夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

2016-01-01から1年間の記事一覧

「ロブスター」:極端な設定と強烈な演出で不可思議かつスリリングに展開、社会と男女関係の心理を問う野心作

「ロブスター」(原題:The Lobster)は、2015年公開のギリシャ・フランス・アイルランド・オランダ・イギリス合作のSF恋愛映画です。ヨルゴス・ランティモス監督、ヨルゴス・ランティモス/エフティミス・フィリップ共同脚本、コリン・ファレル、レイチェル・…

「ムーンライズ・キングダム」:12歳の少年少女の駆け落ちを、完璧な構図の中でユーモラスに描くウェス・アンダーソン監督のコメディ

「ムーンライズ・キングダム」(原題:Moonrise Kingdom)は、2012年公開のアメリカのコメディ映画です。ウェス・アンダーソン監督、ウェス・アンダーソン/ロマン・コッポラ共同脚本、ブルース・ウィリス、ビル・マーレイら出演で、駆け落ちした12歳の男女と…

「デッドプール」:テンポ良く喜々として冒涜的、R指定で従来のヒーロー像を打破、X-MENスピンオフの情感豊かなアクション・コメディ

「デッドプール」(原題:Deadpool)は、2016年公開のアメリカのアクション・コメディ映画です。マーベル・コミックの同名キャラクターを基に、ティム・ミラー監督、ライアン・レイノルズ、モリーナ・バッカリンら出演で、怪しい組織の人体実験によって不死…

「フラメンコ・フラメンコ」:フラメンコの息吹をダイナミックに描く、フラメンコを撮り続けたカルロス・サウラ監督の集大成的傑作

「フラメンコ・フラメンコ」は、2010年公開のスペインのドキュメンタリー映画です。スペイン映画界を代表する存在でもあり、フラメンコやスペインの伝統的舞踊を題材にした作品を数多く手がけた巨匠カルロス・サウラ監督が、現在のフラメンコ界を牽引する若…

「ウェイバック -脱出6500km-」:酷寒のシベリアからインドまで、装備も食料も持たずに過酷な大自然を歩く、壮大な叙事詩的スペクタクル

「ウェイバック -脱出6500km-」(原題: The Way Back)は、2010年公開のアメリカのドラマ映画です。元ポーランド兵士スラヴォミール・ラウイッツが1956年に発表した書籍「The Long Walk」(邦題:脱出記 シベリアからインドまで歩いた男たち)を原作に、ピー…

「マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり」:真面目で可笑しくて刺激的、晩婚や離婚が多い現代のロマンティック・コメディ

「マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり」(原題:Man Up)は、2015年公開のイギリス・フランス合作のロマンティック・コメディ映画です。ベン・パーマー監督、テス・モリス脚本、サイモン・ペッグ、レイク・ベルら出演で、ロンドンの街を舞台に…

「サウルの息子」:アウシュヴィッツで遺体を処理するユダヤ人作業員の目を通してこの世の地獄を描いた、史実に基づく生々しいドラマ

「サウルの息子」(原題:Saul fia、英題:Son of Saul)は、2015年のハンガリーのドラマ映画です。ネメシュ・ラースロー監督、ネメシュ・ラースロー/クララ・ロワイエ共同脚本、ブダペスト出身の詩人ルーリグ・ゲーザら出演で、第二次世界大戦中のアウシュ…

「しあわせな孤独」:コペンハーゲンの街を背景に、事故で揺れ動く人間の感情を女性監督ならでは感性で描く、現実感溢れる叙情的恋愛映画

「しあわせな孤独」(原題:Elsker dig for evigt、英題:Open Hearts)は2002年公開のデンマークのドラマ映画です。デンマークの映画運動ドグマ95のルールに従い、スサンネ・ビア監督、ソニア・リクター、マッツ・ミケルセンら出演で、突然の不幸に見舞われ…

「アルマジロ」:ヘルメットカメラが捉えた激しい戦闘と前線に立つ若者の心理に現代の戦争が浮かび上がる、緊迫感溢れるドキュメンタリー

「アルマジロ」(原題:Armadillo)は、2010年公開のデンマークのドキュメンタリー映画です。ヤヌス・メッツ監督が、国際平和活動(PSO)の一環でデンマーク陸軍からアフガニスタン南部のアルマジロ前線基地に派遣された若い新兵たちを、7か月間に渡って密着…

「スポットライト 世紀のスクープ」:実話に基づく緻密な脚本と豪華なアンサンブル・キャストの現実的演技で、陰湿な大事件を真摯に描く

「スポットライト 世紀のスクープ」(原題:Spotlight)は、2015年公開のアメリカの伝記的社会派ドラマ映画です。トム・マッカーシー監督・共同脚本、マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムスら出演で、2003年にピューリッツァー賞…

「プライベート・ライアン」:かつてないほど凄惨で生々しい戦闘シーンと人間味溢れるパフォーマンスで、名もなき兵士達を讃える反戦映画

「プライベート・ライアン」(原題:Saving Private Ryan)は、1998年公開のアメリカの戦争映画です。スティーヴン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス、マット・デイモンら出演で、第二次世界大戦時のノルマンディー上陸作戦を舞台に、危険を冒して一人の兵…

「あの日のように抱きしめて」:ナチスドイツが残した傷を背景にパワフルな演出演技で描かれた、メロウでスリリングなサスペンス・ドラマ

「あの日のように抱きしめて」(原題:Phoenix)は、2014年公開のドイツのサスペンス&ドラマ映画です。1961年に発表されたフランスの小説家ユベール・モンテイエの「Le Retour des Cendres」(英題:The Return from the Ashes、邦題:帰らざる肉体)をモチ…

「フィアレス」:航空機事故の現場を再現した迫力映像と、心の傷を負った生存者の深い哀しみが際立つヒューマンドラマ

「フィアレス」(原題:Fearless)は、1993年公開のアメリカのヒューマン・ドラマ映画です。1991年にラファエル・イグレシアスが発表した同名小説を原作に、ピーター・ウィアー監督、ラファエル・イグレシアス脚本、ジェフ・ブリッジス、イザベラ・ロッセリ…

「ズートピア」:偏見が巣食う動物の理想郷は人間社会そのもの。兎と狐のバディの成長をコミカルに描く、ディズニーの大ヒットアニメ

「ズートピア」(原題:Zootopia)は、2016年公開のアメリカの3D CG アニメーション映画です。ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ制作で、動物たちが人間のように暮らす文明社会ズートピアを舞台に、警察官になりたいウサギのヒロイン、ジュデ…

「SPY/スパイ」:おばさんがスパイになったら?コメディエンヌの魅力をフルに引き出すポール・フェイグ監督の爆笑スパイ・アクション

「SPY/スパイ」(原題:Spy)は、2015年公開のアメリカのアクション・コメディ映画です。ポール・フェイグ監督、メリッサ・マッカーシー、ジェイソン・ステイサム、ジュード・ロウら出演で、CIAの内勤分析官が現場のエージェントになり、スーツケース型核爆…

「ディーパンの闘い」:内戦に敗れ、フランスに逃れたスリランカの元兵士とその偽装家族の苦難を描く、リアルで見応えのあるドラマ

「ディーパンの闘い」は2015年公開のフランスのクライム・サスペンス&ドラマ映画です。ジャック・オーディアール監督・共同脚本、アントニーターサン・ジェスターサン、カレアスワリ・スリニバサンら出演で、内戦下のスリランカを逃れ、偽装家族としてフラ…

「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」:住み慣れた家を買い換えようとする老夫婦をモーガン・フリーマンとダイアン・キートンが好演

「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」(原題:5 flights Up)は、2015年公開のアメリカのドラマ映画です。ジル・シメントの全米ロングセラー小説「Heroic Measures」を原作に、リチャード・ロンクレイン監督、モーガン・フリーマン、ダイアン・キートン…

「ボーダーライン」:メキシコとの国境を挟んだ麻薬戦争を描き、娯楽映画を超えてアメリカが抱える問題を問いかけるクライム・サスペンス

「ボーダーライン」(原題:Sicario)は、2015年公開のアメリカのクライム・サスペンス&アクション映画です。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリンら出演で、麻薬カルテル壊滅の為にアメリカとメキシ…

「ヴィクトリア」:全編1カットの長回しで撮られた、臨場感、緊迫感溢れるスリリングなリアルタイム・サスペンス&ドラマ映画

「ヴィクトリア」(原題:Victoria)は2015年公開のドイツのサスペンス&ドラマ映画です。セバスチャン・スキッパー監督、ライア・コスタ、フレデリク・ラウら出演で、ベルリンの街角で出会ったヒロインと4人の若者の身に起きる出来事を、即興によるセリフや…

「独裁者と小さな孫」:民主化が常に正しいわけではない、悪しき革命は悪しき独裁者による政治となんら変わらない

「独裁者と小さな孫」(原題:The President)は、2014年公開のジョージア・イギリス・フランス・ドイツの合作の映画です。モフセン・マフマルバフ監督、ミシャ・ゴミアシュヴィリら出演で、クーデターにより幼い孫と共に逃亡を余儀なくされた老独裁者が、行…

「15歳のダイアリー」:性に目覚め、大人になりかけたアンバランスな少女の厳しい経験を、リリカルに透明感のあるパフォーマンスで描く

「15歳のダイアリー」(原題:Somersault)は2004年公開のオーストラリアのドラマ映画です。ケイト・ショートランド監督、アビー・コーニッシュ、サム・ワーシントンら出演で、愛を渇望する孤独な少女の心と性の彷徨いと成長を、繊細なタッチで描いたロード…

「カルテル・ランド」:一筋縄ではいかない麻薬戦争の実態を、荒々しく、生々しく、そして苦々しく描いたドキュメンタリー

「カルテル・ランド」は、2015年公開のアメリカのドキュメンタリー映画です。マシュー・ハイネマン監督、キャスリン・ビグロー制作総指揮で、麻薬カルテルの横暴から人々を守る為に、メキシコで市民による自警団を結成した一人の外科医と、麻薬カルテルの侵…

「キャロル」:パトリシア・ハイスミスの半自伝的小説に基づいた、1950年代のレズビアンのリアルで美しく完成度の高い恋愛ドラマ映画

「キャロル」(原題:Carol)は2015年公開のアメリカのドラマ映画です。パトリシア・ハイスミスが1952年に発表した小説「The Price of Salt」(後に「Carol」(邦題「キャロル」)に題名変更)を原作に、トッド・ヘインズ監督、ケイト・ブランシェット、ルー…

「地獄の黙示録」:戦争の愚かさを強烈に風刺しながら、傷ついた男の心の闇を描く壮大な叙事詩的大作名画は、メイキングも地獄だった

「地獄の黙示録」(原題:Apocalypse Now )は、1979年公開のアメリカの戦争映画です。ジョゼフ・コンラッドの小説「闇の奥」を原作に、舞台をベトナム戦争に移して翻案した叙事詩的映画で、フランシス・フォード・コッポラ監督、マーロン・ブランド、ロバー…

「Mommy/マミー」:機能不全の家族愛を描き、人物描写、映像表現、音楽の選択にグザヴィエ・ドラン監督の瑞々しい感性が光る

「Mommy/マミー」は、2014年公開のカナダのヒューマン・ドラマ映画です。グザヴィエ・ドラン監督、アンヌ・ドルヴァル、アントワーヌ・オリヴィエ・パイロン、スザンヌ・クレマンら出演で、「発達障害児の親が経済的困窮や身体的、精神的な危機に陥った場合…

「トスカーナの贋作」:ふとしたことから夫婦を演じる男女の虚実の交錯を、イタリアの小さな街を舞台にスリリングに描くヒューマンドラマ

「トスカーナの贋作」(原題:Copie conforme)は、2010年公開のフランス、イタリア合作のドラマ映画です。イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督・脚本、ジュリエット・ビノシュら出演で、ふとしたことから夫婦を演じることになった男女の虚実交錯する恋…

「ウェンディ&ルーシー」:女性監督が描くアメリカの底辺の崖っぷちを彷徨う若い女性の孤独な戦いを、ミシェル・ウィリアムズが演ずる

「ウェンディ&ルーシー」(原題:Wendy and Lucy)は、2008年公開のアメリカのドラマ映画です。ケリー・ライヒャルト監督・脚本、ミシェル・ウィリアムズ主演で、仕事を求め、愛犬ルーシーと車でアラスカへ向かう途中、ドッグフードも底を尽き、車も故障して…

「ミラーズ・クロッシング」:スタイリッシュさが際立ち、シャープな台詞、印象的な映像、登場人物の個性が特徴的なクライム・スリラー

「ミラーズ・クロッシング」(原題: Miller's Crossing)は、1990年公開のアメリカのギャング映画です。ジョエル・コーエン/イーサン・コーエンのコーエン兄弟共同脚本・制作、ジョエル・コーエン監督で、1920年代、禁酒法時代のアメリカ東部の街を舞台に、…

「愛についてのキンゼイ・レポート」:人間の性行動に統計でメスを入れたキンゼイ博士と妻の半生を、社会風刺しつつ感情豊かに知的に描く

「愛についてのキンゼイ・レポート」(原題:Kinsey)は、2004年公開のアメリカの伝記映画です。ビル・コンドン監督・脚本、リーアム・ニーソン、ローラ・リニーらの出演で、性について語ることがタブーだった1940年代に画期的なレポートを発表した実在のキ…

「アクトレス~女たちの舞台~」:世代交代に直面、過ぎ行く時間と対峙するスター女優の葛藤を、現実と劇中劇の間でスリリングに描く

「アクトレス~女たちの舞台~」(原題:Sils Maria)は2014年公開のフランス・スイス・ドイツ合作のヒューマン・ドラマ映画です。監督・脚本オリヴィエ・アサイヤス、ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツら出演…