「50/50 フィフティ・フィフティ」:27歳でガンになった青年を、コメディとヒューマン・ドラマの間で絶妙に描く
「50/50 フィフティ・フィフティ」(原題: 50/50) は、2011年公開のアメリカのコメディ/ドラマ映画です。脚本のウィル・ライザーのガン克服の実話をベースに、ジョナサン・レヴィン監督、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、セス・ローゲンらが、27歳という若さでガンを宣告され、5年後生存率50%という過酷な現実と向き合いながら懸命に生きようとする青年の姿を、ユーモラスに暖かく描いています。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:ジョナサン・レヴィン
脚本:ウィル・ライザー
出演:ジョゼフ・ゴードン=レヴィット(アダム)
セス・ローゲン(カイル)
アナ・ケンドリック(キャサリン)
ブライス・ダラス・ハワード(レイチェル)
アンジェリカ・ヒューストン(ダイアン)
セルジュ・ウード(リチャード)
フィリップ・ベイカー・ホール(アラン)
ほか
あらすじ
シアトルのラジオ局で働く27歳のアダム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は律儀な性格、恋人で画家のレイチェル(ブライス・ダラス・ハワード)はマイペース、同僚で親友のカイル(セス・ローゲン)はお気楽な女好きです。ある日、腰の痛みが治まらないアダムが病院で検査を受けると、「悪性神経鞘腫 神経線維肉腫」と診断されます。酒もタバコもやらないアダムでしたが、5年後生存率が50%、転移後生存率は10%という深刻な病状でした。初めは驚きを隠せなかったものの、すぐに落ち着きを取り戻し、レイチェル、カイル 、そして両親、同僚たちに打ち明けます。感情を表に出さないアダムは、慰めてくれる人たちを冷静に見ていました。臨床心理療法士キャサリン(アナ・ケンドリック)もその一人で、彼女のセラピーを受けるものの心に変化は現れません。24歳で経験が少ない彼女に不安を抱きつつ、アダムは前向きに病気と闘おうとしますが、抗ガン剤治療は思った以上に過酷でした。スキンヘッドにしたアダムはアラン(フィリップ・ベイカー・ホール)やミッチという患者仲間に励まされます。一方、カイルはアダムと行った本屋で美人店員に声をかけ、デートの約束をとりつけますが、そのデート先でレイチェルが他の男とキスする現場を目撃します。これを機にレイチェルは看病疲れを告白、アダムも別れを決意します。闘病生活を続けるうちに周囲の対応は変化し、愛を持って接してくれる人、そうでない人との差が顕著になる中、病院帰りに家まで送ってくれたキャサリンと話しているとリラックスしている事にアダムは気づきます。しかし、患者仲間のティムが亡くなり、自分の余命を意識し始めたアダムは、抗ガン剤が効かず、大きくなった腫瘍は摘出しないと転移の危険があると、医師から告げられます。精神が不安定になる中、アダムは親身にアドバイスしてくれるキャサリンに心を開くようになります。決意を固めたアダムは、両親とカイル、そしてキャサリンに見送られ、手術台に上ります・・・。
レビュー・解説
27歳の若さでガンになった青年という難しい題材を、コメディとヒューマン・ドラマの間で絶妙に描いています。これは、コメディ脚本家のウィル・ライザー自身の闘病体験に基づいているところが大きいでしょう。20代前半でガンになったウィルを、同じく20代前半だった友人のセス・ローゲンが支え、闘病体験を脚本にするよう諭しました。
セスがある日、こんなことを言ったんだ。「みんなが持っているガンのイメージはいつも同じで、悲しいものばかり。しかも年をとった人たちの物語が多いよ ね。」って。この言葉をきっかけに自分の経験を脚本にしてみようと思ったんだ。もちろん闘病中はつらいことも多かったけれど、僕はもともとコメディ・ライター。このバックグラウンドを生かして、病気のことや周囲の人たちとコミュニケーション不全になったことを、ユーモアを交えながら書いてみようと思った。 セスは才能あふれる俳優でありフィルムメイカー。製作者としても参加してくれた彼の存在がなければ、この映画はありえなかったと思うよ。(ウィル・ライザー)
ガンというシビアな題材に笑いを持ち込む事は、ある意味、諸刃の剣ですが、この点に関して、ウィル・ライザーは次の様に語っています。
エンターテイメントは、ときにはつらい現実から逃避する手立てになるし、ときには感情を揺さぶられてカタルシスを感じられるセラピー的な効果も発揮する。この映画を観た患者の人たちが、自分の言葉で表現できなかった気持ちを話す糸口になったし、ヒーリングにもなったと言ってくれたことが、とてもうれしかった。笑いを媒介にしたヒーリングになったのだとしたら、さらに素晴らしいことだよね。(ウィル・ライザー)
患うまでの僕はワーカホリックで神経質で心配性、遅刻も許さないタイプ。自分と合わない女の子ととばかりつきあっていたしね(笑)。でも闘病の経験を通 して、いろんなことを深刻に考えすぎずに、生きられるようになった。周りの人たちにもよく言われるんだ。今のウィルのほう、が一緒にいて楽しいよって 。(ウィル・ライザー)
セス・ローゲンが主人公の背中の傷に薬を塗るシーン等、その他にも実際にあった事が描かれていますが、セス・ローゲンがトイレで便器に座っている時にガンになった話を聞かされたというシーンは、さすがに路上に置き換わっています。
当初、予定されていたジェームズ・マカヴォイが突然、出演できなくなり、撮影まで一週間足らずという時にセス・ローゲンが電話、二日前に主演を了承したというジョゼフ・ゴードン=レヴィットは、演技派俳優だけあってコメディへの出演にも抵抗がありませんでした。
これは確かにコメディだけど、マルクス兄弟的なドタバタコメディじゃない。純粋なヒューマンストーリーのなかから沸き上がるような笑いで、『(500)日のサマー』と同じ。それに、そこらへんにいるコメディアンよりも、僕のほうがずっと面白いと思うし(笑)(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)
日常生活では、もっとも悲惨な状況でも、おかしなことが起きるものだ。そういう状況に出くわしたとき、たいていの人は戸惑い、笑いを我慢する。でも、ウィルは自らの体験から、そういう事態に直面したら笑ったほうがいいし、そのほうがずっと健全だと学んだんだ。笑いは最高の薬というけれど、まったくその通りだと思う。(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットとセス・ローゲンの相性も良く、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが頭を丸刈りにするシーンでは、脚本にない二人の即興で可笑しいやり取りを演じています。撮影現場で、しばしば自分の演じるキャラクターを「世界最悪のセラピスト」と称していたアナ・ケンドリックは、このように固くて初々しい役を演ずると天下一品です。
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関連作品
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットの出演作のDVD(Amazon)
「(500)日のサマー」(2009年)
「インセプション」(2010年)
「LOOPER/ルーパー」(2012年)
「ドン・ジョン」(2013年)
「ザ・ウォーク」(2015年)
「40歳の童貞男」(2005年)
「スーパーバッド 童貞ウォーズ」(2007年)
「ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日」(2013年)
「スティーブ・ジョブズ」(2015年)
「マイレージ、マイライフ」(2009年)
「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010年)
「エンド・オブ・ウォッチ」(2012年)
「ピッチ・パーフェクト」(2012年)
「ドリンキング・バディーズ 飲み友以上、恋人未満の甘い方程式」(2013年)
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「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」(2011年)
「ジュラシック・ワールド」(2015年)
「ピートと秘密の友達」(2016年)