「ピッチ・パーフェクト」:アカペラ・ファンでなくても楽しめるガールズ・コメディ、「カップス」ブームの火付け役
「ピッチ・パーフェクト」(原題:Pitch Perfect)は、2012年公開のアメリカのミュージカル・コメディ映画です。大学でガールズアカペラ部に入部した主人公が、個性豊かな仲間たちと大会を目指して奮闘する姿が描かれています。ミュージカル・コメディ映画として、「スクール・オブ・ロック」に次ぐ大ヒットとなった作品で、MTVムービ・アワードやピープルズ・チョイス・アワードなどで様々な賞を受賞しています。
「ピッチ・パーフェクト」のDVD(Amazon)
目次
スタッフ・キャスト
監督:ジェイソン・ムーア
脚本:ケイ・キャノン
原作:ミッキー・ラプキン「Pitch Perfect: The Quest for Collegiate A Cappella Glory」
出演:アナ・ケンドリック(ベッカ)
アンナ・キャンプ(オーブリー)
ブリタニー・スノウ(クロエ)
レベル・ウィルソン(ファット・エイミー)
アレクシス・ナップ(ステイシー)
エスター・ディーン(シンシア)
ハナ・メイ・リー(リリー)
スカイラー・アスティン(ジェシー)
ベン・プラット(ベンジー)
アダム・ディヴァイン(バンパー)
ジョン・マイケル・ヒギンズ(ジョン・スミス)
エリザベス・バンクス(ゲイル)
ほか
あらすじ
音楽プロデューサーを夢見るベッカ(アナ・ケンドリック)は、父親の勧めで気が進まぬまま、父親が教授を務めるバーデン大学に入学します。大学内での活動に興味を抱けない彼女の唯一の楽しみである校内ラジオ局でのアルバイトで、彼女はジェシー(スカイラー・アスティン)とと知り合い、お互いに意識し合っいます。 そんなある日、ベッカがシャワーを浴びながら鼻歌を歌っていると、それを聞いたクロエ(ブリタニー・スノウ)から大学の女性アカペラグループ「バーデン・ベラーズ」への参加を勧めらます。流されるままにグループに入ったベッカでしたが、自らを「ファット(太っちょ)」と名乗るエイミー(レベル・ウィルソン)や奔放なステイシー(アレクシス・ナップ)、レズビアンのシンシア(エスター・ディーン)といった個性豊かな新入部員と知り合い、彼女たちと共に部長のオーブリー(アンナ・キャンプ)から厳しい指導を受けながら、いつしか本気でアカペラの全国大会を目指すようになります。しかし、その前にジェシーが所属する同大学の男性アカペラグループ「トレブルメーカーズ」が立ちはだかります・・・。
レビュー・解説
この映画の魅力は、特にアカペラファンでなくても、その楽しさを堪能できることでしょう。見どころのひとつは、リフ・オフのシーンです。これは歌のしりとりみたいなもので、曲の中のリフ(Riff、フレーズ)をオフ(Off、抜き出)して他の曲に変えて歌いつないでいき、最後まで邪魔されずに歌うと勝ちというものです。また、劇中でアナ・ケンドリックが披露するカップを使ったパフォーマンスは特に話題になり、そのミュージック・ビデオ「カップス」は YouTube で2億回以上も再生されました。単にアカペラの歌唱シーンだけを流すのではなく、随所にこうした変化を取り込み、特にアカペラファンでなくても楽しめる内容に仕上がっています。
原作となった「Pitch Perfect: The Quest for Collegiate A Cappella Glory」は、2006~7年の大学アカペラ選手権シーズンを追った実録本で、前年トップのヴァージニア大の男性グループ HULLABAHOOS と、復讐を誓うオレゴン大の女性グループ DIVISI の仁義無き戦いと、保守的な大学アカペラ界に新風を吹き込むタフツ大学の男女混合グループ BEELZEBUBS が描かれています。友人の勧めで本を手にし、本作をプロデュースしたエリザベス・バンクスは、次のように語っています。
一般的とはいえない世界に生きる風変わりな人が主役で、大好きな映画「スーパーバッド/童貞ウォーズ」や「ミーン・ガールズ」、「チアーズ!」に通じると感じたの。何かに取り憑かれたように熱中する人々の世界観を探り、誰もが共感できるコメディに仕上げるのは面白いと思ったの。
アナ・ケンドリック(ベッカ)、アンナ・キャンプ(オーブリー)、ブリタニー・スノウ(クロエ)、スカイラー・アスティン(ジェシー)といった、核となるキャストはすべて、ブロードウェイの舞台経験がある俳優で、ブリタニー・スノウはミュージカル映画「ヘア・スプレイ」が受賞した数々の賞に出演女優の一人として名を連ねています。これに、リアーナやケイティ・ペリーに楽曲を提供したシンガーソング・ライターのエスター・ディーン(シンシア)、オーストラリアの女優・コメディアンのレベル・ウィルソン(ファット・エイミー)、同じくアメリカのコメディアンのアダム・ディヴァイン(バンパー)が脇を固めています。また、モデルからスタンダップ・コメディアンに転身したというハナ・メイ・リー(リリー)は、菊地凛子に似た風貌で、独特な存在感を放っています。
ブロードウェイ・ミュージカルの演出でトニー賞の受賞経験のあるジェイソン・ムーア監督は、撮影前の4週間を、これらのキャストの為のアカペラ・ブートキャンプに当てました。個人差がある歌唱力やダンス能力を一定レベルまで引き上げ、完璧なハーモニーを実現するのが目的で、各人の声域に合わせてアレンジされた歌を完璧に歌いこなし、かつダンスの振り付けも完璧にマスターする為のものです。ブートキャンプでは1日10時間どっぷり歌と踊り浸けになり、「ベラーズ」と「トレブルメーカーズ」のメンバーは午前中にそれぞれのレパートリーから1曲を与えられ、各人がボイスコーチやダンス教師について各自のパートと振り付けを特訓、昼食後はまた別の曲を同様に特訓と続け、撮影スタッフ全員の前で仕上げのリハーサルを行うというハードなものでした。
ちなみに、「カップス」は、Lulu and The Lampshades が2009年に、子供の手遊びであるカップ・ゲームをアカペラに取り入れたビデオを YouTube に投稿、これを見たアナ・ケンドリックがそのアイディアを「ピッチ・パーフェクト」に持ち込んだもので、当初は脚本になかったものです。映画の効果は抜群で「カップス」は大人気となり、ビルボードの6位にランクされるとともに、様々なバリエーションが登場しました。
アナ・ケンドリック(ベッカ)
アンナ・キャンプ(オーブリー、左)とブリタニー・スノウ(クロエ、右)
スカイラー・アスティン(ジェシー)
エスター・ディーン(シンシア)
レベル・ウィルソン(ファット・エイミー)
アダム・ディヴァイン
ハナ・メイ・リー(リリー)
エリザベス・バンクス(ゲイル、右)とジョン・M・ヒギンズ(ジョン・スミス、左)
サウンドトラック
「ピッチ・パーフェクト」のオリジナル・サウンド・トラックCD
「ピッチ・パーフェクト」のオリジナル・サウンド・トラックCD(Amazon)
私は、特にアカペラのファンというほどのものではないのですが、ペンタニクスという男女混成のアカペラグループが気に入り、聞いています。彼らは、2011年のNBCのア・カペラ・オーディション番組「The Sing Off」シーズン3に出演、独特のスタイルと高い楽曲アレンジ能力が評価され見事優勝しました。 そのクオリティの高さは耳を疑うほどで、デジタルエフェクト系サウンドをア・カペラでの大胆なアレンジ、ヒューマンビートボックスによる表現は再現性の高さ・着眼点の良さからバイラル的な人気を博しています。ヒット曲も多いのですが、やはりこの季節は、クリスマス・アルバムがおすすめです。
「ザッツ・クリスマス・トゥ・ミー ジャパン・デラックス・エディション」(Amazon)
動画クリップ(YouTube)
リフ・オフのシーン
「カップス」のシーン
- 原作のオレゴン大の女性グループ DIVISI の実際のパフォーマンス(YouTube)
- アナ・ケンドリック「カップス」のミュージック・ビデオ(YouTube)
- オリジナルの「カップス」(YouTube)
- 「カップス」のバリエーション(YouTube)
「ピッチ・パーフェクト」のDVD(Amazon)
関連作品
「ピッチ・パーフェクトの原作本
Pitch Perfect: The Quest for Collegiate A Cappella Glory(Amazon)
「マイレージ、マイライフ」(2009年)
「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010年)
「エンド・オブ・ウォッチ」(2012年)
「ドリンキング・バディーズ 飲み友以上、恋人未満の甘い方程式」(2013年)
その他関連映画のDVD(Amazon)
「チアーズ!」(2000年)
「スクール・オブ・ロック」(2003年)
「ミーン・ガールズ」(2004年)
関連記事
*1:本文に戻る
*2:本文に戻る
*3:本文に戻る
ピッチ・パーフェクト - オリジナル・サウンドトラック (完全盤) - Various Artists(iTunes)
*4:本文に戻る
ピッチ・パーフェクト - オリジナル・サウンドトラック (完全盤)
- アーティスト: Various artists
- 出版社/メーカー: Universal Music LLC
- 発売日: 2015/04/27
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
*5:本文に戻る
That's Christmas to Me (Japan Deluxe Edition) - Pentatonix(iTunes)
*6:本文に戻る
ザッツ・クリスマス・トゥ・ミー (Japan Deluxe Edition)
- アーティスト: Pentatonix
- 出版社/メーカー: Sony Music Labels Inc.
- 発売日: 2015/11/11
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る