「トゥー・ラバーズ」:ドストエフスキーの「白夜」をモチーフに、愛という本質的な感情をあるがままに描く
「トゥー・ラバーズ」(原題:Two Lovers)は、2008年のアメリカの恋愛ドラマ映画です。フョードル・ドストエフスキーの「白夜」をモチーフにし、ジェームズ・グレイ監督、ホアキン・フェニックス、グウィネス・パルトローらの出演で、三人の男女が織り成す愛と現実を描いています。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:ジェームズ・グレイ
脚本:ジェームズ・グレイ/リチャード・メネロ
原案:フョードル・ドストエフスキー「白夜」
出演:ホアキン・フェニックス(レナード・クラディトー、失恋で鬱病、両親と同居)
グウィネス・パルトロー(ミシェル・ラウシュ、レナードと同じアパートに住む)
ヴィネッサ・ショウ(サンドラ・コーエン、レナードを愛する女性、社長の娘)
イザベラ・ロッセリーニ(ルース・クラディトー、レナードの母、息子を見守る)
モニ・モシュノフ(ルーベン・クラディトー 、レナードの父、クリーニング屋)
イライアス・コティーズ(ロナルド・ブラット、ミシェルの不倫相手、会社経営)
ほか
あらすじ
ニューヨークのブルックリン郊外に両親と暮らすレナードは、婚約者に去られ、自殺未遂を繰り返していましたが、両親の紹介で知り合った女性サンドラに気に入られ、彼女と付きあうことになります。優しく、包容力があり、レナードの過去を受け止めるサンドラとレナードの距離は次第に近づいていきます。しかし、レナードは同じアパートに越してきた奔放な美女ミシェルにも惹かれていきます。ミシェルは結婚願望があるにもかかわらず、不倫の愛に悩んでいました。二人の女性の間でレナードの心が揺れ動きます・・・。
不倫に悩む女性を好きになるという古典的な設定ですが、婚約者と破局、鬱病で自殺未遂を繰り返す男と、彼の周囲の女性との愛を、美化する事無く、リアルに描いています。鬱病で自殺未遂を繰り返しながらも二人の女性に二股をかける複雑な男をホアキン・フェニックスが、奔放ながらも成就しない不倫の愛に傷つく美しい女性をグウィネス・パルトローが、ともに見事に演じています。
本作にはさまざまな愛が登場します。ホアキンが演ずるレナードには愛する婚約者がいましたが、結婚前に受けた遺伝子検査で、二人の子供は致命的な遺伝性疾患になる可能性が高いことがわかり、婚約者はレナードの前から去ります。愛を渇望するレナードは、傷つき、鬱になって自殺未遂を繰り返します。レナードの母はそんな息子が心配で、ドアの下から息子の部屋を覗いたりしますが、その一方で、自分たちが紹介したサンドラ以外にレナードに好きな女性がいる事を知っても、それをじっと見守ります。両親が紹介したサンドラは、大手クリーンニングチェーンの社長の娘で、レナードの父は彼のクリーニング店を社長に売却することを考えています。サンドラはレナードに一目惚れ、二股をかけられているとも知らずにレナードを愛し続けます。レナードは同じアパートに引っ越ししてきたミシェルに一目惚れしますが、ミシェルはレナードに心を開くものの、不倫相手を忘れる事ができません。そんな中でレナードとミシェルがとる行動が際立ちます。
ジェームズ・グレイ監督は、
- 結婚前の遺伝子検査で二人ともテイ・サックス病の遺伝子を持ち、子供が致命的な遺伝性疾患になる可能性が高いことが分かり、破局したユダヤ人カップルの話を聞いた
- 同じ頃に読み返したドストエフスキーの「白夜」の心を打たれ、その存在論的要素を持つ魅力的なストーリーが欲望を描く映画のベースに適していると思った
- 「リトル・オデッサ」、「裏切り者」、「アンダーカヴァー」と犯罪に関わる映画の脚本・監督を務めたが、銃が出て来ない映画の制作をグウィネス・パルトローに問いかけられていた
ことをきっかけに、本作の映画化を思い立ちました。簡素で感動的ではあるが、センチメンタルでもコミカルでもない、愛という本質的な感情をリアルに描く事がこの映画の存在理由となっています。
映画の脚本はホアキン・フェニックス、グウィネス・パルトローの出演を想定して書かれたといい、二人の突出したパフォーマンスがもたらすケミストリーには緊迫感があり、見応えがあります。助演のヴィネッサ・ショウ、イザベラ・ロッセリーニも、それぞれ、レナードに想いを寄せる女性、愛する息子を見守るレナードの母を好演しています。
ホアキン・フェニックス(レナード・クラディトー)
グウィネス・パルトロー(ミシェル・ラウシュ)
ヴィネッサ・ショウ(サンドラ・コーエン)
イザベラ・ロッセリーニ(ルース・クラディトー)
撮影地(グーグルマップ)
- 冒頭、レナードが飛び込む橋
- レナード、ミシェルが住むアパート
- オペラ好きのミシェルが行くニューヨーク・メトロポリタン・オペラ
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関連作品
「トゥー・ラバーズ」のモチーフとなった小説
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ジェームズ・グレイ監督 x ホアキン・フェニックスのコラボ作品
「エヴァの告白」(2013年)
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「ホテル・ルワンダ」(2004年)
「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(2005年)
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