夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「預言者」:人種、言葉、宗教のハンディを超え、刑務所内で成り上がる19歳の若者のクライム・ストーリー

「預言者」(原題:Un prophète, 英題:A Prophet)は2009年公開のフランスの犯罪映画です。モザイクのように様々な民族や宗教が入り交じり対立する刑務所に放り込まれた無学で孤独なアラブ系フランス人青年が、過酷な世界で生き延び、這い上がっていく様をジャック・オーディアール監督、本作で俳優デビューを果たしたタハール・ラヒムらが、描いています。第62回カンヌ国際映画祭で、審査員特別グランプリを受賞、第35回セザール賞では、13のノミネートを受け、作品賞をはじめとする9つの受賞を果たした作品です。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ジャック・オーディアール
脚本:アブデル・ラウフ・ダブリ/ニコラ・プフェーイ/ジャック・オーディアール
   /トーマス・ビデガン
出演:タハール・ラヒム(マリク )
   ニエル・アレストラップ(セザール)
   アデル・ベンチェリフ(リヤド)
   ほか

あらすじ

19歳のアラブ系青年マリク(タハール・ラヒム)は傷害罪で禁固6年の刑を宣告され、中央刑務所に送られて来ます。そこは様々な民族や宗教が入り交ざるモザイクの様相を呈しており、互いに牽制し合いながらも、最大勢力であるコルシカ・マフィアのグループが実質的に支配している世界でした。無学で身寄りのないマリクはコルシカ系グループを仕切るセザール(ニエル・アレストリュプ)に目を付けられ、彼らのグループの人間を売ったアラブ系の男レイェブ(ヒシャーム・ヤクビ)を殺すように脅迫されます。悩みながらも、マリクは刑務所内で生き延びるために、初めての殺人を犯します。これをきっかけにセザールの子分となり、読み書きとともに生き残るための術を学んでいきます。そして、マリクはレイェブの幻と暮らすようになり、レイェブが語る予言めいた言葉を聞くことになります。 しばらくして、コルシカ系の囚人の多くがコルシカ島に送られることになり、残されたコルシカ系はセザールを含め、ごくわずかとなります。セザールはマリクがフランス語とアラビア語に加えて、コルシカ語も使えるようになっていると知ると、マリクを外部との連絡係として利用するようになります。セザールの手引きで外出許可を得たマリクは、外の世界に出る度に様々な「成果」をあげ、刑務所内ではジプシー(ロマ)のジョルディ(レダ・カテブ)と手を組み、既に出所していた親友リヤド(アデル・バンシェリフ)の協力の下、違法薬物の取引によって刑務所内外で力を付けていきます・・・。

レビュー・解説 

刑務所中のマフィアの話を描いた映画ですが、主人公のマリクはマフィアに憧れたわけでも、コルシカ人の仲間になりたかったわけでもなく、ただただ刑務所内で生き残る為にセザールの言う事を聞いて仕事をしていきます。コルシカ人の仲間からアラブ人と軽蔑されても歯向うことなく従い、相応の実績ができても徒に高い地位を要求することもなくセザールのコヒー係を続けます。彼は刑務所内で勉強を続けるシーンが何回か出てきますが、マリクはセザールの元で仕事の仕方を吸収し、自分でも小さなビジネスを始め、セザールに見つかると分け前を提案します。

 

このようにして彼は這い上がっていく訳ですが、舞台が刑務所であること、やっていることが犯罪であることを除けば、一般社会の中でも注目すべき生き方であるように思えてきます。何ら大義名分があるわけでもない、人種的な同族意識や宗教への帰依心があるわけでもない、驚くべき順応性で現実から学び、這い上がっていく姿があるだけです。

マリクのようなタイプの人間は、既製の枠を壊してしまいます。彼は普通のギャングではありません。マリクに続いて、私たちは彼の精神を見ます。その精神は驚くべき適応性をみせ、このキャラクターは新たな環境へ入る機会があればいつでもそれを発揮するのです。彼はこの適応力を、最初は彼の身を守るため、次には生き残り、多くの能力を向上させるため、そして最後には権力の更なる段階へ到達するために使用します。(ジャック・オーディアール監督)

 

刑務所内の社会に見事に適応し這い上がるマリクですが、刑期を終えて娑婆に戻ったら、今度はそこにどう適応して、どのような活躍をするのか、是非、続きを観てみたい作品です。

 

主人公マリクを演じたタハール・ラヒムはアラブ系フランス人で、本作がデビュー作ですが、入所時のおどおどした19歳の青年から、成り上がるまでの変化を見事に演じきっています。ジャック・オーディアール監督は、マリクの生き方が典型的なものではないことから、まだ固定的なイメージができていない新人俳優から起用しましたが、タハール・ラヒムは見事に期待に答えています。

 

なお、「預言者」は意味深なタイトルですが、これは深く考えない方が良いでしょう。マリクのような生き方を象徴するうまい言葉が見つからず、止むなく「預言者」となったようです。

 

本作品は、第62回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞、第35回セザール賞では13のノミネートを受け、作品賞をはじめとする9つ賞の受賞、第82回アカデミー賞では外国語映画賞にノミネートされました。

 

マリク役のタハール・ラヒム(左)とセザール役のニエル・アレストラップ(右)

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関連作品 

ジャック・オーディアール監督作品のDVD(Amazon

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預言者 (字幕版)

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