「エンド・オブ・ウォッチ」:現実感と緊迫感に満ちたポリスストーリー
「エンド・オブ・ウォッチ」(原題:End of Watch)は、2012年公開のアメリカのポリス・アクション映画です。ヒスパニックや黒人のストリート・ギャングの抗争が絶えず、アメリカで最も危険な街とも言われるロサンジェルスのサウス・セントラル地区を舞台に、死と隣り合わせの日常を送る一組のパトロール警官の過酷な日々と絆を描いたこの作品は、ロス市警全面協力のもと撮影されました。
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目次
スタッフ・キャスト
監督: デヴィッド・エアー
脚本: デヴィッド・エアー
出演: ジェイク・ジレンホール(ブライアン・テイラー、 白人警官)
マイケル・ペーニャ(マイク・ザヴァラ、メキシコ系警官、ブライアンの相棒)
ナタリー・マルティネス(ギャビー、マイクの愛妻)
アナ・ケンドリック(ジャネット、ブライアンの恋人、後に結婚)
ほか
あらすじ
ブライアン・テイラー(ジェイク・ジレンホール)とマイク・ザヴァラ(マイケル・ペーニャ)はロサンゼルス市警察でコンビを組む制服警官です。結婚を間近に控えたブライアンはビデオカメラを持ち歩き、自分の仕事を撮影していました。路上犯罪者を取り締まり、炎上する民家から子供を救出したりと活躍する二人は、ヒスパニック系ギャングの取り締まりに際にメキシコの巨大麻薬カルテルの秘密に触れてしまい、のっぴきならない状況に追い込まれていきます・・・。
レビュー・解説
冒頭の車載カメラで撮影されたカーチェイスと銃撃戦のクリップをYouTubeで見た時は、実際のビデオではないかと思いました。この作品は、車載カメラや複数の登場人物の持つカメラ映像を中心にドキュメンタリー風に撮影されており、とても臨場感、緊迫感があります。緊張感の満ちた勤務と際どい雑談の中、物語はドキュメンタリーのように展開します。警官のハードな日常をかいま見るようで、非常に印象深い作品です。
デヴィッド・エアー監督は、「ワイルド・スピード」、「トレーニング デイ」の脚本で注目され、本作が監督3作目めですが、彼自身、実際にサウス・セントラルで10代を過ごしています。ジェイク・ジレンホール、マイケル・ペーニャが演ずる二人の主役は、1990年代にパートナーだったロスアンゼルス市警の警官、チャールズ・ウンダーとジェイミー・マクブライドを参考にしています。
トレーニングの一環として、ジェイク・ジレンホールとマイケル・ペーニャは、5ヶ月間に渡りロスアンゼルス市警の12時間パトロールの車に同行しました。ジェイク・ジレンホールは最初の同行の際に、実際の殺人事件に遭遇しています。二人は警官同様、テーザー銃の電気ショックも経験しました(噂では出演者全員が体験したとのことだが、体験を辞退したアンナ・ケンドリックによると、他の出演者が同意したとは思えないとのこと)。また、映画でジェイク・ジレンホールとマイケル・ペーニャが二人でかわす際どい雑談のほとんどが、二人の即興でした。ちなみに、この映画では、「ファック」という言葉が326回使われ、歴代の不謹慎リストの第7位だそうです。
冒頭のカーチェイス・シーン(車載カメラ)〜「エンド・オブ・ウォッチ」
微笑ましいシーンもあります。
脚本にはなかったシーン〜「エンド・オブ・ウォッチ」
このシーンは脚本にはありませんでした。ジェイク・ジレンホールとアンナ・ケンドリックは、後部座席で他のシーンを撮影する監督とともに車で移動中でした。ちょうど撮影の合間にラジオにキャムロンの「Hey Ma」がかかり、二人は合わせて歌いだしました。監督はこれをこっそり撮影。二人とも映画が上映されるまで、これが撮影されていた事に気がつきませんでした。緊迫したシーンが多い映画だけに、こういったシーンが染み入ります。
パトロールのシーンです。後半に、無駄口を叩いています。緊張する職務だけに、無駄口でも叩かないとやってられないというところでしょうか。
パトロールのシーン〜「エンド・オブ・ウォッチ」
Mike Zavala: Dude, it's good to be back, man. Old lady was driving me crazy at the casa, like making me do shit.
Brian Taylor: Oh no! She dared ask for your help around the house? That's incredible. Outrageous.
Mike Zavala: Hey, just 'cause I look like the dudes from Home Depot, doesn't mean I do the shit the Home Depot dudes do.
Brian Taylor: I would never profile you as a man who helps his wife with chores.
Mike Zavala: Shut up.
Brian Taylor: Dude, I'm your homie, okay? I would never, ever do that.
Mike Zavala: Oh, bro! Brian Taylor: Mm?
Mike Zavala: Her brother was always coming over during the day to swim. Every day. I hate everything about him. He smells like weed sometimes. Like he's got, like a prescription. The guy was like: "No, it's all good", and I was like whatever, get him the hell out of here! I swear to God I'm fillin' in that pool with cement.
Brian Taylor: Not personally, 'cause you'll hire a Home Depot dude for that task.
Mike Zavala: Fxxk you.
Brian Taylor: First customer of the day.
Mike Zavala: I hope they enjoy our police service.
マイク:現場は最高だ。家にいると女房にこき使われる。
ブライアン:気の毒に、家事手伝いかよ。それはないよな。
マイク:日雇い仕事をす移民に似ているからって、扱いが悪い。
ブライアン:尻に敷かれるタイプか?
マイク:黙れ。
ブライアン:俺はダチだ、そんな真似はしない。
マイク:何が最悪って、女房の弟が毎日、泳ぎにくるんだ。嫌な野郎さ。いつも大麻の匂いをさせている。とぼけるから毎回もめるよ。プールを潰してやる。
ブライアン:大工でも雇うんだな。
マイク:うるせえ。
ブライアン:最初の客だ。
マイク:喜んでもらえるかな?
お約束の銃撃戦のシーン。ハンディ・カメラで撮影されており、迫力があります。
銃撃戦のシーン〜「エンド・オブ・ウォッチ」
タイトルの「エンド・オブ・ウォッチ」には、警察業務の執行において二つの意味があります。ひとつは、シフトの終わりに勤務が解けること。もうひとつは、勤務中に殉職することです。ドキュメンタリーのようにリアルでエキサイティングな「エンド・オブ・ウォッチ」のエンディングはちょっと悲しいです。
関連作品
「トレーニングデイ」(2001年):脚本
「ワイルド・スピード」(2001年):脚本
刑事や警察を描いた映画
「遠い空の向こうに」(1999年)
「ドニー・ダーコ」(2001年)
「ブロークバック・マウンテン」(2005年)
「ミッション:8ミニッツ」(2011年)
「プリズナーズ」(2013年)
「ナイトクローラー」(2015年)
「ボストン ストロング〜ダメな僕だから英雄になれた〜」(2017年)
「ミリオンダラー・ベイビー」(2004年)
「リンカーン弁護士」(2011年)
「アメリカン・ハッスル」(2013年)
「アントマン」(2015年)
「アントマン&ワスプ」(2018年)
「マイレージ、マイライフ」(2009年)
「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010年)
「ピッチ・パーフェクト」(2012年)
「ドリンキング・バディーズ 飲み友以上、恋人未満の甘い方程式」(2013年)