「ブギーナイツ」(原題:Boogie Nights)は1997年公開のアメリカの映画です。本作は1988年のポール・トーマス・アンダーソン監督・脚本の短編映画「The Dirk Diggler Story」を長編に作り直したもので、1970年代末から1980年代にかけてカリフォルニアのポルノ業界で働く人々の葛藤を描いています。
目次
スタッフ・キャスト
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:マーク・ウォルバーグ(エディ・アダムス / ダーク・ディグラー)
バート・レイノルズ(ジャック・ホーナー)
ジュリアン・ムーア(アンバー・ウェイブス)
ウィリアム・H・メイシー(リトル・ビル )
ヘザー・グレアム(ローラーガール)
ジョン・C・ライリー(リード・ロスチャイルド)
ドン・チードル(バック・スウォープ)
フィリップ・シーモア・ホフマン(スコティJr. )
ルイス・ガスマン(モーリス・T・ロドリゲス )
ほか
あらすじ
1977年のロサンゼルス郊外、サン・フェルナンド・ヴァレー。ディスコで皿洗いのバイトをしているエディ・アダムス(マーク・ウォールバーグ)は、ファラ・フォーセットとブルース・リーに憧れる17歳の高校生ですが、普通と違っていたのは35センチはあろうかというペニスでした。ある日、それを見込んだポルノ映画監督ジャック・ホーナー(バート・レイノルズ)が、ポルノ男優にならないかとスカウトしにきます。初めて他人から認められる幸せにエディは、美少女ローラーガール(ヘザー・グラハム)とのオーディションで早速実力を発揮します。冷たい実家を飛び出しポルノ業界に飛び込んだエディは、ジャックの妻でポルノ界のスーパーヒロイン、アンバー・ウェイブス(ジュリアン・ムーア)や、マネージャーのリトル・ビル(ウィリアム・H・メイシー)、男優のリード(ジョン・C・ライリー)らに導かれ、またたく間にスーパーヒーローに登り詰めます。名前もダーク・ディグラーと改め、主演作も次々とヒット、ポルノ界の各賞を総ナメしますが、エディは次第にドラッグドラッグの罠にはまり、頼みのイチモツもだんだん使い物にならなくなります。若くハンサムな新人ポルノ男優が現れ、焦ったエディは皆に八つ当たりし、ジャックの元から飛び出したエディは墜ちる一方となります。80年代に入りポルノ映画はビデオの時代へと移り、レーガン時代になってポルノ産業は急速に冷え込んでいきます。かつては人が集まり華やかだったジャック邸も閑散とし、ポルノ俳優達は社会の偏見や就職問題に苦しみます。そんな状況の中、堕ちるところまで堕ちたエディが、ジャックの元へ帰ってきます。閑散としたジャック邸で撮影を待つエディは、じっと鏡を見つめ出番に備えます。
レビュー・解説
1970年代の全盛の時代から、1980年代の衰退の時代へ入るポルノ業界を描くという大胆なテーマ設定が凄いです。ジュリアン・ムーアとフィリップ・シーモア・ホフマンはオスカー受賞者、マーク・ウォルバーグ、バート・レイノルズ、、ジョン・C・ライリー、ドン・チードル、ウィリアム・H・メイシーはオスカー候補者とキャストが凄いです。
題材が題材だけに、拒否反応を示す俳優やエージェントもいたようですが、二時間半を超える大作のできばえは素晴らしく、アカデミー助演男優、助演女優、脚本の三賞にノミネートされています。ポルノ業界に偏見がない方には、見応えのある作品です。
当初、主役のポルノスターにはレオナルド・デカプリオが考えられており、デカプリオも脚本を気にいっていましたが、「タイタニック」出演契約の後だった為、代わりにマーク・ウォルバーグを推薦、起用されました。その後の出演傾向を見ると、デカプリオがやっても面白かったのではないかと思います。
助演のバート・レイノルズも、威厳と風格を持ったポルノ映画の監督を良く演じています。ドラッグが原因でポール・トーマス・アンダーソン監督を殴ったり、プロモーションのやり方が原因で仲違いし、この映画に出て後悔していると語ったりして、撮影後にポール・トーマス・アンダーソン監督と決裂してしまったのが残念です。彼は「ブギーナイツ」で彼にとって初めて(そして恐らく最後の)オスカーにノミネートされるという名誉を得ています。B級映画でお山の大将でいるのが性に合っているのかもしれませんが、正直、この映画ほど深みのあるバート・レイノルズを観た事がありませんでした。
ポルノ女優を演じたジュリアン・ムーアも、本作で初めてアカデミー助演女優賞にノミネートされ、以降、「ことの終り」、「エデンより彼方に」、「めぐりあう時間たち」、「アリスのままで」で計5回、オスカーにノミネートされ、5回目の「アリスのままで」で見事、主演女優賞を受賞したのは記憶に新しいです。彼女の素晴らしい演技は、この頃から積み重ねられて来たものであることが実感されます。
関連作品
ポール・トーマス・アンダーソン監督作品のDVD(Amazon)
「マグノリア」(1999年)
「パンチドランク・ラブ」(2002年)
「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007年)
「ファントム・スレッド」(2017年)
マーク・ウォールバーグ出演作品のDVD(Amazon)
「スリー・キングス」(1999年)
「ディパーテッド」(2006年)
「ローン・サバイバー」(2013年)
「バーニング・オーシャン」(2016年)
「パトリオット・デイ」(2016年)
「インスタント・ファミリー ~本当の家族見つけました~」(2018年)
ジュリアン・ムーア出演作品
フィリップ・シーモア・ホフマン出演作品
群像劇映画