夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ファミリー・ツリー」:ハワイを舞台に事故で意識不明になった妻と残された二人の娘に手を焼く家族を顧みなかった男をユーモラスに描く

ファミリー・ツリー」(原題:The Descendants)は、2011年公開のアメリカのヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。カウイ・ハート・ヘミングスの小説同名小説。これを原作とし、アレクサンダー・ペインの共同脚本、監督、ジョージ・クルーニーらの出演で、ハワイで何不自由のない暮らしをしていた一家の主が、予期せぬ転機を迎えて、自らのルーツをかえりみる姿を描いています。第84回アカデミー賞で脚色賞を受賞した作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:アレクサンダー・ペイン
脚本:アレクサンダー・ペイン/ナット・ファクソン/ジム・ラッシュ
原作:カウイ・ハート・ヘミングス「ファミリー・ツリー」(The Descendants)
出演:ジョージ・クルーニー(マット・キング)
   シェイリーン・ウッドリー(アレクサンドラ・キング)
   アマラ・ミラー(スコッティ・キング)
   ニック・クロース(シド)
   ボー・ブリッジス(ヒュー・キング)
   ジュディ・グリア(ジュリー・スピアー)
   マシュー・リラード(ブライアン・スピアー)
   メアリー・バードソング(カイ・ミッチェル)
   ロブ・ヒューベル(マーク・ミッチェル)
   ロバート・フォスター(スコット・ソーソン)
   パトリシア・ヘイスティ(エリザベス・キング)
   ほか

あらすじ

  • オアフ島の弁護士のマット・キング(ジョージ・クルーニー)は、美しい妻と二人の娘たちを持ち、仕事に打ち込んで、一見、順風満帆な人生を送ってきましたが、ある日、妻エリザベスがボート事故に遭い、意識不明の重体となります。数ヶ月も会話がなかった当てつけかとも思うと、身にしみます。10歳の次女スコッティ(アマラ・ミラー)はショックから情緒不安定になり、重体の母親の写真を級友に見せたり、思春期の友人をイジメたりと、様々な問題を引き起こします。次女の反抗に、これまで家庭を顧みなかったマットはなすすべもなく、手を焼きます。さらにカウアイ島にある1860年代から先祖代々受け継がれてきた広大な土地を7年後の信託を前に売却するかどうかという大問題があり、父親の死後、マットが受託者になっていました。売却すれば自然は失われるものの一族に数億ドルもの資金が入り、妻に楽をさせてあげられますが、エリザベスは一向に回復せず、先行きが見えなません。
  • そんな中、全寮制の学校へ通う長女アレックス(シャイリーン・ウッドリー)の迎えに行ったマットがエリザベスの病状を伝えると、二日酔いのアレックスは母に対する許せぬ思いと相まって動揺、母との確執の原因はクリスマスにエリザベスが浮気をしていた為だとマットに告げてしまいます。動転したマットは、事情を知っているであろう親友夫妻を詰問、エリザベスが淋しさから真剣に離婚を考えていたことを知ります。一方、妻の容態は改善せず、生命維持装置を外すことになり、マットは怒り震えながらも、エリザベスのために浮気相手のスピアーに事故のことや現状について直接伝えようと思い立ちます。
  • 娘二人とアレックスのボーイフレンドとともに、マットはスピアーのいるカウアイ島に飛びます。これで見納めになるかもしれないと、カメハメハ大王の孫のおばあちゃんが遺してくれた景勝地キプ・ランチに娘達をつれていきます。神秘的な光景が広がる雄大な原野、厳かであたたかく包み込むような美しい自然に親子はしばし見とれます。妻の浮気相手が、実は土地を売却する予定の男の義弟と分かり、アレックスとコテージを訪ねたマットはスピアーを詰問しますが、彼は離婚する気はなかったと話します。カウアイ島の自然に触れ、家族への愛やつながりを感じた彼は、土地の売却を巡る一族の会議を前に、とある決心をします・・・。

レビュー・解説 

突然の事故で妻が意識不明になり、仕事一筋で家庭を顧みなかったマットは動揺する二人の娘に扱いに途方にくれ、さらに妻が浮気していたことが発覚するという惨憺たる状況を、ゆったりと美しいハワイを舞台に、時にユーモアを交えてじんわりと暖かく優しい眼差しで描き、説得力のある感動的なファミリー・ドラマに仕上がっています。これ以上ないくらい家族とはうまくいっている人を除けば、多少なりとも癒される映画ではないかと思います。全編、新旧のハワイアンでかためられたサウンド・トラックも素晴しいです。

 

共同脚本、監督を務めたアレクサンダー・ペインは、風刺やユーモアを混ぜながらアメリカの家族や夫婦関係を描くのが得意な脚本家、映画監督で、「サイドウェイ」(2004年)、本作とアカデミー脚色賞を二度、受賞しており、アカデミー賞には3部門で7回ノミネートされています。本作における家族の描き方にも絶妙のさじ加減が発揮されており、主演のジョージ・クルーニーも全幅の信頼を置いています。

本作では、脚本を手がけたのが現在活躍中の一流監督の一人であるアレクサンダー・ペインだ。となったら、全てを監督の手にゆだねて、「やりすぎかな?実存的リアリズムを15%減らすか?」と聞けばいい。監督が全部、補佐してくれるからね。(ジョージ・クルーニー

この映画のトーンはなかなかクセがある。中には、ドタバタに近いような笑えるシーンがある。おかしな走り方で通りを走るとか、生垣の後ろに隠れて頭を突き出すとか、そういった類のものだ。そのほかに、とてもデリケートで注意が必要な場面もある。監督には「どれぐらいのレベルで演じてほしいか?」を聞くことがとても助けになったよ。(ジョージ・クルーニー

 

原作者のカウイ・ハート・ヘミングスは、マット・キングのキャラクターを思いついたときから、ダークなおかしみと同じく非常に人間的な役が多いことで有名なジョージ・クルーニーをイメージしており、アレクサンダー・ペイン監督から主人公を演じる役者のイメージを質問された時、「ジョージ・クルーニー」と即答したと言います。 実は、ジョージ・クルーニーは監督の前作である「サイドウェイ」に出演を希望しましたが、必ずしも有名な俳優に重きをおかに監督のポリシーにより、これは実現しませんでした。今回のジョージ・クルーニーの出演は、原作者のカウイ・ハート・ヘミングスが抱いていたイメージの影響もあるかもしれません。アレクサンダー・ペインジョージ・クルーニーも機会があればコラボレーションしたいと思っていたようではあります。

僕はアレクサンダー・ペイン監督と仕事がしたいとかなり前から思っていたんだ。機会があって監督とトロントで夕食を一緒にした時、彼が僕に脚本を送ってくれると言ったんだ。実を言えば、僕はどんな脚本だろうと関係なく出演しようと思っていたんだよね。フィルム・メイカーとして彼は今まで一度もミスをしたことがない人だからね。脚本を読んでみて、自分はとても運がいいと思ったよ。(ジョージ・クルーニー

 

ようやく実現したコラボレーションですが、アレクサンダー・ペイン監督と、ジョージ・クルーニーの相性は絶妙だったようです。

二人はこの映画以降、一生の友達になると思います。アレクサンダーは非常に物腰が柔らかく、ユーモアのある人ですが、仕事中はプロに徹しとてもまじめです。一方のジョージは、徹底的なふざけ屋です。彼は笑うのが大好きでおもしろい人です。あの二人がいるセットには、ものすごいエネルギーが溢れていました。( ジョージ・パーラ、共同プロデューサー)

 

出演者で忘れられないのが、長女アレクサンドラを演じるのはシャイリーン・ウッドリーです。正統派美人で最初はちょっと地味な印象ですが、物語が進むにつて存在感を増していきます。クリステン・スチュワートも本作のオーディションを受けていたようですが、ちょっと似た感じですが、どちらかと言えばシャイリーン・ウッドリーの方がナチュラルな印象です。本作で注目を浴びたシャイリーン・ウッドリーは、その「ダイバージェント」とその続編である「インサージェント」、そして「きっと、星のせいじゃない。」が連続公開され、ドル箱スターの仲間入りをしました。

 

シャイリーン・ウッドリーは、ハリウッドではオスカー女優ジェニファー・ローレンスに続く逸材とも言われています。ジェニファーは飾らず、素朴で、おっちょこちょいな性格を露にしていましたが、シャイリーンも強烈な個性を披露していようです。

 私はジェニファーが大好き。でも、彼女は私と違って、世界中の人々から愛されているスターよ。学校でも職場でも女同士って比べられちゃうけど、私たちの共通点ってショートヘアでヴァギナがあることくらいじゃない?(シャイリーン・ウッドリー)

 

実は彼女、以前にも記者から全裸で日光浴をする理由について尋ねられ、「ヴァギナにもビタミンDを補給させなくっちゃ」という突拍子もない発言をして世間を驚かせてもいるのですが、彼女は自然が大好きな筋金入りのナチュラリストで、テレビも住む家も持たず、土や植物で手作りした歯磨き粉やデオドラントを愛用し、旅行の宿泊先は格安のシェアハウスから探すそうです。口が悪い(?)のがちょっと心配ですが、ライフ・スタイルはともあれ、俳優はスクリーンが勝負、今後が期待される女優です。

 

ジョージ・クルーニー(マット・キング)

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シェイリーン・ウッドリー(アレクサンドラ・キング、右)

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アマラ・ミラー(スコッティ・キング)

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ニック・クロース(シド)

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1.カ・マカニ・カーイリ・アロハ
2.カレナ・カイ
3.ヒイラヴェ
4.ウー・リリエ
5.カ・ロケ
6.アウウェ
7.レアヒ
8.ハワイアン・スカイズ
9.ヘエイア
10.イミ・アウ・イア・オエ
11.カウアイ・ビューティー
12.ヒイラヴェ
13.ワイ・オ・ケ・アニアニ
14.パカ・ウア
15.ハプナ・サンセット
16.ディープ・イン・アン・エンシェント
・ハワイアン・フォレスト

17.マム
18.カ・メレ・オクウ・プワイ
(MONO)

ムービー・クリップ(YouTube)

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関連作品 

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