夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「クリスマス・ストーリー」:カトリーヌ・ドヌーヴ、マチュー・アマルリックら、フランスの名優が描く家族ドラマ

「クリスマス・ストーリー」(原題:Un conte de Noël)は、2008年公開のフランスの映画です。カトリーヌ・ドヌーヴマチュー・アマルリックなどフランス映画界を代表する名優たちが共演、フランス北部の町ルーベを舞台に、母の病気を機にクリスマスに久しぶりに再会した家族のドラマが描かれています。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:アルノー・デプレシャン
脚本:アルノー・デプレシャン/エマニュエル・ブルデュー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴジュノン
   ジャン=ポール・ルシヨン(アベル
   アンヌ・コンシニエリザベート
   マチュー・アマルリック(アンリ)
   メルヴィル・プポー(イヴァン)
   イポリット・ジラルド(クロード)
   エマニュエル・ドゥヴォス(フォニア)
   キアラ・マストロヤンニ(シルヴィア)
   ローラン・カペリュート(シモン)
   フランソワーズ・ベルタン(ロゼメ)
   エミール・ベルリング(ポール)
   ほか

あらすじ

フランス北部の街、ルーベ。アベル(ジャン=ポール・ルシヨン)とジュノンカトリーヌ・ドヌーヴ)のヴュイヤール夫婦が最初の子供は、男の子ジョゼフ、その2年後に長女エリザベートが誕生します。ジョゼフは幼稚園の時、白血病と診断され、治療法は骨髄移植だけでしたが家族の誰もが不適合、長男を救うため夫婦は次男アンリをもうけます。ところが彼の骨髄も適合せず、ジョゼフは6歳で亡くなってしまいます。それから数十年後、台所で倒れ、病院から戻ったジュノンは、難病に冒されている自分が助かる唯一の道は骨髄移植であることを、アベルに告げます。骨髄バンクにはジュノンに適合する骨髄がなく、家族の骨髄なら移植することができるかもしれないと言う医師の言葉に、アベルは子供たちに手紙を書き、血液検査を受けて欲しいと頼みます。クリスマスが近づく中、疎遠になっていた家族が2人の家に集まります。戯曲家として成功を収めた長女エリザベートアンヌ・コンシニ)には、フィールズ賞を受賞した優秀な数学者の夫、クロード(イポリット・ジラルド)がいましたが、彼女の心にはいつも悲しみと怒りがあり、情緒不安定な一人息子のポール(エミール・ベルリング)に手を焼いています。妻を事故で亡くしてから酒に溺れている次男アンリ(マチュー・アマルリック)は、恋人のフォニア(エマニュエル・ドゥヴォス)との再婚を考えています。三男で末っ子のイヴァン(メルヴィル・プポー)は、若い頃は病的に内気で友達もなく、アンリと従兄弟のシモン(ローラン・カペリュート)だけが遊び仲間でしたが、今ではシルヴィア(キアラ・マストロヤンニ)と結婚し、2人の子供がいます。ジュノンの兄の息子シモン(ローラン・カペリュート)、アベルの母の親友ロゼメ(フランソワーズ・ベルタン)も、2人の家を訪れます。血液検査の結果、ポールとアンリの骨髄がジュノンと適合しているとわかりますが、5年前にアンリが多額の借金を重ね、それを肩代わりした代償として家族からの追放を言い渡したつもりのエリザベートは、この家で相変わらず軽口を叩いているアンリに苛立ちます。イヴァンはシモンやアンリがシルヴィアを好きだったことを知っており、もしかしたらシルヴィアが本当に愛するのは自分ではなかったかもしれないとも・・・。一方、シルヴィアはロゼメから、シモンがシルヴィアへの想いを諦めていたと知らされ、クリスマスの夜、シルヴィアはシモンと結ばれます。クリスマスが終わり、それぞれがルーベの家を去っていきます。アンリからジュノンへの骨髄移植の手術がおこなわれ、手術後に点滴を引きずったアンリがジュノンの病室に入ってきます。2人は久しぶりにコイン・トスで遊び、コインを投げたアンリは、表に賭けたジュノンの方を見て、無言でニヤリと笑います。

レビュー・解説

期待された長男の骨髄移植に適合せず、また母と姉から嫌われ家族から追放された次男、戯曲家として成功し優秀な数学者の夫に恵まれながらも情緒不安定な一人息子に手を焼く長女、結婚して子供も出来たのに妻には本当に愛する男がいることを知っている三男など、なかなか意のままにならない人生をそれでも生きていく人々のドラマが、二時間半たっぷり描かれており、見応えがあります。

 

カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン=ポール・ルシヨン、アンヌ・コンシニマチュー・アマルリックとフランスの俳優達が素晴らしいです。カトリーヌ・ドヌーヴは公開時65歳ですが、相変わらず美しく50代に見えます。ジャン=ポール・ルシヨンは公開時77歳ですが、年齢を感じさせない味のある素晴らしい演技です。公開翌年の2009年に78歳で亡くなってしまったのが残念です。マチュー・アマルリックアンヌ・コンシニは、2007年の公開の「潜水服は蝶の夢を見る」で全身麻痺の主人公とその主人公の小説の献身的な口述筆記者を演じましたが、「クリスマス・ストーリー」では犬猿の中の姉弟と対照的な関係を演じており、いずれもそのリアルさに役者の凄さを感じます。メルヴィル・プポーエマニュエル・ドゥヴォスキアラ・マストロヤンニも、存在感たっぷりの演技です。キアラ・マストロヤンニマルチェロ・マストロヤンニの娘で、母はカトリーヌ・ドヌーヴ、母娘の出演です。

 

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