夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「きっと、うまくいく」:インドの教育問題を風刺し、競争社会のストレスを吹き飛ばす爽快なコメディ

「きっと、うまくいく」(原題:3 Idiots)は、2009年公開のインドの映画です。ラージクマール・ヒラーニ監督、アーミル・カーンらの出演で、 インドのエリート工科大学を舞台に、3人の学生が巻き起こす珍騒動を描くヒューマン・コメディです。2009年の公開当時、インド映画歴代興行収入1位を記録、2010年インドアカデミー賞では作品賞をはじめ史上最多16部門を受賞した作品です。スティーヴン・スピルバーグは「3回も観るほど大好きだ」と絶賛、ブラッド・ピットも「心震えた」とコメントするなど、インド以外でも高い評価を受け、各国でリメイクが決定しています。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ラージクマール・ヒラーニ
脚本:ラージクマール・ヒラーニ/ヴィドゥ・ヴィノード・チョープラー
   /ジット・ジョーシ
原作:Chetan Bhagat「Five Point Someone」
出演:アーミル・カーン(ランチョー、自由奔放な青年、競争社会に疑問を抱く)
   R・マドハヴァン(ファラン・クレイシー、平凡な家庭の青年)
   シャルマン・ジョシ(ラージュー・ラストーギー、苦学生、信仰に頼る )
   カリーナ・カプール(ピア、ヴァイラス学長の娘、医学生、ランチョーと恋に)
   ボーマン・イラニ(ヴィールー・サハスラブッデー、学長、通称ヴァイラス)
   オミ・ヴァイディア(チャトル・ラーマリンガム、嫌みな秀才、ランチョーの敵)
   モナ・シング(モナ、ピアの姉、妊娠している)
   ほか

あらすじ

  • 大学時代親友同士だったファランとラージューは、ある日同窓のチャトルから母校に呼び出されます。チャトルは二人に、ランチョーというかつての学友の消息がつかめたことを話し、探しに行こうと持ちかけます。
  • 10年前、インド屈指の難関工科大学ICE(Imperial College of Engineering)に、それぞれの家庭の期待を受けて入学してきたファランとラージュー、そして「きっと、うまくいく」というモットーの自由奔放な天才ランチョーの三人は寮でルームメイトとなります。何をするにも一緒の3人はしばしばバカ騒ぎをやらかし、学長や秀才だったチャトル等から「3 idiots」(三バカ)と呼ばれ目の敵にされていました。
  • なんとか大学を卒業したものの姿を消してしまったランチョーを探し、共に学んだ親友たちが旅に出ます・・・。

レビュー・解説 

インドの厳しい競争社会と教育問題を背景にしたコメディですが、メイン・キャストの好演と色彩豊かな映像や音楽により、元気の出る素晴しいエンターテインメント映画に仕上がっています。インドに限らず、どこの国でも人々は競争社会のストレスの中で生活しており、国際的に通用する見事な脚本、演技、演出と相まって、爽やかな共感を呼びます。

 

この映画を制作したきっかけについて、ラージクマール・ヒラーニ監督は次のように語っています。

私自身の人生経験からなんだ。これまでの人生で、私にとって一番大変だったのは12年生(日本の高3。大学進学の為の全国共通テストが行われる)の時だ。テストの点数のことしか頭になく、ひんぱんにあるテストで何点取れてるか心配で、夜もハッと目が覚めたりしたものだ。この年頃の子供にかかるストレスって、それは大変なんだよ。だから、教育がもたらすストレスに関して映画を作ってみたいと思ったんだ。まあでも映画だからね、娯楽要素も入れなくちゃ、ということで楽しい部分も入れてるけど、私のいつもの映画と同じようにテーマ性を持っている作品だ。教育問題というテーマが盛り込まれてる。

 

映画の中でも「医者」と「エンジニア」が典型的な職業として言及されていますが、インドの中流階級は「将来は医者かエンジニアになれ」と、幼い頃から両親に勉強ばかりさせられています。人口の約6割が貧困層と言われるインドでも中流階級が増えつつありますが、勉強ができて初めて成功があると信じられているインドの競争社会で生き残っていくためには、勉強が子供達の大きなプレッシャーになっています。

 

インドでは8割以上がお見合い結婚ですが、子供の意思と関係なく、親が信じる職業に何としてでも就かせ、高給取りにし、親の決めた人と結婚させる、そうすれば自分たちの老後も安泰、という意識が強いのです。そのため、家族や親族を巻き込んでのカンニング騒動や、映画でも描かれているような学業成績の不振を苦にした自殺も少なくありません。

 

そんなインドの厳しい状況を背景にしながらも、脚本、メイン・キャストの好演と色彩豊かな映像や音楽等の演出により、映画は元気の出る素晴しいエンターテインメントになっています。インド映画特有の歌と踊りも、今風にアレンジされており、楽しめます。

 

主役のアーミル・カーンは若々しい大学生役を演じていますが、撮影時の実年齢は44歳、R・マドハヴァンは39歳、シャルマン・ジョシは30歳でした。当初はもっと若い俳優を起用する予定で、主役の3人を演じる俳優を探しましたが、結局見つからなくて、最終的にアーミル・カーンら3人になりました。アーミル・カーンは、興味を示し、「僕がやってみたい。やらせてくれるなら、若く見えるように体を絞るよ」と言って、実際に24歳に見えるまでに変身しました。撮影期間中は肌をフレッシュにするため水を1日4リットル飲んで臨んだといいます。

 

キーワードになっている「Aal Izz Well」(All is well:きっと、うまくいく)は、イギリス統治時代に夜警が町を回る時に呼ばわっていた言葉です。町は無事平穏ですよというこの言葉の力で、みんなは安心して眠ることができました。映画では、自分自身に言い聞かせ、心の平安を保つ言葉として使用されています。

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左から、シャルマン・ジョシ(ラージュー)
カリーナ・カプール(ピア)
アーミル・カーン(ランチョー)
R・マドハヴァン(ファラン

動画クリップ(YouTube) 

All Izz Well 〜「きっと、うまくいく」

 

Zoobi Doobi 〜「きっと、うまくいく」

撮影地(グーグルマップ) 

 

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関連作品

ラージクマール・ヒラーニ監督xアーミル・カーンのコラボ作品Amazon

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