「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」は、2000年公開のアメリカのヒューマン・コメディ&ドラマ映画です。ケネス・ロナーガン監督・脚本、マーティン・スコセッシ製作総指揮、ローラ・リニー、マーク・ラファロら出演で、幼い頃に両親が事故死、生まれ故郷の小さな町で弟と別れて暮らす、8歳の息子を育てるシングルマザーの銀行員の姉の下に、音信不通だった弟がひょっこりと現れて巻き起こす騒動を通して、姉の複雑な人間関係ととともに成熟した大人になりきれない二人の師弟の絆を等身大に描いています。第73回アカデミー賞で、アカデミー主演女優賞(ローラ・リニー)と脚本賞(ケネス・ロナーガン)にノミネートされた作品です。日本では劇場未公開ですが、ソフトで視聴できます。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:ケネス・ロナーガン
脚本:ケネス・ロナーガン
出演:ローラ・リニー(サマンサ・プレスコット)
マーク・ラファロ(テリー・プレスコット)
マシュー・ブロデリック (ブライアン・エヴェレット)
ジョン・テニー(ボブ)
ロリー・カルキン(ロディ・プレスコット)
J・スミス=キャメロン(マーベル)
ジョシュ・ルーカス(ルディ・シニア)
ギャビー・ホフマン(シェイラ)
ケネス・ロナーガン(ロン)
ほか
あらすじ
- サミーとテリーのプレスコット姉弟は、子供の頃、交通事故で両親を失いました。年月は流れ、サミー(ローラー・リニー)はシングルマザーになり、故郷のニューヨーク州のスコッツヴィルで銀行の貸付主任をしています。一方は、テリー(マーク・ラファロ)は、国中を放浪、トラブルに巻き込まれたりしながらも、なんとか暮らしています。
- 姉と何ヶ月も音信不通だった後、テリーはどうしても金が必要になり、姉の下を訪れます。サミーの息子ルディ(ロリー・カルキン)は、テリーとの再開を大喜びします。テリーはサミーが用立てた金を恋人に送りますが、恋人が自殺を企てたのを知り、滞在を延ばし、姉はこれを歓迎します。
- 学校の宿題の作文で、ルディは不在の父が格好いいヒーローだと空想します。サミーは、ルディに父の関して真実をあいまいにしていますが、テリーは父親に捨てられたということをルディに実感させます。サミーは古い恋人との関係を再開しますが、すぐにプロポーズされて当惑、考える時間がほしいと言います。
- 銀行では、新しい支店長のブライアン(マシュー・ブロデリック)が、コンピューターの画面の色や毎日の勤務表に関して厳しい要求を出し、存在感を露わにします。特にサミーには仕事を抜けだすのではなく他の誰かに子供の迎えを頼むよう、厳しく要求します。ブライアンには妊娠6ヶ月の妻がいますが、彼らは何度かの言い争いの後、情事に陥ります。
- テリーはルディと親しくなり、サミーのしつけをかいくぐって、夜遅くにルディをプールバーに連れ出します。サミーは牧師(ケネス・ロナーガン)に、テリーの生き方について相談します。テリーは姉のアドバイスを聞かず、ルディとの関係を続けます。自分自身に疑問を感じるサミーは、恋人のロポーズを断り、ブライアントの関係にもケリを付けます。
- ・テリーとルディは二人で魚釣りにいった後、ルディの父に会いに行きます。過去に直面したルディの父は激怒し、テリーはルディの父への暴行容疑で逮捕されてしまいます・・・。
レビュー・解説
「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」は一見、ミニ・シアターで上映される小品のような印象ですが、無駄なく構成された感動的な脚本と、ローラ・リニー、マーク・ラファロのナチュラルでメリハリの効いたパフォーマンスに思わず引き込まれる、中身の濃い作品です。
ニューヨークやロスアンジェルスなど、アメリカの大都市が次々と作り出す新たなライフスタイルは刺激的ですが、本作の舞台である田舎の小さな街のライフスタイルにはどこかしらほっとするものがあります。二人の故郷は、ニューヨーク州のはずれにあるスコッツヴィルのキャッツキルという架空のコミュニティで、町を行く人々が久しぶりに帰ってきた弟に声をかけるような地縁が残る小さな町です。姉は真面目に教会に通い、困ったことがあると牧師に相談に行き、彼女の働く銀行の前任の支店長は、彼女が息子を迎えに行く為に仕事を抜け出すのを容認する、そんな融通のきく町でもあります。
ニューヨーク州スコッツヴィル(グーグル・マップ)
スコッツヴィルはニューヨーク州のはずれある田舎町。
サミーとテリーは、孤児の施設で苦労しながらお互い助け合って育ちましたが、映画ではその部分は描かれておりません。突然、帰ってきたやんちゃな弟が巻き起こす騒動に当惑する姉自信も、不倫など様々な問題を抱えながら生きています。言ってみれば世の中に完全な人間などいない、このように不完全な人間同士が絡み合い、助け合いながら生きていく姿は、感動的で美しくさえあると感じさせる作品です。
監督・脚本のケネス・ロナーガンは、ニューヨーク出身の劇作家、映画脚本家、監督で、高校の頃から書き始め、賞を受賞するなど、大学時代から頭角を現します。本作は彼の映画監督デビュー作で、一幕もの舞台劇(帰ってきたテリーが姉とレストランで食事するシーン)を、長編映画に膨らませたものですが、無駄のない構成でローラ・リニーとマーク・ラファロの魅力をフルに引き出す、舞台劇のよう密度の濃い作品になっています。ロナーガン自身も牧師役として出演していますが、どこかしら子供じみたところのあるサミーやテリーと対称的な思慮深く控えめ役をいい感じで演じています(セリフが長いので、彼の出演シーンはローラ・リニーとマーク・ラファロが、監督を務めたそうです)。
マーティン・スコセッシの当時の恋人がロナーガンの舞台劇のオーディションを受けたのがきっかけで、スコセッシはロナーガンと友人となり、本作では製作総指揮を務めています。スコセッシが盾になることにより、スタジオの要求をブロックし、ロナーガンの思い通りの作品が実現したと言われています。
主演のローラ・リニーはアメリカの女優で1992年に映画デビュー、「トゥルーマン・ショー」(1998年)などで注目されるようになりました。派手さはありませんが、コメディからシリアスまで幅広くこなす実力派女優で、本作でも多彩な表情を見せています。
- 本作「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」(2000年)で主演女優賞
- 「愛についてのキンゼイ・レポート」(2004年)で助演女優賞
- 「マイ・ライフ、マイ・ファミリー」(2007年)で主演女優賞
と、三度もアカデミー賞にノミネートされている他、インデペンデント系の映画「イカとクジラ」(2005年)の演技も高く評価されています。
驚きは共演のマーク・ラファロです。当時、舞台を中心に活動していた彼はまだ無名でしたが、舞台での彼の演技を高く評価したロナーガン監督が本作に起用、一躍、注目を浴びました。本作での彼の演技は今ほど濃くはないのですが、多様な表情を自然に演じてわけており、彼の演技力が卓越したものであることがわかります。以降、「コラテラル」(2004年)、「ゾディアック」(2007年)、「ブラインドネス」(2008年)、「シャッター アイランド」(2010年)など数々の話題作に出演するようになり、
- 「キッズ・オールライト」(2010年)
- 「フォックスキャッチャー」(2014年)
- 「スポットライト 世紀のスクープ」(2015年)
で、アカデミー助演男優賞にノミネートされています。
タイトルの「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」は、「私を頼っていいのよ」、「私を信じていいのよ」、「私に任せていいのよ」といった意味です。日本人にはあまり馴染みがない慣用句と思いますが、何故、そのままカタカナにして日本語タイトルにしてしまったのか謎です。恐らく、孤児としてお互い助け合って育ったたった一人のやんちゃな弟が問題を起こし、自身も様々な問題を抱えながらも自分を頼って欲しいという、姉の強い愛情を表現したもののと思われます。
マシュー・ブロデリック (ブライアン・エヴェレット)
ケネス・ロナーガン(ロン)
撮影地(グーグルマップ)
撮影はニューヨーク州のマーガレットヴィルを中心に行われている。
- サミーの通勤路
マーガレットヴィルのメインストリート。 - サミーが働く銀行
- テリーがバスから降り立った場所
- サリーとテリーが待ち合わせたレストラン
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https://amzn.to/3XWogrF 「トゥルーマン・ショー」(1998年)
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