「her/世界でひとつの彼女」(原題:Her)は、2013年公開のアメリカのSF恋愛映画です。スパイク・ジョーンズ監督、ホアキン・フェニックス、スカーレット・ヨハンソン、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラら出演で、人格を持つ最新の人工知能型コンピュータオペレーティングシステムに恋をする男を描いています。第86回アカデミー賞では、作品、脚本、作曲、歌曲、美術の5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した作品です。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:スパイク・ジョーンズ
脚本:スパイク・ジョーンズ
出演:ホアキン・フェニックス(セオドア・トゥオンブリー )
スカーレット・ヨハンソン(サマンサの声)
エイミー・アダムス(エイミー)
ルーニー・マーラ(キャサリン)
オリヴィア・ワイルド(ブラインドデート)
クリス・プラット(ポール)
ほか
あらすじ
近未来のロサンゼルスで、セオドア(ホアキン・フェニックス)は顧客に代わって想いを手紙に書く代筆ライターをしていました。共に生活してきた妻キャサリン(ルーニー・マーラ)と別れ、失意の日々を過ごしていました。見かねた友人のエイミー(エイミー・アダムス)が彼に女性を紹介しようとしても、断る始末でしたが、そんな中、彼は人工知能型OSサマンサ(声:スカーレット・ヨハンソン)を手に入れます。サマンサは実態を持たないものの、話してみると驚くほど個性的で人間味に溢れ、生身の女性よりも魅力的でした。サマンサにとっても、セオドアを通して見る外の世界は驚きに満ちており、やがて二人の間に恋が芽生えます・・・。
レビュー・解説
OSとの恋愛のみならず、人間の様々な愛の形を、賢く、甘く、そして心を込めて描くことにより、単なるSFを超え、人間の愛に関するヒューマン・ドラマに仕上がっています。
単なる人工知能とオタクの恋物語と思いきや、このSF恋愛映画は意外に深いです。代筆屋、別れた妻、サイバー・セックス、出会い系、代理セックス、別れた妻と、様々な愛の形が多層的に描かれており、人工知能との恋愛に厚みを与える素晴らしい脚本です。初の監督作品「マルコヴィチの穴」(1999年)で注目を浴びたスパイク・ジョーンズは、本作で脚本も担当、2013年度のアカデミー脚本賞を受賞するという多才さを発揮しています。
映像や音楽も美しく、この作品を優雅で質の高いモノにしています。街の風景、特に上海ワールドフィナンシャルセンターなどの未来的な摩天楼は、実際に上海で撮影されたものが使われています。また、カレン・Oがこの映画の為に作曲した、「Moon Song」*3もこの映画にマッチした素晴らしいラブ・ソングで、同じくアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされました。
キャストも豪華です。主演のホアキン・フェニックスは実力派俳優で、「グラディエーター」でアカデミー助演男優賞に、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」、「ザ・マスター」ではアカデミー主演男優賞にノミネートされています。「her/世界でひとつの彼女」では、ちょっとオタクっぽい、優しくてナイーブな中年を好演しています。
ホアキン・フェニックス(セオドア・トゥオンブリー )
スカーレット・ヨハンソンは、アメリカではどちらかというとセクシー派女優として位置づけられているようですが、「her/世界でひとつの彼女」では声だけの出演で魅力的な OS を演じきっています。本作で第8回ローマ映画祭最優秀女優賞を受賞しましたが、声だけの出演でこうした賞を受賞するのはあまり例がありません。
エイミー・アダムズは、ディズニー映画「魔法にかけられて」主演での優等生的な女優という印象があったのですが、「Junebug」(日本未公開)、「ダウト〜あるカトリック学校で〜」、「ザ・ファイター」、「ザ・マスター」、「アメリカン・ハッスル」と5度もアカデミー助演女優賞にノミネートされている実力派女優で、「ザ・マスター」ではホアキン・フェニックスとも共演しています。「her/世界でひとつの彼女」では、ちょっとオタクっぽい女性プログラマー(セオドアの元カノ)をうまく演じており、演技の幅の広さを感じさせます。
エイミー・アダムス(左、エイミー)
「Moon Song」を作曲したカレン・Oは、スパイク・ジョーンズ監督の元恋人ですが、別れた後もこのようなクリエイティブな関係を続けているのは素晴らしいです。彼女はロックバンド「ヤー・ヤー・ヤーズ」のボーカリストで、映画「ドラゴン・タトゥーの女」のオープニング・クレジットでは、トレント・レズナーと連名でレッド・ツェッペリンの「移民の歌」をカバー*4していますが、先の「Moon Song」と異なり、こちらはハードな印象の曲で、硬軟の幅の広さを感じます。
ルーニー・マーラはセオドアの別れた妻を演じています。
「her/世界でひとつの彼女」に見られるように、人間の愛の形は様々であり、人工知能とのロマンスも可能だと思います。しかし、「博士と彼女のセオリー」の公開で注目を浴びたホーキング博士のように、人工知能の進化に警鐘を鳴らす知識人もいます。世の中、良いことづくめということはありえないので、こうした議論は大いにすべきでしょう。
動画クリップ(YouTube)
- 「Moon Song」〜「her/世界でひとつの彼女」
スパイク・ジョーンズ監督の元カノ、カレン・Oがこの映画の為に作曲、アカデミー歌曲賞にノミネートされたラブ・ソング。 - 映画「ドラゴン・タトゥーの女」のオープニング・クレジット
カレン・Oがトレント・レズナーと連盟でカバーしたレッド・ツェッペリンの「移民の歌」をカバーしている。
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