夢は洋画をかけ廻る

洋画のレビューや解釈、解説、感想、撮影地、関連作品などを掲載しています。タイトルは、松尾芭蕉最後の句と言われる「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」由来です。病に伏してなお、夢が枯野をかけ廻るとは根っからの旅人だったのですね。映画はちょっとだけ他人の人生を生きてみる、いわば人生の旅のようなもの。願わくば、芭蕉のような旅の達人になりたいものです。

「月に囚われた男」:確かな才能で高い評価を得たダンカン・ジョーンズの長編映画監督デビュー作

月に囚われた男」(原題:Moon)は、2009年公開のイギリスのSFファンタジー、ミステリー&サスペンス映画です。デヴィッド・ボウイの息子、ダンカン・ジョーンズ長編映画監督デビュー作で、サム・ロックウェル主演で、月を舞台に70年代後半から80年代前半にかけて勢いのあったSF映画の雰囲気を再現したミステリー&サスペンス映画です。低予算制作され、当初はビデオスルーで世界向けに配給されることになっていましたが、サンダンス映画祭での好評をうけて急遽劇場公開に変更された作品です。

 

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目次 

スタッフ・キャスト

監督:ダンカン・ジョーンズ 
脚本:ダンカン・ジョーンズ/ネイサン・パーカー
出演:サム・ロックウェル(サム・ベル)
   ケヴィン・スペイシー(ガーティの声)
   ドミニク・マケリゴット(テス・ベル)
   カヤ・スコデラリオ(イヴ・ベル)
   ベネディクト・ウォン(トンプソン)
   マット・ベリー(オーバーマイヤーズ)
   マルコム・スチュワート(技術者)
   ほか

あらすじ

近未来の世界、地球のエネルギーは底をつき、新たな燃料源を38万キロ彼方の月で採掘することになりました。燃料生産企業「ルナ産業」に勤めるエンジニアのサム・ベル(サム・ロックウェル)は、宇宙資源エネルギー「ヘリウム3」採掘のため、たった一人で月の裏側にある掘削基地へ3年間派遣されます。通信衛星の故障のために地球との通信は録画データのやり取りを行うのみで、話し相手は人工知能ロボット・ガーティ(声:ケヴィン・スペイシー)1台のみという孤独な環境でしたが、地球で彼の帰りを待つ妻と子供への思いがサムの心を支えていました。契約満了まで残り僅かとなったある日、彼は月面で作業中に事故を起こしてしまいますが、なんとか一命を取り留め基地の医務室で意識を取り戻します。ガーティや本部の対応に不審を抱いて事故現場を見に戻った彼がそこで目にしたのは、負傷したまま放置されていたもう一人の自分でした・・・。

レビュー・解説 

サム・ロックウェルの強力なパフォーマンスに思わず引き込まれる本作は、ダンカン・ジョーンズの確かな才能に感じさせる長編映画監督デビュー作です。

 

ダンカン・ジョーンズ長編映画監督デビュー作となったこの作品は、どうしてもサム・ロックウェル出演の映画を撮りたかった彼が、サム・ロックウェルの為に脚本を書いて実現したものです。

実は別の映画の依頼で3年前に会っていたんだ。そのときは、デビュー作にしては規模が大きく、それにサムは別の役をやりたいって言ってね。結局は予算の都合上で製作することはできなかったわけだけれど、それ以来僕はサムを使いたいと思っていたんだ。それと1970年代後半から1980年代のSF映画が、お互いに大好きだってことがわかったんだ。(ダンカン・ジョーンズ

脚本はしっかりとした調査の上、書かれており、興味を持ったNASAの科学者に招聘されて、プレゼンテーションが行われました。

 

映画は、500万ドルの低予算、撮影期間33日で製作されましたが、インディーズ映画出演を厭わないサム・ロックウェルが、月で一人暮らす男の孤独感と、現れた自分のクローンとの関係を徐々に構築していく様を見事に演じ、ヒューマン・ドラマ的な雰囲気さえ漂います。また、ダンカン・ジョーンズのCM製作の効果の経験が低予算のこの作品にうまく生きており、CGよりも小さな模型を多用した月面シーンはとても美しい仕上がりになっています。ロボットの外観や話し方、宇宙のシーンに流れるクラシック音楽のBGMなど、スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙への旅」を彷彿とさせる部分もあります。

 

デヴィッド・ボウイの息子と言われながら、この作品で親の七光りではない確かな才能を見せたダンカン・ジョーンズは、2011年公開の「ミッション: 8ミニッツ」でさらにその評価を高めました。現在、2016年6月公開予定の人気ゲームに基づいたファンタジー&アドベンチャー映画「Warcraft」を製作中ですが、その仕上がりが楽しみです。

 

月で一人暮らす男の孤独感を見事に演じるサム・ロックウェル

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サム・ロックウェル(1968年〜)はカリフォルニア出身のアメリカの俳優。両親ともに俳優だったが、彼が5歳の時に離婚、10歳の時に母親が主演する即興コメディで初舞台を踏む。1989年に低予算ホラーで映画デビュー、「ミュータント・タートルズ」(1990年)などの映画に出演してキャリアを積む。様々なキャラクターを演じ分け、「グリーンマイル」(1999年)では狂暴な殺人犯、「ギャラクシー・クエスト」(1999年)でコンベンションの司会役などを演じ、俳優としての地位を確立する。「コンフェッション」(2002年)で初主演を飾り、ベルリン国際映画祭の男優賞を受賞している。本作では、ほぼ全編一人芝居で主役を演じている。

 

唯一の話し相手、ロボットのガーティ

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ビデオで見る地球で待つ家族が心の支え

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自分のクローンとの関係を見事に演じるサム・ロックウェル

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月面のシーンが美しい

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模型を使った月面基地の撮影風景

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地球の家族からのビデオを見るシーン

 

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関連作品 

宇宙飛行士を描いた映画のDVD(Amazon

  「2001年宇宙の旅」のDVD(1968年)

  「ライトスタッフ」のDVD(1983年)

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  「ゼロ・グラビティ」のDVD(2013年)

  「インターステラー」(2014年)

  「オデッセイ」(2015年)

  「ファースト・マン」(2019年)

 

ダンカン・ジョーンズ監督作品のDVD(Amazon

  「ミッション:8ミニッツ」(2011年)

 

サム・ロックウェル出演作品のDVD(Amazon) 

  「シン・レッド・ライン」(1998年)

  「グリーンマイル」(1999年)

  「ギャラクシー・クエスト」(1999年)

  「マッチスティック・メン」(2003年)

  「フロスト×ニクソン」(2008年)

  「セブン・サイコパス」(2012年)

  「プールサイド・デイズ」(2013年)

    「スリー・ビルボード」(2017年)

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