「スーパーバッド 童貞ウォーズ」:実話に基づく高校生のお馬鹿コメディの下品さを友情や誠実さでバランス、粒揃いのキャストも魅力
「スーパーバッド 童貞ウォーズ」(原題:Superbad)は、2007年公開のアメリカのコメディ映画です。卒業を間近に控えた童貞の高校生3人組がパーティーに誘われたことを機に、それぞれ意中の女子生徒と初体験を目指して奮闘する姿を、下ネタ満載で描いています。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:グレッグ・モットーラ
脚本:エヴァン・ゴールドバーグ/セス・ローゲン
製作:ジャド・アパトー/ショーナ・ロバートソン
出演:ジョナ・ヒル(セス)
マイケル・セラ(エヴァン)
クリストファー・ミンツ=プラッセ(フォーゲル)
ビル・ヘイダー(スレイター)
セス・ローゲン(マイケルズ)
マーサ・マックアイサック(ベッカ)
エマ・ストーン(ジュールズ)
アヴィヴァ(ニコラ)
ほか
あらすじ
口だけは達者な高校生のセス、エバン、フォーゲルの童貞3人組は、初体験のことで頭がいっぱいです。進路も決まり卒業間近となった彼らは、同級生の女の子からパーティーに誘われます。セスは大見得を切って酒の買い出しも引き受けたものの、まだ酒を買える年齢ではありません。これを童貞喪失の絶好のチャンスと思い込んだ3人は、酒をゲットするためあの手この手を尽くします。2人組のおかしな警官とのハチャメチャな連行劇や、他人のパーティーに紛れ込むなど、様々なハプニングを経て何とか酒を手に入れ、セスたちはようやくパーティー会場に駆けつけます・・・。
レビュー・解説
実話のリアルさを残しながら下品さと誠実さを巧みにバランス、極端な状況の中で高校生の友情や気まずさもうまく捉え、粒ぞろいのキャストのパフォーマンスが光る、お馬鹿コメディを超えた心温まる作品です。
セス・ローゲンは13歳の時にスタンダップ・コメディアンとしてデビュー、この頃からエヴァン・ゴールドバーグと共に本作の脚本を書き始めます。映画の出来事の多くは実際にあったことで、キャラクターのセス、エヴァンは、それぞれ、脚本を書いたセス・ローゲンとエヴァン・ゴールドバーグがモデルで、フォーゲル(マクラヴィン)も実際に彼らとつるんでいた親友です(フォーゲルは映画の道には進まなかった)。なお、フォーゲル(マクラヴィン)はいじられ役として描かれていますが、実際はエヴァンの方がいじられていたという説もあります。エヴァン本人はこれを認めていませんが、エヴァン役にマイケル・セラが決まってから脚本が書き換えられており、フォーゲルがオタクっぽいいじられ役にされてしまったというのが真相のようです(実際のフォーゲルは美男子でオタクっぽくない)。
セス・ローゲンは自らセスを演じたかったのですが、もともと老け顔と言われており、年齢的にも高校生は無理ということでジョナ・ヒルが起用され、セスは警官役を演じています。ジョナ・ヒルは2004年に映画デビュー、「40歳の童貞男」(2005年)、「もしも昨日が選べたら」(2006年)などでキャリアを重ね、2007年公開のヒット作、「無ケーカクの命中男/ノックトアップ」と本作で飛躍、後の「マネーボール」(2011年)、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)でアカデミー助演男優賞にノミネートされるなどの実力派俳優に成長しました。
左からマイケル・セラ(エヴァン)、クリストファー・ミンツ=プラッセ(フォーゲル)、ジョナ・ヒル(セス )
本作はジョナ・ヒルの一人舞台というよりは、アンサンブル・キャストに近くマイケル・セラ扮するエヴァン、クリストファー・ミンツ=プラッセ扮するォーゲル(マクラヴィン)も実に魅力的で、いい味を出しています。特に撮影時時17歳のクリストファー・ミンツ=プラッセは、オタクっぽい高校生を映画初出演とは思えぬほど見事に演じており、彼が偽造IDに使用したマクラヴィンの名は流行語になるほどでした。因みに、彼にはベッドシーンがあるのですが、法規制により彼の母親が撮影に立ち会ったそうです。「恋人たちの予感」(1989年)で、母親の前でメグ・ライアンにフェイク・オーガズムの演技指導をしたロブ・ライナー監督もバツの悪い思いをしたそうですが、クリストファー・ミンツ=プラッセも微妙な心境だったに違いありません。撮影時に見られているので完成した映画を母親と観るのは平気だったそうですが、二人の間でこのシーンが話題になることは決してないそうです。
左からビル・ヘイダー(スレイター)、セス・ローゲン(マイケルズ)
マイケル・セラは一見、堅気で優等生っぽいのですが、真面目ながら可笑しく、ジョナ・ヒルとの絡みも抜群です。彼は、本作と同じ年に公開された「ジュノ」(2007年)で主人公の相手役を務めています。警官を演じたビル・ヘイダーは、アメリカのテレビバラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で三度、エミー賞にノミネートされた俳優・コメディアン・声優・作家で、「無ケーカクの命中男/ノックトアップ」(2007年)など数々のコメディ映画の他、「インサイド・ヘッド」(2015年)、「ファインディング・ドリー」(2016年)などのアニメ映画の声優としても活躍しています。
マーサ・マックアイサック(ベッカ)
ベッカ、ジュールズ、ニコラは、エヴァン、セス、フォーゲルのお目当ての女子高生ですが、彼女らも実際の名前のようです。もっともセス・ローゲンによると、当時は怖くて女の子と口がきけなかったそうなので、映画での彼女らとのやりとりがどこまで本当かはわかりません。また、セスとエヴァンは高校を卒業して離れ離れになるのですが、彼らはさっぱりしたものでセンチメンタルになることはなかったとのこと。さらに、脚本では実際に当時の高校生が使っていた強烈なセリフが使用されていますが、ジャッド・アパドーが映画としてドラマティックに構成することを指導、下品さがうまくバランスされ、単なるお馬鹿コメディを超えた作品に仕上がっています。彼なくして、本作の成功はなかったかもしれません。
エマ・ストーン(ジュールズ、何故か右目の周りに青あざ)
ベッカ、ジュールズ、ニコラは、それぞれマーサ・マックアイサック、エマ・ストーン、アヴィヴァが好演していますが、映画初出演のエマ・ストーンがその後、出世頭となり、素晴らしい活躍をすることになります。11歳の時から舞台に立ち、即興コメディ劇団にも参加していたという彼女は2004年にタレント発掘番組で役を勝ち取ったのを皮切りにテレビに出演するようになり、本作の映画初出演を皮切りに、
- 「ゾンビランド」(2009年)
- 「小悪魔はなぜモテる?!」(2010年)
- 「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」(2011年)
- 「アメイジング・スパイダーマン」(2012年)
- 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)
- 「ラ・ラ・ランド」(2016年)
などに出演、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」ではアカデミー助演女優賞にノミネートされるまでに成長しました。
アヴィヴァ(ニコラ)
全米で初登場1位となり、公開4週目で興行収入1億ドルを超えるヒットとなった本作は、キャリアを築きつつあったセス・ローゲン、ビル・スレーターに加え、その後、大活躍することになるマイケル・セラ、クリストファー・ミンツ=プラッセ、そして後にオスカー候補となるジョナ・ヒル、エマ・ストーンといった粒ぞろいの俳優が、大きく飛躍する契機となっと素晴らしい作品でもあります。
撮影地(グーグルマップ)
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関連作品
グレッグ・モットーラ監督作品のDVD(Amazon)
「アドベンチャーランドへようこそ」(2009年)
ジャド・アパトーxセス・ローゲンxジョナ・ヒルのコラボ作品のDVD(Amazon)
「40歳の童貞男」(2005年)・・・監督・脚本
「無ケーカクの命中男/ノックトアップ」(2007年)・・・監督・脚本
ジャド・アパトー監督・脚本・製作作品のDVD(Amazon)
「ウォーク・ハード ロックへの階段」(2007年)・・・脚本
「寝取られ男のラブ バカンス」(2008年)・・・脚本
「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」(2011年)・・・ 製作
「エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方」(2015年) ・・・監督・製作
「ピーウィーのビッグ・ホリデー」(2016年)・・・製作
「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」・・・製作
「Juliet, Naked」(2018年)輸入盤、Region A・・・製作
ジョナ・ヒルxマイケル・セラxセス・ローゲン共演作品のDVD(Amazon)
「ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日」(2013年)
ジョナ・ヒル出演作品
「JUNO/ジュノ」(2007年)
「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010年)
「スティーブ・ジョブズ」(2015年)
「ゾンビランド」(2009年)
「ラブ・アゲイン」(2011年)
「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」(2011年)
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)
「ラ・ラ・ランド」(2016年)
「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」(2017年)
「女王陛下のお気に入り」(2018年)