「レ・ミゼラブル」(原題: Les Misérables)は、2012年公開のイギリスのミュージカル映画です。ヴィクトル・ユゴーの同名小説を原作として1980年代にロンドンで上演され、以後、ブロードウェイを含む世界各地でロングランされていた同名のミュージカルを映画化したもので、豪華キャストを起用し、圧倒的なスケールで描くミュージカル超大作です。
目次
スタッフ・キャスト
監督:トム・フーパー
脚本:ウィリアム・ニコルソン/アラン・ブーブリル
/クロード=ミシェル・シェーンベルク/ハーバート・クレッツマー
原作:ヴィクトル・ユゴー(小説)
アラン・ブーブリル/クロード・ミシェル・シェーンベルク(ミュージカル)
出演:ヒュー・ジャックマン(ジャン・バルジャン)
コルム・ウィルキンソン(司教)
ラッセル・クロウ(ジャベール)
アン・ハサウェイ(ファンティーヌ)
アマンダ・サイフリッド(コゼット)
イザベル・アレン(幼少期のコゼット)
エディ・レッドメイン(リウス・ポンメルシー)
ほか
あらすじ
19世紀のフランス、1本のパンを盗んだ罪で投獄され、19年間を監獄の中で生きたジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)。仮出獄した彼は再び盗みを働いてしまうが、司教(コルム・ウィルキンソン)の優しさに触れ、心を入れ替えると決意します。過去を捨て、名前も変えながらも正しくあろうと自らを律して生きるジャン・バルジャンは、やがて市長にまで上り詰めますが、法に忠誠を誓うジャベール警部(ラッセル・クロウ)に自らの正体を見破られ逃亡を余儀なくされます。その一方で、薄幸の女性ファンテーヌ(アン・ハサウェイ)から託された彼女の娘コゼット(イザベル・アレン、アマンダ・サイフリッド)に深い愛情を注ぎ、美しい女性へと育てていきますが・・・。
レビュー・解説
通常、ミュージカル映画は撮影の数ヶ月前にサウンド・トラックを録音し、俳優はリップ・シンクで演技しますが、この映画では、演技の自然さを引き出す為に、ひとつひとつ歌を撮影時に生で録音しました。ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウらの当事者は、リップ・シンクに気を取られずに演技に集中できると、みな賞賛しました。この方法では、歌や動きに即興を取り入れる事もできます。ヒュー・ジャックマンの最初のソロ、'Valjean's Soliloquy'(俺が何をした?)は、激しい感情を表すにふさわしい彼の動きを、ステディ・カメラで捉えています。一方で、毎日、ベストの体調で歌える様に、キャストは飲酒を禁止され、ラッセル・クロウとアマンダ・サイフリッドは、かなりの試練だったと告白しています。
アン・ハサウェイとヒュー・ジャックマンは、ヒュー・ジャックマンが司会を務めた2009年、アン・ハサウェイが司会を務めた2011年と、アカデミー賞受賞式のパフォーマンスで二度、一緒に歌う機会がありました。二度目はヒュー・ジャックマンが一緒に歌うことを拒否、アン・ハサウェイは片思いの歌である「オン・マイ・オウン」を一人で歌いましたが、実は、ヒュー・ジャックマンは、一回目の後、彼女をフォンティーヌ役に起用させるべく、ロビーイングをしていました。彼女は、2004年公開のミュージカル映画「オペラ座の怪人」の主役女優を務める機会がありましたが、ディズニーと「プリティ・プリンセス」の続編出演の契約があった為、これを辞退していました。「レ・ミゼラブル」のオーディションでは、アン・ハサウェイは関係者が涙を浮かべるほどの圧倒的な熱演をしてみせたと言われています。フォンティーヌ役には、他にエイミー・アダムズ、ジェシカ・ビール、マリオン・コティヤール、ケイト・ウィンズレット、エミリー・ブラント、レベッカ・ホールらが考えられていました。
アン・ハサウェイは、病死するフォンティーヌを演じる為に、体重を10キロ落としました。急激な減量は命にかかわることがあり、美化したり、広めたりしたくないとして、彼女は減量法を明らかにしていませんが、ペースト状のオートミールがそのひとつである事を認めています。フォンティーヌがお金の為に髪を売るシーンでは、結婚式が控えていたにもかかわらず彼女は自分の髪を丸刈りにしました。髪を切る直前になってメンタル障害のように涙が止まらなくなり、「おろおろするスタッフたちにお願いして、少しだけ泣かせてもらったの」と語っています。多くのシーンが、ワンショットで撮られたと言われていますが、より深くて感動的なものにしたかった彼女は、アップのみ約4分の'I Dreamed a Dream’(夢破れて)を何度も撮影し、トータルで8時間もかけました。フォンティーヌの亡骸を窓から荷車に投げ入れるシーンではスタントマンを使う予定でしたが、「言わせないでね、私はキャット・ウーマンなの」と躊躇する監督やプロデューサーを説得、自身が演じました(彼女は「ダークナイト・ライジング」でキャット・ウーマンを演じた)。彼女の出演時間は15分、それも映画開始後43分で彼女の演じるフォンティーヌは死んでしまいます。その15分の為に、彼女は並々ならぬ対価を払いながら、役作りを行い、感動を生み出していることを考えれば、突出した出演料も納得できます。アカデミー助演女優賞受賞の知らせを受けた時に、映画で'I Dreamed a Dream’(夢破れて)を歌った彼女から最初に出た言葉は、'It comes true’(夢がかなった)でした。
ヒュー・ジャックマンも、囚人のジャン・バルジャンを演じるため、体重を14キロ落としました。さらに無精髭を生やし、撮影の36時間前から水を断って、目の周りや頬の水分を落として、囚人のやせ衰えた外見を作り込みました。幸運にも、これらの撮影は最初に行われた為、彼は髭をそり、普段の体重に戻して、裕福になったジャン・バルジャンを演じました。
アマンダ・サイフリッドは、オーディションでコゼット役を得るのに4ヶ月以上もかかりました。彼女は、他に若い女優がオーディションを受けているか、誰が考えられているのか、全くわからないまま、この映画には合わないと言われ続けました。彼女はフォンティーヌ役の歌と脚本読みもしており、体型と声をどちらにも合わせられるよう、自分を追い込みました。フォンティーヌ役にアン・ハサウェイが決まり、アマンダ・サイフリッドはコゼット役に決まりました。
映画は当初、15分の戦いのシーンを含む、4時間もの長いものになってしまいましたが、最終的に2時間半まで詰められ、15分の戦いのシーンはカットされました。「レ・ミゼラブル」は、作品、主演男優(ヒュー・ジャックマン)、助演女優(アン・ハサウェイ)、歌曲、メイクアップ&ヘアスタイリング、衣裳デザイン、録音の7部門でアカデミー賞にノミネートされ、助演女優、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、録音賞を受賞しました。
オリジナルのミュージカル(左)と映画のポスター(右)
1985年にオリジナルのミュージカルの初演が行われたロンドン、バービカン・センター
動画クリップ(YouTube)
'Valjean's Soliloquy'(俺が何をした?))〜「レ・ミゼラブル」
'I Dreamed a Dream’(夢破れて)〜「レ・ミゼラブル」
フィナーレ'Do You hear the people sing' (民衆の歌)〜「レ・ミゼラブル」
関連作品
「噫無情 レ・ミゼラブル」(1935年)
「レ・ミゼラブル」(1957年)
「レ・ミゼラブル」(1998年)
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