夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ブレードランナー 2049」:名作オリジナルと同じ題材・主題・形式ながら、圧倒的な映像美と視覚効果がより時代にマッチする画期的続編

ブレードランナー 2049」(原題:Blade Runner 2049)は、2017年公開のアメリカのSFファンタジー&ドラマ映画です。フィリップ・K・ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」を基にした1982年公開のカルト的名作映画「ブレードランナー」の続編で、前作の監督リドリー・スコットが製作総指揮、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ライアン・ゴズリングハリソン・フォードら出演で、前作から30年後となる2049年を舞台に、レプリカントと呼ばれる人造人間の捜査官の戦いと葛藤を描いています。第90回アカデミー賞で、撮影、美術、音響編集、録音、視覚効果の5部門にノミネートされ、撮影賞と視覚効果賞を受賞した作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:ハンプトン・ファンチャー/マイケル・グリーン
原案:ハンプトン・ファンチャー
原作:フィリップ・K・ディック著「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
出演:ライアン・ゴズリング(K、主人公、ロス警察捜査官、レプリカント
   ハリソン・フォード(リック・デッカード、前作主人公、消息不明の元捜査官)
   アナ・デ・アルマス(ジョイ、ウォレス社製AIホログラフィ、Kの良き理解者)
   シルヴィア・フークス(ラヴ、ウォレス社を仕切る知的で戦闘的レプリカント
   ロビン・ライト(ジョシ警部補、ロス警察特捜班司令、Kの直属の上司)
   マッケンジー・デイヴィス(マリエット、バーにたむろする娼婦、Kに近づく)
   カーラ・ジュリ(アナ・ステリン博士、レプリカント用記憶開発者、免疫不全)
   レニー・ジェームズ(ミスター・コットン、廃棄物処理場跡で孤児院を経営)
   デイヴ・バウティスタ(サッパー・モートン、脱走した元戦闘用レプリカント
   ジャレッド・レト(ニアンダー・ウォレス、ウォレス社代表、盲目の天才科学者)
   エドワード・ジェームズ・オルモス(ガフ、デッカードの元同僚)
   バーカッド・アブディ(ドク・バッジャー、ブラックマーケットのフィクサー
   ヒアム・アッバス(フレイザ、レプリカントから成るレジスタンスの女性指導者)
   デヴィッド・ダストマルチャン(ココ、ロス警察の捜査官)
   ウッド・ハリス(ナンデス、ロス警察の捜査官)
   トーマス・レマルキス(ウォレス社の記録保管所の管理人、レプリカント
   サリー・ハームセン(女性レプリカントの最新試作、生殖能力がなく処分される)
   ローレン・ペタ(レイチェル、前作のヒロインを合成した模倣体)
   ショーン・ヤング(レイチェル、前作の記録映像)
   ほか

あらすじ

  • 2049年、地球の異常気象と生態系の崩壊はさらに進行、ロサンゼルスは海面上昇で沿岸部が失われ、内陸に後退した市街地は巨大な防波堤に囲まれ、6月でも雪が降ります。ロス警察の「ブレードランナー」(レプリカントを取り締まる捜査官)として旧型のレプリカントを「解任(抹殺)」するネクサス9型レプリカントのK(ライアン・ゴズリング)は、ウォレス社製の家庭用AIホログラフィであるジョイ(アナ・デ・アルマス)と共に暮らしています。
  • ある日、ロサンゼルス郊外で農場を営む逃亡レプリカントのサッパー・モートンデイヴ・バウティスタ)を「解任」したKは、庭の枯木の根元に埋められたトランクを発見します。トランクには遺骨が入っており、検死の結果、約30年前に帝王切開の合併症で死亡したレプリカントの女性であることが判明します。レプリカントの出産は前代未聞であり、Kの上司であるジョシ警部補(ロビン・ライト)は、事件の発覚によって起きるであろう社会混乱を憂慮し、Kに事件の痕跡をすべて消すように命令します。
  • ウォレス社を訪ねたKは、過去の記録から遺骨は2019年に逃亡したレプリカントのレイチェル(ショーン・ヤング)のものであること、彼女は逃亡直前にロス警察の元ブレードランナー、リック・デッカードハリソン・フォード)と恋愛関係にあったことを知ります。タイレル社が確立していたレプリカントの生殖技術を欲する社主のウォレス(ジャレッド・レト)は、彼の片腕であるレプリカントのラヴ(シルヴィア・フークス)にレイチェルの子供を見つけるよう命じます。
  • Kは、デッカードを知る数少ない人物であるガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス)を訪ねますが、手がかりを得ることができません。再びモートンの農場に戻ったKは、根に彫られた「6-10-21」という数字、レイチェルの子供のものと思われる靴下、赤子を抱いた女性の写真などを発見します。Kは、根に彫られた数字が自身の疑似記憶にある木彫りの馬の玩具に彫られた数字と同じことに気づき、動揺します。一方、ラヴはロス警察に忍び込み、レイチェルの遺骨を盗み出します。事態の切迫を確信したジョシは、KにDNA記録の調査・報告を命じます。
  • 2021年6月10日の出生記録・DNA記録を調べたKは、同一のDNAを持つ男女二人の記録を発見、二人とも同じ孤児施設に在籍していたこと、女児は病死し、男児だけが生存していることを知ります。ラヴは秘かにKの動向を追跡します。Kは、訪ねたサンディエゴの孤児施設で記憶と同じ木馬の玩具を見つけます。ジョイは、Kが「製造された」のではなく「生まれてきた」証拠だと喜びます。レプリカント用の記憶を開発するアナ・ステリン博士(カーラ・ジュリ)の鑑定を受けたKは、本物の誰かの記憶であることを知って動揺します。ジョシに連れ戻されたKは、レプリカントの正常性試験で不適格となります。「対象の子供を処分した」と虚偽の報告をしたKは、48時間の停職処分と後日の再試験を言い渡され、帰宅します。
  • 逃亡の決意を固めたKに同行することを申し出たジョイは、モバイル端末のエマネーターにデータを移動し、部屋のバックアップを削除、追跡を断つためにエマネーターのアンテナを折るよう、Kを説得します。木馬の材質がラスベガス産と知ったKはラスベガスへ向かい、隠れ住んでいたデッカードを発見します。デッカードは、妊娠したレイチェルをある「仲間」に委ねたこと、各種記録を改竄する方法を仲間に教えたこと、子供とは一切他人として過ごしてきたことなどを、Kに打ち明けます。
  • エマネーターのアンテナが折られた為にKの居所がつかめなくなったラヴは、ジョシのオフィスに押し入ってKの行方を尋ねますが、ジョシは教えることを拒みます。ラブはジョシを殺害し、ジョシの端末からKの所在を探り出して、ラスベガスに向かいます。デッカードは誘拐され、抵抗したKはラヴに叩きのめされ、エマネーターも破壊されて、ジョイは消滅してしまいます・・・。

レビュー・解説

リドリー・スコット監督によるカルト的名作オリジナル作品と同様に、環境破壊、遺伝子操作による人間の複製といった題材を扱い、複製とのラブストーリーやアイデンティを巡る葛藤といったテーマを、同じSFノワールのスタイルで描きながら、圧倒的な映像美と視覚効果により、より時代の感性にマッチした、深みと味わいのある親しみやすい作品に纏め上げられた、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による画期的な続編です。

 

圧倒的な映像美と視覚効果が時代にマッチする画期的な続編

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リスクを承知で引き受けたヴィルヌーヴ監督

環境破壊、遺伝子操作による人間の複製(レプリカント)といった題材を斬新な視覚効果、美術で描き、サイバーパンクの先駆、SFノワールの草分けとしてその後の作品に大きな影響を与え、SF映画の金字塔と言われた、リドリー・スコット監督の「ブレードランナー」(1982年)の続編です。当初はリドリー・スコット自身が監督する予定でしたが、同時期に公開される「エイリアン:コヴェナント」(2017年)に注力する為に製作総指揮に退き、ドゥニ・ヴィルヌーヴが監督に抜擢された、いわくつきの作品です。こうした名作の続編は成功させるのが難しいと言われますが、ヴィルヌーヴ監督はオリジナルの香りを残しながらも、彼自身の作品として見事に昇華しており、改めて彼の才能が感じることができる作品です。

 

ヴィルヌーヴ監督は、 既に、

  • 「灼熱の魂」(2010年)
  • プリズナーズ」(2013年)
  • 「ボーダーライン」(2015年)
  • 「メッセージ」(2016年)

などで高く、安定した評価を得ており、オリジナルを超えることが難しい、このような名作の続編を手がけることは大きなリスクでした。しかし、「ブレードランナー」の大ファンだった彼は、

  • 尊敬するリドリー・スコット監督から直々のお墨付きがあった
  • 脚本に強い主張を感じた
  • 続編に取り組むべき価値、芸術性を感じた

ことから、自分がやらなくても誰かがやるだろう、ならば自分で続編をコントロールしたいと、リクスを覚悟の上で、監督を引き受けたものです。

モチーフ、テーマ、スタイルを踏襲しながら独自の世界観を構築 

オリジナル作品の舞台設定は2019年ですが、現実は必ずしも映画が描いたようにはなっていません。続編を考えるに当たっては当然、気になるところですが、冷戦時代の1968年に書かれた原作小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に後に崩壊するソ連が出てくることに注目したヴィルヌーヴ監督は、2049年を舞台にした本作に敢えて「Product of CCCP」(ソ連製)という文字を埋め込まれた映像を挿入しています。彼はこの映像によって、本作で描く2049年が現実とは異なるパラレルワールドであることを示唆しています(これは、「パンナム」や「アタリ」など、その後、実質的に消滅したブランドが描かれているオリジナル作品も、実は現実とは異なるパラレルワールドを描いたものであったという解釈を促すことになる)。

 

 「Product of CCCP」(ソ連製)という文字が埋め込まれた映像(中央上部)

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環境破壊、遺伝子操作による人間の複製(レプリカント)を題材に、複製とのラブストーリーやアイデンティを巡る葛藤といったテーマをフィルム・ノワール形式で描くという点ではオリジナルと共通していますが、深みと味わいのある本作のストーリーを、オリジナルの暗い雨を基調としたトーンに対して、白い雪や霧を基調にした見事な映像美と視覚効果で見せているのが、本作最大の特徴になります。ヴィルヌーヴ監督は、本作の全編を通して、銀色がかった光、雪やもやのかかった映像、幾何学的なパターンや構図といったもので本作独特の世界観を表現しています。こうした世界観を構築する為に、彼は撮影監督、プロダクション・デザイナーとともに、4週間もホテルに籠もり、社会、地理・地形、気候などの一貫した環境下でのストーリーボードを練り、銀色がかった冬の光や色、キャラクター毎の光のあり方を徹底的に検討しました。また、安易にCGに頼らず、実際のセットで俳優が演じることを優先し、グリーン・スクリーンの使用は遠景の合成など必要最小限に抑えるなど、実写を活かしたリアルな特殊効果も本作の大きな特徴のひとつです。こうしたストイックで徹底的な演出により、素晴らしい映像の数々が実現され、アカデミー撮影賞と視覚効果賞の受賞に繋がっています。

 

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冒頭の虹彩のアップからクロスフェードされるこの光景は、実際に空撮されたスペインの太陽光熱発電所をつなぎ合わせたもの。銀色がかった光や、雪やもやのかかった映像、幾何学的なパターンや構図といった、本作の世界観を反映する映像が、冒頭から示される。

 

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サッパーの農場近くの温室群は、実際にスペインのエル・エヒド地方で空撮したものが使用されている。これも銀色がかった光や、雪やもやのかかった映像、幾何学的なパターンといった、本作の世界観を反映する映像。

 

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窓から見える風景にモヤがかかっているような効果を得る為に、Kのアパート内のシーンはすべて霧を満たしたスタジオ内のセットで撮影されている。撮影には4週間かかり、撮影機材など電子機器への悪影響を避ける為に部屋の湿度は空調によってコントロールされた。

 

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これも本作の世界観を反映する美しい映像。

 

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Kのアパートの屋上。メビウス・アパートという日本語の看板が見える。海面が上昇した為、陸地が侵食された東アジアから移住する人が増え、ロス・アンジェルには日本語や韓国語など様々な言語が入り乱れる設定になっている。日本人クリエーターの田島光二氏がコンセプト・デザイナーとして雇われ、看板のデザインなどを担当している。この映像も、本作の世界観を反映する美しい映像。

 

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これも本作の世界観を反映する映像。

 

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ウォレス社長の隠れ家は、清水寺の一室を参考にデザインされている。これも、本作の世界観を反映する美しい映像。

 

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ヴィルヌーヴ監督は、35年前にオリジナル作品の舞台デザインを担当した工業デザイナーのシド・ミードにコンセプチャル・デザインについて相談、多くの革新的なアイディアを得た。廃墟と化したラス・ベガスはシド・ミードのコンセプチャルデザインに基づいている。さらに、数年前にオーストラリアを襲い、オペラハウスを覆った赤い砂嵐の映像も参考にしている。この映像も、本作の世界観を反映している。

 

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廃墟と化したラス・ベガスのナイトクラブの跡で、往年のスターがホログラムで浮かび上がる中、Kのデッカードが戦う。時の流れを感じさせる、見事で美しい演出。これも、本作の世界観を反映する映像。

 

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オリジナル作品にはユビキタスな広告が随所に見られるが、ヴィルヌーヴ監督はこれをさらに進化させ、巨大なホログラフィー広告を描いて見せる。単純なCG合成ではなく、実際に橋を作り、雨と霧で演出、大きなスクリーンに女性を映し出して撮影するという凝った演出で、現実感を出している。これも、本作の世界観を反映する美しい映像。広告の女性はウォレス社が販売するAIホログラフィー商品「ジョイ」の原型。

 

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これも、本作の世界観を反映する美しい映像。

 

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これも、本作の世界観を反映する映像。

女性差別的描写への批判

日本ではあまり聞こえてきませんでしたが、欧米では本作の女性が差別的に描かれているという批判がありました。生成されたばかりの艶めかしい全裸の女性レプリカントが生殖能力がない為に解任(抹殺)されるシーンがあったり、一見、知的で戦闘的なラブは実は天才科学者ウォレスの傀儡だったり、巨大な全裸女性のホログラフィなどの性を強調する表現があったりと、危うい点がいくつかありますが、最も批判の対象となったのは、AIホログラフィのジョイが従属的で男性に都合良く描写されている点です。ヴィルヌーヴ監督はこれまでに、

  • 「灼熱の魂」(2010年)
  • 「ボーダーライン」(2015年)
  • 「メッセージ」(2016年)

など、女性を主人公にした名作をいくつも手がけていますが、そこに差別的な描写はありません。従って、彼自身が差別的というのではなく、本作のジョイの描写はあくまでも意図的なものであると言えます。

重要なのは、彼女は欲望を満たす為にプログラムされた、見たいものを見せてくれ、聞きたいことを聞かせてくれるホログラムである点です。ダンスをしたければ、彼女は素晴らしいダンサーになります。本を読んで欲しければ、彼女は素晴らしい朗読を聞かせてくれます。そんな彼女ですが、Kが人間になりたいのと同様に、彼女は解放されたいと願っています。彼女は次第に情緒的になり、傷つきやすくなっていきます。彼女はKの潜在意識のようなもの、Kがピノキオだとすれば、彼女はジミー・クリケットのような存在です。本物の少年になりたいピノキオの耳元で良心をささやく、ジミー・クリケットです。そんな美しいキャラクターであると同時に、彼女はフィルム・ノワールにおけるファム・ファタール(運命の女)の役割も果たしています。Kに大きな影響を与える彼女は、結局は現実には存在しない虚構の女性であるという冷酷な事実をKに突きつけることになります。彼女は人工物ですが、それを現実の女性のように見せるのは大きな挑戦でした。アナログ的な、写真のような、不思議な感じがするホログラムで彼女を表現しています。(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)
https://www.denofgeek.com/uk/movies/blade-runner/54995/denis-villeneuve-interview-blade-runner-2049-marketing-and-design/

 

Kは、AI商品の「ジョイ」をカスタマイズ、声と外観のセクシーさを抑えて利用していたのですが、彼女が欲望を満たしてくれ、良心を囁いてくれる、男性にとって都合の良いツールであることには変わりはありません。2049年の現実がどうなっているかわかりませんが、リドリー・スコットが制作当時の社会を「ブレードランナー」に反映させたように、ヴィルヌーヴ監督は男性にとって都合の良い女性へのニーズが依然として高い現代社会を本作に反映していると言えます。ジョイはまた、人間もどきと罵られる、いわば人間以下の存在であるKのささやかな楽しみであったわけですが、彼女の辿る運命を見れば、ヴィルヌーヴ監督がジョイのような存在を諸手を挙げて称賛しているわけではないこともわかります。

非人間的時代に生きる人々への鎮魂歌

本作はフィルム・ノワールで、展開するのは寒々とした話ですが、エンディングにはほのかな希望が漂います。

<ネタバレ>

ジョシ警部補にしろ、ウォレス社長にしろ、本作に登場する人間には、高慢さと脆弱さがつきまといます。ウォレス社長のファースト・ネームのニアンダーは、ネアンデルタール人を想起させ、絶滅する運命にある高慢で脆弱な人類を暗示しています。そんな中、人間になれないことを悟ったレプリカントのKは、ブレードランナーの職を棒に振って逃亡、レプリカント解放運動の依頼を無視してデッカードを救出、命を賭けて彼を娘に引き合わせます。彼がささやかな楽しみであるジョイを失って得たものは、彼自身が誰かの為に尽くすという無償の愛でした。レプリカントである彼が見せるこうした行動が、例え高慢で脆弱な人類が絶滅に瀕したとしても、人間らしさは何らかの形で生き残っていくのではないかというかすかな希望を感じさせてくれます。それはあたかも、非人間的な時代である現代に生きる我々に捧げられた鎮魂歌のようでもあります。

<ネタバレ終わり>

 

ライアン・ゴズリング(K、主人公、ロス警察捜査官、レプリカント

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ライアン・ゴズリング(1980年〜)は、カナダの俳優・ミュージシャン。ドラマ映画「きみに読む物語」(2004年)への出演で注目され、「ハーフネルソン」(2006年)でアカデミー主演男優賞に、「ラースと、その彼女」(2007年)、「ブルーバレンタイン」(2010年)、「ラブ・アゲイン」(2011年)、「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」(2011年)でゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされている。「ラ・ラ・ランド}(2016年)でゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞、2度目のアカデミー主演男優賞にノミネートされている。

 

ハリソン・フォード(リック・デッカード、前作の主人公、消息不明の元捜査官)

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ハリソン・フォード(1942年〜)は、アメリカの俳優。「スター・ウォーズ」シリーズ(1980年〜)、「インディ・ジョーンズ」シリーズ(1981年〜)などで知れられる。大学中退後、コロンビア映画の所属の俳優として契約を結び、映画デビュー。その後、脇役やゲスト出演を続けるも、作品に恵まれない状況や映画俳優としてのあり方に疑問を抱き、契約終了後、大工に転職。大工仕事を通じて知りあったプロデューサーの紹介で、「アメリカン・グラフィティ」(1973年)に出演、積極的姿勢がジョージ・ルーカスフランシス・フォード・コッポラ評価される。1977年に「スター・ウォーズ」のオーディションを受け、ハン・ソロ役に抜擢され、一躍人気スターとなる。1981年にはジョージ・ルーカスの製作でスティーヴン・スピルバーグが監督した「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」で主役のインディ・ジョーンズを演じ、同作も「スター・ウォーズ」同様に大ヒット、シリーズ化された。1985年には「刑事ジョン・ブック 目撃者」で、のアカデミー主演男優賞にノミネートされる。1992年にはベストセラー作家、トム・クランシー原作の映画「パトリオット・ゲーム」で、ジャック・ライアンを演じ、大ヒット、続編でも主演し、1993年にはテレビドラマのリメイク映画「逃亡者」で主人公のリチャード・キンブルを演じて大きな成功を収め、ゴールデングローブ賞にノミネートされるなど、ハリウッドのマネーメイキングスターとしての地位を確固たるものにした。2000年代以降もマイペースで俳優業を続けている。

 

アナ・デ・アルマス(ジョイ、ウォレス社製AIホログラフィ、Kの良き理解者)

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アナ・デ・アルマス(1988年〜)は、キューバの女優。2006年にスペイン語映画でデビュー、その後、スペイン語のTV番組に出演、2015年からアメリカ映画に出演するようになり、「ウォー・ドッグス」(2016年」などに出演している。

 

シルヴィア・フークス(ラヴ、ウォレス社を仕切る知的で戦闘的なレプリカント

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シルヴィア・フークス(1983年〜)は、オランダの女優。オランダ語、ドイツ語、フランス語、英語を話す。14歳の時にモデルによりスカウトされ、数年間、ヨーロッパでモデルとして活動する。2007年から映画やテレビに多数、出演している。「ドラゴン・タトゥーの女」(2011年)の続編となる「蜘蛛の巣を払う女」にキャスティングされている。

 

ロビン・ライト(ジョシ警部補、ロス警察特捜班司令、Kの直属の上司)

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ロビン・ライト(1966年〜)は、テキサス出身のアメリカの女優。14歳からモデルとして活躍、高校卒業後からテレビドラマに出演するようになる。「プリンセス・ブライド・ストーリー」(1987年)で映画デビュー、「消されたヘッドライン」(2009年)、「 マネーボール」(2011年)、「ドラゴン・タトゥーの女」(2011年)、「誰よりも狙われた男」(2014年)、「ワンダーウーマン」(2017年)などに出演している。

 

マッケンジー・デイヴィス(中央、マリエット、バーにたむろする娼婦、Kに近づく)

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マッケンジー・デイヴィス(1987年〜)は、バンクーバー出身のカナダの女優。「スマッシュド 〜ケイトのアルコールライフ〜」(2012年)、「Bad Turn Worse」(2013年)、「オデッセイ」(2015年)、「ブラック・ビューティー」(2016年)、「タリーと私の秘密の時間」(2018年)などに出演している。

 

カーラ・ジュリ(アナ・ステリン博士、レプリカント用記憶開発者、免疫不全)

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カーラ・ジュリ(1985年〜)はスイスの女優。「Wetlands」(2014年)、「Morris from America」(2016年)などに出演している。

 

レニー・ジェームズ(ミスター・コットン、廃棄物処理場跡で孤児院を経営)

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レニー・ジェームズ(1965年〜)は、ロンドン出身のイギリスの俳優。「24アワー・パーティ・ピープル」(2002年)、「ジェームス・ブラウン ~最高の魂 (ソウル) を持つ男~」(2014年)などに出演している。

デイヴ・バウティスタ(サッパー・モートン、脱走した元戦闘用レプリカント

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デイヴ・バウティスタ(1969年〜)は、アメリカのプロレスラー、俳優。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014年)、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」(2017年)、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」(2018年)などに出演している。

 

ジャレッド・レト(ニアンダー・ウォレス、ウォレス社代表、盲目の天才科学者)

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ジャレッド・レト(1971年〜 )は、ルイジアナ州出身のアメリカの俳優、ミュージシャン。兄や友人と共にロックバンドでも活動している。1990年代に俳優デビュー、「シン・レッド・ライン」(1998年)など、数多くの映画に出演、「ダラス・バイヤーズクラブ」(2013年)で14キロ減量して、性転換を受けたHIV患者を演じ、アカデミー賞助演男優賞を受賞している。

 

本作で使用された銃

 留之助ブラスター2049(Amazon
ブレードランナー2049」に採用されたモデルガン。オリジナルの「ブレードランナー」(1982年)で使用されたデッカード・ブラスターの実物を入念に採寸し、細部まで完璧に再現している。

 

 
ブレードランナー 2049 スピナー 6インチ ダイキャスト ビークルAmazon
ブレードランナー2049」で使用されたスピーナーのダイキャスト・モデルです。曲線の多いオリジナルの「ブレードランナー」(1982年)のスピナーから、やや鋭角的なフォルムに変更されています。

サウンドトラック

 「ブレードランナー 2049」のサウンドトラック by  Hans Zimmer & Benjamin Wallfisch et al(Amazon

iTunesで聴く*3 Amazon MP3 で聴く*4

当初、オリジナルの「ブレードランナー」のサウンドトラックを手がけたヴァンゲリスに交渉したが、スケジュールが合わずに断念。その後、ヴィルヌーブ監督の「プリズナーズ」、「ボーダーライン」、「メッセージ」のサウンドトラックを手がけたヨハン・ヨハンソンが起用されたが、途中で降板、最終的にハンス・ジマーベンジャミン・ウォルフィッシュサウンドトラックを担当した。

1 2049
2 Sapper's Tree
3 Flight To Lapd
4 Summer Wind
 by Frank Sinatra

5 Rain
6 Wallace
7 Memory
8 Mesa
9 Orphanage
10 Furnace
11 Someone Lived This
12 Joi
13 Pilot
14 Suspicious Minds by Elvis Presley
15 Can't Help Falling in Love
 by Elvis Presley & The Jordanaires

16 One For My Baby (And One More For The Road) 
 by Frank Sinatra

17 Hijack
18 That's Why We Believe
19 Her Eyes Were Green
20 Sea Wall
21 All the Best Memories Are Hers
22 Tears in the Rain
23 Blade Runner
24 Almost Human (from the OST Blade Runner 2049) 
 by Lauren Daigle

動画クリップ(YouTube

撮影地(グーグルマップ)

 

 「ブレードランナー 2049」のDVD(Amazon

関連作品

リドリー・スコット監督によるオリジナル作品のDVD(Amazon

  「ブレードランナー」(1982年)

 

ブレードランナー 2049」のメイキング本Amazon

「アート・アンド・ソウル・オブ・ブレードランナー2049」

 

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品のDVD(Amazon

  「灼熱の魂」(2010年)

  「プリズナーズ」(2013年)

  「ボーダーライン」(2015年)

  「メッセージ」(2016年)

 

ライアン・ゴスリング出演作品のDVD(Amazon

  「Half Nelson」(2006年)・・・北米版、リージョン1、日本語なし

  「ラースと、その彼女」(2007年)

ブルーバレンタイン」(2010年)

  「スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜」(2011年)

  「ドライブ」(2011年)

  「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」(2012年)

  「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015年)

  「ナイスガイズ!」(2016年) 

ラ・ラ・ランド」(2016年)

  「ファースト・マン」(2019年)

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