「21ジャンプストリート」:かつての若者向けドラマをリメイク、時代を風刺しながら、警官バディが繰り広げる爆笑アクション・コメディ
「21ジャンプストリート」(原題:21 Jump Street)は、2012年公開のアメリカのアクション・コメディ映画です。1987年のジョニー・デップ主演による同名の人気テレビ・ドラマ・シリーズを原作に、フィル・ロード/クリストファー・ミラー共同監督、マイケル・バコール脚本、ジョナ・ヒル、チャニング・テイタムら出演で、青年犯罪撲滅のために高校で潜入捜査をすることになった新人警官コンビが、思いのほか高校生活をエンジョイする様子を描いています。アメリカではR指定、日本では劇場未公開ですがソフトで視聴できます。
「21ジャンプストリート」のDVD(Amazon)
目次
キャスト・スタッフ
監督:フィル・ロード/クリストファー・ミラー
脚本:マイケル・バコール
原案:マイケル・バコール/ジョナ・ヒル
出演:ジョナ・ヒル(モートン・シュミット)
チャニング・テイタム(グレッグ・ジェンコ)
ブリー・ラーソン(モリー)
デイヴ・フランコ(エリック)
ロブ・リグル(ウォルターズ先生)
デレイ・デイヴィス(ドミンゴ )
アイス・キューブ(ディクソン警部)
ダックス・フレイム(ザック)
クリス・パーネル(ゴードン)
エリー・ケンパー(グリッグス先生)
ジェイク・ジョンソン(ダディアー校長 )
ニック・オファーマン(ハーディ副部長)
ホリー・ロビンソン・ピート(ジュディ )
ジョニー・デップ(カメオ出演)
ピーター・デルイーズ(カメオ出演)
ダスティン・ヌエン(カメオ出演)
ほか
あらすじ
2005年、オタクのモートン・シュミット(ジョナ・ヒル)とスポーツマンのグレッグ・ジェンコ(チャニング・テイタム)は同じ高校に通っていましたが、仲はよくありませんでした。7年後、ポリスアカデミーで再会した2人はなぜか意気投合します。やがて二人は童顔だからという理由で、少年犯罪撲滅を目的する犯罪特別捜査課に配属されます。彼らは潜入捜査の命を受け、新種のドラッグが流通する高校に潜入、久しぶりの高校生活をエンジョイしつつ、ドラッグのディーラーに接近します・・・。
レビュー・解説
かつての若者向けドラマをリメイク、時代の流れを優しく風刺しながら、ジョナ・ヒルとチャニング・テイタムの警官バディが繰り広げる、愛すべき爆笑アクション・コメディです。
オリジナルの「21ジャンプストリート」は、1987年 - 1990年にアメリカで放送されたテレビドラマで、青年犯罪を撲滅するべく、童顔の警官らが麻薬取引、売春、殺人依頼、自殺など様々な事件が渦巻く高校に潜入捜査するというものです。ジョニー・デップの出世作で、この作品で一気にアイドルの地位を築くことになりました。21ジャンプストリートにある教会に潜入捜査班の事務所で、その住所がそのままタイトルになっています。
これらの大まかな設定はオリジナルと同じですが、本作ではさらに以下の設定がなされています。
- ジョナ・ヒル扮するシュミットは秀才肌のオタク、チャニング・テイタム扮するジェンコは勉強が苦手なスポーツマン。
- 二人は同じ高校に通っていたが、ジェンコはモテてシュミットはモテなかった。
- 二人とも、それぞれの理由でプロムに出席できなかった。
- 高校時代の二人は仲が良くなかったが、ポリスアカデミーでは互いの得意な部分を活かして助け合い、無事卒業。
- 二人は高校に潜入するものの、そこは昔とは異なり、スポーツマンではなくエコでナヨっとした男がモテる時代だった。
- さらに二人の名前が入れ替わり、ジョナ・ヒルがスポーツマン、チャニング・テイタムが秀才の生徒を演ずる破目に。
1-4.の設定のみだと如何にもというパターンの展開になりますが、5-6.のダブルのひねりが入り、得意なものを活かせず、
- 二人はどう事件を解決するのか?
- 二人の関係はどうなるかのか?
というスリリングな展開になる、なかなか良く出来た脚本です。
因みにプロムはプロムナードの略で、高校の最終学年に開かれるダンスパーティで、アメリカやカナダの高校生にとってとても重要なイベントです。参加は原則として男女のペアで、男性はタキシード、女性はドレスとコサージュを着用するフォーマルなものです。男子が女子を誘うパターンが一般的ですが、卒業のプロムまでにパートナーを見つけられなかったり、思い通りの相手と組めなかったりすることも多々あります。
脚本のマイケル・バコールは、アメリカの俳優・脚本家で、「グラインドハウス」-「デス・プルーフ」 (2007年)、「イングロリアス・バスターズ」(2009年)、「ジャンゴ 繋がれざる者」(2012年)などに俳優として出演する一方で、「スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団」(2010年)などの脚本を書いています。マイケル・バコールとジョナ・ヒルは、二人が好きな警官のバディものアクション・コメディを作りたいと一年ほど案を語り合い、やげてジョナ・ヒルから「21ジャンプストリート」のリメイクにしようと声がかかって、脚本を書き始めました。
監督を務めたフィル・ロード/クリストファー・ミラーは、「くもりときどきミートボール」(2009年)、「LEGO ムービー」(2014年)などの監督・脚本を手がけていますが、最終的な脚本は彼らの意見も取り入れれています。4人ともエドガー・ライト監督の「ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」のファンなので、パクリにならないように意識して注意せねばならなかったといいます。ヒネった設定の脚本ですが、ジョナ・ヒルとチャニング・テイタムのコミカルでパワフルなパフォーマンスが、観る見る者をぐいぐいと物語に引き込みます。
ジョナ・ヒルは、初めての主演作「スーパーバッド 童貞ウォーズ」(2007年)ではやや一本調子でしたが、本作ではかなり印象が異なります。実は彼は、コメディ一本ではなくシリアスな役も演じられるようにと、以前に比べて体重を20キロ近く落としています。本作はコメディですが、シリアスっぽいカットも効果的に挿入されており、彼の芸域が大きく広がっています。「マネーボール」(2011年)、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)では、アカデミー助演男優賞にノミネートされるほどの大躍進です。
共演のチャニング・テイタムはアメリカの俳優で、学生時代はアメリカン・フットボールや陸上競技、バスケットボールなどのスポーツをしていました。映画「シティ・オブ・ドッグス」(2006年)でサンダンス映画祭のインディペンデント・スピリット賞助演男優賞にノミネートされるなど、肉体美を誇るセクシー俳優としてだけではなく、演技力も高く評価されています。本作には、二度断ったものの、ジョナ・ヒルに説得されて出演したそうですが、今までにないチャニング・テイタムの魅力が発揮されており、彼をキャスティングした製作者の眼力が伺われます。
ジョナ・ヒル(右、モートン・シュミット)と
チャニング・テイタム(左、グレッグ・ジェンコ)
もう一人、忘れてならないのが、モリーを演じるブリー・ラーソンです。彼女は「ショートターム」(2013年)で優秀なケア・マネージャー、恋人に愛される女性、父親による虐待の傷が癒えない女性と3つの顔を演じ高い評価を得、さらに「ルーム」(2015年)で子供とともに何年も監禁され続けたシングルマザーを演じて第88回アカデミー主演女優賞を受賞しています。いずれもシリアス系のドラマですが、実はそれ以前の彼女は、「ダメ男がモテる本当の理由」(2009年)、「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010年)、「ベン・スティラー 人生は最悪だ!」(2011年)など、コメディ系の映画の出演が多く、本作でもコミカルな演技を披露しています。さらに驚くことに、子供の頃、女優になりたいと言って母親に大笑いされたという彼女は、実はとても内気で、「演技するのは楽しいが、友人のパーティに行くと心臓が止まる」そうです。本作には、パーティのシーンがあるのですが、彼女が演じるモリーはとても楽しそうに見えます。裏を返せば、彼女のパフォーマンスがそれだけ切れるということでしょう。
子供の頃から演じてきた彼女はとびきり可愛いわけでも、個性的なわけでもなく、なかなか役を貰えず、オーディションでは色気がないとか、受け答えが真面目で面白くないという理由で落とされること多かったそうです。本作でも「スーパーバッド 童貞ウォーズ」でジョナ・ヒルと共演しているエマ・ストーンがモリー役の第一選択でしたが、彼女が「アメージング・スパイダーマン」(2012年)出演の為、日程が合わず、ブリー・ラーソンがモリー役が回ってきました。とびきり可愛いわけでも、個性的なわけでもないという自覚があるせいか、ドラマでも、コメディでも、彼女はやや強めに表情を出してくる印象ですが、演技の思い切りが良い一方でわざとらしさがなく、自然に見えることが彼女の演技の魅力ではないかと思います。
デイヴ・フランコ(エリック)
エリー・ケンパー(グリッグス先生)
アメリカ身の女優、脚本家、コメディアン。
- NBCのコメディドラマシリーズ「The Office」(2010年〜)
- 映画「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」(2011年)
- Netflixのドラマシリーズ「アンブレイカブル・キミー・シュミット」(2015年〜)
などで知られる。高校生の時、演劇の教師がジョン・ハムだった。
オリジナルに出演していたジョニー・デップがカメオ出演している。
いざ、プロム会場へ
撮影地(グーグルマップ)
- 冒頭、シュミットとジェンコがドラッグの売人に遭遇する公園
- 犯罪特別捜査課の拠点(21ジャンプストリート)
- 二人が潜入する高校
- 二人の乗る車がドラッグの売人たちのバイクに追突した場所
- ドラッグの売人たちに追われて二人が渡る橋
「21ジャンプストリート」のDVD(Amazon)
関連作品
オリジナルのDVDボックス(Amazon)
シーズン1 シーズン2-1 シーズン2-2 シーズン3-1 シーズン3-2
「21ジャンプストリート」の続編のDVD(Amazon)
(フィル・ロード/クリストファー・ミラー監督xジョナ・ヒルxチャニング・テイタム)
フィル・ロード/クリストファー・ミラー監督作品のDVD(楽天市場)
「くもりときどきミートボール」(2009年)
「LEGO ムービー」(2014年)
マイケル・バコール脚本作品のDVD(Amazon)
「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010年)
ジョナ・ヒルxチャニング・テイタム共演作品のDVD(Amazon)
「ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日」(2013年)
ジョナ・ヒル出演作品
チャニング・テイタム出演作品のDVD(Amazon)
「エージェント・マロリー」(2011年)
「マジック・マイク」(2012年)
「サイド・エフェクト」(2013年)
「フォックスキャッチャー」(2014年)
「ローガン・ラッキー」(2017年)
「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」(2010年)
「ドン・ジョン」(2013年)
「The Spectacular Now」(2013年、日本未公開)・北米版、リージョン1,日本語無し
「エイミー、エイミー、エイミー!こじらせシングルライフの抜け出し方」(2015年)