「アメリカン・ハッスル」:豪華キャストによるキャラクターの響宴
「アメリカン・ハッスル」(原題:American Hustle)は、2013年公開のクライム・コメディ・ドラマ映画です。1970年代にアトランティックシティで起きた収賄スキャンダル「ABSCAM事件」を基に、デヴィッド・O・ラッセル監督とエリック・シンガーが脚本を執筆、デヴィッド・O・ラッセル監督が監督した作品で、実在の詐欺師がFBI捜査官と手を組み仕掛けた前代未聞のおとり作戦を描いています。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:デヴィッド・O・ラッセル
脚本:デヴィッド・O・ラッセル/エリック・ウォーレン・シンガー
出演:
- クリスチャン・ベール(アーヴィン・ローゼンフェルド/メルヴィン・ワインバーグ、詐欺師)
- ブラッドレイ・クーパー(リッチー・ディマーソ、FBI捜査官)
- エイミー・アダムス(シドニー・プロッサー、詐欺師、アーヴィンの愛人)
- ジェレミー・レナー(カーマイン・ポリート、アンジェロ・エリチェッティ市長)
- ジェニファー・ローレンス(ロザリン・ローゼンフェルド、アーヴィンの妻)
- ロバート・デ・ニーロ(ヴィクター・テレジオ)
- マイケル・ペーニャ(パコ・ヘルナンデス)
ほか
あらすじ
1978年、詐欺師アーヴィン・ローゼンフェルド(クリスチャン・ベール)とシドニー・プロッサー(エイミー・アダムス)は愛人関係となり、一緒に仕事を始めました。シドニーは、イギリス貴族のレディ・エディス・グリーンズリィになりすまし、ローゼンフェルドの詐欺を助けます。アーヴィンはシドニーを愛していましたが、養子の息子ダニーを失う事を恐れ彼の不安定な妻ロザリン(ジェニファー・ローレンス)との別れを躊躇していました。一方、ロザリンは、彼が去るならばアーヴィンを警察に通報すると脅していました。 FBI捜査官のリッチー・ディマソ(ブラッドリー・クーパー)はアーヴィンとシドニーの借金詐欺を掴んでいましたが、アーヴィングが4件の逮捕に協力すれば、なかった事にすると持ちかけます。シドニーはこれに反対します。リッチーは、シドニーの自称貴族は嘘との証拠を持っていました。シドニーは、アーヴィングから身を遠ざけ、リッチーを操るとアーヴィンに伝えます。
レビュー・解説
スリリングです。詐欺の世界では、何が嘘で、何が本当なのか、わかりませんが、詐欺の世界に限った事ではないかもしれなせん。愛とて例外ではない、この映画には、そんなハラハラ感があります。
クリスチャン・ベールは大きなヤマを恐れる詐欺師を、ブラッドリー・クーパーは熱いFBI捜査官を、エイミー・アダムスは不幸から這い上がろうとする女性を、ジェレミー・レナーは人々に愛される政治家を、ジェニファー・ローレンスははすっぱな詐欺師の妻を演じます。「アメリカン・ハッスル」は、2014年度のアカデミー賞で、俳優4賞
- 主演男優賞(クリスチャン・ベイル)
- 主演女優賞(エイミー・アダムス)
- 助演男優賞(ブラッドリー・クーパー)
- 助演女優賞(ジェニファー・ローレンス)
すべてに、ノミネートされる、素晴らしいキャスティングとなりました。
クリスチャン・ベール、ブラッドレイ・クーパー、エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、ジェニファー・ローレンス、ルイス・C・K、ロバート・デ・ニーロが演ずる各々のキャラクターを、デヴィッド・O・ラッセルは明確に書き出しました。また、クリスチャン・ベール、エイミー・アダムスは「ザ・ファイター」で、ブラッドレイ・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロは「世界にひとつのプレイブック」でデヴィッド・O・ラッセル監督とのコラボの実績がありました。
主役のクリスチャン・ベールは、スケジュールが合わず一度降板、ブラッドリー・クーパーがこれをカバー、ジェレミー・レナーが新たに加わり、ブラッドリー・クーパーの当初の役を引き継ぎました。その後、クリスチャン・ベールのスケジュールが解決し、復帰、ブラッドリー・クーパーは元のFBI捜査官の役に戻りました。デヴィッド・O・ラッセル監督は、ジェレミー・レナーの為に、新たにカーマイン・ポリートのキャラクターを書き出しました。彼は、テレビのショウ番組「サタデイ・ナイト・ライブ」でのジェレミー・レナーのパフォーマンスを見て、コラボに乗り気になりました。ジェレミー・レナーのユーモアと、イメージを壊しかねないパフォーマンスに感銘を受け、アクション・ヒーローの殻を破る力があると確信したと、デヴィッド・O・ラッセル監督は語っています。
ジェレミー・レナーが演じるカーマイン・ポリートは、ニュージャージー州キャムデンの アンジェロ・エリチェッティ元市長の実話に基づきます。ABSCAM事件のおとり捜査に引っかかり、収賄の罪で三年間、服役した彼は、2013年5月、「アメリカン・ハッスル」が公開される数ヶ月前に、84歳で亡くなりました。彼の友人達は、外見や癖が生き写しのようだと、ジェレミー・レナーの含みのある演技を誉め称えています。特に劇的なシーンでは、ジェレミー・レナーの演技と精力が余りにも似ており、アンジェロ・エリチェッティがスクリーン上で生き返ったと言われました。
テレビシリーズ「リアル・ハウスワイブス・オブ・ニュージャージー」にキャラクターとアクセントのインスピレーションを得たジェニファー・ローレンスの為に、デヴィッド・O・ラッセル監督は彼女が演ずるロザリン・ローゼンフェルドの役を拡げ、発展させています。ジェニファー・ローレンスのパフォーマンスには目を見張ります。彼女の両親は、高校を卒業するまで演技を許しませんでしたが、短いキャリアにも関わらず、彼女のパフォーマンスは大女優にひけをとりません。「ウィンターズ・ボーン」、「世界にひとつのプレイブック」、「ハンガーゲーム」などで、彼女は異なるタイプの役をうまく演じるだけではなく、「世界にひとつのプレイブック」ではアカデミー主演女優賞を獲得した、素晴らしい才能を持った女優です。
何よりも、この映画のサプライズは、クリスチャン・ベールの変貌ぶりでしょう。彼は役の肉体的特徴を実現するため、18キロ増量し、バーコード頭にし、猫背になり、終いには椎間板二枚がヘルニアになってしまいました。クリスチャン・ベールが信じがたい体重の増減をするのは、これが4度目です。
- 29キロ減(「マシニスト」)
- 25キロ減(「戦場からの脱出」)
- 14キロ減(「ザ・ファイター」)
- 18キロ増(「アメリカン・ハッスル」)
あまりの変貌ぶりに、彼がクリスチャン・ベールであることをロバート・デ・ニーロが信じなかった為、ロバート・デ・ニーロが納得するまで説明した上で、再度、クリスチャン・ベールを紹介し直したと、デヴィッド・O・ラッセル監督は語っています。なお、クリスチャン・ベールは、増えた体重を、次の「エクソダス:神と王」撮影の為に、急いで落とさねばなりませんでした。
太鼓腹にバーコード頭のクリスチャン・ベール〜「アメリカン・ハッスル」
このシーンは当初の脚本にはありませんでした。ヘア・スタイリストのアイディアを、デヴィッド・O・ラッセル監督が気に入り、後に脚本に取り入れ、スタイリストクリスチャン・ベールは撮影前日にリハーサルを行いました。
クリスチャン・ベールとジェニファーローレンスが寝室で口論するシーンは、全くの即興です。脚本にセリフがあったのですが、二人が苦労しているのを見て、デヴィッド・O・ラッセル監督は、好きな事を言って良いと判断しました。この映画は即興が多く、クリスチャン・ベールが、「プロットが変わるのでは?」と聞いたところ、「プロットは嫌いだ。キャラクターが俺のすべてだ。」と、デヴィッド・O・ラッセル監督は答えたそうです。彼の映画に対する姿勢が伝わる一言です。
デヴィッド・O・ラッセル監督は、「世界にひとつのプレイブック」、「アメリカン・ハッスル」の二作連続で、アカデミー俳優4賞、主要5部門賞(作品、監督、男優、女優、脚本)すべてにノミネートされました。これは、キャラクターを中心にまとめる彼の映画作りへの評価と言っても良いのではないかと思います。
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関連作品
デヴィッド・O・ラッセル監督xクリスチャン・ベールxエイミー・アダムスのコラボ作品のDVD(Amazon)
デヴィッド・O・ラッセル監督xジェニファー・ローレンスxブラッドレイ・クーパーxロバート・デ・ニーロのコラボ作品のDVD(Amazon)
「世界にひとつのプレイブック」(2012年)
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「アメリカの災難」(1996年)
「スリー・キングス」(1999年)
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「バットマン ビギンズ」(2005年)
「戦場からの脱出」(2007年)
「3時10分、決断のとき」(2007年)
「ダークナイト」(2008年)
「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015年)
エイミー・アダムス出演作品のDVD
「魔法にかけられて」(2007年)
「ダウト〜あるカトリック学校で〜」(2008年)
「her/世界でひとつの彼女」(2013年)
ジェニファー・ローレンスの出演作品のDVD(Amazon)
「ウィンターズ・ボーン」(2010年)
「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」(2011年)
「ハンガー・ゲーム」(2012年)
「ハンガー・ゲーム2(2013年)
「X-MEN: フューチャー&パスト」(2014年)
ブラッドリー・クーパーの出演作品のDVD(Amazon)
「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」(2009年)
「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」(2012年)
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014年)
「アメリカン・スナイパー」(2015年)
贋作や詐欺を描いた映画のDVDの(Amazon)
「オーソン・ウェルズのフェイク」(1973年)
「グリフターズ/詐欺師たち」(1990年)
「ユージュアル・サスペクツ」(1995年)
「スパニッシュ・プリズナー」(1997年)
「オーシャンズ11」(2001年)
「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(2002年)
「マッチスティック・メン」(2003年)
「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男」(2006年)
「トスカーナの贋作」(2010年)
「コンプライアンス 服従の心理」(2012年)
「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)
「ある女流作家の罪と罰」(2018年)
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