夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「アメリカの災難」:実の親探し旅を通してアメリカの多様性をコミカルに描く

アメリカの災難」は、1996年公開のアメリカのコメディ映画です。デイヴィッド・O・ラッセル脚本・監督、ベン・スティラーパトリシア・アークエットらの出演で、夫の実の親に会うため旅に出た、子供が出来て間もない夫婦と養子縁組協会の美女の珍道中を描いたコメディ仕立てのロード・ムービーです。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:デヴィッド・O・ラッセ
脚本:デヴィッド・O・ラッセ
出演:ベン・スティラー(メル・コプリン)
   パトリシア・アークエット(ナンシー・コプリン)
   ティア・レオーニ(ティナ・カルブ)
   メアリー・タイラー・ムーア(メルの養母)
   ジョージ・シーガル(メルの養父)
   アラン・アルダ(リチャード・シュリクティング)
   リリー・トムリン(メアリー・シュリクティング)
   ジョシュ・ブローリン(トニー)
   リチャード・ジェンキンス(ポール)
   シリア・ウェストン(ヴァレリー・スワニー)
   グレン・フィッツジェラルド(ロニー・シュリクティング)
   デビッド・パトリック・ケリー(フリッツ・ブードロー)
   ほか

あらすじ

ニューヨークに住む昆虫学者のメル(ベン・スティラー)と妻ナンシー(パトリシア・アークエット)は、4ヶ月の赤ん坊を抱えて、メルの実の両親に会うため旅に出ます。養子のメルは、アイデンティティの不安を解消するために実の親に会おうと考えました。養子縁組協会から派遣されたインテリ美女のティナ(テア・レオーニ)が同行します。メルの養父母のコップランド夫妻(ジョージ・シーガルメアリー・タイラー・ムーア)は複雑な心境で彼らを見送ります。ところが旅はトラブル続きで、サンディエゴで会ったヴァレリーという女性は協会の間違いで赤の他人でした。本当の親がいるというミシガンに向かうと、父親だという粗暴なトラック運転手ブードロー(デイヴィッド・パトリック・ケリー)が出迎えます。トラックの運転を教えてもらって上機嫌のメルでしたが、実はブードローは本当の父親ではなく、かつての暴走族仲間だったメルの本当の母親は、男とニューメキシコアンテロープに駆け落ちしたと言います。メルはその男の子供だというのですが、当時二人がマズい状況だったため、父親の名義はブードローにしたと言います。混乱するメルでしたが、その時トラックが小さな郵便局を破壊します。メルを事情聴取した担当のFBI捜査官のひとり、ポール(リチャード・ジェンキンズ)はなんとナンシーの高校の同級生でした。彼はバイセクシャルで相棒のトニー(ジョシュ・ブローリン)と実質上の夫婦でした。混乱の極みのメルは旅の間で急接近したティナと危うく関係しそうになります。翌日、ナンシーの社交辞令を真に受けて、捜査官コンビがついてきて、メルは不機嫌の極みになります。一行はついにメルの実の両親リチャードとメアリーのシュリクティング夫妻(アラン・アルダ、リリー・トムリン)に対面します・・・。

レビュー・解説 

実の親探し旅を通してアメリカの多様性をコミカルに描いた作品ですが、後に「ザ・ファイター」(2010)、「世界にひとつのプレイブック」(2012)、「アメリカン・ハッスル」(2013)でアカデミー賞の常連となるデヴィッド・O・ラッセル監督の才能を感じさせる作品です。

 

養子であれば、実の親が気になるのも当然かと思います。ベン・スティラー(メル・コプリン)、パトリシア・アークエット(ナンシー・コプリン)、ティア・レオーニ(ティナ・カルブ)はニューヨークに暮らす知識階級ですが、実の親を探してアメリカを旅するうちに大変な思いをすることになります。開放的な街、サンディエゴで会ったのは裕福な女性で、その娘達にビーチバレーに誘われますが、血のつながりはありませんでした。次に向かったミシガンの労働者の街では粗暴なトラック運転手に会いますが、これも血のつながりがありませんでした。次に向かったニュー・メキシコでようやく実の親と会う事ができるのですが、これがまた大変な人たちでした。

 

アメリカでは宗教上の理由から人工妊娠中絶が一般的ではなく、養子縁組が多く行われたと言われています。養子にとっては、気になるところではありますが、実の親より育ての親というのが一般的な考え方の様です。また、アメリカは日本のような戸籍も無いため、先祖を探りにくいとも言われていますが、もとより移民の国であるアメリカは、過去より現在、そして未来を大切にする国民性と言えるでしょう。「アメリカの災難」のどたばたの背後には、そんなデヴィッド・O・ラッセル監督の暖かい眼差しがあるような気がします。

 

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左から、ベン・スティラー(メル・コプリン)
パトリシア・アークエット(ナンシー・コプリン)
ティア・レオーニ(ティナ・カルブ)

 

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メアリー・タイラー・ムーア(メルの養母、左)と
ジョージ・シーガル(メルの養父、右)

 

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シリア・ウェストン(ヴァレリー・スワニー、右)とその娘達

 

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デビッド・パトリック・ケリー(フリッツ・ブードロー、左)

 

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ジョシュ・ブローリン(トニー、右)とリチャード・ジェンキンス(ポール、左)

 

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リリー・トムリン(メアリー・シュリクティング、左)と
アラン・アルダ(リチャード・シュリクティング、右)

 

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関連作品

デヴィッド・O・ラッセル監督作品のDVD(Amazon

  「スリー・キングス」(1999年) 

  「ザ・ファイター」(2010年)

世界にひとつのプレイブック」(2012年)

  「アメリカン・ハッスル」(2013年)

 

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  「メリーに首ったけ」のDVD(1998年)

  「ミート・ザ・ペアレンツ」のDVD(2000年)

  「ローヤル・テネンバウムス」のDVD(2002年)

  「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(2008年)

「ヤング・アダルト・ニューヨーク」(2014年)

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