「世界にひとつのプレイブック」(原題:Silver Linings Playbook)は、2012年公開のアメリカのコメディ・ドラマ映画です。マシュー・クイックの同名小説を原作に、それぞれに家も仕事も最愛の人も失い心の病んだ型破りな男女が出会い、互いの目的のために協力し合う中で次第に希望と人生を取り戻していく様を、シリアスな中にもユーモアを織りまぜて描いたヒューマン&ロマンティック・コメディです。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:デヴィッド・O・ラッセル
脚本:デヴィッド・O・ラッセル
原作:マシュー・クイック
出演:ブラッドレイ・クーパー(パットリック・ソリターノ・ジュニア、元歴史教師 )
ジェニファー・ローレンス(ティファニー・マクスウェル、警官の夫の未亡人 )
ロバート・デ・ニーロ(パトリツィオ・ソリターノ・シニア、パットの父親)
ジャッキー・ウィーヴァー(ドロレス・ソリターノ、 パットの母親
ほか
あらすじ
妻の浮気に怒りをコントロールできなくなり精神病院に入院したパットは、ようやく退院したものの、妻も仕事も家も失ってしまい、実家に戻って社会復帰を図ります。心身の健康を取り戻せば、妻ともやり直せると思い込んでいるパットでしたが、あいかわらず突然キレてはトラブルを引き起こします。そんなある日、友人に誘われたディナーで近くに住む若い女性ティファニーに出会います。彼女もまた、夫を事故で亡くして心に問題を抱えており、パットは彼女のエキセントリックな言動に振り回されます。ティファニーはパットの妻とも知り合いで、ダンス・コンテストにパートナーになってくれれば、パットがよりを戻せるよう手助けしてすると提案します・・・。
レビュー・解説
デヴィッド・O・ラッセルは、描かれた家族の関係と、自分自身の息子が双極性障害と強迫性障害を持つ関係で、原作に惹かれました。感情的で、問題が起きて、おかしくて、ロマンティック・・・といった内容を混ぜるのは、扱いにくいと言われ、彼は5年かけて25回も脚本を書き直しながら、映画化を狙ってきました。2010年公開の「ザ・ファイター」の成功で勢いづいた彼は、ようやく映画化を実現することができました。
当初、「ザ・ファイター」を成功に導いたパートナーのマーク・ウォールバーグが主役にキャスティングされていましたが、デヴィッド・O・ラッセルは、これをブラッドレイ・クーパーに変えます。ブラッドレイ・クーパーの過去の仕事を見て、彼が本当に怒っているおり、また、それを抑えようとしているように見えること、それがパットのキャラクタに必要であることが、キャスティングを変えた主な理由のひとつであると、デヴィッド・O・ラッセル監督は語っています。「世界にひとつのプレイブック」の製作が遅れた為、マーク・ウォールバーグのスケジュールが合わなくなった背景もありますが、キャラクターを重要視する彼ならではの判断だと思います。
ティファニーは原作では30代半という設定で、ティファニー役には当初、アン・ハサウェイがキャスティングされていましたが、「ダークナイト ライジング」とのスケジュール競合のために降板しました。他に、レイチェル・マクアダムス、オリヴィア・ワイルド、エリザベス・バンクス、ブレイク・ライヴリー、ルーニー・マーラ、キルスティン・ダンスト、アンドレア・ライズボロー、アンジェリーナ・ジョリーが検討されていました。デヴィッド・O・ラッセル監督は、ジェニファー・ローレンス(撮影時21歳)はクーパー(37歳)の相手役としては若すぎると考えており、オーディションは形式だけのものでしたが、彼はオーディション後にその考えを改めました。「彼女の目と、顔には表情があった。それは、多くのスターが目指すもので、年齢は関係ない。」と、語っています。
映画では、プロットがパット中心な為、ジェニファー・ローレンスは開始後25分まで登場しません。かしながら、遅れて登場するジェニファー・ローレンスの存在感はすばらしく、ブラッドレイ・クーパーを凌ぐくらいです。プロットよりも、キャラクターを重視するデヴィッド・O・ラッセル監督ならではの演出でしょう。実際、主演、助演のキャラクターが素晴らしく、ロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァーの助演俳優含む、4人が俳優4賞(主演男優、主演女優、助演男優、助演女優)にノミネートされ、話題になりました。
原題の "Silver Linings Playbook" は、慣用的英語でわかりにくいのですが、"Silver Linings"の部分は「明るい面を見る」、「すべてが悪いものはない」という意味です。"Playbook" は、書かれた或は頭の中にあるコーチの競技戦略で、スポーツ・ゲームをガイドするものです。 ふたつを言葉を合わせると、パットが人生の明るい面を見る為の指南書といった意味になります。
ブラッドレイ・クーパーもさることながら、この作品ではジェニファー・ローレンスに参ってしまいました。彼女を初めて見たのは、2010年公開の「ウィンターズ・ボーン」でしたが、この時は不思議な存在感のある少女という印象はあったものの、二年後にアカデミー主演女優賞を受賞するとは思いませんでした。ケンタッキー生まれの彼女は、14歳の時に俳優になりたいと両親を説得、俳優活動のために2年早く高校を卒業しました。17歳の時に「あの日、欲望の大地で」に出演し、監督のギジェルモ・アリアガに「メリル・ストリープの再来かと思った」と評され、第65回ヴェネツィア国際映画祭では新人俳優賞を受賞しました。2010年に主演した「ウィンターズ・ボーン」での演技が評価され、多くの映画賞のノミネート、受賞を得ています。短期間にオスカー女優に上り詰めるということは、才能に恵まれているということだと思いますが、これからも良い作品で映画ファンを楽しませて欲しいです。
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