「ドラゴンタトゥーの女」:薄幸の天才少女ハッカーが謎を解く
「ドラゴン・タトゥーの女」は、2011年公開のアメリカのミステリー映画です。スティーグ・ラーソンの推理小説「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」を原作に、デヴィッド・フィンチャー監督、ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラら出演で、40年前に16歳の少女が行方不明になったスウェーデンの財閥一族の秘密を解明する記者と天才少女ハッカーを描いています。第84回アカデミー賞で、主演女優(ルーニー・マーラ)、撮影、編集、録音、音響編集の5部門にノミネートされ 、編集賞を受賞した作品です。
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目次
キャスト・スタッフ
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:スティーヴン・ザイリアン
原作:スティーグ・ラーソン
出演:ダニエル・クレイグ(ミカエル・ブルムクヴィスト)
ルーニー・マーラ(リスベット・サランデル )
クリストファー・プラマー(ヘンリック・ヴァンゲル)
ほか
あらすじ
記者ミカエル(ダニエル・クレイグ)は大物実業家の武器密売をスクープしますが、逆に名誉毀損で訴えられ裁判で敗訴し、全財産を失います。失意のミカエルは、別の大物実業家(クリストファー・プラマー)から、一族の謎を解明すれば判決を逆転させる証拠を渡すという依頼を受けます。謎とは40年前に行方不明になった16歳の少女のことであり、依頼を引き受けたミカエルは、ミカエルに好意を持つ、ドラゴンのタトゥをしたフリーの天才ハッカー、リスベット(ルーニー・マーラ)と調査を進めます・・・。
レビュー・解説
ルーニー・マーラがリスベット役に全身全霊を注いで取り組んだ本作は、デヴィッド・フィンチャー監督により、荒々しくも魅力的な、クォリティの高い娯楽作品に仕上がっています。
最初に、レッド・ツェッペリンの「移民の歌」のカバーで始めるオープンニング・クレジットで度肝を抜かれます。映像も素晴らしく、これから始まる映画が、非常にクォリティの高いエンターテインメントであることを予感させます。 映画の内容は、予感に違わず素晴らしいものです。単なる犯人探しやアクション・スリラーにとどまらず、タイトルになっている天才少女ハッカーの「ドラゴン・タトゥーの女」(リスベット)が、巧みに描かれています。リスベットは暗い過去とともに心に障害を持ち、自分をうまく表現できないのですが、ルーニー・マーラは視聴者にはリスベットの心が読めるように巧みに演じています。彼女は「サイド・エフェクト」でも心に障害を持つ女性を演じていますが、彼女のパフォーマンスには観客をも欺くほど鋭いものがあり、監督の評価も非常に高い女優です。
邦題は「ドラゴン・タトゥーの女」ですが、原題「The Girl with the Dragon Tattoo」ではWomanではなく、Girl (少女)が使われています。リスベットに成熟した女性ではなく、幼さが残る女性をイメージしていることがわかります。映画の中で、
Lisbeth: Put your hand back in my shirt.(手を私のシャツの中に戻して)
Lisbeth: May I kill him?(彼を殺してもいい?)
といったセリフがあるのですが、これは
- 人に触れていてほしい
- 人を殺すのも聞いてから
という、リスベットの中に残る幼児性や、アンバランスさを象徴しています。
2009年に公開されたスウェーデン版映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」で主演を務めたノオミ・ラパスに比べて、ルーニー・マーラは少し線が細いのではないかと危惧しましたが、まったくの思い過ごしでした。実は、リスベット役には、以下の女優が候補に上がっていました。
- ナタリー・ポートマン(本命なるも極度の疲労状態の為、辞退)
- スカーレット・ヨハンソン(セクシーすぎ)
- ジェニファー・ローレンス(背が高すぎ)
- ルーニー・マーラ(決定)
ナタリー・ポートマンが本命だったということは、むしろ線の細い印象は敢えて狙ったところではないかと思われます。
ルーニー・マーラは「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)で主人公の恋人役を演じて注目を集めましたが、アメリカ女優には珍しく華奢で童顔、可愛らしいタイプで、日本でも人気の女優です。しかし、ハリウッドでは可愛いだけではとてもやっていけません。ナタリー・ポートマンが辞退したのは彼女にとって幸運でしたが、彼女には「可愛い女優」を大きく超えていく覚悟があったのではないかと思います。
実際、映画で見るルーニー・マーラは、誰かと思うほど、変貌しています。さらに、彼女はこの映画の為に耳、鼻、眉、唇、乳首にピアスの穴をあけました。耳、眉、乳首の穴は複数で、耳、鼻、眉、唇の穴は撮影後に復元しましたが、続編の際にあけ直したくないので乳首の穴は残したままだと言います。また、レイプシーンも吹き替えなしで、自ら傷だらけになって演技し、ダニエル・クレイグとの全裸のベッドシーンにも果敢に取り組んでいます。*3本作の撮影を終えたルーニー・マーラは、疲労のため、しばらく次の作品を受けられなかったといいます。
残念ながら受賞は「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」のメリル・ストリープにいってしまいましたが、このような「ドラゴン・タトゥーの女」の迫真の演技でルーニー・マーラは、見事、2011年度のアカデミー主演女優賞にノミネートされました。エンディングはちょっと寂しいのですが、それで映画としての統一感が出ている様な気がします。 原作小説の「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」も、スウェーデン版の映画「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」も評価が高い作品ですので、重ねて読んだり、見たりしても、楽しめると思います。
ダニエル・クレイグ(ミカエル・ブルムクヴィスト)
ルーニー・マーラ(リスベット・サランデル )
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サウンドトラック
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O.S.T(TRENT REZNOR & ATTICUS ROSS)/GIRL WITH THE DRAGON TATTOO
Disk:1 1. Immigrant Song 2. She Reminds µe Of You 3. People Lie All The Time 4. Pinned And Mounted 5. Perihelion 6. What If We Could? 7. With The flies 8. Hidden In Snow 9. A Thousand Details 10. One Particular Moment 11. I Can't Take It Anymore 12. How Brittle The Bones 13. Please Take Your Hand Away |
Disk:2 1. Cut Into Pieces 2. The Splinter 3. An Itch 4. Hypomania 5. Under The Midnight Sun 6. Aphelion 7. You're Here 8. The Same As The Others 9. A Pause For Reflection 10. While Waiting 11. The Seconds Drag 12. Later Into The Night 13. Parallel Timeline With 14. Alternate Outcome |
Disk:3 1. Another Way Of Caring 2. A Viable Construct 3. Revealed In The Thaw 4. Millennia 5. We Could Wait Forever 6. Oraculum 7. Great Bird Of Prey 8. The Heretics 9. A Pair Of Doves 10. Infiltrator 11. The Sound Of Forgetting 12. Of Secrets 13. Is Your Love Strong Enough? |
動画クリップ(YouTube)
レッド・ツェッペリンの「移民の歌」のカバーで始めるオープンニング・クレジット
関連作品
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「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」上巻
「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」下巻
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「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(2009年)
「セブン」(1995年)
「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)
「ゴーン・ガール」(2014年)
「ロード・トゥ・パーディション」(2002年)
「レイヤー・ケーキ」(2004年)
「007 カジノ・ロワイヤル」(2006年)
「007 スカイフォール」(2012年)
「ローガン・ラッキー」(2017年)
「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)
「サイド・エフェクト」(2013年)
「her/世界でひとつの彼女」(2013年)
「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」(2016年)
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「サウンド・オブ・ミュージック」(1965年)
「スタートレックVI 未知の世界」(1991年)
「マルコムX」(1992年)
「12モンキーズ」(1995年)
「インサイド・マン」(2006年)
「人生はビギナーズ」(2010年)