夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ザ・マスター」:精神を病みつつも自由を愛する世界大戦帰還兵と人々の救済を目指す新興宗教の教祖の奇妙な友情

「ザ・マスター」(原題:The Master)は、2012年公開のアメリカ映画です。ポール・トーマス・アンダーソン監督による人間ドラマで、第2次大戦後の混沌としたアメリカで、圧倒的な力で人々を支配・服従させる新興宗教の教祖と、人生を見失い、宗教にはまっていく人々の姿を描いています。この作品でポール・トーマス・アンダーソン監督はヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を獲得し、主演のホアキン・フェニックスフィリップ・シーモア・ホフマンが同映画祭最優秀男優賞を授与され、アカデミー賞にもノミネートされました。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ポール・トーマス・アンダーソン
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ホアキン・フェニックス(フレディ・クエル)
   フィリップ・シーモア・ホフマン(ランカスター・ドッド)
   エイミー・アダムス(ペギー・ドッド)
   ローラ・ダーン(ヘレン・サリヴァン
   ほか

あらすじ

第二次世界大戦末期、海軍勤務のフレディ・クエル(ホアキン・フェニックス)は、ビーチで酒に溺れ、憂さ晴らしをしていました。やがて太平洋戦争は終結しましたが、戦時中に作り出した自前のカクテルにハマり、フレディはアルコール依存から抜け出せず、酒を片手にカリフォルニアを放浪しては滞在地で問題を起こす生活をしていました。ある日、彼は婚礼パーティの準備をする船に密航、その船で結婚式を司る男と面会します。その男、「マスター」ことランカスター・ドッド(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、フレディの密航を許し歓迎します。フレディはこれまで出会ったことのないタイプのキャラクターに興味を持ち、下船後もマスターのそばを離れず、マスターもまた行き場のないフレディを無条件に受け入れ、彼らの絆は急速に深まっていきます。マスターは「ザ・コーズ」という団体を率いて力をつけつつあった大物思想家で、カリスマ的な素質を持った聡明さと、独自の哲学とメソッドによって、悩める人々の心を解放する治療を施していました。1950年代、社会は戦後好景気に沸いていましたが、その一方では心的外傷に苦しむ帰還兵や神秘的な導きが欲されていた時代でもあり、「ザ・コーズ」とマスターの支持者は急増していきました。フレディにもカウンセリングが繰り返され、自制のきかなかった感情が少しずつコントロールできるようになっていきます。マスターはフレディを後継者のように扱い、フレディもまたマスターを完全に信用していました。そんな中、マスターの活動を批判する者も現れますが、彼の右腕となったフレディは、暴力によって口を封じていきます。マスターは暴力での解決を望まず、また酒癖が悪く暴力的なフレディの存在が「ザ・コーズ」に悪影響を与えると考えるマスターの妻ペギー(エイミー・アダムス)は、マスターにフレディの追放を示唆します。フレディにも断酒を迫りますが、彼はアルコール依存から抜けることができませんでした。やがてフレディのカウンセリングやセッションもうまくいかなくなり、彼はそのたびに感情を爆発させ、周囲との均衡が保てなくなっていきます・・・。

レビュー・解説 

ともすれば新興宗教は社会との軋轢が問題となり、また、アメリカでは実在の宗教団体「サイエントロジー」の類似性が物議をかもしましたが、少なくともこの映画を見る限り、若干の風刺はあるにせよ、特定の宗教団体やそれをとりまく人々を批判するというよりは、精神を病みつつも自由を愛する第二次世界大戦の帰還兵と、人々の救済を目指す新興宗教の教祖の奇妙な友情を当時の世相の中で描いていると見るのが自然でしょう。

 

Her/世界でひとつの彼女」では心優しいオタク青年を演じたホアキン・ファニックスですが、この作品では精神を病むフレディ・クエルの熱演が光ります。一貫性のある表情や仕草のリアリティのある演技で、アカデミー主演男優賞にノミネートされています。教祖を演じるフィリップ・シーモア・ホフマンも素晴らしく、アカデミー助演男優賞にノミネートされています。彼は2005年公開の「カポーティ」でアカデミー主演男優賞を受賞した名優ですが、2014年にニューヨークのマンハッタンの自宅アパートで、薬物過剰摂取の為、46歳で亡くなりました。助演のエイミー・アダムズも、アカデミー賞に5回もノミネートされており、この三人の俳優が、映画を引き締めています。

 

ポール・トーマス・アンダーソン監督は、数少ないフィルモグラフィでカンヌ国際映画祭ベルリン国際映画祭ヴェネツィア国際映画祭の世界三大映画祭すべてで監督賞を受賞した稀有な映画監督です。家族の機能不全、社会からの疎外や孤独、擬似的な父子関係といったテーマを扱うことが多く、全作品で自ら脚本も手がけ、多くの作品で製作にも名を連ねています。

 

ホアキン・フェニックス(フレディ・クエル)

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フィリップ・シーモア・ホフマン(ランカスター・ドッド)

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エイミー・アダムス(ペギー・ドッド)

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動画クリップ(YouTube) 

  • 精神を病むフレディを熱演するホアキン・ファニックス〜「ザ・マスター」

 

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関連作品 

ポール・トーマス・アンダーソン監督作品のDVD(Amazon

  「ブギーナイツ」(1997年)

  「マグノリア」(1999年)

  「パンチドランク・ラブ」(2002年)

  「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007年)

  「ファントム・スレッド」(2017年)

 

ホアキン・フェニックスエイミー・アダムス共演作品のDVD(Amazon

  「her/世界でひとつの彼女」(2013年)

 

ホアキン・フェニックス出演作品Amazon

  「バックマン家の人々」(1994年)

 「誘う女」(1995年)

  「ホテル・ルワンダ」(2004年)

  「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(2005年)

  「トゥー・ラバーズ」(2008年)

  「エヴァの告白」(2014年)

 

フィリップ・シーモア・ホフマン出演作品

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エイミー・アダムス出演作品のDVD(Amazon

  「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(2002年)

  「Junebug」(2005年)・・・輸入版、日本語なし

  「魔法にかけられて」(2007年)

  「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(2007年)

  「ダウト〜あるカトリック学校で〜」(2008年)

  「ザ・ファイター」(2010年)

     「ザ・マペッツ」(2011年)

  「メッセージ」(2016年)

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