夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「プールサイド・デイズ」:内気な14歳の少年が、母の恋人の別荘とウォーター・パークで過ごすひと夏を、爽やかに描くコメディ

「プールサイド・デイズ」(原題:The Way Way Back)は、2013年公開のアメリカのコメディ&ドラマ映画です。ナット・ファクソンとジム・ラッシュ脚本、監督、スティーブ・カレル、トニ・コレットサム・ロックウェル、リアム・ジェームズらの出演で、内気な少年が母親の新しい恋人の別荘とその近くのウォーター・パークで過ごすひと夏を描いています。

 

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目次

スタッフ・キャスト 

監督:ナット・ファクソン/ジム・ラッシュ
脚本:ナット・ファクソン/ジム・ラッシュ
出演:リアム・ジェームズ(ダンカン、両親が離婚し、母と暮らす14歳の少年)
   トニ・コレット(パム、ダンカンの母)
   スティーヴ・カレルトレント、パムの恋人)
   ゾーイ・レビン(ステフ、トレントの娘)
   アリソン・ジャニー(ベティ、トレントの別荘の隣人、夫と離婚、子供と生活)
   アナソフィア・ロブ(スザンナ、ベティの娘)
   リヴァー・アレクサンダー(ピーター、ベティの息子、斜視)
   ロブ・コードリー(キップ、トレントの別荘の隣人、ジョアンの夫)
   アマンダ・ピートジョアン、トレントの別荘の隣人、ジョアンの妻)
   サム・ロックウェルオーウェン、ウォーター・パークの従業員)
   マーヤ・ルドルフ(ケイトリン、ウォーター・パークの従業員)
   ほか

あらすじ

14歳の少年ダンカン(リアム・ジェームズ)は、離婚した母親パム(トニ・コレット)と共に生活していますが、彼女の新しい恋人トレントスティーヴ・カレル)は根暗なダンカンに対してなにかと厳しく接します。ダンカンの母親パム同様に離婚歴のあるトレントは、夏の間、互いの家族を連れて自身の別荘で過ごそうと提案し、ダンカンは嫌々ながらトレント一家と過ごすことになってしまいます。

トレント一家と上手く馴染むことができず町をふらついていたダンカンは、オーウェンサム・ロックウェル)という妙な男と出会います。町のウォーターパークで監視員をしているオーウェンは、デタラメだが自由で明るく、いつしかダンカンも彼に心を開き始め、自身もウォーターパークででアルバイトを始めます・・・。

レビュー・解説 

アレクサンダー・ペイン監督の「ファミリー・ツリー」(2011年)の脚本を担当、アカデミー脚色賞を受賞したナット・ファクソンとジム・ラッシュによる初監督作品ですが、思春期と家族をテーマにしながらも、良く出来た脚本と素晴しいキャストにより、爽やかで心暖まるコメディに仕上がっています。

 

冒頭、ダンカンが母の恋人トレントに厳しい事を言われるシーンがあります。ジム・ラッシュ監督は、14歳の時に継父に似たような事を言われたことがあり、その経験からこの映画のストーリーがひらめいたと語っています。

TRENT: Duncan, are you sleeping?
DUNCAN: No.
TRENT: Let me ask you something. On a scale from one to ten, what do you think you are?
Beat. No response.
TRENT: Duncan? I’m asking you how you see yourself. On a scale from one to ten.
DUNCAN: I don’t know.
TRENT: What? You need to speak up, buddy.
DUNCAN: I don’t know.
Trent: What... what don't you know? How you see yourself? You don't have any opinion?
No response from Duncan.
Trent: I'm just asking. Pick any number, scale of one to ten. Just shout it out. Just say a number.
Duncan: A six.
Trent: A what?
Duncan: A six!
Trent: I think you're a three. You know why I think you're a three? You know what would make me say that?
Duncan: No.
Trent: You don't know? You have no idea?
Duncan: No.
Trent: You've got to speak up, buddy.
Duncan: No!
Trent: Since I've been dating your mom, I don't see you putting yourself out there, bud. Meeting kids your own age. And from what your mom tells me, you just seem content to hang around her apartment. Is that a fair assessment? You're just happy not do anything? 'Cause... damn, to me that is a three.
トレント:ダンカン?寝てるのか?
ダンカン:いや。
トレント:聞きたい事がある。もし点数をつけるなら、お前は10点満点の何点だ?
間。答えがない。
トレント:ダンカン?10点満点で何点だと聞いているんだ。
ダンカン:さあ。
トレント:何だって?もっと大きい声で言ってくれ。
ダンカン:分からない。
トレント:何だって?自分のことがわからないのか?自分の考えがないのか?
ダンカンは答えない。
トレント:俺は聞いているだけだ。1から10までの数字からひとつ選んで、叫べばいいんだ。数字を言え。
ダンカン:6点。
トレント:え、何点?
ダンカン:6点。
トレント:お前は3点だ。何で俺が3点と言ったかわかるか?
ダンカン:さあ。
トレント:わからないのか?
ダンカン:ああ。
トレント:聞こえない。
ダンカン:わからないよ!
トレント:お前のお母さんとつきあい始めて以来、お前が何かしているのを見た事がない。友達と遊んだか?「家にいるのが好きみたい」とお前のお母さんは言うが、それは正しい評価か?何もしないで、お前は幸せなのか?俺から見れば、それじゃ、3点だ。

 

なんとも厳しいご意見です。多感な少年、少女にとっては酷なことですが、親の離婚、そして新しいパートナーとの出会いはアメリカでは珍しくことではなく、ダンカンが滞在先で知り合いになった同じ年頃のスザンナも同様の境遇にあります。

SUSANNA: I’m waiting for my Dad to call me back. I don’t want to be inside because my mom will just stare at me while I’m on the phone. She’s all freaked out that I’m gonna want to live with him, or whatever.
DUNCAN: My mom’s the same way.
スザンナ:パパの電話を待ってるの。中で話すとママが睨むの。私をとられてしまうとか思ってるのよね。
ダンカン:うちも同じだ。

 

SUSANNA: That’s what I think really kills my mom. Not that he left, but that he’s got someone and she doesn’t.
Duncan nods.
SUSANNA: (CONT’D) Is your dad seeing anybody?
DUNCAN: Yeah, she’s a lot younger.
SUSANNA: Classic.
スザンナ:ママが悔しいのは、パパには相手がいて、自分にはいないこと。
ダンカン:(うなずく)
スザンナ:あなたのパパは?
ダンカン:若い恋人がいる。
スザンナ:よくある話ね。

 

彼らはそんな両親を横目に健気にやっているのですが、ダンカンの実父がダンカンを歓迎していない事を、母の恋人トレントがダンカンにばらしてしまいます。

DUNCAN: I’m going to live with my father!
PAM: Trent, don’t...
TRENT: He doesn’t want you, kid.
DUNCAN: Is that true?
PAM: (pained) Duncan...
ダンカン:僕はパパと暮らす!
トレント:暮らせると思うのか?
パム:トレント、やめて。
トレント:彼は望んでないよ、坊や。
ダンカン:本当なの?
パム:ダンカン・・・。

 

そんな傷心のダンカンの心の救いになるのが、近くのウォーター・パークで働く人たちでした。ウォーター・パークは、ウォーター・スライダー、波の出るプール、流れるプールなどの水遊びのできる施設からなる、ちょっとしたアミューズメント・パークです。サム・ロックウェル扮するオーウェンや、マーヤ・ルドルフ扮するケイトリンが、年の離れた兄貴分、姉貴分のようにダンカンの相手をしてくれるうちに、ダンカンはだんだんと明るくなっていきます。14歳というと微妙な年頃ですが、子供の頃、遊んだであろうウォーター・パークで働く人たちが、大人になりかけたダンカンの相手をしてくれるというのは、とてもいい話です。

 

リアム・ジェームズが、14歳の根暗の少年を良く演じています。前屈みですたすたと歩く姿が何とも言えずいいです。その母を演じるトニ・コレット、母の恋人を演じるスティーヴ・カレル、ダンカンの相手をするオーウェンを演じるサム・ロックウェル、いずれも非の打ち所がありません。

 

また、トレントの別荘の隣人たちの中で、ベティを演じるアリソン・ジャニーと、キップを演じるロブ・コードリーもなかなかのパフォーマンスです。ベティも、夫と離婚していますが、生真面目で神経質なパムと対照的な、ストレートな物言いの酒好きです。道化的な役割なのですが、エミー賞を7回も受賞している芸達者なアリソン・ジャニーが映画を底上げしています。コメディアンでもあるロブ・コードリーも、なかなかいい味を出しています。

 

原題の「The Way Way Back」は、トレントが乗っているような70年代のステーション・ワゴンに見られた後部ラッゲージ・スペースに設けられた後ろ向きの簡易シートです。子供が座る事が想定して作られたシートですが、タイトルはトレントが別荘に行く際にダンカンをここに座らせてことに由来します。大人は前のゆったりした席に座ってドライブを楽しみ、子供はラッゲージ・スペースの簡易シートに座らせるという大人の都合を風刺しているようでもあります。

 

リアム・ジェームズ(ダンカン)

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スティーヴ・カレル(右:トレント)とトニ・コレット(左:パム)

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アリソン・ジャニー(ベティ)

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アナソフィア・ロブ(スザンナ)

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サム・ロックウェルオーウェン

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マーヤ・ルドルフ(ケイトリン)

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ロブ・コードリー(キップ)

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撮影地(グーグルマップ) 

  • 家族で夏を過ごしたトレントの別荘
  • ダンカンがアルバイトをしたウォーター・パーク「Water Wizz」

 

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関連作品 

ナット・ファクソン/ジム・ラッシュ脚本作品のDVD(Amazon

  「ファミリー・ツリー」(2011年)

 

スティーヴ・カレル/トニ・コレット共演作品のDVD(Amazon

  「リトル・ミス・サンシャイン」(2006年)

 

スティーヴ・カレル出演作品のDVD(Amazon

  「40歳の童貞男」(2005年)

  「ラブ・アゲイン」(2011年)

  「フォックスキャッチャー」(2014年)

    「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015年)

  「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」(2017年)

 

トニ・コレット出演作品のDVD(Amazon

  「Emma エマ」(1996年)

  「シックス・センス」(1999年)

  「アバウト・ア・ボーイ」(2002年)

  「めぐりあう時間たち」(2002年)

  「おとなの恋には嘘がある」(2013年)

 

サム・ロックウェル出演作品のDVD(Amazon) 

  「シン・レッド・ライン」(1998年)

  「グリーンマイル」(1999年)

  「ギャラクシー・クエスト」(1999年)

  「マッチスティック・メン」(2003年)

  「フロスト×ニクソン」(2008年)

  「月に囚われた男」(2009年)

  「セブン・サイコパス」(2012年)

    「スリー・ビルボード」(2017年)

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