夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「プラダを着た悪魔」:コメディのモデルは実在のヴォーグ誌編集長

プラダを着た悪魔」(原題:The Devil Wears Prada)は、2006年公開のアメリカの映画です。ヴォーグ誌で女性編集長のアシスタントをしていたローレン・ワイズバーガーが実体験をもとに書いた2003年4月刊行のベストセラー小説を映画化した作品で、デヴィッド・フランケル監督、メリル・ストリープアン・ハサウェイエミリー・ブラントスタンリー・トゥッチら出演で、一流ファンション誌の編集部に採用されたジャーナリスト志望の新人女性が、上司の悪魔のような要求に耐え、成長していく姿を描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:デヴィッド・フランケル
脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ
原作:ローレン・ワイズバーガー
出演:メリル・ストリープミランダ・プリーストリー)
   アン・ハサウェイアンドレア・サックス)
   エミリー・ブラント(エミリー・チャールトン)
   スタンリー・トゥッチ(ナイジェル )
   エイドリアン・グレニアー(ネイト)
   サイモン・ベイカー(クリスチャン・トンプソン)
   ほか

あらすじ

名門大学を卒業し、ジャーナリストを目指して田舎からニューヨークにやってきたアンディ(アン・ハサウェイ)。おしゃれに興味のない彼女が本来の目的である文芸誌での仕事への足がかりとして向かった先は、全世界の女性が憧れる一流ファンション誌「ランウェイ」の編集部でした。彼女は意外性を買われ、ファッション業界に絶大な影響力を誇るカリスマ編集長ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ)のジュニア・アシスタントとして採用されましたが、それが地獄の始まりでした。最悪の上司、ミランダの悪魔のような要求に耐えられず、今までに何人もがこの仕事を辞めていきました。早朝からシニア・アシスタントのエミリー(エミリー・ブラント)に叩き起こされ、ミランダには高度な要求を次々と命令されます。ミランダから失望の言葉を浴びせかけられたアンディは深く傷つきますが、ミランダの右腕のファッション・ディレクターのナイジェル(スタンリー・トゥッチ)から自分の甘さを指摘されて意識が変わります。仕事に気合いが入り、服装もファッショナブルなものを選んで、周囲が驚くほどの大変身を遂げました。ミランダの信頼も徐々に勝ち取っていきますが、ミランダの自宅で彼女が夫と口論している姿を目撃する失敗を犯します。その制裁として、ミランダは発売前の「ハリー・ポッター」シリーズを手に入れろという無茶な命令を下しますが、アンディはパーティーで知り合った有名エッセイストのクリスチャン(サイモン・ベイカー)の助けを得て難題をクリアーし、ますますミランダから気に入られます。仕事が充実する一方で、友人たちと距離ができ、同棲していたシェフの恋人ネイト(エイドリアン・グレニアー)と破局するなど、私生活が壊れていきます。パリ・コレクションに出張したアンディは、クリスチャンと一夜の関係を持ち、ミランダのライバルであるジャクリーヌをランウェイの新編集長に就任させる陰謀が進められていたことを、彼から聞いてしまいます・・・。

レビュー・解説 

ファションに詳しい訳ではないのですが、公開の時からずっと気になっていた映画でした。質の良いコメディに何度もクスリと笑わされるなど、大いに楽しませてもらいました。ファッションには縁遠い私にも楽しさがたっぷりと伝わってきます。前半で通勤途中の主人公のファションがどんどん変わっていくシーンは圧巻で、こんな表現方法もあるのだと感心しまいました。

 

そして、上司役のメリル・ストリーブの迫力の演技。いわゆる「意地悪な上司」なのですが、嫌味ったらしくも役に厚みを出しているのはさすがメリル・ストリープです。この映画が面白いだろうと思った最大の理由は彼女にあったのですが、期待は裏切られませんでした。撮影初日、メリルストープはアン・ハサウェイに、「あなたは、アンディ役に完璧だわ。あなとと一緒に出演できて嬉しい。でも、いい事を言うのはこれが最後よ」と、言って、実際その通りになりました。アン・ハサウェイも、アンディ同様、鍛えられたに違いありません。

 

アン・ハサウェイは、2001年公開の映画デビュー作「プリティ・プリンセス」とその続編で、プリンセスのイメージが定着しましたが、2005年公開の「ブロークバック・マウンテン」でアイドル女優的なイメージを払拭、「プラダを着た悪魔」は一億ドルと超えるヒット作となり、2007年公開の「ジェイン・オースティン 秘められた恋」、2008年公開の「レイチェルの結婚」で芸の幅を拡げ、2012年公開の「ダークナイトライジング」ではキャット・ウーマン役としてアクションをこなすとともに、同年公開の「レ・ミゼラブル」でフォンティーヌ役を演じ、アカデミー助演女優賞を獲得するほどに成長しました。アンディ役には、他にレイチェル・マクアダムズ、ジュリエット・ルイスクレア・デインズが考えられていました。

 

2004年公開のイギリス映画「マイ・サマー・オブ・ラブ」で注目され、「プラダを着た悪魔」でハリウッド進出したエミリー・ブラントも、ミランダとアンドレアの間に立つ筆頭アシスタントを独特の存在感で演じています。いくつかのシーンで背景を彼女が走り回っていますが、これは脚本になく、また指示されたわけでもなく、忙しく走り回るアシスタントを表現したかった彼女の提案です。映画では、イギリスのブランド、ヴィヴィアン・ウエストウッドを身につけています。共演のスタンリー・トゥッチは、後にエミリー・ブラントの姉と結婚しました。

 

メリル・ストリープミランダ・プリーストリー)

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アン・ハサウェイアンドレア・サックス)

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エミリー・ブラント(エミリー・チャールトン)

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スタンリー・トゥッチ(ナイジェル )

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モデルはヴォーグ誌編集長アナ・ウィンター

原作の著者のワイズバーガー自身、「ヴォーグ」誌で編集長アシスタントをしていた経歴を持ち、同誌のカリスマ編集長アナ・ウィンターが劇中のミランダ編集長のモデルであると言われています(ワイズバーガーは表向き、これを否定)。アナ・ウィンターのファッション界における功績は大きく、2009年には「ファッションが教えてくれる事」という、彼女を追ったドキュメンタリー映画が公開されています。一方で、ファッション界でのアナ・ウィンターの君臨ぶりは鬼編集長として噂になるほどで、本人も「噂は本当よ」と肯定しています。

 

アナ・ウィンターは、「ヴォーグ」の編集長に就任した際に、 最終的に首を切られた、もしくは自主退社した人数は30名と言われるやり手で、

  • 編集長の移動手段は運転手付きリムジン、アシスタント数名を従え、お洒落な個室の執務室を持つ。
  • アシスタントはアナが朝オフィスに到着するまでに朝食を用意しなければならないが、朝何時にオフィスに着くのか分からず、コーヒーは熱々でなければダメ(時間差で15人分の朝食を用意する)。スターバックスのコーヒーが好き。
  • ファッションショーの席を予約する時は、誰にも視界を遮られず、誰の視界からも遮られる席を取れという無茶な要求をする
  • 編集スタッフが苦労して半年以上まとめた記事や写真を、編集長はばさばさ切り捨てていく。仕事に対し、個人的な感情を全く差し挟まない。どれだけ心血を注いで創り上げたか知っている、それを捨てる痛みを誰より分かってる。だからこそ、言い訳も理由もなく、バッサリと切り捨てる。
  • 基本は好き嫌いの世界であり、感性に合うか合わないか。ただし一貫したポリシーとイメージがあり、断固たる姿勢でそれを貫く。クリエイティブは憤り、絶望しながらも、絶対負けずに食い下がっていく。

といったエピソードがあり、映画にもいくつか取り入れられています。

 

ミランダとアナ・ウィンターの共通点は、

  • どちらもイギリス人
  • 大手ファッション雑誌の編集長
  • ミランダはパリで、アナはロンドンで海外版の編集を経験
  • ミランダは白いエルメスのハンカチ、アナは黒い大きなサングラスとファッションにこだわりをもつ
  • テニスをやる
  • 二人の子供がいる
  • メトロポリタン美術館の役員を務めている。
  • 結婚に問題を抱え、離婚している。
  • 冷たく、非情な性格
  • 執務室が似ている(上:アナ、下:ミランダ)

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アナ・ウィンターは、プレス向けの試写会に全身プラダで身を固めて出席、映画をいたく気に入り、メリル・ストリープの決断力のある演技を楽しんだと言われています。

 

「ヴォーグ」の73の質問に答えるアナ・ウィンター 

 

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関連作品

プラダを着た悪魔」の原作本Amazon

  ローレン・ワイズバーガー著「プラダを着た悪魔」(上)

   ローレン・ワイズバーガー著「プラダを着た悪魔」(下)

 

 アナ・ウィンターとヴォーグのドキュメンタリーのDVD(Amazon

  「ファッションが教えてくれること」(2009年)

 

アン・ハサウェイの出演作のDVD(Amazon

  「ディケンズのニコラス・ニックルビー」(2002年)

  「ブロークバック・マウンテン」(2002年)

  「レイチェルの結婚」(2008年)

  「ダークナイト ライジング」(2012年)

  「レ・ミゼラブル」(2012年)

  「インターステラー」(2014年)

  「マイ・インターン」(2015年)

 

エミリー・ブラント出演作品のDVD(Amazon

  「マイ・サマー・オブ・ラブ」(2004年)

  「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(2007年)

  「サンシャイン・クリーニング」(2009年)

  「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(2009年)

  「ラブ・トライアングル」(2011年)

  「LOOPER/ルーパー」(2012年)

  「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(2014年)

  「ボーダーライン」(2015年)

  「クワイエット・プレイス」(2018年)

  「メリー・ポピンズ リターンズ」(2018年) 

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プラダを着た悪魔 (字幕版)

プラダを着た悪魔 (字幕版)

プラダを着た悪魔 (吹替版)

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