夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「キッズ・オールライト」:精子提供で子供を得たレズビアン・カップルの家族コメディ

キッズ・オールライト」(原題: The Kids Are All Right)は、2010年公開のアメリカのヒューマン・コメディ/ドラマ映画です。ともに精子バンクにを利用して子供を得たリサ・チョロデンコ監督そのパートナー、ウェンディとの関係と人生観をベースにしており、アネット・ベニングジュリアン・ムーアのベテラン女優二人が演じる同性愛カップルと、その子供たちの父親探しをユーモラスに描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:リサ・チョロデンコ
脚本:リサ・チョロデンコ/スチュアート・ブルムバーグ
出演:アネット・ベニング(ニック)
   ジュリアン・ムーア(ジュールズ)
   マーク・ラファロ(ポール)
   ミア・ワシコウスカ(ジョニ)
   ジョシュ・ハッチャーソン(レイザー)
   ヤヤ・ダコスタ(タニア)
   ほか

あらすじ 

18歳のジョニ(ミア・ワシコウスカ)は、自分の母親ニック(アネット・ベニング)、同じ父親を持つ15歳の弟・レイザー(ジョシュ・ハッチャーソン)、そしてレイザーの母親ジュールス(ジュリアン・ムーア)の4人で暮らしています。母親二人と姉弟という家族で、仲良く、愛情に満ちた生活を送っていますが、ジョニとレイザーはまだ会ったことのない自分たちの生物学上の父親・ポール(マーク・ラファロ)に興味を持ち、こっそりと会いに行きます。二人はオーガニックレストランを経営し、気ままな独身生活をするポールに親しみを感じますが、こっそりと会っていることがニックとジュールスにばれたことから、家族に異変が起き始め、家族崩壊の危機が訪れます・・・。

レビュー・解説

同性愛カップルを演じるアネット・ベニングジュリアン・ムーアのベテラン女優二人が素晴らしいです。特に、二人がなれそめを語るシーンは、ほんわかして微笑ましいです。

二人の出会いを語る〜「キッズ・オールライト

PAUL: So, how’d you guys meet?
Jules smiles, embarrassed. Nic jumps in.
NIC: We met at UCLA. I was a resident in the ER and Jules had an emergency.
JULES: My tongue went numb.
PAUL: Really?
THUD! We turn to see Laser, pounding his head on the table.
JULES: Laser, that’s not nice.
LASER: What’s not nice is subjecting your kids to the same story 1000 times!
PAUL: (ignoring Laser) What happened to your tongue?
JULES: I don’t know. I just lost all the feeling in my face and tongue and I thought I might gag and then, you know...
PAUL: Choke? Die?...
JULES: Yeah...exactly...
PAUL: So what’d you do for her?
NIC: Gave her a Vallium. Tried to get her to relax, talk, move her tongue around.
JULES: Actually, she started teasing me and that really helped.
NIC: I was trying to distract you.
JULES: I know. And it worked. You were really funny.
NIC: You were really pretty.
JULES: So that’s it. My tongue started working again.
LASER: Mom, that’s gross!
NIC: (ignoring Laser, to Nic) And we’ve been glued at the hip ever since.
ポール:二人の出会いは?
ニック:UCLAよ。私が研修医の時で、ジュールスは急患。
ジュールス:舌が麻痺したの。
ポール:本当に?
ジュールス:レイザー、失礼よ。
レイザー:もう何十万回も聞かされた。
ポール:舌に何が?
ジュールス:わからないけど、顔と舌の感覚がなくなったの。のどが詰まるかもって、とても不安で、もしかしたら・・・
ポール:窒息死?
ジュールス:そうよ。
ポール:治療は?
ニック:精神安定剤で落ち着かせて、舌を動かすため、おしゃべりをした。
ジュールス:私をからかったわね。
ニック:助けるためよ。
ジュールス:そうね。あなたは面白かったわ。
ニック:あなたは美しかった。
ジュールス:舌は無事に治ったわ。
レイザー:ママ、もうよせよ。
ニック:あれからずっと一緒。

 

アネット・ベニングが演じるニックは男性的、ジュリアン・ムーアが演じるジュールズは女性的なキャラで描かれています。二人のやり取りを聞いていると、ストレートのカップルと変わりません。

NIC: (nerves fraying) Okay! Okay. I’m sorry. I’m just exhausted...
JULES: Maybe you need to take some time off and recharge.
NIC: (self-pitying) Sure, and who’s gonna pay for that?
Jules looks pissed off, and hurt.
NIC (CONT’D) Look, I’m sorry, I just feel like I’m carrying the whole load here.
JULES: Because that’s the way you like it! That’s the way you keep control!
This is Jules’ break-point.
NIC: What are you talking about?
JULES: Oh come on! You hated it when I worked! You wanted me at home, taking care of the kids. You wanted a wife!
NIC: That is just not true!
JULES: You didn’t trust any of those nannies! And you sure as hell didn’t back my career!
NIC: What are you talking about? I just helped you start another business!
JULES: Yeah, so you can feel better about yourself!
NIC: No, so you can feel better about yourself!
JULES: Are you even attracted to me anymore?
ニック:疲れてしまって・・・.。
ジュールス:休暇が必要よ。リフレッシュするの。
ニック:その費用は誰が?言いたくないけど、私が一人で養っている。
ジュールス:それが望みでしょ、支配できるから。
ニック:何の話?
ジュールス:私が働くのを嫌がったでしょ。家にいて主婦をしろって。
ニック:違うわ。
ジュールス:乳母を嫌い、私の仕事の邪魔をした。
ニック:何を言うの?仕事を始める手伝いをした。
ジュールス:自己満足の為にね。
ニック:いいえ、あなたが満足できるようによ。
ジュールス:もう、私に魅力がない?

 

生真面目で家族を守る事に必死なニックは、マーク・ラファロ演ずる精子提供者の気楽な独身男ポールに家族をとられるのではないかという不安があり、初めての会食でも詰問口調になります。お気楽男のポールは必死で防戦します。周囲の家族はヒヤヒヤしています。

ところで、ポール〜「キッズ・オールライト

NIC:So Paul, did you always know you wanted to be in food-services industry?
Paul smiles at Nic, trying to disarm her.
PAUL: Well, I always liked food.
NIC: No, I was asking because I remember reading in your file, back when we were looking for, you know, sperm, anyway, you said you were studying international relations.
PAUL: Oh yeah. Wow, that was a long time ago. Yeah, I was considering it, but then I dropped out of school.
JONI: You dropped out of college?
PAUL: Yeah, it wasn’t my thing.
NIC: (squinching) No? Why’s that?
PAUL: It just seemed like a massive waste of money after a while. I mean, I wasn’t “doing” anything. I was just sitting on my ass istening to people spout off ideas I could’ve just as easily learned reading a book.
Paul sees that his little rant may be alienating the moms.
PAUL (CONT’D): I’m not saying higher learning uniformly sucks. I mean, college is great for some people. Joni, I’m sure you’re gonna love it. That’s just me. I’m just weird that way. (beat) Which is probably why I ended up in the food-services industry.
ニック:ところで、ポール。あなたはずっと、外食産業界に進むつもりだったの?
ポール:食べ物に興味が。
ニック:昔、あなたのファイルを読んだのよ、つまり探していた時、精子を。ファイルには「国際関係を勉強中」と。
ポール:そうだったな、あれは大昔の話だ。いろいろ考えて、大学をやめた。
ジョニ:中退したの?
ポール:向いてなかった。
ニック:でも何故?
ポール:僕にとっては、金の無駄に思えた。座って人の考えを聞く、本で学べばすむのに。別に高等教育がくだらないとは言っていない。大学はすばらしい。ジョニにはぴったりだけど、僕は行動で学ぶ。きっと変わり者なんだ。だから外食産業界にいるのかも。

 

<ネタバレ>

その後、ニックの不安は的中、ニックへの不満がくすぶっていたジュールスはポールと浮気、それがバレて家族は大騒ぎになります。結局、家族は試練を乗り越え、ポールは「単なる精子提供者」、「家族にとって邪魔者」と遠ざけられます。子供達が生物学上の父に興味を持つのは無理もないことですが、お気楽男とはいえ、ポールが少しかわいそうな気もします。もっとも、子育てにかかる費用や手間を考えると、精子提供の対価が60ドルとか90ドルと言われる生物学上の父の価値は、それだけものなのでしょう。日本人にはピンとこないかもしれませんが、精子提供による子供が年間100万人も生まれるアメリカならではの設定ではないかと思います。

<ネタバレ終わり>

 

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関連作品 

アネット・ベニング出演作のDVD(Amazon

  「グリフターズ/詐欺師たち」(1990年)

  「バグジー」(1991年)

  「リチャード三世」(1995年)

  「アメリカン・プレジデント」(1995年)

  「アメリカン・ビューティー」(1999年)

  「ワイルド・レンジ 最後の銃撃」(2003年)

  「ジンジャーの朝 〜さよなら、わたしが愛した世界」(2012年)

  「20センチュリーウーマン」(2016年)

 

ジュリアン・ムーア出演作品

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マーク・ラファロ出演作品のDVD(Amazon

  「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」(2000年)

  「エターナル・サンシャイン」(2004年)

    「コラテラル」(2004年)

    「ゾディアック」(2007年)

    「アベンジャーズ」(2012年)

    「はじまりのうた」(2013年)

  「フォックスキャッチャー」(2014年)

   

「ノーマル・ハート」(2014年)・・・北米版、リージョンA、日本語なし

  「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年) 

 

LGBTを描いた名作映画Amazon

  「愛についてのキンゼイ・レポート」(2004年)

  「ミルク」(2008年)

  「アデル、ブルーは熱い色」(2013年)

  「パレードへようこそ」(2014年)

  「人生は小説よりも奇なり」(2014年)

  「キャロル」(2015年)

  「タンジェリン」(2015年)

  「ムーンライト」(2016年) 

  「BPM ビート・パー・ミニット」(2017年)

  「君の名前で僕を呼んで」(2017年)

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