夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「嗤う分身」:閉塞した管理社会で願望が生んだ分身と三角関係に陥る男のブラック・コメディ

「嗤う分身」(原題:The Double)は2013年公開のイギリスの映画です。ドストエフスキーの小説「分身」(二重人格)を映画化したもので、優しくて内気な男が、自分と全く同じ姿をした男の出現によって翻弄される様を描いています。

 

 「嗤う分身」のDVD(Amazon

iTunesで観る*1 Amazonビデオで観る*2

 

目次

スタッフ・キャスト

監督:リチャード・アイオアディ
脚本:リチャード・アイオアディ/アビ・コリン
原作:フョードル・ドストエフスキー
出演:ジェシー・アイゼンバーグ(ジェームズ&サイモン)
   ミア・ワシコウスカ(ハナ)
   ウォーレス・ショーン(パパドプロス
   ノア・テイラー(ハリス)
   ヤスミン・ペイジ(メラニーパパドプロス
   ジェームズ・フォックス(大佐)
   キャシー・モリアーティ(キキ)
   フィリス・サマーヴィル(ミセス・ジェームズ)
   コブナ・ホルドブルック=スミス(警備員/医者)
   トニー・ロア(ルドルフ)
   スーザン・ブロンマート(リズ)
   ジョン・コークス(警察官)
   ティム・キー (ケアワーカー)
   ロイド・ウルフ(調査員)
   リディア・フォックス(調査員)
   サリー・ホーキンス(受付)
   ソウル・ウィリアムズ(警備員)
   J・マスシス(ジャニトール)
   クリストファー・モリス(職員)
   クリス・オダウド(看護師)
   クレイグ・ロバーツ(警察官)
   カーストン・ウェアリング(葬儀場の職員)
   パディ・コンシダイン(ジャック)
   ジェンマ・チャン(裁判官)
   ラデ・シェルベッジア(老人)
   ほか

あらすじ

閉塞感のある不穏な管理社会。「大佐」が支配する会社で働くサイモン・ジェームズ(ジェシー・アイゼンバーグ)は、気は優しいが内気で要領が悪く、存在感の薄い男。勤続7年ですが、名前もまともに覚えてもらえず、上司のパパドプロス(ウォーレス・ショーン)からはひどい扱いを受け、同僚にはバカにされ、入院中の母親からも蔑まれる毎日を送っています。密かに恋するコピー係のハナ(ミア・ワシコウスカ)の部屋を、自室から望遠鏡で覗くのがささやかな楽しみでした。そんなある日、もうひとりの自分が出現します。会社期待の新人として入社してきたジェームズ・サイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)は、顔、背格好、ファッションまでサイモンと瓜二つでした。サイモンは激しく動揺しますが、驚くことも上司や同僚は誰一人としてこの状況を不思議とも思いません。ジェームズは瞬く間に会社に馴染み、サイモンはますます影の薄い存在になっていきます。彼らの容姿は全く同じでしたが、性格は正反対で、サイモンはハナにまともにアプローチもできませんが、ジェームズは多くの女性を虜にし複数の女性と付き合うことができます。サイモンは自己主張できず仕事を評価してもらえませんが、ジェームズはそのアピールがうまくすぐに上司の信頼を得てしまいます。そしてサイモンは真面目で優しいが、ジェームズはいい加減でずる賢い。自信家でカリスマ性を持つジェームズの魅力はハナをも巻き込み、彼女はジェームズに惹かれていきます。ハナの為にジェームズとの仲を取り持つサイモンですが、心の中は不安と悲しみに溢れます。やがてジェームズは互いの適性を活かし、時と場合によって二人が入れ替わることでその場をうまくやることを提案します。狡猾なジェームズの行動は徐々にエスカレート、サイモンはジェームズのペースに翻弄され、次第に自分の人生を乗っ取られ、自分の「存在」そのものを奪われる恐怖を感じます・・・。

レビュー・解説

文字通り分身を描いた映画で、性格の異なる分身を演じ分けるジェシー・アイゼンバーグ、同じ画面に二人を映し出す撮影技術が見どころの映画です。撮影ではグリーン・スクリーンを使わず、コンピューターで動きを制御するモーションカメラで二度撮影し、つなぎ合わせています。

 

時代設定は必ずしも明確ではありませんが、レトロな感じの未来です。強いて言えば、イギリスの作家、ジョージ・オーウェルの「1984年」が書かれた1949年から見た未来といった感じでしょうか。閉塞感のある管理社会は、テーマというよりも分身が生まれる背景として描かれています。

 

分身は「個性的でありたい」という主人公の願望から生まれた自己像幻視ですが、ドストエフスキーの小説「分身」(二重人格)同様、現実と混然一体で、幻視かどうかわからないように描かれています。主人公はもともと地味な存在なので周囲は主人公に分身が現れても一向に気にせず、また、密かに恋するハナと自身の願望である分身の三角関係に陥るなど、サイコ・スリラーというよりはブラック・コメディ的展開です。 ある意味、狂気を描いた映画であり、また、管理社会や人々の無関心など、内気で心優しい人間にとって住みづらい世界はさして現実とかけ離れていない気もしますが、エンディングで主人公の思いがハナに通じたかに見えるのが微妙です。

サウンド・トラック

日本の60年代歌謡曲が挿入歌として使われており、一瞬、びっくりしますが、映画のレトロ感によくマッチしています。日本人にはちょっと嬉しいかも。

iTunesで聴く*3

関連作品  

「嗤う分身」の原作本Amazon

  ドストエフスキー「二重人格」

 

ジェシー・アイゼンバーグ出演作品のDVD(Amazon

  「イカとクジラ」(2005年)

  「アドベンチャーランドへようこそ」(2009年)

  「ゾンビランド」(2009年)

  「ソリタリー・マン」(2009年)

  「ソーシャル・ネットワーク」(2010年)

  「ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画」(2013年)

  「人生はローリングストーン」(2015年)

 

ミア・ワシコウスカ出演作品のDVD(Amazon

  「アリス・イン・ワンダーランド」(2010年)

  「キッズ・オールライト」(2010年)

  「ジェーン・エア」(2012年)

  「奇跡の2000マイル」(2013年)

  「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」(2013年)

関連記事

dayslikemosaic.hateblo.jp

dayslikemosaic.hateblo.jp

dayslikemosaic.hateblo.jp

dayslikemosaic.hateblo.jp

dayslikemosaic.hateblo.jp 

dayslikemosaic.hateblo.jp