夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ハッピー・ゴー・ラッキー」:30歳の女性教師の楽天的な日常をヴィヴィッドに描いたサリー・ホーキンスの出世作

「ハッピー・ゴー・ラッキー」(原題:Happy-Go-Lucky)は、2008年公開のイギリスのヒューマン・コメディ/ドラマ映画です。マイク・リー監督・脚本、サリー・ホーキンスらの出演で、楽天的な性格の女性教師と周囲の人々との関わり合いを描いています。第58回ベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)、第66回ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞した作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト  

監督:マイク・リー
脚本:マイク・リー
出演:サリー・ホーキンス(ポーリン「ポピー」クロス)
   エディ・マーサン(スコット)
   アレクシス・ゼガーマン(ゾーイ)
   アンドレア・ライズボロー(ドーン)
   シネイド・マシューズ(アリス)
   ルヴェストラ・ル・トゥーゼル(ヘザー)
   サミュエル・ルーキン(ティム)
   キャロリン・マーティン(ヘレン)
   カリーナ・フェルナンデス(フラメンコ講師)
   ほか

あらすじ

ポピー・クロス(サリー・ホーキンス)は楽天的な30歳。熱心で生き生きとした小学校の低学年の教師です。昔からの親友のゾエ(アレクシス・ゼガーマン)とルームシェアで暮らし、妹の一人とは仲がいいけど、もう一人とはそうでもありません。彼女は厳しいインストラクターのスコット(エディ・マーサン)に運転を習ったり、情熱的なスペイン人のフラメンコ講習を受けたり、ホームレスに出くわしたり、ソーシャルワーカーの助けを借りて乱暴な生徒を諫めたりします。彼女のオープンな周囲の人に、誤解や悪事に嵌るのではという懸念を生んだりますが・・・。

レビュー・解説

マイク・リー監督が、サリー・ホーキンスの即興を生かし楽天家のライフスタイルをヴィヴィッドに描き出しています。主人公のポピーと周囲の人々とのインタラクションや、ポピーに深みを出していく様も素晴しく、楽しい一方で切れ味のあるこのコメディはサリーの魅力を見事に引き出しており、彼女の大きな出世作となりました。

 

オープニング・クレジットで、サリーが扮するポピーが自転車で楽しそうに走るシーンが流れますが、その生き生きした様子にクラクラします。続いて本編に入り、彼女は無愛想な店員に何度も話しかけますが、その様子がまさに、「いる、いる。こういう人、確かにいる。」という感じで、彼女の魅力が冒頭から全開です。店員からまともな反応が得られないまま書店を後にした彼女は、自転車が盗まれたことに気がつきます。そこで、彼女の口から出てくるのが、

POPPY: Oh, no, I didn't even get a chance to say goodbye.

ポピー:あら、いやだ。さよならも言ってないのに。

と、いうセリフ!続いて、彼女のルームメイトと妹が馬鹿話に興ずるシーンで、これもかしましいというか、本当にありそうな展開で、とってつけたような笑いではなく、リアルに笑わされます。さらに続く数々のシーンで笑わされるうちに、彼女の職業や人生観が少しずつ明らかになっていくという仕掛けになっていますが、サリーが楽天的なポピーに深みを出していく様が見事です。

 

サリー・ホーキンスは、1998年に王立演劇学校を卒業、主にイギリス国内の舞台等で活躍していた女優で、これ以前にもマイク・リー監督の映画に出ていましたが、この作品が初めての主役でした。眼鏡に適うものがあったのでしょう、マイク・リー監督は当初から彼女の主役を想定してこの映画の脚本を書いており、それは見事、的中しています。この作品以降、彼女は「17歳の肖像」や「ジェーン・エア」等の世界的なヒット作のキャストに名を連ねる様になり、ケイト・ブランシェットと共演した「ブルー・ジャスミン」ではアカデミー助演女優賞にノミネートされ、「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年)では同主演女優賞にノミネートされている国際的な実力派女優となりました。

 

マイク・リー監督は、同じく即興を生かすイギリス人監督のケン・ローチとよく比較されます。ケン・ローチ監督は、政治的なメッセージを持つ作品の中で、何度もテイクを繰り返しながら素人俳優の即興的反応を引き出すというアプローチをとることが多いです。一方、マイク・リー監督は、熟練したプロの俳優とともに現場で演じる即興を仔細な脚本に落とし込んでいくというアプローチであり、メッセージ性よりもキャラクターの描出に重きを置いています。映画で表現されるキャラクターをどう受止めるかは、観客次第です。

 

尚、タイトルの「happy-go-lucky」は「楽天的な、のんきな」という意味ですが、多くの事に対して元気で前向きな様子というポジティブな意味合いがある一方、能天気で周囲の人に迷惑をかけるというネガティブな意味合いを持つ事もあるようです。

 

サリー・ホーキンス(ポーリン「ポピー」クロス)

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サリー・ホーキンス(1976年〜)は、ロンドン出身のイギリスの女優。王立演劇学校を卒業、主にイギリス国内の舞台・テレビ・映画での活躍を経て、国際的な演技派女優となる。「人生は、時々晴れ」(2002年)、「ヴェラ・ドレイク」(2004年)、「レイヤー・ケーキ」(2004年)、「17歳の肖像」(2009年)、「ファクトリー・ウーマン」(2010年)、「私を離さないで」(2010年)、「ジェーン・エア」(2011年)、「サブマリン」(2011年)、「ブルージャスミン」(2013年)、「パディントン」(2014年)、「僕と世界の方程式」(2014年)、「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」(2016年)、「パディントン 2 」(2017年)、「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017年)などに出演、「ブルージャスミン」でアカデミー助演女優賞に、「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー主演女優賞にノミネートされている。

 

エディ・マーサン(スコット)

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エディ・マーサン(1968年〜)は、ロンドン出身のイギリスの俳優。父はトラックの運転手、母親は教師の助手という労働者の家庭に生まれる。舞台で活動を始め、1992年にテレビに初出演、本作の好演で、世界的に知られるようになる。「21グラム」(2003年)、「ヴェラ・ドレイク」(2004年)、「僕と彼女とオーソン・ウェルズ」(2008年)、「アリス・クリードの失踪」(2009年)、「思秋期」(2011年)、「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(2013年)、「僕と世界の方程式」(2014年)、「人生はシネマティック!」(2016年)、「デッドプール2」(2018年)などに出演している。

動画クリップ(YouTube) 

自転車で走るシーン(オープニング・クレジット)

撮影地(グーグルマップ) 

自転車で橋を走り抜けるシーンが撮影された場所

 

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関連作品 

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  「思秋期」(2011年)

  「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(2013年)

  「人生はシネマティック!」(2016年)

  「アトミック・ブロンド」(2017年)

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