夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」:テニス男女決戦の実話に基づき、人間模様を描きつつ女性差別を風刺するヒューマン・コメディ&ドラマ

バトル・オブ・ザ・セクシーズ」(原題:Battle of the Sexes)は、2017年公開のアメリカのスポーツ系ヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。全世界のテニスファンの注目を集めた1973年の男女決戦の実話に基づき、ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス監督、エマ・ストーン、スティーブ・カレルら出演で、女子の優勝賞金が男子より少ないことに抗議する女子テニスの現役世界女王ビリー・ジーン・キング、彼女に挑戦状を叩きつける55歳の男子テニス元世界王者のボビー・リッグス、そして二人を取り巻く人々の人間模様を描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス
脚本:サイモン・ボーファイ
撮影:リヌス・サンドグレン
出演:エマ・ストーン(ビリー・ジーン・キング、女子テニスのトップ・プレイヤー)
   スティーブ・カレル(ボビー・リッグス、55歳、男子テニス元チャンピオン)
   アンドレア・ライズボロー(マリリン・バーネット、ビリー・ジーンの愛人)
   サラ・シルバーマン(グラディス・ヘルドマン、女子テニスのプロモーター)
   ビル・プルマン(左、ジャック・クレイマー、全米テニス協会の会長)
   アラン・カミング(テッド・ティンリング、女子テニスのデザイナー)
   エリザベス・シュープリシラ・リッグス、ボビーの裕福な妻)
   オースティン・ストウェル(ラリー・キング、ビリー・ジーンの夫、弁護士)
   ナタリー・モラレス(ロージー・カザルス、ビリー・ジーンの同僚)
   ジェシカ・マクナミー(マーガレット・コート、ビリー・ジーンのライバル)
   エリック・クリスチャン・オルセン(ロニー・クール、ボビーのマネージャー)
   ルイス・プルマン(ラリー・リッグス、ボビーの息子)
   マーサ・マックアイサック(ジェーン・バートコウィックツ、女性テニス選手)
   ウォレス・ランガム(ヘンリー、テッドの同僚)
   フレッド・アーミセン(レオ・ブレア、食餌療法を支援する医療栄養専門家)
   ほか

あらすじ

  • 1970年、ビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)とグラディス・ヘルドマン(サラ・シルバーマン)は、ジャック・クレイマー(ビル・プルマン)と対立していました。彼が組織化したテニストーナメントでは、チケットの売上が同じにもかかわらず、女子の賞金が男子の1/8だったのです。キングとヘルドマンは女性だけのツアーを始めると脅しましたが、クレイマーは女子テニスが劣る点を挙げ、賞金を変えようとしませんでした。ビリー・ジーンら最初の9選手が女性だけのヴァージニア・スリム・ツァーに登録すると、クレイマーは彼女らを全米テニス協会から締め出しました。
  • 女子ツァーの立ち上げに悪戦苦闘する中、ビリー・ジーンは彼女のヘア・ドレッサーであるマリリン・バーネット(アンドレア・ライズボロー)と恋に落ち、ラリー・キング(オースティン・ストウェル)との結婚生活が危うくなります。一方、ボビー・リッグス(スティーブ・カレル)はギャンブル依存症の為、裕福なプリシラ・ホエラン(エリザベス・シュー)との結婚生活の維持が難しくなります。テニスの賭けでロールスロイスをせしめたことが妻にばれ、家を追い出された彼は、55歳の彼でも勝てるという触れ込みで女子テニスのトップ・プレイヤーと試合をすることを思いつき、これに人生の一発大逆転を賭けます。
  • 1973年に設立された女性テニス協会とともに女子プレイヤーによるツァーは徐々に足場を固めます。リッグスは「男性優位主義の代表」と自称し、彼と試合をするようにキングにプレッシャーをかけ続けます。リッグスは、最近キングを打ち負かし世界一のランキングを得たマーガレット・コートを説得、1973年の5月に彼女との試合を実現、造作なくマーガレットを破ります。このままでは女子テニスへの逆風が強まると危機感を感じたキングは、試合の手配・準備に対する最終決定権を得ることを条件に、リッグスの挑戦を受け入れます。マーガレットに楽勝して悠々自適のリッグスを尻目に、キングは集中的に練習に取り組み、クレイマーが解説するならば試合に出ないと脅し、クレイマーを解説者から引きずり下ろします。全世界、9000万人の視聴者が注目する中、バトル・オブ・ザ・セクシーズ(男女決戦)の火蓋が切られます・・・。

レビュー・解説

世界の注目を集めた1973年のテニス男女決戦の実話に基づき、対戦した男女とそれぞれを取り巻く人間模様を、時にスリリングに、時に甘く、時にコミカルに、時にドラマチックに、娯楽性たっぷりに描きながら、図らずも今なお根強く残る女性差別を風刺するスポーツ系ヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。

 

1973年のテニス男女決戦の実話に基づくヒューマン・コメディ&ドラマ映画

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ウーマン・リブの時代

19世紀後半から20世紀前半にかけて起こった女性の参政権運動をフェミニズムの第一波とすれば、「男女は社会的には対等・平等であって、生まれつきの肌の色や性別による差別や区別の壁を取り払うべきだ」と1960年代後半にベトナム反戦運動公民権運動に連動する形で起こり世界に広まったウーマン・リブは、フェミニズムの第二波とも言える大きな時代の波でした。少なからず影響を受けた日本では1972年に男女雇用機会均等法が制定され、世界的には1979年の国連総会で女子差別撤廃条約が採択されるなどの成果をもたらしました。本作は、そんな時代の出来事です。

興行としての男女決戦

1970年代は現在より差別的な時代ではありましたが、それを跳ね返そうという勢いがあり、熱い議論がなされた時代でもあります。テニスでは男性のサーブの最高速が時速250キロを超えるのに対して、女性は200キロ超えがいいところと、男女の体力差は歴然としています。20代の現役女性トッププレーヤーと50代の元男性世界チャンピオンとの男女が対決したところで、それが絶対的な男女の優劣をフェアに決するものかどうかは疑問が残ります。しかしながら、ウーマンリブの大きなうねりの中、シンパ、アンチ含めて全世界で9000万人の視聴者を集めるなど世界の大きな注目を浴びてこの男女決戦が興行として成り立ったことが本作の大きなポイントです。劇中のボビー・リッグスの過激な言動をビリー・ジーン・キングがにこにこと笑ってやり過ごしていますが、これは彼の言動がすべて客寄せの為のパフォーマンスであることがわかっているからです。

 

興行には胡散臭さがつきものですが、ご多分に漏れずこの男女決戦にも疑惑があります。ギャングへの10万ドルの借金を帳消しにする為に、ボビー・リッグスがわざと負けたのではないかという疑惑です。ボビー・リッグス亡き後に出てきた話で本人に確認することはできませんが、対戦相手だったビリー・ジーン・キングは「彼は真剣に戦っていた」と疑惑を明確に否定しています。また、ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス両監督も、ボビー・リッグスがビリー・ジーン・キングに勝利した後に賭金100万ドルでクリス・エバートと戦うつもりだったという事実を挙げ、10万ドルの借金を帳消しにする為に試合を捨てることはあり得ないと、疑惑を否定しています。

舞台裏の人間ドラマを描く

男女決戦の勝利を通してビリー・ジーン・キングの女性差別との戦いを讃える作品かと思いきや、既婚ながらも同性への思いを抑えきらず情事を重ねる彼女や、ギャンブル依存症に苦しみ妻に別れを告げられる対戦相手のボビー・リッグスにもかなりの時間を割いて描写しており、そうした人間的な側面にいつの間にか感情移入してしまう構成に意表を突かれます。胡散臭さが拭いきれないスポーツ興行を題材にしながら、対戦する二人の人間的な「実」を描くことにより、本作は多層的で厚みのある作品になっています。

単なるテニスの映画というわけではなく、ラブストーリーでもあり、人間関係も描かれています。ボビー・リッグスとその奥さん、ビリー・ジーンとその旦那さん、そして恋人などがそうですね。その他にも男女差別など多くの要素や多層的なテーマがあります。

この男女決戦が行われた時、私達はすでに生まれていましたが、この試合だけでは映画を作る気にはなりませんでした。私達にとって初めてのスポーツ映画になりましたが、そんな映画を撮ろうとは夢にも思っていなかったのです。私達の興味を引いたのは試合以外の話、特に結婚していたビリー・ジーンが目覚め、自分について知り、試合に至るプレッシャーの中で初めて女性と関係する話です。そうした試合以外の様々な興味深い話や観点が、私達を映画製作に駆りたてました。

実際のボビーも、全く憎めないんですよ。とても人を楽しませることに長けていて、調べれば調べるほどに魅力的に感じました。その人柄を最大限に捉えようと、演出では努力しましたね。(ヴァレリー・ファリス監督)

スポーツ映画の中にふたつのラブ・ストーリーとともに政治的な観点もあることが気に入っています。(ジョナサン・デイトン監督)
https://cinema.ne.jp/recommend/battleofthesexes2018070606/
https://www.theyoungfolks.com/film/109919/interview-valerie-faris-and-jonathan-dayton/

劇中では過激な言動を繰り返すボビー・リッグスですが、実生活ではビリー・ジーン・キングとは生涯を通じての友人で、彼が1995年に前立腺癌で亡くなる前日にもビリー・ジーンと電話で話をしています。因みに、テニスの男女決戦の後、テレビに出演した二人はバトル・オブ・ザ・セクシーズのパロディを卓球で演じてみせ、茶の間を沸かせています(「動画クリップ(YouTube)」の項参照)。

1970年代の描写にクラク

ピンクや赤・青・黄といった原色が溢れる活気に満ちた1970年代の雰囲気を再現すべく、本作は35ミリフィルムで撮影されており、まるでタイム・スリップでもしたかのようでクラクラしそうです。また、女性の未来志向と男性の保守志向を暗喩として画作りに落とし込むなどのこだわりも見られます。

1970年代の映像に見せることに、監督の2人はこだわっていた。物語を支えるための工夫としては、1970年代以降のビンテージ分析を参考にしたよ。そして、女性は未来志向、男性は過去志向と決めて、登場人物の顔の向きでそれを表現した。女性は未来を示す右を向き、男性は左を向いている。(リヌス・サンドグレン撮影監督)
https://eiga.com/news/20180614/3/

 

1970年代のカラー・スキームにクラク

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ビリー・ジーンの戦略性と葛藤

身長168センチのエマ・ストーンは本作出演の為に60キロ近くまで増量しましたが、映画で見るとテニス・プレイヤーとしては華奢な印象です。女子プロスポーツ選手として最多の生涯賞金を稼いだセレナ・ウィリアムズ(最近、大坂なおみに敗れたのが記憶に新しい)の175センチ、70キロに比べれば確かに華奢ですが、ビリー・ジーン・キング本人が164cm、60kgと比較的華奢なプレイヤーでした。ビリー・ジーン・キングは感情を発散するプレイ・スタイルと言われますが、ボビー・リッグスとの戦いは戦略的でした。マーガレット・コートが後ろに下がって守勢にまわり、ボビー・リッグスに破れたのに対し、ビリー・ジーンはボビー・リッグスを前後左右に振り、体力を消耗させる戦略をとっています。必ずしも優位を取れないパワーショットの応酬を避け、55歳の相手の弱点である持久力を突く巧みな戦略です。

 

この頃のビリー・ジーンは、

  • 女性によるテニストーナメントの立ち上げ
  • ボビー・リッグスからの挑戦
  • 既婚にもかかわらず抑えきれない同性への思い

といった三重の葛藤を抱えていますが、男性主導の全米テニス協会に反旗を翻したものの、マーガレット・コートがボビー・リッグスに破れて女子テニス全体が窮地に追い込まれるまでは、彼からの挑戦を回避します。また、当時は同性愛に対する世間の目が非常に厳しかった為、彼女はマリリン・バーネットとの関係をカミング・アウトしませんでした。映画では明確には描かれていませんが、マリリンとの関係は7年間続き、1981年にマリリンは財産分与を求めてビリー・ジーンを告訴、追い詰められたビリー・ジーンはやむなく女性との性的関係を認めました。時代は依然として厳しく、彼女はキャリアを失いかけますが、数年かけてなんとか回復します。これは、裁判費用を捻出する為に引退できないという背水の陣の戦いでもありました。2009年、ビリー・ジーンは、長年の女性及び同性愛者の権利向上への貢献に対しアメリカの民間人の最大の栄誉である大統領自由勲章を授与されましたが、彼女は社会の様々な不合理に遮二無二に戦うというよりは、自身が抱えた問題に対してキャリアを最優先に先送りすべきことは先送りしながら戦略的に戦ってきたように思われます。

個性あふれる俳優たちの熱演

4ヶ月間トレーニングを続けて筋肉をつけ、約7キロ体重を増やしたエマ・ストーンは、ノーメイクでナチュラルな魅力を見せています。義歯をつけてボビー・リッグスそっくりに変身したスティーヴ・カレルは、4ヶ月かけて当時のボビー・リッグスの映像を研究、親友や試合時の担当コーチに人物像をヒアリングして役作りし、本人と見紛うばかりのパフォーマンスを見せています。この二人の著名な俳優のパフォーマンスについては多くを語る必要もないかと思いますが、ビリー・ジーンの愛人マリリン・バーネットを演じるアンドレア・ライズボローも見事な演技を見せています。出演時間も短く、セリフもさして多くない中、同性の女性を引きつける不思議な魅力と(本作では描かれていないが後にビリー・ジーンを告訴することになる)危うげな雰囲気を彼女は表情と仕草で見事に醸し出し、一貫した強い印象を残します。二人の絡みの演出はヴァレリー・ファリス監督に任されており、女性ならではの視点でアンドレア・ライズボローのパフォーマンスが引き出されたものと思われます。また、バイ・セクシャルであることを公表しているアラン・カミングがゲイのデザイナーを演じ、同性愛に嵌まるビリー・ジーンをさり気なく助けたり、アドバイスを与えたりするという、コミカルに虚実交錯する演出が作品を引き立てています。

 

女子テニスのプロモーター役を演じるサラ・シルバーマンの活躍も見逃せません。彼女は、アメリカのコメディアン、作家、女優、ミュージシャンで、個人的には「素敵な人生の終り方」(2009年)のカメオ出演で見せる強烈な下ネタ一発芸が強く印象に残っています。特徴的な声で役を演じ、役に溶け込むよりも役を自分に寄せる芸風が禍してか、映画への出演はちょい役的なものが多いのですが、本作では女子テニスのプロモーターというセリフも多い重要な役回りで楽しませてくれます。2008年、彼女は交際していたコメディアンのジミー・キンメルのトーク番組に出演、マット・デイモンとの浮気を告白するビデオ「I'm Fxxking Matt Damon」を披露します。実際にデイモンも登場するこのビデオに、ジミー・キンメルは自分はデイモンの親友であるベン・アフレックと浮気しているというビデオ「I'm Fxxking Ben Affleck!」を作って反撃します。こちらにはベン・アフレックの他にブラッド・ピットキャメロン・ディアスらセレブが多数出演しており、このビデオ合戦はアメリカで大きな話題になりました。サラ・シルバーマンは自作自演の曲「I'm Fxxking Matt Damon」でクリエイティブ・アーツ・エミー賞の最優秀オリジナル歌曲賞を受賞しています。「動画クリップ(YouTube)」の項に関連ビデオを挙げておきますが、サラ・シルバーマンの魅力が凝縮されたようなビデオです。 場外ではありますが、こうした彼女の魅力を知った上で、本作を観るのも格別です

ハリウッドに根強く残る男女収入格差

ビリー・ジーンは女子テニスの賞金額が男子の1/8であることに抗議しましたが、こうした問題はテニス業界に限った話でも過去の話でもありません。ハリウッドは依然としてギャラの男女格差解消に消極的なようで、「6才のボクが、大人になるまで。」(2014年)でアカデミー助演女優賞を受賞した際に受賞スピーチで男女の賃金格差の是正を主張したパトリシア・アークエットは、その後、映画出演の話が来なくなるという憂き目に遭いました。

 

また、「ゲティ家の身代金」(2017年)ではケヴィン・スペイシーのセクハラが発覚した為、クリストファー・パルマーを代役に立てて再撮影が行われましたが、10日間の撮り直しのギャラが、

と、なんと1500倍もの格差があったことが判明しました。ミッシェル・ウィリアムズは当初から、

と語っていました。撮り直し為の予算が1000万ドルしかなかった為、代役のクリストファー・プラマーにはギャラが支払われたものの、リドリー・スコット監督や他のキャストはノーギャラで撮り直しに応じました。しかし、マーク・ウォールバーグのエージェンシーが本人が知らないところで、

と、マーク・ウォールバーグの追加出演料を独自に折衝したというのが真相のようです。さらに、「ゲティ家の身代金」のそもそもの出演料が、

と8倍もの格差があり、ミシェル・ウィリアムズにのみ、

  • 再撮影には無条件で応じなくてはならない

という契約条件がついていたことが判明しました。ちなみに、マーク・ウォールバーグの500万ドルは減額交渉を受けた結果であり、これが撮り直しの際の追加出演料の独自交渉につながったようです。

 

興味深いのは、マーク・ウォールバーグミシェル・ウィリアムズも同じエージェンシーに属することで、 インディーズ映画に数多く出演し、必要以上にお金には固執しないようには見受けらるものの、過去に4度もアカデミー賞にノミネートされている大女優のミシェル・ウィリアムズの主演ギャラが、マーク・ウォールバーグの1/8という驚くべき不均衡がエージェンシー内部で容認されていることです。ギャラが交渉で決まるのは当然としても、その大前提には、

  • 男優が出演料を交渉するのは積極的と評価されるが、女優が出演料を交渉するのは小うるさいと嫌われるというジェンダー・バイアスがかかった暗黙の商慣習

があるのかもしれません。マーク・ウォールバーグは本件にすばやく対応し、

を、ミシェル・ウィルアムズが署名するセクハラ被害者支援団体「Time's Up」に寄付することで鎮火しましたが、出演料の格差のみならず、ケヴィン・スペイシーのセクハラ事件対応をエージェンシーが自らの利益の為に利用したことが露わになった形で、少々、後味の悪いものになりました。ビジネスや商慣習と倫理のバランスの取り方は各人、各様ですが、こうしたギクシャクはまだまだ続くかもしれません。

 

エマ・ストーン(ビリー・ジーン・キング、女子テニスのトップ・プレイヤー)

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エマ・ストーン(1988年〜)はアリゾナ出身のアメリカの女優。11歳の時に初めて舞台出演、その後、数々の舞台に出演するとともに、即興コメディ劇団にも参加、15歳の時に高校を中退、女優を志す。両親を説得して、母親と共にロス・アンジェルスに移り、日中にオーディションに受け、夜は家で勉強する生活を送る。2004年にタレント発掘番組で役を勝ち取り、テレビでのキャリアが始まるが、出演する番組がパイロット・エピソードのみで終わったり、途中でシリーズが打ち切られるなど、なかなか芽が出ず。2007年に青春コメディ「スーパーバッド 童貞ウォーズ」で映画デビュー、ジョナ・ヒル演じる主人公の恋人を演じる。脚本に人物描写がほとんどないような役だったが、作品のヒットとともに彼女も注目される。その後も、コメディ映画「ROCKER 40歳のロック☆デビュー」、「キューティ・バニー」、「ゴースト・オブ・ガールフレンズ・パスト」、「ゾンビランド」、「Paper Man」で名だたる俳優と共演するようになり、2010年に主演を務めた「小悪魔はなぜモテる?!」でゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされ、彼女の大きなブレイクスルーとなる。その後、「アメイジングスパイダーマン」シリーズなど、メジャーな作品に出演するようになり、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)で並み居る名優を相手にシリアスな役に挑戦、アカデミー助演女優賞にノミネートされる。2016年には「ラ・ラ・ランド」でアカデミー主演女優賞を受賞、フォーブスの「最もギャラの高い世界の女優2017」でトップ(約2600万ドル)にランクされるまでになる。同じく10代半ばで女優を志し、両親を説得して大都市に移り住み、その後とんとん拍子でスター街道を上り詰めたジョニファー・ローレンスと異なり、犬のお菓子屋さんで働くなど下積みの時代もあったエマ・ストーンだが、この世代を代表する才能に恵まれた女優の一人と見做されており、今後のさらなる活躍が期待されている。

 

ティーブ・カレル(ボビー・リッグス、55歳、元男子テニスチャンピオン)

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スティーヴ・カレル(1962年〜)は、マサチューセッツ州出身のアメリカの俳優、コメディアン、脚本家、映画プロデューサー。イタリア、ドイツ、ポーランドの血を引く。学生時代より即興劇団で活動 、大学卒業後、シカゴのコメディ劇団に参加、その後、脚本家兼俳優としていくつかのテレビ番組の仕事をする。1991年に映画デビューするが、その後もテレビ中心に活動し、1999年よりコメディ・ニュース番組にレギュラー出演、広く知られるようになる。「ブルース・オールマイティ」(2003年)、「俺たちニュースキャスター」(2004年)、「奥さまは魔女」(2005年)などに出演、「40歳の童貞男」(2005年)では主演を務め、全米だけでも1億ドルを越える興行収入を稼ぐ。その後、経済誌フォーブスの「アメリカのテレビ界で最も稼いでいる男性」にたびたびランクインするようになる。「フォックスキャッチャー」(2014年)では、第87回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされている。

 

アンドレア・ライズボロー(マリリン・バーネット、美容師、ビリー・ジーンの愛人)

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アンドレア・ライズボロー(1981年〜)は、イングランド出身のイギリスの女優。幼少期より演劇を好み、王立演劇学校に進んで、在学中に3度テレビドラマに出演する。2005年に卒業後、舞台に立ち、舞台とテレビで数々の賞にノミネートされ、受賞する。「ハッピー・ゴー・ラッキー」(2008年)、「わたしを離さないで」(2010年)、「ファクトリー・ウーマン」(2010年)、「シャドー・ダンサー」(2012年)、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)、「スターリンの葬送狂騒曲」(2017年)、「ナンシー」(2018年)、「マンディ 地獄のロード・ウォリアー」(2018年)などに出演している。

 

サラ・シルバーマン(グラディス・ヘルドマン、女子テニスのプロモーター)

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サラ・シルバーマン(1970年〜)はニューハンプシャー州出身のアメリカのコメディアン、作家、女優、ミュージシャン。ユダヤアメリカ人の彼女は、人種差別、性差別、宗教のような社会的タブーや論争の的となるような社会問題を好んで扱う。12歳でコミュニティ劇場に入り、15歳でボストンのローカル番組に出演、17歳でレストランでスタンドアップ・コメディを始め、歌も歌う。1993年、「サタデー・ナイト・ライブ」に放送作家、準レギュラー出演者として採用され注目されるが、1シーズンで解雇される。特徴的な声で演じ、役に溶け込まず、逆に役を自分に寄せてしまうのがその理由と言われている。後に主演を務めたホームコメディ「サラ・シルバーマン・プログラム」(2007年〜2010年)で成功を収める。2008年、交際していたコメディアンのジミー・キンメルのトーク番組に出演、マット・デイモンと浮気していると告白するビデオ「I'm Fxxking Matt Damon」を披露、実際にデイモンも登場するこのビデオに、ジミー・キンメルはデイモンの親友であるベン・アフレックと浮気しているというビデオ「I'm Fxxking Ben Affleck!」を作って反撃する。こちらにはベン・アフレックの他にブラッド・ピットキャメロン・ディアスらセレブが多数出演、このビデオ合戦はアメリカで大きな話題になる。サラ・シルバーマンは「メリーに首ったけ」(1998年)、「スクール・オブ・ロック」(2003年)、「素敵な人生の終わり方」(2009年)、「ザ・マペッツ」(2011年)などの映画に出演している。

  

ビル・プルマン(左、ジャック・クレイマー、全米テニス協会の会長)

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ビル・プルマン(1953年〜)は、ニューヨーク出身のアメリカの俳優。イングランド及びオランダの血を引く。大学卒業後にモンタナ州立大学で演劇を教えるが、28歳のときにニューヨークに移り、俳優を志す。様々な劇団の舞台に立ち、1986年に映画デビュー、 「プリティ・リーグ 」(1992年)、「シングルス」(1992年)、「甘い毒」(1994年)、「あなたが寝てる間に…」(1995年)、「17歳の処方箋」(2002年)、「You Kill Me」(2007年)、「Walking Out」(2017年)などに出演している。

 

アラン・カミング(テッド・ティンリング、女子テニスのデザイナー)

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アラン・カミング(1965年〜)は、スコットランド出身のイギリスの俳優。グラスゴーで演技を学んだ後、舞台・テレビで活躍、舞台俳優、映画俳優。映画監督、脚本家、作家など、その活動は多岐にわたる。舞台「キャバレー」では、トニー賞を始め、数々の賞を受賞している。映画ではゲイ、変人、オタク等の変わった役や、特殊メイク、白塗りの役が多い。1985年に女優のヒラリー・リオンと結婚したが、1993年に離婚、バイセクシュアルとと公言し、2007年にグラフィック・アーティストの男性と同性婚を挙げている。「Emma エマ」(1996年)、「スパイキッズ」(2001年)、「X-MEN2
X2」(2003年)などに出演している。

 

エリザベス・シュープリシラ・リッグス、ボビーの裕福な妻)

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エリザベス・シュー(1963年〜)は、デラウェア州出身のアメリカの女優。大学在学中に勉学を中断して女優を志す(後にハーバード大に戻り、15年後に学位を取得)。「ベスト・キッド」(1984年)、「リービング・ラスベガス」(1995年)、「ミステリアス・スキン」(2004年)などに出演、「リービング・ラスベガス」でアカデミー主演女優賞にノミネートされている。

 

オースティン・ストウェル(右、ラリー・キング、弁護士、ビリー・ジーンの夫)

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オースティン・ストウェル(1984年〜)は、コネチカット州出身のアメリカの俳優。高校を卒業後、演劇学校で演技を学ぶ。コネチカットを拠点とする劇団の舞台などに出演し、2009年にテレビドラマ・デビュー、2011年に映画デビュー。「イルカと少年 」(2011年)、「セッション」(2014年)、「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015年)などに出演している。

 

ジェシカ・マクナミー(マーガレット・コート、ビリー・ジーンのライバル)

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ジェシカ・マクナミー(1986年〜)はシドニー出身のオーストラリアの女優。テレビドラマ・シーリズで名を知られるようになる。「ラブド・ワンズ」(2009年)などに出演している

動画クリップ(YouTube

撮影地(グーグルマップ)

 

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