「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」(原題:Only Lovers Left Alive)は、2013年公開のアメリカのドラマ映画です。ジム・ジャームッシュ監督・脚本、トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントンらの出演で、ミュージシャンとして人間たちに紛れて現代に暮らす吸血鬼とその仲間たちを描いています。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:ジム・ジャームッシュ
脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:トム・ヒドルストン(アダム、ミュージシャン)
ティルダ・スウィントン(イヴ、アダムの妻)
ミア・ワシコウスカ(エヴァ、イヴの妹)
ジョン・ハート(マーロー(キット)、作家)
アントン・イェルチン(イアン、アダムのエージェント)
ジェフリー・ライト(ワトソン医師、輸血用血液を密売)
ほか
あらすじ
デトロイトの寂れたアパートでひっそり暮らすアダム(トム・ヒドルストン)は何世紀も生き続ける吸血鬼ですが、正体を隠し、アンダーグラウンドでカリスマ的人気のミュージシャンとして活動しています。起きて行動するのは夜で、必要な物はイアン(アントン・イェルチン)に調達を依頼します。時折、素顔を隠して医師ワトソンの病院を訪れ、血液を入手します。人間たちの蛮行に憂鬱なアダムの元に、モロッコのタンジールに滞在している吸血鬼の恋人イヴ(ティルダ・スウィントン)がやってきます。何世紀もの間、愛し合い続けてきた二人は、アダムのアパートで愛を交わし、音楽や人間たちの蛮行について語り合い、少し眠った後、車に乗って夜の散歩にでかけます。パッカード工場の跡、ジャック・ホワイトの生家、元ミシガン劇場の跡・・・、かつて自動車産業で栄えた街も、貧困と人口減少で荒廃が進んでいます。16世紀末に死んだとされる異端の作家クリストファー・マーロウ(ジョン・ハート)が話題に出ますが、彼はキットという名でタンジールに身を潜めています。ある日、イヴの妹エヴァ(ミア・ワシコウスカ)が二人を訪ねてきます。87年前にパリで起きた一件が原因で、アダムはエヴァに怒りを抱いていますが、彼女はそのまま居座ります。間もなく、エヴァがイアンの血を吸う事件が起き、妹を庇っていたイヴも「なんてことを!今は21世紀なのよ」と怒り、彼女を追い出します・・・。
レビュー・解説
ジム・ジャームッシュ監督独特のゆったりとした、風変わりでスタイリッシュな雰囲気で描かれたヴァンパイア映画です。何世紀も生きるヴァンパイアですが、今では生身の人間に噛みつくこともはばかられ、汚れた血を飲むと病になると、密かに病院から入手する血液で生き延びています。「マイティ・ソー」でサキを演じたトム・ヒドルストンと、「フィクサー」でオスカー女優に輝いたティルダ・スウィントンが、そんなヴァンパイアの恋人達を雰囲気たっぷりに演じています。
映画の中では明らかにされませんが、脚本ではイヴは2000歳、アダムは500〜600歳と設定されており、二人はそれを念頭に演じています。また、ヴァンパイアの振る舞いは、ワイルドな動物っぽさと、洗練された人間らしさが共存するように描かれています。ヴァンパイア役は、ヤギとヤクの毛と、人間の髪の毛が混ぜられた、ワイルドなヘアスタイルで、音楽や文学の蘊蓄を語ります。
ジム・ジャームッシュ監督は資金調達に苦労し、脚本が出来てから映画化されるまで7年もかかりました。この点に関して、彼は次のように語っています。
僕はヴァンパイアでラヴストーリーを作りたかったんです。実際に映画を完成させるのに7年かかりました。僕は現代のコマーシャルなヴァンパイア映画をあまり見たことがありません。でも、ヴァンパイア映画の歴史全体に愛情を持っていますし、たくさんの素晴らしい映画があります。実際ティルダと僕はこの件に関して話をして、7年前から脚本はあって、そのすぐ後にはジョン・ハートのキャラクターが出来ていました。彼らはこの企画にずっとついていてくれたのです。ティルダはうまく行かないときも決してあきらめず、「今はこの映画を作るのに機が熟していないということよ。それって、いい事だわ。」と、言ってくれた。ジョンは、「撮る準備ができたらいつでも言ってくれ。必ず行くから。」と言い、実際そうしてくれた。彼らには心から感謝している。
一方、ティルダ・スウィントンは、次のように語っています。
長い時間を掛けることの利点は、実際撮影になったとき、そのキャラクターは自分の血肉となっているということ。だからとてもナチュラルに演じられる。ジムの映画特有のゆったりしたリズムにも自然に馴染んでいた。「とてもジャームッシュらしい映画」というのは素晴らしい褒め言葉だし、わたしも彼の映画の一ファンとしてまさにその通りだと思う。彼はこの映画でいっさい妥協をしていない。7年掛かろうが、17年掛かろうが、彼はこの映画を自分の好きなように完成させたでしょう。彼のようなフィルムメーカーと一緒に仕事をする場合、ある種の忍耐が必要になる。でも彼はそれに値する監督だし、それによって彼特有のフィーリング、映像、音楽などが一体となった作品が出来上がるの。(中略)優れたアートワークはみんな多かれ少なかれ社会のメタファーだと思うけれど、偉大なアーティストとその作品はつねに「不死身」という意味で比較できると思う。本作においてアダムはまさにジム自身よ。
生身の人間に噛みつくこともはばかられ、密かに病院から入手する血液で生き延び、人間たちの蛮行に憂鬱になるなど、悲哀感さえ漂う現代のヴァンパイアですが、生き残る為の原動力は何なのか、タイトルが暗示しているようでもあります。
トム・ヒドルストン(アダム)
ティルダ・スウィントン(イヴ)
ジョン・ハート(マーロー(キット))
「永遠の僕たち」(2011)、「嗤う分身」(2013)など、個性的な作品への出演が目立つミア・ワシコウスカですが、この作品ではヴァンパイアになって牙をむき出しています。
牙が生えたミア・ワシコウスカ
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関連作品
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「ブロークン・フラワーズ 」(2005年)
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「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984年)
「ダウン・バイ・ロー」(1986年)
「ゴースト・ドッグ」(1999年)
ティルダ・スウィントン出演作品
「アリス・イン・ワンダーランド」(2010年)
「キッズ・オールライト」(2010年)
「ジェーン・エア」(2011年)