「ブロークン・フラワーズ」:往年のプレイボーイ、今はただの無気力中年男が息子の存在を知り、かつての恋人たちを訪ねて歩くコメディ
「ブロークン・フラワーズ」(原題:Broken Flowers)は2005年公開のアメリカのコメディ&ドラマ映画です。ジム・ジャームッシュ監督、ビル・マーレイら出演で、息子の存在を知った独身の中年男が、真相を確かめようと元恋人たちを訪ねる姿をユーモラスに描いています。第58回カンヌ国際映画祭で、審査員特別グランプリを受賞した作品です。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:ジム・ジャームッシュ
脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:ビル・マーレイ(ドン・ジョンストン、ビジネスで成功、冴えない中年男)
ジュリー・デルピー(シェリー、ドンの恋人、愛想を尽かし出て行く)
ジェフリー・ライト(ウィンストン、ドンの友人)
シャロン・ストーン(ローラ、昔の彼女、レース・ドライバーの夫の未亡人)
アレクシス・ジーナ(ロリータ、ローラの娘)
フランセス・コンロイ(ドーラ、昔の彼女 、夫と不動産業を営む)
ジェシカ・ラング(カルメン、昔の彼女、アニマル・コミュニケーター)
ティルダ・スウィントン(ペニー、昔の彼女、荒地のボロ家で生活)
ほか
あらすじ
主人公の中年男性、ドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)はコンピューター・ビジネスでひと山当てて悠々自適の生活ですが、その無気力な生活ぶりに愛想をつかした恋人シェリー(ジュリー・デルピー)が去っていきます。そんなある日、ドンにピンクの封筒に入った匿名の手紙が届きます。手紙は元の恋人からで、彼には19歳になる息子がいると書いてありました。かつてドンファンだった彼は、元の恋人と言っても名前が書いてないので誰なのかも分からず、どうする気もありませんでしたが、隣人のウィンストン(ジェフリー・ライト)の熱心な勧めにより、可能性のある4人の女性を花束を持って訪ねることにしました・・・。
レビュー・解説
冴えない中年男がかつての恋人4人を訪ねるという大変な映画です。しかもこの4人は、シャロン・ストーンを始めとするとびきりの美人。再会は四者四様ですが、さぞかしドラマティックな展開があるのかと思いきや、当惑したり、間が悪かったり、気まずかったり・・・。ビル・マーレイの表情が、なんとも言えません。旅から帰ってきたドンに、出て行ったシェリーから手紙が届きます。結局、誰の子だったのか、息子に会えたのか、これからどうなるのか・・・、一見、はっきりしないような終わり方をします。
この映画の仮題は「デッド・フラワーズ」(Dead Flowers=枯れた花)だったそうです。「デッド・フラワーズ」(枯れた花)は、醒めた恋の象徴で、ローリング・ストーンズの同名の「俺の結婚式には枯れた花を送ってくれ、その代わりお前の墓には忘れずバラを供えてやるから」といった内容の歌にちなんだものようです。ドンはバラの花束を持って、昔の恋人たちに会いにいきます。既に亡くなっていた昔の彼女のお墓にも行きます。そうやって昔の彼女たちに会ったところで、何が起こる訳でもなく、いなされたり、すかされたり、追い返されたり、ことごとく玉砕します。つまり、「デッド・フラーワーズ」で歌われた、かつての恋人に贈るバラの花の行く末が、「ブロークン・フラワーズ」(砕けた花)だった訳です。
砕ける花のイメージ
4人の元恋人は美人ぞろいで、さらに昔の彼女ローラの娘が妙に色っぽかったり、怪我をしたドンに手当てをしてくれる花屋の娘も美しいのですが、「何故、ここまで美人を揃えたのか?」という問いに、ジム・ジャームッシュ監督は「ドンは、その昔、ドンファンだったが、まだ抜けきれていないので、お仕置き」というような意味の事をインタビューで答えています(笑)
結局、どうなるか?息子と勘違いしてサンドイッチを奢った若者との会話にその答えが隠されています。
The Kid: So, as just a guy who gave another guy a sandwich, you have any philosophical tips or anything, for a guy on a-kind of- road trip?
Don Johnston: You asking me?
The Kid: Yeah.
Don Johnston: Well, the past is gone, I know that. The future isn't here yet, whatever it's going to be. So, all there is, is this. The present. That's it.若者:それで・・・、サンドイッチを奢る男として、哲学的な助言みたいなものはある?旅する男に対して。
ドン:私から?
若者:そう。
ドン:そうだな。過去は終わってしまった。未来は、これからどうにでもなる。だから、大事なのは、つまり、現在だ。そういうことだ。
そうなんです。過去は終わった事なのです、今が大切なのです。でも、ドンがこれを言った時にはまだはっきりとわかっていないんですね、今の恋人シェリーを大切にすべきだということを・・・。果たして、そうなったかは、皆さんのご想像におまかせしますって終わってしまうのですが、シェリーを演じたジュリー・デルピーのファンとしては、是非、そうあって欲しいと願っています。
最初、この映画を見た時は、当惑したり、間が悪かったり、気まずかったりというシーンの連続で、これはなんだ?と思ったのですが、本当によく考えられた素晴らしい映画です。「ブロークン・フラワーズ」は、カンヌ国際映画祭の審査員特別グランプリを受賞していますが、それだけのことはあります。また、「ベストの演技ができたので引退を考えた」というビル・マーレイの絶妙のパフォーマンスも見どころです。映画の方ではっきりとケリをつけてくれませんが、どうあって欲しいか、自分だったらどうか、など、じわーっと考えてみるのはもオツなものですね。
サウンドトラック
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1. ゼア・イズ・アン・エンド 2. ヤガレ・テゼタ 3. ライド・ユア・ドンキー 4. アイ・ウォント・ユー 5. ヤケモ・ソウ 6. ノット・イフ・ユー・ワー・ザ・ラスト ・ダンディ・オン・アース |
7. テル・ミー・ナウ・ソー・アイ・ノウ 8. ギュベレイ 9. ドープスモーカー 10. ≪レクイエム≫~ピエ・イエス 11. エサノピウム 12. アンナチュラル・ハビタート |
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関連作品
ジム・ジャームッシュ監督 x ティルダ・スウィントンのコラボ作品のDVD(Amazon)
ジム・ジャームッシュ監督作品のDVD(Amazon)
「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984年)
「ダウン・バイ・ロー」(1986年)
「ゴースト・ドッグ」(1999年)
ビル・マーレイ x ティルダ・スウィントン共演作品のDVD(Amazon)
「ムーンライズ・キングダム」(2012年)
「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)
「トッツィー」(1972年)
「エド・ウッド」(1994年)
「天才マックスの世界」(1998年)
「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(2001年)
「ロスト・イン・トランスレーション」(2003年)
「ジャングル・ブック」(2016年)
「汚れた血」(1986年)
「僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ」(1990年)北米版
「トリコロール/白の愛」(1994年)
「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)」(1995年)
「ビフォア・サンセット」(2004年)・・・脚本・出演
「ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男」(2006年)
「パリ、恋人たちの2日間」(2007年)・・・監督・脚本・出演
「ビフォア・ミッドナイト」(2013年)・・・脚本・出演
ティルダ・スウィントン出演作品
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