夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「スリー・キングス」:湾岸戦争のアメリカを風刺、アクション、コメディ、ドラマの要素を統合した娯楽性の高い作品

スリー・キングス」(原題:Three Kings)は、1999年公開のアメリカの社会派ドラマ/アクション&コメディ映画です。デヴィッド・O・ラッセル監督・脚本、ジョージ・クルーニー、マーク・ウォルバーグ、アイス・キューブらの出演で、湾岸戦争終結直後、イラクが隠した金塊強奪に乗り出した3人の兵士の姿を、絶妙かつ独特なタッチで描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:デヴィッド・O・ラッセル
脚本:デヴィッド・O・ラッセル
原案:ジョン・リドリー
出演:ジョージ・クルーニー(アーチ・ゲイツ
   マーク・ウォルバーグ(トロイ・バーロー)
   アイス・キューブ(チーフ・エルジン
   スパイク・ジョーンズコンラッド・ビグ)
   クリフ・カーティス(アミール・アブダラ)
   ジェイミー・ケネディ(ウォルター・ウォーガマン)
   サイード・タグマウイ(サイード中尉)
   ノーラ・ダン(エイドリアーナ・クルース)
   ミケルティ・ウィリアムソン(ホーン)
   ジュディ・グリア(キャシー)
   ほか

あらすじ

1991年3月、湾岸戦争終結し、停戦が発表された直後のイラク砂漠地帯の米軍ベースキャンプ。補充兵のトロイ上級曹長マーク・ウォールバーグ)とコンラッド上等兵スパイク・ジョーンズ)は、降伏したイラク軍兵士が肛門に隠し持っていた謎の地図を発見します。特殊部隊のゲイツ少佐(ジョージ・クルーニー)は、これがイラククウェートから奪った金塊の隠し場所を示した地図と解読、発見者の二人と生真面目な二等軍曹チーフ(アイス・キューブ)を仲間に引き入れ、一獲千金とばかりに軍の指揮下を離れ、無断でそれを強奪することを計画、金塊探しに乗り出します。ところが、金塊の隠し場所の村で、フセイン体制打倒を図る反体制派の村民がイラク軍に迫害されている現実を目の当たりにして、事態は暗転します。彼らは隠された金塊と共に、捕虜だった村民のリーダー、アミール(クリフ・カーティス)を救い出しましたが、トロイはイラク軍に捕らえられ拷問を受けます・・・。

レビュー・解説 

実戦経験のないアメリカ兵がイラク兵を撃つの、撃たないのというやりとりから始まるこの映画は、湾岸戦争を強烈に風刺したブラック・コメディのように思われますが、間もなくアクション・シーンが展開し、終盤に向けてドラマのようになっていきます。途中にも随所に風刺が散りばめられ、様々な性格を併せ持った映画ですが、いずれの要素もクォリティが高く、こうした多様性を刺激としながら破綻させることなく、エンターテイメントとして完成度の高いものに統合されています。「ザ・ファイター」(2010)、「世界にひとつのプレイブック」、(2012)、「アメリカン・ハッスル」(2013)と、デヴィッド・O・ラッセル監督は、後に三作品連続でオスカーにノミネートされますが、本作も、彼の力量が遺憾なく発揮された作品です。

 

デヴィッド・O・ラッセル監督は湾岸戦争に対して批判的で、映画の中でも「アメリカは、フセインに反体制派をけしかけておいて手を引く」などといった下りが出てきます。また、金塊を求めて砂漠をうろうろする兵士達そのものが、アメリカを風刺したものと捉えることもできるでしょう。中東におけるアメリカのスタンスを象徴するようでもありますが、デヴィッド・O・ラッセル監督が巧みなのは、随所にこうした風刺を散りばめながらも直接的に糾弾するのではなく、アクション、コメディといった他の要素と絡めて、エンターテインメント性の高い作品に仕立て上げている点です。

 

1991年の湾岸戦争時のアメリカの大統領はブッシュ(父)で、2003年のイラク戦争時はその息子のブッシュです。この映画の編集中に、ワーナー・ブラザーズの重役の家で行われたジョージ・ブッシュ(息子)の為の基金パーティに訪れたデヴィッド・O・ラッセル監督が、「あなたのお父さんがイラクでやった事に疑問を投げかける映画を編集している」と伝えたところ、ブッシュ(息子)が「もう一度行って、ケリをつけようと思っているところだ」と応えたという逸話があります(ケリがついたかどうかは別にして、もう一度行ったことは確かですね)。なお、デヴィッド・O・ラッセル監督は、イラク戦争勃発後の2004年に、イラク戦争を描いたドキュメンタリー映画「Soldier's Pay 」に合せて本作の再リリースを予定していましたが、あまりに政治的すぎるという理由で、ワーナー・ブラザーズは中止の決定を下しました。

 

刺激的ながらも人間らしさを感じさせる作品が多いデヴィッド・O・ラッセル監督ですが、実は本人は切れやすく、ハリウッドの問題児とも言われました。この映画の撮影中にも、エキストラを投げ飛ばしたことをたしなめられた彼は、激高してジョージ・クルーニーに頭突きをくらわせたと言われています。「彼の才能には敬意を払うが、二度と一緒に働く事はない」と、ジョージ・クルーニーはプレミア後に語っていますが、映画は俳優やスタッフに依存する部分も大きいので、デヴィッド・O・ラッセル監督にはぐっとこらえて、いい作品を作り続けて欲しいですね。

 

ジョージ・クルーニーは、32歳の時に背水の陣でオーディションを受けたテレビドラマ・シリーズ「ER緊急救命室」(1994-2009年)で大ブレイクしましたが、この映画を撮影した頃はまだ「ER緊急救命室」にレギュラー出演しており、週四日映画の撮影、週三日テレビ撮影というハードスケジュールをこなしました。その後、ジョージ・クルーニーは、「ER緊急救命室」のレギュラーを降りて映画に専念しますが、彼の誠実さとがんばりが感じられるエピソードです。

 

三人の王(スリー・キング)には含まれせんが、コンラッドを演じているのは、「マルコヴィッチの穴」(1999年)で 監督デビュー、「her/世界でひとつの彼女」(2013年)の 監督・脚本でアカデミー賞脚本賞を受賞したスパイク・ジョーンズ監督です。道化のような個性的な役で、独特のタッチで描かれる本作にスパイスのように効いています。

 

ジョージ・クルーニー

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マーク・ウォルバーグ(トロイ・バーロー)

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アイス・キューブ(チーフ・エルジン

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スパイク・ジョーンズコンラッド・ビグ)

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