夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

ジュリアン・ムーア出演作品〜入念な演技で積み上げられた名作の数々〜

映画の解説記事を書く際に、最後にその映画の監督や出演者の主な作品を挙げるようにしています。これは、

  • その人の作品でまだ観ていないものを分かる様にする
  • 記事を書いた作品がその人のどの時期のものか分かる様にする

為ですが、昨日、「ラブ・アゲイン」について記事を書いた際に、ジュリアン・ムーアの出演した主な作品を挙げようとしたら、数が多くなったので、別記事にすることにしました。

 

 「アリスのままで」のDVD(Amazon

 

ジュリアン・ムーアは2015年に「アリスのままで」でアカデミー賞の主演女優賞を受賞しましたが、実は彼女はそれまでに主演女優賞に2回、助演女優賞に2回、ノミネートされていました。最後にノミネートされたのが2002年の「めぐりあう時間たち」ですので、12年ぶり、5回目のノミネートでようやくオスカーを手にしたことになります。

 

アリスのままでは」では、米アカデミー賞の他にゴールデングローブ賞、英アカデミー賞の主演女優賞も受賞していますが、彼女は2002年「エデンより彼方に」でベネチア、2003年「めぐりあう時間たち」でベルリン、2014年「マップ・トゥ・ザ・スターズ」でカンヌの女優賞を受賞しており、これらの6つの世界的な映画祭を全て制覇した初めての女優になります。

 

彼女は女性向きの映画が多いとの印象でしたが、2014年公開のサスペンス&アクション映画「フライト・ゲーム」では、リーアム・ニーソン扮する主人公の隣の席に座る女性客を演じています。この映画での主人公との距離のとり方、表情の見せ方が多彩で、アクション映画でもここまで演技できるのかと、舌を巻いてしまいました。一方、彼女はヘア・ヌードがある映画にも出演していますが、決して売名の為ではなく、演技にとても真摯なものが感じられます。どんな映画に出ても自分の技量を丁寧に出してくる、そんな感じのする女優です。

 

舞台出身の彼女は、ハリウッドの大作のみならず、インディーズからコメディまで幅広く出演していますが、その出演傾向から察するに演技する事がとても好きなのではないかと感じます。また、メリル・ストリープケイト・ブランシェットなど、他の大女優はスクリーンの現れた途端に強烈な印象を与える人が少なくないのですが、ジュリアン・ムーアの場合、作品ごとにじわりと存在感を滲ませていく印象が強く、複雑な女性像に陰影や深みをもたせた演技が多いとも言われています。これには、「女性のいない、男だけの映画には入り込めない」、「仕事に家庭に忙しい女性に観てもらう為にはそれなりのものが提供できなければならない」といった彼女自身の意識が反映しているものと思われます。

 

小学生の頃は背が小さく、眼鏡をかけ、運動が苦手なオタクだっという彼女は、初めて泳いだのが26歳、車の運転を覚えたのが27歳、映画に出演したのが30歳、家庭を持ったのが37歳と、遅咲きです。彼女は仕事をこなすことで精いっぱいだった20代を「自分は心から家族が欲しかった。」と、また最初の結婚が破局した30代の初め頃は仕事面では充実していたものの、「孤独だった。幸せだとは感じなかった。自分が望んでいた私生活ではなかったから。」と語っています。そんな苦労もあった彼女ですが、演技に関しては次のように語っています。

私は練習が大切だと信じている。「習うより慣れよ」という格言を信じているの。アクションを実行すればするほど、よりサクセスになる。練習を重ねていくことが重要だと思っているの。どの仕事でも、毎回、何かを少し学んで糧にしていけるって。

 

また、夢をかなえる秘訣について、次のように語っています。

(夢をかなえる秘訣は)ハードに働くこと!(笑)。そして夢や目的を叶える秘訣は、遠い将来に大きな目標を持つだけじゃない。もし、あなたの夢が「国の大統領または世界的リーダーになる」ということだったら、「18才の自分からいきなり世界的リーダーになる!」と、ゴールを持って突き進むのではなく、それに向かっていくステップを目的にすれば良いと思うの。次のステップは何?どこの学校に行く?まずその学校を卒業することを目的にする。そのあと、大学院に行く?大学院を出たあと、どの仕事にすぐ就くべき?どうやって、その最初の仕事を開発していけるか。そんな風に、いまの自分が手の届くところに目標をたてて、それを達成していく。そして前進していく。焦って進む必要はないのよ。18才の自分から、いきなり大きな夢に向かってジャンプして素早く夢を叶えるのではなくてね。全てがステップなのよ。歩みの積み重ねよ。まるで、小さなものをかじっていくようにね。そうやって少しずつ、自分が欲しいものに近づいていくのよ。

 

50歳を過ぎて映画の主役を張れる女優は滅多にいませんが、「アリスのままで」で主演女優賞を受賞した彼女の今日の成功は、私生活の不運な時期や、アカデミー賞のノミネートが10年以上途絶えた時期も、信ずる所に向かって地道に努力を重ねてきた結果ではないかと思います。また、そこに至るまでのひとつひとつの映画を観ても、丁寧で真摯に積み重ねられた、破綻のない完成度の高い演技であることが分かります。

 

そんな彼女の出演作品の中から、映画として評価の高いものを選んでみましたので、ご参考ください。

 

ジュリアン・ムーア出演作品 のDVD(Amazon

  「逃亡者」(1993年)

  「ショート・カッツ」(1993年)

  「SAFE」(1995年):輸入盤(リージョン1、日本語無し)

  「ブギーナイツ」(1997年)

  「ビッグ・リボウスキ」(1998年)

  「クッキー・フォーチュン」(1999年)

  「マグノリア」(1999年)

  「理想の結婚」(1999年)

   「めぐりあう時間たち」(2002年)

  「エデンより彼方に」(2003年)

  「トゥモロー・ワールド」(2006年)

  「シングルマン」(2009年)

  「キッズ・オールライト」(2010年)

  「ラブ・アゲイン」(2011年)

  「メイジーの瞳」(2012年)

  「ドン・ジョン」(2013年)

アリスのままで」(2014年)

  「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」(2015年)

 

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