「グレート・ビューティー/追憶のローマ」:退廃的で儚い爛熟の美と、悠久の歴史のコントラスト
「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(原題:La grande bellezza、英題:The Great Beauty)は、2013年公開のイタリア・フランスの合作の映画です。セレブ界の狂騒に飽き飽きした初老のジャーナリストが、初恋の女性の死をきっかけにローマの街を歩きながら人生について思いを巡らす様を描いています。第86回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品です。
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目次
スタッフ・キャスト
監督:パオロ・ソレンティーノ
脚本:パオロ・ソレンティーノ
出演:ウンベルト・コンタレッロ
トニー・セルヴィッロ(ジェップ・ガンバルデッラ)
カルロ・ヴェルドーネ(ロマーノ)
サブリーナ・フェリッリ(ラモーナ)
ほか
あらすじ
ローマは、歴史的な建造物や美術品、最先端のファッションや現代アートが混在する永遠の都。ジャーナリストのジェップ(トニー・セルヴィッロ)は俳優、アーティスト、実業家、貴族、モデルなどが集うローマの華やかなセレブのコミュニティの中でも、ちょっとした有名人です。40年前に発表した小説「人間装置」が高い評価を受け、大きな賞も受賞、筆を折った今も、作家として文壇では一目置かれ、その才能と知性を認められ、上流階級の暮らしを取材して暮らしています。彼は初老に差し掛かった今でも、毎夜、華やかなレセプションやパーティーを渡り歩く日々を過ごしていましたが、内心では仲間たちの空虚な乱痴気騒ぎに飽き飽きしていました。そんなある日、彼の元に忘れられない初恋の女性の訃報が届き、これをきっかけに長い間中断していた作家活動を再開しようと決意します。すべてを得ながらも、埋められない孤独と虚しさを抱えた美の探究者が、人生の旅の黄昏に追い求め、悟った境地とは…?
レビュー・解説
様々なエピソードが展開していきますが、とにかく映像が美しい作品です。華やかなセレブのファッションの合間に映し出されるイタリアの屋敷や寺院の空間が、歴史的な悠久の美しさを感じさせます。退廃的ではかない爛熟の美と悠久の歴史のコントラストは、イタリアのならでは美意識かもしれません。冒頭、ガイドが日本語で観光客に説明するシーンがありますが、観光客がどう見ても日本人に見えないのはご愛嬌。
終盤、ジェップは104歳の修道女に会います。
老修道女「どうして筆を折ったのですか?」
ジェップ「私は大いなる美を求めたが、見つからなかった」
老修道女「では私はどうして草の根ばかり食べると?」
ジェップ「さあ、わかりません」
老修道女「根っこは大事だからです」
そして、ジェップは初恋の人との思い出の島に旅します。ほんの一瞬しか映らないのですが、ジェップの初恋の女性エリーザがとても美しいです。アナルイーザ・カパサ(Annaluisa Capasa)という女優さんです。
花に命は儚くて、一瞬です。美に絶対的な意味など、無いのかもしれません。だからこそ美しいのかも。
ジェップ(語り)「幕切れは決まって、死である。だが、それまでは生があった。あれやこれやに隠されて、すべては駄弁と雑音の下に埋没する。静けさと情緒、感動と恐れ、美しさのわずかで不規則なほとばしり。それから理不尽なおぞましさと、哀れな人間。すべては生きるという困惑のもとに埋葬される。かくかくしかじか。彼岸が存在するが、私は彼岸には関わらない。こうしてこの小説は始まる。とどのつまり、ただのトリックだ。そう、ただのトリックなのだ。」
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