夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「いとこのビニー」:弁護士の資格を得たばかりのヤクザでいい加減な中年男と、理知的で情熱的な可愛い婚約者の織りなす法廷コメディ

「いとこのビニー」(原題:My Cousin Vinny)は、1992年公開のアメリカのコメディ映画です。ジョナサン・リン監督、ジョー・ペシマリサ・トメイらの出演で、殺人容疑をかけられたいとこを助けようと奮闘するやくざな新米弁護士の奮闘を描く法廷コメディです。第65回アカデミー賞で、助演女優賞マリサ・トメイ)を受賞した作品です。また、コメディといいながら法廷でのやりとりが正確で、アメリカ法曹協会の雑誌、ABA ジャーナルで偉大な法律映画トップ25の第三位にランクされている映画でもあります。

 

 「いとこのビニー」のDVD(Amazon

iTunesで観る*1  Amazonビデオで観る*2

目次

スタッフ・キャスト  

監督:ジョナサン・リン
脚本:デイル・ローナー
出演:ジョー・ペシ(ビニー・ガンビーニ)
   マリサ・トメイ(モナ・リサ・ヴィト)
   ラルフ・マッチオ(ビリー・ガンビーニ)
   ミッチェル・ホイットフィールド(スタン・ローゼンスタイン)
   フレッド・グウィン(チェンバレン・ハラー判事)
   レイン・スミス(ジム・トロッター)
   ブルース・マッギル(ファーリー保安官)
   オースティン・ペンドルトン(ジョン・ギボンズ
   モーリー・チェイキン(サム・ティプトン)
   ジェームズ・レブホーン(ジョージ・ウィルバー)
   ほか

あらすじ

大学生のビル・ガンビーニ(ラルフ・マッチオ)と、スタン・ローゼンシュタイン(ミッチェル・フィットフィールド)は、大陸横断の旅の途中で立ち寄ったアラバマ州ワーズ市で、コンビニエンス・ストアの店員が殺害された強盗殺事件の犯人と間違われてしまいます。困り果てたビルは、ニューヨークで弁護士をしているいとこのビニー(ジョー・ペシ)に弁護を依頼します。婚約者のモナ・リサ(マリサ・トメイ)を連れてキャデラックでワーズ市に駆けつけたビニーは、ビルとの再会を喜びますが、弁護士になったのは6週間前で、法廷に立ったことがなく、司法試験に合格するまで6年間もかかったことを明かし、ビルをがっかりさせます。いよいよ開廷となりますが、ビニーは服装と言葉使いが不適切として、裁判官ハラー(フレッド・グウィン)から法廷侮辱罪を言い渡され、留置所送りとなります。検察側には不利な証拠を次々と提示させられ、しかもブルックリン育ちのビニーは南部の田舎になじめず、ビニーのストレスはつのる一方となります・・・。

レビュー・解説 

ジョー・ペシマリサ・トメイ、二人の個性的な俳優の掛け合いが魅力的なコメディです。映画公開時、ジョー・ペシ49歳、マリサ・トメイ27歳で、弁護士の資格を得たばかりのニューヨークのちょいとヤクザでいい加減な中年男と、プロはだしのメカニックの知識を持つとびきり美人で可愛い婚約者という、なんとも奇妙な組み合わせですが、ジョー・ペシの独特な存在感をゆりかごに、マリサ・トメイの可愛らしさが炸裂しています。

 

ジョナサン・リン監督は法律の学位を持っており、本作では実際の公判の口述筆記をほぼそのまま脚本に取り入れる等、裁判の正確な描写にこだわりました。こうしたアプローチが法曹界に評価され、アメリカ法曹協会の雑誌、ABA ジャーナルでは、偉大な法律映画トップ25の第三位にランクされています。

 

受かるまで司法試験を受け続けるという知人と話していてこの映画を思いついたというデイル・ローナーは、脚本を書きながら、キャラクターを労働者階級のイタリア系アメリカ人にすると面白いと考えました。一見、言い合いをしているようで実は話し合っているという、地中海式のコミュニケーションと法廷ドラマの組み合わせが面白いと思ったのです。このアイディアを、ともにイタリア系アメリカ人であるジョー・ペシマリサ・トメイがものにしてくれました。

 

ジョー・ペシニュージャージー州ニューアーク出身のイタリア系アメリカ人俳優で、身長158cmと小柄ながら甲高い嗄れ声と独特の発音を生かした個性的な演技で独特の存在感があります。暴力的な役柄で実力を発揮し、マフィアを演じた「グッドフェローズ」(1990年)でアカデミー助演男優賞を受賞した他、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」、「カジノ」などでもマフィアを演じ、暴力的なイタリア系マフィアが典型的な役柄化していますが、本作や「ホーム・アローン」シリーズ、「リーサル・ウェポン」シリーズなどでは独特のコメディー・センスを発揮しています。本作のジョー・ペシは、弁護士の資格を得たばかりのニューヨークのちょいとヤクザでいい加減な中年男が、アラバマの田舎町で苦労しながら粘り強く奮闘する様子を好演しています。

 

一方、マリサ・トメイは、ニューヨーク市ブルックリン出身のイタリア系アメリカ人女優で、1984年に映画デビュー、1986年にオフ・ブロードウェイデビューし、シアター・ワールド賞を受賞しています。その後、本作でアカデミー助演女優賞を受賞、その後も、「イン・ザ・ベッドルーム」(2001年)、「レスラー」(2008年)でアカデミー助演女優賞にノミネートされる実力派女優です。ニューヨーク育ちで知的な一方、情熱的、感情表現が豊なモナ・リサ・ヴィトをヴィヴィッドに演じていますが、ブルックリン育ちのマリサ・トメイは英語教師の母に発音を矯正されていたため、映画では意図的に訛っています。

 

なお、ビニーに厳しく当たる老獪な判事役を演じたベテラン俳優、フレッド・グウィンもちょっととぼけた感じで、実にいい味を出していますが、残念ながら本作が遺作となってしまいました。

 

ジョー・ペシ(ビニー・ガンビーニ)

f:id:DaysLikeMosaic:20160112184751j:plain

 

マリサ・トメイ(モナ・リサ・ヴィト)

f:id:DaysLikeMosaic:20160112184805j:plain

 

フレッド・グウィン(チェンバレン・ハラー判事)

f:id:DaysLikeMosaic:20160112184813j:plain

撮影地(グーグルマップ) 

ビニーのいとこが殺人事件に巻き込まれたコンビニ

現在は閉鎖 

動画クリップ(YouTube

モナ・リサ・ヴィトが証人の妥当性を尋問されるシーン~「いとこのビニー」

TROTTER: What do you do in your father's garage?
VITO: Tune-ups, oil changes, brake relining, engine rebuilds, rebuild on trannies...
TROTTER: OK. OK. But does being an ex-mechanic qualify you as being expert on tire marks?
VITO: No. Thank you. Goodbye.
JUDGE: Sit down and stay there until you're told to leave.
VINNY: Your Honor. Miss Vito's expertise is in general automotive knowledge. Ii is in this area that her testimony will applicable. Now, if Mr. Trotter wishes to voir dire the witness as to the extent of her expertise in this area, I'm sure he's gonna be more than satisfied.
JUDGE: OK.
TROTTER: All right. All right. Now, Miss Vito. Being an expert on general automotive knowledge, can you tell me what would the correct ignition timing be on a 1955 Bel Air Chevrolet, with a 327 cubic-inch engine, and a four-barrel carburetor?
VITO: That's a bullshit question.
TROTTER: Does that mean that you can't answer it?
VITO: That's a bullshit question. It's impossible to answer.
TROTTER: Because you do't know the answer.
VITO: Nobody could answer that question.
TROTTER: Your Honor, I move to disqualify Miss Vito as expert witness.
JUDGE: Can you answer the question?
VITO: No. It is a trick question.
UDGE: Why is it a trick question?
VINNY: Watch this.
VITO: Cos Chevy didn't make a 327 in '55. The 327 didn't come out till '62. And it wasn't offered in the Bel Air with a four-barrel carb till '64. However, in 1964 the correct ignition timing would be four degrees before top, dead center. 
TROTTER: Well... She is acceptable. Your Honor.

トロッター:お父さんの整備工場ではどんなことを?
ヴィト:チューンアップ、オイル交換、エンジン修理、トランスミッション修理・・・
トロッター:はい。整備工であり、同時にタイヤ痕の専門家なのですか?
ヴィト:いいえ。ありがとうござます。さよなら。
裁判長:退席を命ずるまで席にいるように。
ビニー:裁判長。彼女は車全般の知識が抜群です。従って、その領域において証人としての資格があります。トロッター検事がどうしても証人の能力を試したいなら、結果に十分すぎるほど満足なさるでしょう。
裁判長:いいでしょう。
トロッター:わかりました。それではヴィトさん、車のエキスパートとしてお答えください。’55年型シボレー・ベル・エア、327キュビック・インチのエンジン、4バレル・キャブレターの正確なイグニッション・タイミングは?
ヴィト:馬鹿な質問ね。
トロッター:答えられないのですか?
ヴィト:馬鹿な質問に答えられるわけはないわ。
トロッター:知らないから答えられないのですね。
ヴィト:誰にだって無理よ。
トロッター:裁判長、証人は専門家としての能力に欠けます。
裁判長:答えてください。
ヴィト:無理よ、罠ですもの。
トロッター:何故、罠と思うのですか?
ビニー:見てろ。
ヴィト:327キュービック・インチのエンジンは’55年にありません。発表は’62年です。4バレルは’64年に搭載されました。ちなみに’64年型でのイグニッション・タイミングは上死点前4度です。
トロッター:では・・・、えー、彼女の能力を認めます。

関連作品 

ジョー・ペシ出演作品のDVD(Amazon

  「レイジング・ブル」(1980年)

  「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(1984年)

  「グッドフェローズ」(1990年)

  「JFK」(1991年)

  「カジノ」(1995年)

 

マリサ・トメイ出演作品 

dayslikemosaic.hateblo.jp

関連記事

dayslikemosaic.hateblo.jp

*1:本文に戻る 

いとこのビニー (字幕版)

いとこのビニー (字幕版)

  • ジョナサン·リン
  • コメディ
  • ¥1000
いとこのビニー (吹替版)

いとこのビニー (吹替版)

  • ジョナサン·リン
  • コメディ
  • ¥1000

*2:本文に戻る

いとこのビニー (字幕版)

いとこのビニー (字幕版)