「華麗なるギャツビー」(原題: The Great Gatsby)は、2013年公開のアメリカのロマンス・ドラマ映画です。アメリカ文学を代表する F・スコット・フィッツジェラルドの1925年の小説「グレート・ギャツビー」を原作とし、バズ・ラーマン監督・共同脚本、レオナルド・ディカプリオ、トビー・マグワイア、キャリー・マリガンら出演で、好景気に沸く狂騒の1920年代を舞台にアメリカン・ドリームを体現するひとりの男の華麗な人生の顛末を、ミステリアスかつ豪華絢爛に描いています。第86回アカデミー賞で衣装デザイン賞と美術賞を受賞した作品です。
目次
スタッフ・キャスト
監督:バズ・ラーマン
脚本:バズ・ラーマン/クレイグ・ピアース
原作:F・スコット・フィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」
出演:レオナルド・ディカプリオ(ジェイ・ギャツビー)
トビー・マグワイア(ニック・キャラウェイ)
キャリー・マリガン(デイジー・ブキャナン)
ジョエル・エドガートン(トム・ブキャナン)
ほか
あらすじ
証券会社に就職した青年ニック・キャラウェイ(トビー・マグワイア)は、ニューヨーク郊外に移り住みます。隣は夜な夜な豪勢なパーティが開かれる豪邸で、ジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)という謎めいた男が単身で住んでいます。ニックにもパーティの招待状が届きますが、招待客らはギャツビーの素性も、パーティを開く理由も知りませんでした。やがてギャツビーはニックに自らの生い立ちを語りますが、ニックは疑念を持ちます。そんなギャツビーは、ニックの従兄妹であり、トム(ジョエル・エドガートン)の妻であるデイジー(キャリー・マリガン)と、個人的に会うことをニックに依頼します・・・。
レビュー・解説
フィッツジェラルドの小説「華麗なるギャツビー」を読んだのはかなり昔ですが、ギャツビーが頻繁にパーティを開いていたことを良く覚えています。小説のパーティ・シーンは想像するしかないのですが、この映画では文字通り、想像を絶するようなパーティ・シーンが描かれています。舞台となった1920年代のアメリカは「狂騒の20年代」(Roaring Twenties)と言われ、第一次世界大戦の特需と、大量の帰還兵による消費と大量生産の拡大、自動車産業や経済の発展、新しいライフスタイルの流行などが相まって、空前の好景気でした。ラジオが普及、ジャズとダンスが広まり、フラッパーが新たな女性を象徴する時代は、いわばアメリカの青春時代と言っていいでしょう。
豪華絢爛なパーティ・シーン
ギャツビーに頼まれたニックが手配し、ギャツビーがデイジーと会うシーンです。
ギャツビーが準備した花の量に圧倒されます。デイジー役には、キャリー・マリガンの他に、アマンダ・サイフリッド、レベッカ・ホール、レイチェル・マクアダムズ、キーラ・ナイトレイ、ブレイク・ライブリー、アビー・コーニッシュ、ミッシェル・ウィリアムズ、ナタリー・ポートマン、エヴァ・グリーン、アン・ハサウェイ、オリビア・ワイルド、ジェシカ・アルバ、スカレット・ヨハンソンらが、考えられました。
続いて、ラナ・デル・レイの「ヤング・アンド・ビューティフル」が流れるシーンです。
バズ・ラーマン監督から、デイジー役決定の電話を受けた時、キャリー・マリガンはファンション賞のディナーの席にいました。彼女は嬉しさを抑えきれず部屋の真ん中でわっと泣き出してしまい、居並ぶファッション・デザイナーのカール・ラガーフェルドらに情緒不安定を疑われたといいます。
ギャツビーとトムらが、ぴかぴかの車でレースをするシーンです。
車のアクション・シーンに使うには、純正のデューゼンバーグはあまりに希少で高価でした(2013年3月のモデルSJコンバーチブル・クーペのオークション価格が450万ドル)。2台のレプリカが黄色くペイントされ、撮影用に改造されました。
この後、話は急転していきます・・・。
豪華絢爛で派手な演出は、バズ・ラーマン監督の持ち味です。彼は、オーストラリア出身の映画監督・プロデューサー・脚本家で、古典的なストーリーを鮮やかな映像とゴージャスなセットで蘇らせ、スピード感のある映像を得意とします。これまで「ロミオ+ジュリエット」、「ムーラン・ルージュ」などの監督・脚本・製作を手がけており、美術監督である妻キャサリン・マーティンはすべてに参加、「ムーラン・ルージュ」と「華麗なるギャツビー」で、アカデミー美術賞、衣装デザイン賞を獲得しています。
原作はむしろ、ギャツビーのような金持ちのわがままな生活様式に批判的で、その筆致と悲劇的な結末から、「アメリカン・ドリームの退廃的で悪い側面の訓話」ともみなされていますが、この映画はむしろ、ギャツビーをテーマにしたパーティを触発しました。皮肉なことに原作の視点から見ればギャツビーの名前を冠するのは世の中の金持ちを撲滅しようと気勢を上げるようなものですが、この映画の影響で多くの映画愛好家や金持ちが特に皮肉の意味を込める訳でもなくギャツビー・パーティを催すようになりました。数年前、ハリー王子はギャツビーをテーマにした誕生パーティに出席、ポール・マッカートニーも豪勢な誕生祭を催しています。一方で、ピンタレストにはギャツビーをテーマにした結婚式の写真を集める数多くのユーザーがいます。
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ザ・アトランティック誌のザカリー・セワードは、「赤ちゃんの誕生日に、ロリータをテーマにしたパーティを催すようなものだ」と、これを批判しますが、ギャツビー・ブームは映画の公開前から燃え上がり、ロンドンの新聞はどのギャツビー・パーティが好ましいか、特集を組みました。CNNは、原作の小説は批判的だったと譲歩しながらも、赤ちゃんの為のギャツビー・パーティの催し方を提案しました。
映画の持つ力を改めて感じさせるエピソードですが、人々に内在する贅沢と質素の二律背反を横目に、バズ・ラーマンはこの映画で豪華絢爛さ、派手さを、創造的に刺激しています。彼の「華麗なるギャツビー」は、狂騒の時代とギャツビーの生き様を過去のものとして耽美、退廃に封印するのではなく、見果てぬ生きた夢としてアメリカの青春をヴィヴィッドに描き出し、その喪失を、ノスタルジアではなく時代を超えた哀しみとして脈々と蘇らせています。
「華麗なるギャツビー」は、ニックのナレーションで幕を閉じます。
Gatsby believed in the green light, the orgastic future that year by year, recedes before us...
It eluded us then, but that’s no matter - tomorrow we will run faster...
Stretch out our arms farther... And one fine morning...
So we beat on, boats against the current, borne back ceaselessly, into the past.緑の灯火、陶酔に満ちた未来は、年とともに我々の前から遠のくが、それでもギャツビーはその存在を信じていた
あの時は我々の手に入らなかったが、構わない ー 明日、我々はもっと速く進むのだから
両腕をもっと先まで伸ばせば・・・、ある晴れた朝に・・・
だから、絶え間なく過去へと押し戻す潮を、我々はボートで打ち続けるのだ
レオナルド・ディカプリオ(ジェイ・ギャツビー)
ジョエル・エドガートン(トム・ブキャナン)
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