夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「ザ・プレイヤー」:ハリウッドを強烈に風刺するフィルム・ノワール風味のブラック・コメディ、群像劇仕立て

「ザ・プレイヤー」(原題:The Player)は1992年公開のアメリカのドラマ/ブラック・コメディ映画です。ロバート・アルトマン監督、ティム・ロビンス主演で、ハリウッドのメジャー・スタジオの副社長が起こした殺人事件を中心に、ハリウッドに生きる人々と業界の裏側など、全編にわたってハリウッド映画にまつわる様々な話題が描かれています。映画スターの本人役で、ジュリア・ロバーツブルース・ウィリス、シェール、アンジェリカ・ヒューストンジャック・レモンニック・ノルティなど、数多くのスターがアルトマン監督の要請に応えて出演しています。92年カンヌ国際映画祭監督賞・主演男優賞、92年度ゴールデン・グローブ賞作品賞(コメディ・ミュージカル部門)などを受賞、「ポパイ」(1980年)で興行的にも批評的にも失敗して以来の長い低迷期を脱し、アルトマン監督の復活作となった作品です。

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ロバート・アルトマン
脚本:マイケル・トルキン
原作:マイケル・トルキン
出演:ティム・ロビンス(グリフィン・ミル)
   グレタ・スカッキ(ジューン・グッドマンズドータ)
   フレッド・ウォード(ウォルター)
   ウーピー・ゴールドバーグ(刑事スーザン・エイヴァリー)
   ピーター・ギャラガー(ラリー・レヴィ)
   ブライオン・ジェームズ(ジョー・レヴィソン)
   シンシア・スティーヴンソン(ボニー・シュロウ)
   ヴィンセント・ドノフリオ(デイヴィッド・ケヘイン)
   ディーン・ストックウェル(アンディ・シヴェラ)
   リチャード・E・グラント(トム・オークリー)
   シドニー・ポラック(ディック・メロン)
   ライル・ラヴェット(刑事デロングプレ)
   ダイナ・メリル(シリア)
   アンジェラ・ホール(ジャン)
   ジェレミー・ピヴェン(スティーヴ・リーヴズ)
   ジーナ・ガーション(ホイットニー・ガーシュ)
   ナタリー・ストロング(ナタリー)
   ほか

あらすじ

  • 大手映画スタジオのエグゼクティヴ、グリフィン・ミル(ティム・ロビンス)には最近、悩みがふたつありました。ひとつは20世紀フォックスからやり手プロデューサー、リーヴィー(ピーター・ギャラガー)が引き抜かれてくること、もうひとつは企画をボツにされた脚本家から頻繁に脅迫状が届けられることでした。
  • 売れないライターのデイヴィッド・ケヘイン(ヴィンセント・フィリップ・ドノフリオ)を脅迫状の送り主とみたグリフィンは彼と会いますが、口論の末、勢い余ってケヘインを殺してしまいます。ところが、翌日、グリフィンのもとに死んだはずの男から脅迫状がファックスで送られてきます。また、ライバルのリーヴィーは予定より早く会社を移って来ることになり、グリフィンの焦りは増していきます。
  • そんな折、グリフィンは葬式で知り合ったケヘインの恋人で画家のジューン(グレタ・スカッキ)のもとを訪れます。彼女との会話に安らぎを覚えたグリフィンは、彼女をスタジオのパーティに招待し、2人はやがて恋人同士になります。続いてグリフィンは、ヒットの見込みのない脚本をリーヴィーにつかませて罠に陥れることに成功します・・・。

レビュー・解説 

ひとことで言えば、「ザ・プレイヤー」は群像劇で構成したハリウッドを強烈に風刺するフィルム・ノワール風味のブラック・コメディで、他に類を見ないロバート・アルトマン監督ならではの作品です。

 

様々な登場人物の会話をカメラが移動しながら追っていくオープニングは、いきなり8分の長回しで、観る人の度肝を抜きます。さらに、この会話に中には、オーソン・ウェルズの「黒い罠」など他の映画の長回しの話題が出てくるという凝りようです。この長回しの中に「長回し」が出てくるという、いわば入れ子の構造は、この映画の中に「映画を制作するスタジオ」が出てくるという入れ子構造と相似で、この映画と「この映画の中の映画の話」が相互作用するかのように展開していきます。また、出演者も多く、あたかも映画がひとつの世界を形成するかのようです。

 

映画製作に関して決して自分を曲げず、ぶれることなく己の道をまっすぐに進むロバート・アルトマンは、スタジオや幹部との衝突が絶えませんでした。いきおい、自己資金で映画を撮ることが多く、「ア­メリカ・インディペンデント映画の父」とも言われています。また、ハリウッド映画のシステムに頼らず、ジャンルを壊し、タブーを恐れず、撮影・録音方法に革命を起こし、自由に映画を撮り続けた為に、ハリウッドとは相容れない存在になってしまった観がありますが、俳優をはじめ多くの映画人に敬愛される存在になり、名だたる映画監督も影響を受けています。

 

最近の群像劇は、「アンサンブル・プレイ」の訳語として「単一のスターではなく、複数の俳優が同等の重要性を持った役を演ずる演劇、映画」という意味で使われる事が少なくありませんが、本作は主役が明確であり、「大きな事件とそれを取り巻く人々を描く」タイプの群像劇で、かつ多数の大スターがカメオ的に出演しているのが特徴的です。オスカー俳優12人、オスカー候補13人を含む60人以上の俳優・監督・プロデューサーが顔を出していますが、これらの大スターも全米映画俳優組合が定める最低のギャラ、もしくは無料で出演しています。もし相場で支払えば、ギャラの総額は1億ドルを超えると言われています。ハリウッドを強烈に風刺できるものは、ハリウッド映画のシステムに頼らず自由に映画を撮り続けたアルトマン監督ならではですが、安いギャラでもスターが集まるのは、俳優に敬愛されるアルトマン監督ならではでしょう。

 

ティム・ロビンス(グリフィン・ミル)

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グレタ・スカッキ(ジューン・グッドマンズドータ)

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撮影地(グーグルマップ) 

グリフィンが勤めるスタジオ

 

殺人現場

 

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関連作品 

 

ロバート・アルトマン監督作品のDVD(Amazon

  「M★A★S★H マッシュ」(1970年)

  「ナッシュビル」(1975年)

  「ザ・プレイヤー」(1992年)

  「ショート・カッツ」(1994年)

  「クッキー・フォーチュン」(1999年)

  「ゴスフォード・パーク」(2001年)

  「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006年)

 

群像劇映画 

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