夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ゼロ・ダーク・サーティ」:誰もが知りたかったビンラディン暗殺の顛末

ゼロ・ダーク・サーティ」(原題:Zero Dark Thirty)は、2012年公開のアメリカの映画です。キャスリン・ビグロー監督、ジェシカ・チャステインら出演で、粘り強く調査分析を続け、ビンラディン追跡の中心的役割を担ったCIAの若い女性分析官を主人公に、米海軍特殊部隊によるオサマ・ビンラディン暗殺の舞台裏を、リアルかつスリリングに描き出しています。第85回アカデミー賞で、 作品、主演女優、脚本を含む5部門にノミネートされ、音響編集賞を受賞した作品です。

 

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目次

キャスト・スタッフ 

監督:キャスリン・ビグロー
脚本:マーク・ボール
出演:ジェシカ・チャステイン(マヤ、CIA分析官)
   ジェイソン・クラーク(ダニエル、CIA諜報専門家、後に本部に異動 )
   ジョエル・エドガートン(パトリック 、米海軍特殊部隊隊員)
   ジェニファー・イーリージェシカ、 CIA分析官、自爆テロに遭って死亡 )
   マーク・ストロングジョージ、マヤがCIA本部に戻ってからの上司)
   クリス・プラットジャスティン、DEVGRU隊員)
   ジェームズ・ガンドルフィーニレオン・パネッタ、CIA長官)
   ほか

あらすじ 

巨額の予算を使いながらも一向にビンラディンの行方を掴めず、閉塞感の漂うCIAのビンラディン追跡チームに、20代半ばの小柄な女性分析官マヤ(ジェシカ・チャステイン)が抜擢されます。CIAのパキスタン支局へ飛んだ彼女は、過酷な取り調べに戸惑いますが、捜査は依然として困難を極め、その間にもテロが続き、マヤの同僚ジェシカが犠牲になってしまいます。マヤは、これまで以上にビンラディン追跡に執念を燃やします・・・。

レビュー・解説 

誰もが知りたかったオサマ・ビンラディンの暗殺の顛末を描くこの映画は、監督のキャスリン・ビグロー、脚本のマーク・ボールの他、プロデュサー、製作クルーの多くを、オスカー受賞作品「ハート・ロッカー」と同じメンバーで行っており、リアルでスリリングな、クォリティの高い作品となっています。

 

この映画は、当初、アフガニスタン東部の山岳地帯トラボラに潜伏しているとされたオサマ・ビンラディンとの不毛の攻防を描く予定でしたが、彼がパキスタンで発見、殺害された為、マーク・ボールは5ヶ月かけて脚本を書き直しました。

 

主人公のマヤは、高卒で CIA にリクルートされ、入局以来、ビン・ラディン担当一筋という設定です。能力もさることながら、仕事に対する執念が人一倍強く描かれており、組織人としてバランスに欠けるのでは?と思われるほどです。マヤは仕事一筋で、女性らしさを併せ持った「インターステラー」のマーフィーと同じジェシカ・チャステインが演じているとは思えないほどの描き方です。対決的な性格で色気もありませんが、長い年月をかけて困難な目標を達成し、プレッシャーから解放された後のマヤの描き方にも興味深いものがあります。

 

マヤ役は当初、ルーニー・マーラの予定でしたが、スケジュールが合わず辞退しました。キャスリン・ビグロー監督は「英雄の証明」のカットを見てジェシカ・チャステインに決めましたが、彼女のエージェントが辞退の意向を示した為、監督が直接、ジェシカ・チャステイン本人に電話をかけ、出演の承諾を得ました。ジェシカ・チャステインは、この時に監督からもらったボイス・メールを永久保存しているそうです。

 

ジェシカ・チャステインは、役に備える為に多くの本を調べる中、特に

  • ローレンス・ライト著「倒壊する巨塔 -アルカイダと「9.11」への道-」
  • マイケル・ショイアー著「オサマ・ビンラディン」(本邦未訳)

に興味を覚えたと語っています。また、彼女は、マヤがそうしただろうと考え、毎日、仕事が終わった後に、すべての容疑者の写真を抜粋し壁に張りつけました。彼女はインタビューで、

女性の役柄が、セクシーさのみに焦点があたっている、男を誘惑するだけの存在のような役はイヤ。そういうのは、わたしにとって一番演じる魅力がないわ。わたしが興味を覚えるのは、知性があって性的な魅力以上のものを物語に付け加えられる女性の役なの。

と語っています。なかなか骨のある女優のようですが、「ゼロ・ダーク・サーティ」のマヤの演じ方にも納得がいきます。一方で、トップクラスの女優として活躍しながら、今でも撮影現場に向かうときは緊張するし、また性格的にもシャイで、

クリストファー・ノーランとセットで一緒のとき、彼に気に入ってもらおうと思ってあまりしゃべらなかったの。バカなことを言って嫌われたくないもの!

といった一面もあります。

 

脚本のマーク・ボールは、すべてのキャラクターは実在する人物に基づいているが、外見が似た俳優を使わないなど、それを暴露することがないように監督とともに配慮したことを認めています。一方、作戦に参加した米海軍対テロ特殊部隊のチーム・リーダーマーク・オーウェンは著書「アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで NO EASY DAY 」の中で、実在の人物を「ジェン」として言及し、

彼女は大学からリクルートされ、5年間ビンラディン業務に携わっており、ビン・ラディンの隠れ家を突き止める為すべてのピースを組み合わせる仕事をし、ビン・ラディンについてわからない事があれば彼女に聞きに行くという立場の人だった

としています。さらに、この女性は非常に好戦的な性格との報道もあります。また、アフガニスタン自爆テロで死んだジェシカのモデルはアルカイダの専門家だったジェニファー・マシューズ、CIAの無能な上司ブラッドリーは当時パキスタン基地の主任だったジョナサン・バンクスをモデルにしていると言われています。いずれにせよ、これらは国家機密事項で、時が来て情報公開されるまで真相はわかりません。

 

ゼロ・ダーク・サーティ」は、アカデミー作品賞、主演女優賞、脚本賞、音響編集賞編集賞にノミネートされ、音楽編集賞を受賞をしました。「ハート・ロッカー」の9部門のノミネート、作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞編集賞、音響効果賞、録音賞の6部門の受賞、しかも監督賞は女性初という快挙に比べると少し霞んでしまいますが、それでも素晴らしい作品であることに変わりはありません。強いて難点を言えば、「ゼロ・ダーク・サーティ」はあまりにも題材が大きくなり、社会性を帯びてしまった為、映画として「落としにくい」ところがあったのではないかと思います。もしビンラディンが発見されず、当初の予定通り、アフガニスタン山岳地帯トラボラに潜伏しているとされたオサマ・ビンラディンとの激しくも不毛の攻防を描くにとどまっていれば、よりキャスリン・ビグローらしい「落とし」が際立ったのではないかと思います。

 

原題で使われている zero dark thirty は、本来、特定の時刻を指すものではなく、通常は寝ているような遅い(早い)時刻を、(否定的なニュアンスを込めて)仮想的に指すものですが、この映画のタイトルでは4つの意味が込められています。

 

<オチバレ>
最後にマヤが流す涙の意味が分からないというご質問を頂きました。

何年もの間、ただひたすら禁欲的にビン・ラディンを追い続けて来たマヤが任務を完了、飛行機に乗り込みます。パイロットにどこに行きたいと聞かれます。彼女は茫然としたまま、ゆっくりと涙を流し、画面が暗転します。 

安心感なのか、喜びなのか、消耗なのか、後悔なのか・・・、如何様にも取れるエンディングです。マヤを演じたジェシカ・チャステインは、「疑問を投げかけるエンディングは、答えを示すより興味深い」と語っています。いろいろと想いを巡らすのは間違いではありません。これに対して、キャスリン・ビグロー監督は、次のように語っています。

マヤが涙を流すのは、ビン・ラディンの死が単純な勝利ではなく、アメリカや国際社会の「次は何だ?」という疑問があるからです。同様、10年の間、ただひたすらビン・ラディンを追うことに身を捧げて来たマヤには、次に彼女の人生に何が訪れるのかわかりません。文字通り、彼女はそこから何処に行けるのかわからないのです。(キャスリン・ビグロー監督)

<オチバレ終り>

 

ジェシカ・チャステイン(マヤ、CIA分析官)

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ジョエル・エドガートン(パトリック 、米海軍特殊部隊隊員)

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撮影地(グーグルマップ)

実際のオサマ・ビンラディンの隠れ家

 

 

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関連作品 

キャスリン・ビグロー監督作品Amazon

  「K−19」(2002年)

  「ハート・ロッカー」(2008年)

 

ジェシカ・チャステイン出演作のDVD(Amazon

  「テイク・シェルター」(2011年)

  「英雄の証明」(2011年)

  「ツリー・オブ・ライフ」(2011年)

  「インターステラー」(2014年)

  「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」(2014年)

  「オデッセイ」(2015年)

 

ジョエル・エドガートン出演作品のDVD(Amazon

  「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」(2005年)

  「アニマル・キングダム」(2010年)

  「ウォーリアー」(2011年)

  「華麗なるギャツビー」(2013年)

  「ブラック・スキャンダル」(2015年)

  「ザ・ギフト」(2015年)

    「ミッドナイト・スペシャル」(2016年)

  「ラビング 愛という名前のふたり」( 2016年)

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