夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ある過去の行方」:移民、離婚、不倫・・・、複雑な環境で子供達や家族との関係を緻密かつスリリングに描く

「ある過去の行方」(原題: Le passé、英題: The Past)は、2013年公開のフランスのドラマ映画です。アスガー・ファルハディ監督・脚本、ベレニス・ベジョ、タハール・ラヒム、アリ・モサファら出演で、協議離婚のため4年ぶりに自宅へ戻った男と元妻、その恋人、子供たちが織り成すサスペンス・ドラマを描いています。第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、パルム・ドールにノミネート、ベレニス・ベジョが女優賞を受賞した作品です。また、第86回アカデミー賞外国語映画部門のイラン代表作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:アスガー・ファルハディ
脚本:アスガー・ファルハディ
出演:ベレニス・ベジョ(マリー 、薬剤師)
   タハール・ラヒム(サミール 、クリーニング店経営、マリーの恋人)
   アリ・モサファ(アーマド、マリーと離婚手続き中のイラン人男性)
   ポリーヌ・ビュルレ(リュシー、マリーの長女、実父はベルギー在住)
   エリス・アギス(フォアド 、サミールの息子、母親は自殺未遂で植物状態)
   ジャン・ジェスタン(レア 、マリーの次女、リュシーの同父妹)
   サブリナ・ウアザニ(ナイマ、サミールの店の従業員、不法移民)
   ババク・カルミ(シャーリヤー 、アフマドの友人)
   ヴァレリア・カヴァッリ(ヴァレリア、シャーリヤーの妻)
   ほか

あらすじ

テヘランに住むアーマド(アリ・モサファ)は、4年前に別れたフランス人妻マリー(ベレニス・ベジョ)の要請により正式な離婚手続きを完了するためにパリを訪れます。アーマドがかつて妻や娘と過ごした家を訪れると、マリーは自身の娘2人だけでなく、恋人のサミール(タハール・ラヒム)とその息子と既に同居しており、マリーとサミールが再婚する予定だと聞かされたアーマドは、長女リュシーとマリーの関係が良好でないことを知ります。長女リュシーとの関係に悩んでいたマリーから、娘の本音を聞き出してほしいと頼まれたアーマドは、リュシーから衝撃的な告白を受けます・・・。

レビュー・解説 

マリーが空港にアーマドを迎えに行くところから、映画は始まります。二人の関係、そして次に家族の関係が少しずつ明らかになっていきます。離婚する二人の関係、子供達や新しい恋人の連れ子との関係が緻密に描写されます。中盤過ぎ、リュシーの告白によって物語が大きく動き、めまぐるしく展開、日常に潜むサスペンスが味わえます。ベレニス・ベジョ、タハール・ラヒムらの熱演も見事です。

 

アスガー・ファルハディはイランの監督で、イランの大学で映画学、ドラマ芸術、舞台監督などを学び、脚本家としてイラン・イスラーム共和国放送に所属、その後、映画制作に関わり、「水曜日の火花」(2006年)、「彼女が消えた浜辺」(2009年)、「別離」(2011年)などで、数々の国際映画賞を受賞しています。

 

本作はフランス映画ですが、アーマドがイラン人、シャーリヤーがイランからの移民、サブリナが不法移民という設定で、出演もベレニスがアルゼンチン、タハールがアルジェリア、アリとがババクがイラン、ポリーヌがベルギー、ヴァレリアがイタリアと、国際色が豊かなものになっています。が、そうした国際性を強調するよりは、移民や離婚する夫婦、家族の無国籍な心の襞が、この映画独特のトーンを醸し出しています。

 

脚本は、ペルシア語で書かれ、フランス語に翻訳されました。アスガー・ファルハディ監督はフランス語を話さないため、通訳を介して演出が行われました。撮影は当初、二ヶ月の予定でしたが、アスガー・ファルハディ監督は二ヶ月のリハーサルが必要と主張し、計4ヶ月となりました。言葉のハンディがありながらも、完璧な演出を目指す彼の姿勢が感じられます。

 

ベレニス・ベジョは、「アーティスト」(2011年)でセザール賞を受賞、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされており、コメディエンヌでもあるのですが、本作ではシリアスな役に取り組んでいます。タハール・ラヒムは、「預言者」(2009年)でセザール賞を受賞、一躍、注目を集めましたが、本作でもマリーと植物状態の妻との間でゆれ動く男を好演しており、今後が期待される俳優です。

 

マリー役は、当初、マリオン・コティヤールの予定でしたが、スケジュールが合わず、ベレニス・ベジョが起用されました。ポリーヌ・ビュルレは、「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」で幼少のエディットを演じていますが、同じ映画で大人のエディットを演じたマリオン・コティヤールに似ていると理由で起用され、彼女の辞退後もキャストとして残りました。

 

ベレニス・ベジョ(マリー)

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タハール・ラヒム(サミール)

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アリ・モサファ(アーマド)

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ポリーヌ・ビュルレ(リュシー)

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サブリナ・ウアザニ(ナイマ)

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子役達も好演

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撮影地(グーグルマップ) 

マリーの家(パリの華やかさはなく、あくまでも生活の場として描いている)

 

マリーの勤める薬局

 

サムエルが経営するクリーニング店(マリーの薬局のすぐそば)

 

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関連作品 

アスガー・ファルハディ監督作品のDVD(Amazon

  「彼女が消えた浜辺」 (2009年)

  「別離」(2011年)

 

ベレニス・ベジョ出演作品のDVD(Amazon

  「アーティスト」(2011年)

 

タハール・ラヒム出演作品のDVD(Amazon

  「預言者」(2010年)

 

移民を描いたフランス映画Amazon

  「トリコロール/白の愛」(1994年)フランス・ポーランド・スイス合作

  「憎しみ」(1995年)

  「クスクス粒の秘密」(2007年)フランス・チュニジア合作

  「パリ20区、僕たちのクラス」(2008年)

  「預言者/アンプロフェット」(2009年)

  「パリ警視庁:未成年保護部隊」(2011年)

  「最強のふたり」(2011年)

  

ル・アーヴルの靴みがき」(2011年)フィンランド・フランス・ドイツ合作

  「ある過去の行方」(2013年)

  「ディーパンの闘い」(2015年)

 

移民を描いた映画のおすすめ

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