらすじ
牧場主の娘として生まれ強い信念を持つ14歳の少女、マティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)は、オクラホマ州境のフォート・スミスで牧場の使用人トム・チェイニー(ジョシュ・ブローリン)に父を撃ち殺され、馬と金貨と銃を盗まれます。遺体を引き取りにフォートスミスにやって来たマティは、父親の形見の銃を受け取り、犯人に罪を償わせるためにトゥルー・グリット(真の勇気)があると言われる、片目の大酒飲みの連邦保安官ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)を雇います。最初は子供扱いして相手にしなかったコグバーンは、マティの真摯な気持ちと金に動かされてチェイニーを追う事にします。テキサス州議員殺しの賞金稼ぎの為にチェイニーを追うテキサス・レンジャーのラ・ビーフ(マット・デイモン)も、仲間に加わります。チェイニーがインディアン領へ向かい、お尋ね者ラッキー・ネッド一味と合流しているのを知ったマティとコグバーンは、彼らの仲間のムーンとクィンシーが隠れ住む小屋に入り込みますが、手ちがいで二人とも死んでしまいます。ラ・ビーフと合流したあと、一行はネッドらのアジトを目指しますが、途中で水を汲みに行ったマティは川でチェイニーと遭遇します・・・。
レビュー・解説
自分が成すべきことをしっかりとわきまえている14歳の少女、飲んだくれの保安官、頑なにテキサスにこだわるテキサス・レンジャーと、どっちが大人で、どっちが子供かわからないような登場人物が繰り広げるシンプルなライト・ノベル的冒険談です。ジョン・ウェイン主演の名作西部劇映画「勇気ある追跡」を忘れるというのが、ジェフ・ブリッジスへの最初のディレクションだったというコーエン兄弟は、次のように語っています。
単純にこの物語が1870年代のアーカンソーを舞台にしているから、西部劇になっただけ。原作はやろうと思えば他の時代に移し替えることもできたと思うし、ポーティス自身も西部劇というジャンル小説にこだわっていたわけではないと思う。(ジョエル・コーエン監督)
コーエン兄弟はこれほどヒットするとは思っていなかったようですが、この作品が高い評価を受けているのは、西部劇というジャンルにこだわらずに洒脱な会話と熱い感動に乗せて古き良きアメリカの魂をシンプルに描き、それをジェフ・ブリッジス、ヘイリー・スタインフェルド、マット・デイモンが、見事に演じきっている点でしょう。実は「はじまりのうた」で見たヘイリー・スタインフェルドが気になり、西部劇と敬遠していたこの「トゥルー・グリット」を観たのですが、ヘイリー・スタインフェルドの熱演もさることながら、ジェフ・ブリッジスが演じる飲んだくれの保安官と、マット・デイモンが演じるスタイルにこだわるテキサス・レンジャーが、マティの真剣な姿に心を動かし、行動を起こして行く様が感動的です。
15000人から選ばれた当時13歳のヘイリー・スタインフェルドですが、セリフをしっかりしゃべれる数少ない応募者のひとりだったようです。マティが法や取引に関して主張するシーンが多く、これが彼女のキャラクターを形作っているのですが、確かにこれを澱みや気負い無く自然に話せる13歳の少女は少ないでしょう。さらに彼女は自分自身をしっかり持っており、役柄もきちんと理解しているように感じたコーエン兄弟は、大当たりかもしれないと、実際に会ってジェッフ・ブリッジスらと演技させ、すぐにそれを確信しました。
「木に登ったり、水に浸かったり、馬を乗り回したり、この役はさまざまなアクションを要求されたけれど、彼女にとってはすべてがたやすいことのようだったね。」とジョエル・コーエン監督は語っていますが、利発で活発なヘイリー・スタインフェルドの姿が眼に浮かびます。コーエン兄弟の期待に応え、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされるほどのすばらしい演技を披露したヘイリー・スタインフェルドですが、その天才ぶりにはジェニファー・ローレンスを彷彿とさせるものがあり、今後の活躍が期待されます。「はじまりのうた」でも、短い出演時間でながらいい感じの存在感を放っています。
コーエン兄弟監督作品で最大のヒット作となった本作ですが、第83回アカデミー賞では10部門にノミネートされながら一部門も受賞できませんでした。8部門にノミネートされ、4部門で受賞した「ノー・カントリー」と対照的ですが、コーエン兄弟にはあまり広い層に受ける方向に行って欲しくない気持ちもあり、残念なような、残念でないような複雑な気持ちです。
関連作品
「トルゥー・グリット」の原作本(Amazon)
チャールズ・ポーティス著「トゥルー・グリット」
Charles Portis 'True Grit' [Kindle版]
コーエン兄弟監督作品
「ラスト・ショー」(1971年)
「スターマン/愛・宇宙はるかに」(1984年)
「フィッシャー・キング」(1991年)
「ビッグ・リボウスキ」(1998年)
「クレイジー・ハート」(2009年)
「最後の追跡」(2016年):輸入盤、リージョンA、日本語なし
「オンリー・ザ・ブレイブ」(2017年)
ヘイリー・スタインフェルド出演作品のDVD(Amazon)
「思い出のマーニー」(2015年、声の出演)
「戦火の勇気」(1996年)
「レインメーカー」(1997年)
「プライベート・ライアン」(1998年)
「リプリー」(1999年)
「オーシャンズ11」(2001年)
「ボーン・アイデンティティー」(2002年)
「ボーン・スプレマシー」(2004年)
「ディパーテッド」(2006年)
「ボーン・アルティメイタム」(2007年)
「コンテイジョン」(2011年)